独占インタビュー「ラノベの素」 なんみん先生『滅竜少女は想いを焚べる 枯羽の天使』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2026年1月25日にオーバーラップ文庫より『滅竜少女は想いを焚べる 枯羽の天使』が発売されたなんみん先生です。第12回オーバーラップ文庫大賞にて「金賞」を受賞し、満を持してデビューされます。元英雄でありながら空虚な人生を送ってきた主人公が、余命宣告を機に「自分の意思で何かを成し遂げたい」と思い立ち、戦場に舞い戻ることになる本作。百合とロボットの組み合わせによって生まれる魅力や、物語を彩るキャラクターについてなど様々にお話をお聞きしました。

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【あらすじ】 「竜」――人を喰らう化け物に生存圏を奪われ、海の果てへと追いやられて20年。人類は「本土」を奪還するための反抗作戦を開始した。元最強のパイロットでありながら現在無職女の山田は、余命一年の宣告を機に「何かを成し遂げたい」と戦線復帰を決意する。ベテランとして同じ部隊の少女達にマウントを取ろうと画策していた山田だったが、昔の機体との違いに四苦八苦。それでも山田の明るさや奔放さに少女達は抱えていた悩みを解きほぐされ、次第に彼女に惹かれていく――彼女が喪われる運命を知らないままに。第12回オーバーラップ文庫大賞【金賞】受賞、少女たちの英雄譚が今始まる……! |
――それでは自己紹介からお願いします。
なんみんと申します。出身は兵庫県で、執筆歴はおよそ12年になります。18歳の頃、WEBに二次創作作品を投稿したのが創作活動の始まりでした。小説や漫画、アニメやゲームなどが好きで、話題作にはひと通り触れてきたと思います。小説だと最近は、澤村伊智先生のホラー作品や小川一水先生の『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』といったSF作品を読んでいます。
――小説の執筆は二次創作からだったんですね。
そうですね。当時『ロロナのアトリエ』というゲームにハマっていたのですが、二次創作がほとんどなかったんです。数少ない二次創作作品もあっという間に読んでしまって、「自分で書くしかない」と思ったのが、小説を書き始めるきっかけでした。
――二次創作からオリジナルに挑戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
二次創作は、原作のことをたくさん調べないと書けないんですよ。調べる作業自体はもちろん楽しいのですが、一方で原作という制約を外して自由に書いてみたいという思いもありました。そこで、何となく書いたオリジナルをWEBに投稿してみたのですが、存外に読者の方にウケたんです。ポジティブな感想をもらえたことが嬉しくて、本格的に書くようになりました。
――ゼロから考えた物語への評価は、二次創作とは違う手応えだったんですね。
そうですね。二次創作は「作る」というよりも、どちらかというと「消費」の一環という感覚が強いんです。僕の中では、原作を楽しむことが先にあって、その延長線上に二次創作を作るという行為がありました。逆に一次創作はキャラクターや世界観などを自分で考える必要があるので、「作る」という感覚が強いんです。自分でものを作る楽しさ、そして純粋な自分の成果物を楽しんでもらえる喜びは、一次創作を続けていく大きなモチベーションになりました。
――それではあらためてになりますが、第12回オーバーラップ文庫大賞「金賞」受賞おめでとうございます。受賞の連絡を受けた際の感想を教えてください。
ありがとうございます。受賞の連絡が来たのは一昨年の10月上旬でした。本作を応募してからしばらく時間も経ち、「次の作品に取り掛かるぞ!」というタイミングで、知らない番号から電話がかかってきたんです。普段なら一旦無視して番号を調べるのですが、何か直観が働いたのか電話に出たところ「オーバーラップ文庫です」と。まさか受賞の連絡だとは思っていなかったので、驚きました。
――元々はWEBで活動されていたわけですよね。どういったきっかけで公募に挑戦するようになったのでしょうか。
以前からWEBでは10万文字程度で完結するストーリーを投稿していたんですが、それがたまたま公募の文字数と合っていたんです。特別な準備をしなくても応募できたので、「書籍化されたらいいな」くらいの軽い気持ちで出すようになりました。
――なるほど。ちなみに、オーバーラップ文庫大賞を応募先に選ばれた理由は何だったのでしょうか。
オーバーラップ文庫さんは百合作品を多く出しているイメージがあったんですよね。僕自身そうした作品が好きで、としぞう先生の『百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話』などは楽しく読ませていただいています。今回の応募作にも百合要素があったので、あわよくば拾ってもらえないかなと思って応募しました。
――ありがとうございます。それでは受賞作『滅竜少女は想いを焚べる 枯羽の天使』がどんな物語なのか教えてください。
本作は、人類が竜に生存圏を奪われ、離島に追い込まれてしまった世界を舞台にしています。主人公の山田は、本土陥落時に人類の脱出を成功させた英雄的なパイロットでした。しかしその後は戦線を離れ、時間を浪費するような日々を送ることになります。物語は、余命宣告をきっかけに「何かを成し遂げたい」と思い立った山田が、「滅竜隊」に入隊するところから始まります。ただ強いだけの存在だった山田が、隊員たちとの交流を通じて、自分の意思で戦いに臨むようになっていく。その成長と変化を描いたストーリーです。テーマは「最初の一歩は自分の意思で」。どんなに些細なきっかけやくだらない目的であったとしても、最初の一歩を踏み出せば物語は始まる、そんな思いを込めています。

