『クラッキング・ウィザード 鋭奪ノ魔人と魔剣の少女』紫藤ケイ先生インタビュー

クラッキング・ウィザード 鋭奪ノ魔人と魔剣の少女

(このライトノベルがすごい!文庫)

著者/紫藤ケイ 

イラスト/夕仁

定価680円(税込)

 

魔術!×ハッキング!!×バトル!!!

AR技術導入でヒロインが飛び出す!

天空都市《ヴァラスキャルヴ》の一画で探偵を営む主人公・ヴァルは《鋭奪ノ魔人(クラッキング・ウィザード)》の異名を持つ天才的グラムハッカー(魔術探偵)。そんな彼の元に魔術器具会社の社長令嬢エーレフォーアがやってきて、母の形見である腕輪の奪還を依頼する。超おてんばな彼女にてこずりながら仲間の情報屋やハッカーの力を借りて腕輪のありかを突き止めるが、その裏にはある人物の黒い思惑が……。ライトノベル紙面では初となるAR技術の導入でヒロインが飛び出す!

 

 

本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございます。よろしくお願いします。まず自己紹介をお願いします。

恐れ入ります。2012年10月、「このライトノベルがすごい!文庫」より、長編小説『ロゥド・オブ・デュラハン』でデビューさせていただきました、紫藤ケイと申します。

新シリーズ『クラッキング・ウィザード 鋭奪ノ魔人と魔剣の少女』が発売となりましたがどんな作品か紹介をお願いします。

『魔術文明が発達した天空都市を舞台に、魔術ハッカーが活躍する』――というのがコンセプトです。

「他者の魔術的領域に侵入する魔術」である〝外法術(ハッキング)〟に長けた少年『ヴァル』が、『奪われた母の形見を取り戻してほしい』という依頼を請け、大企業の張り巡らせた高度な魔術防御結界に侵入するべく、持てる技術を駆使して挑んでいきます。

本作の見所やセールスポイントなど教えてください。

「魔術ハッキング」というコンセプトを成立させるため、「人々が日常的に魔術器具(いわゆるマジックアイテム)を使う世界観」を描いています。

「ルーン文字をタップして魔術効果を発動する石板」である〝端末板(タブレット)〟や、天空都市全域の魔術器具に魔力を供給する〝グラムライン〟、「外法術師(ハッカー)の分身としてグラムライン上を駆け抜ける使い魔」こと〝星霊獣(アストラル・ファミリア)〟など、多彩な「魔術的要素」が当たり前のように登場するところが、大きな特徴でしょうか。

魔剣やゴーレムが登場しての白兵戦アクションにも、魔術要素を大きく取り入れています。

そんな魔術至上主義的な都市で、非合法の「魔術ハッカー」を生業としている、「魔術犯罪者」の主人公が、今回の依頼で、何を考え、どう心境を変化させていくのか――という点も、ぜひお楽しみいただきたいポイントです。

今回ライトノベル紙面では初となるAR技術を導入していますが、AR技術とはどういうものですか?また導入しようと思ったきっかけなどはありますか?

AR(拡張現実)は、スマートフォンのアプリなどを介することで、現実空間の上に〝何か〟を乗せて見せる技術です。ARを用いたアプリケーションの企画に携わった経験がありましたので、本作に「魔術で似たようなことをやっている」という設定を仕込みました。

(本作では、感知・探知系である「情報魔術」と、幻影作成系である「幻想魔術」の組み合わせによる効果です)

また、知り合いに個人でARアプリを制作・販売されていた方がいらっしゃったので、「その方に頼んで、ARで何か出るようにしたら面白いかもですねー」と半ば冗談で申し上げたら、担当さんが「いいっすね! やりましょう!」とおっしゃってくださって。世界観とリンクする形で、ARを付属させる方針が固まり、現状のものに至っています。

また、実際にご自身でARを体験されての感想などありますか?