※「何かを成し遂げたい」という思いが、山田を戦場へと駆り立てる
――あわせて着想についても教えてください。
出発点は、「性能は高いけれど、高出力を続けると熱暴走を起こしてしまうピーキーな機体」を描きたいというアイデアでした。限界を超えた機体が溶け落ちていく場面だけは最初から考えていたのですが、どんな物語にするかは全然決まっていなくて。いくつか案を練っていく中で、自分の好きな百合要素や余命ものというエッセンスを組み込んだ物語に仕上げていきました。
――「ロボット」と「百合」という組み合わせはライトノベルでは珍しいですよね。
「ロボット」と「百合」の組み合わせに関しては、もともと何かを狙っていたわけではなく、単に好きなものを掛け合わせただけでした。ただ、あらためて考えると、2つの要素を組み合わせたことでキャラクター同士のドラマを深く描けたのかなと思います。その理由のひとつが、ロボットの設定にあります。作中で山田たちの乗る機体は、「本人も制御しきれないほどの強い思い」を動力源にしています。パイロットの内面が機体のパフォーマンスに直結するので、彼女たちは自分の内面と向き合わざるを得なくなるんです。その思いを仲間に隠すのか、それとも打ち明けるのか。ここに葛藤やドラマが生まれるんです。

※戦いの中で山田は隊員たちとの絆を深めていく
――「強い思いが動力源になる」というロボットの設定と同じように、主人公に余命が1年しか残されていないという点も、葛藤やドラマを深める要素として非常に大きいですよね。
そうですね。余命という要素を採用したのは、2つの理由があります。1つ目は創作上のメリットです。主人公が死ぬ運命にあることを最初に提示しておくことで、起承転結の「転」と「結」がしっかり生まれる。これによって、話としてまとまりやすくなるんです。2つ目は完全に僕の好みですね(笑)。というのも、主人公が周囲から心配されたり、強い感情を向けられたりする「曇らせ」が好物なんです。その中でも主人公の死は「曇らせ」の究極形だと思っています。主人公を取り巻くキャラクターたちの感情を強く引き出しながら、物語にメリハリをつけることができる。それが余命ものの優れている点だと考えています。
――構成上のメリットと、作家としてのこだわり、その2つが上手く噛み合ったわけですね。構成に関して言うと、日記と三人称を織り交ぜるスタイルも特徴的です。この形式を採用した狙いは何だったのでしょうか。
三人称だけで書いてみたり、全文を日記形式で書いてみたり、試行錯誤を重ねた結果生まれたのがこの書き方でした。実際に書いてみて気づいたのですが、日記形式は主人公の内面を描くことに優れているのに対し、三人称は主人公から見えない事実を描くことに優れているんです。それぞれの視点だけでは描けない部分を補えることが、2つの形式を織り交ぜるメリットだと感じています。また、あらかじめ日記で面白い部分をハイライトのように見せておくことで、三人称パートを読む時、物語に入り込みやすくなるという点もこの形式ならではの良さだと思います。
――ありがとうございます。続いて、主人公の山田と彼女が所属する部隊「滅竜隊」のメンバーについてご紹介をお願いします。
主人公の山田は、ロボットに乗ると強い以外は何もない女の子です。自分の意思もなければ、努力をして何かを得たこともなく、その時々の衝動に従って刹那的に生きてきました。本作では、そんな彼女が少しずつ自分の意思を持って変わっていく姿を楽しんでもらえたらと思います。

※「滅竜隊」に正体を隠して所属することになる主人公の山田
金藤ミサキは、山田にツッコミを入れる金髪眼鏡の真面目なキャラクターです。普段は賢そうな口調で喋りますが、たまにキャラ崩壊することがあって、そのギャップが魅力かなと思います。

※堅物な優等生タイプの金藤ミサキ
桃地オウカは天真爛漫で誠実で、部隊の太陽のような存在です。部隊の雰囲気を和ませる潤滑油的な役割を果たしていますが、近しい相手に対しては独占欲が強いという一面もあります。

※素直で明るく元気な桃地オウカ
白辻マシロは、色々とデカい女の子です(笑)。普段はおどおどした小動物のような振る舞いをしていますが、竜を前にすると一転して殺戮モードに入るという二面性を持っています。

※普段はおとなしめだが、竜に対しては並々ならぬ思いを秘める白辻マシロ
橙堂レイネは妹が大好きなシスコンです。部隊では一歩引いた立ち位置から、周囲を冷静に俯瞰していますが、これは索敵という戦場での役割とも一致しているのかなと思います。抜け目ない天才で、要領がいいキャラクターでもあります。

※気だるげでなかなか感情は読めないが、妹想いの一面を持つ橙堂レイネ
――個性的なメンバーが揃っていますが、山田との絡みで特に書きやすかったキャラクターはいますか。
主人公に突っかかっていくタイプのキャラクターは書きやすいので、ミサキとの絡みはスラスラと書けました。加えて、主人公と仲良くする意思が強いオウカとマシロも、比較的書きやすかったです。逆にレイネは自由人すぎて、少し扱うのに苦労したなという印象です。

※最初は張り合ってばかりの山田とミサキだったが……
――続いてはイラストについてお聞きできればと思います。書籍化に際してはイラストをイセ川ヤスタカ先生が担当されました。キャラクターデザインをはじめて見た時の感想や、お気に入りのイラストについて教えてください。
イラストのラフをいただいた時は本当に嬉しかったです。10年以上小説を書いてきましたが、ファンアートの類をもらえたことがなかったので、自分の作品がイラストになった喜びは大きかったです。どのキャラクターも可愛く描いていただいたのですが、特に山田は想像以上の可愛らしさで驚きました。キャラクターデザインだけでなく、細部へのこだわりも印象的で、文中では「滅竜隊の制服」としか書かれていない服装に、エンブレムや階級章まで描き込まれていたんです。機体についても、「クサナギ」は空戦主体という設定を汲んで関節が簡略化されていたり、「グリーディア」にはレーダーが稼働するギミックが付けられていたりしました。文章中のわずかな情報から、ここまで作り込んでいただけて、作品世界の解像度が一気に上がったように感じます。


※機体の特性が上手く落とし込まれたメカデザイン
お気に入りのイラストは、滅竜隊のメンバー全員が揃っている中で、オウカが山田に後ろから抱きついている口絵です。隊員たちの仲の良さが伝わる、良い一枚だと思います。

※なんみん先生が特にお気に入りだと語るイラスト
――著者として、本作はどんな方がより楽しめるか、あるいは特にどんな方に読んでほしいですか。
人類の敵と戦う力を持つ少女たちが、拠点で共同生活をしながら命がけの戦いに身を投じていく、そんな物語が好きな方には刺さると思います。百合要素も入っているので、女の子同士の関係性を描いた作品が好きな方にも手に取ってもらえたら嬉しいです。
――今後の目標や野望などがあれば、教えていただけますでしょうか。
継続は力なりだと思っているので、「こんな作品が読みたい」という気持ちを大切にしながら、自分なりに創作と向き合っていきたいです。
――最後に、本作に興味を持ってくださった読者の方へメッセージをお願いします。
興味を持ってくださってありがとうございます。山田たちの戦いと成長を、ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです。これからも頑張りますので、よろしくお願いします。
――本日はありがとうございました。
<了>
余命一年の宣告をきっかけに再び操縦桿を握ることになった主人公・山田が、仲間のため、そして自分のために竜へと立ち向かっていく物語を綴ったなんみん先生にお話をうかがいました。「薄っぺらい存在」であった山田が、滅竜隊メンバーと交流を重ねながら「自分の意思を持った人間」へと成長していく過程が魅力の本作。百合ファンもロボット好きも「曇らせ」が好きな方も楽しめる『滅竜少女は想いを焚べる 枯羽の天使』は必読です。
<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>
©なんみん/オーバーラップ イラスト:イセ川ヤスタカ

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