実は、「どういう感じのモノができるか、ほぼ想像できているから、実際に見ても自分が驚くことはないだろう」と思っていたんですが……ARアプリ開発担当者の方が、こちらの想定以上の細かいブラッシュアップをしてくださったので、最初に本のページをめくって、魔法陣から光があふれ出した際には、「うおっ」と感動してしまいました。

主人公やヒロインについて教えてください。

冷静な判断力、高い知力と集中力を誇り、「稼げる時には稼ぐ」「金にならないことはしない」という信条を標榜するなど、「クールな皮肉屋」という感じの少年『ヴァル』。

でかい魔剣を振り回し、即断即決・猪突猛進、ぶち当たった壁を力ずくで破壊して物事を切り抜けていく、野生児系の武人令嬢『エーレフォーア』。

『母の形見を取り戻す』という誓いを立てたエーレフォーアが、ヴァルに依頼を持ちかけたことで、エーレフォーアのとんでもないやり方にヴァルが唖然となったり、ヴァルに飄々とあしらわれてエーレフォーアが地団太を踏んだりと、互いが互いを振り回す、ちょっと変わったコンビが結成されることになります。

紫藤先生が一番お気に入りのキャラクターは誰ですか?

一番かー……難しいですねー(笑)。作中の登場人物は、いつも全員気に入ってますので……強いて言うなら、やはり主人公であるヴァルでしょうか。

普段、クールぶっている彼ですが、エーレフォーアの無茶に付き合わされると素の感情が飛び出したり、強敵ハッカーと戦っているうちに心が燃えてきたりという、「少年」の部分がやっぱりあって、そこが結構好きですね。

ヴァル本人は、そこをどうにかしたいと思ってるわけですけど(笑)。

もちろん、エーレフォーアもケルベロスもハッカー連中も、作中では名前が出てこない「獅子男」も大好きです。あとエゼ。深夜残業でテンション上がっちゃう系男子のエゼ。そして、最終章で出てくる「あのお方」。公式ブログで世界設定の解説を担当してくださったりと、マジありがたいお方です。

本作の世界設定についてはこちらから

特にお気に入りのシーンやエピソードはどこですか。

そうですね、いろいろありますが……

書いていていちばん燃えたのは、CHAPTER.02の《アルマゲスト》戦です。

魔法陣を構成するルーン文字に秘められた意味、熟語構造、占星魔術との魔術相の相似的対応、罠の比喩(ケニング)、それらすべてを読みきって突破したヴァルの前に出現する、敵ハッカー《アルマゲスト》の星霊獣。

星霊獣同士の、魔術的特性を駆使した激突を展開しつつ、並行して互いにハッキングを仕掛け合う戦い――

もともと、本作の始まりは「高位魔術師同士の魔術戦をやってみたい」というところで、

「超遠距離から敵魔術師の位置を《生命感知》で把握し、相手の張り巡らせている対抗感知系魔法を《感知阻害》でごまかして、幾重にもかけられた防護・阻害系魔術結界を1枚ずつ丁寧に解除していきながら、位置指定型の超遠距離空間超越系攻撃魔法で攻撃するなり、アストラルプロジェクションからの精神攻撃をぶちかますなり、呪詛魔法で生命や精神を直接脅かすなり、速度と射程に超特化した雷撃系魔法で狙撃するなりして仕留める」みたいなノリがやりたかったんですね。

けど、それじゃキャッチーさがないということで、今のような形(魔術ハッキング)になり――現状の設定で、上記に近い魔術的やりとりを色濃くやってるのがこのシーンなので、書いててかなり幸せでした。

ただ、僕が趣味に走っただけで終わってしまうとアレなので(笑)、多くの方にそのシーンをお楽しみいただけるよう、担当編集さんといっしょにいろいろ趣向を凝らしてもおります。

本作の執筆にかかった時間はどれくらいですか?

ミーティングで「魔術ハッキングやろうぜ!」ってことになってから、大まかな世界観設定とプロットを決めるのに3日、初稿を書くのに5日、あとは編集さんとのブラッシュアップに数か月――という感じですね。

作家になろうと決めたきっかけや、そのきっかけになった作品などはありますか?

オリジナルのストーリーを書く、というのは、確か小学2年生の頃からやっていました。

いつか作家になるために、長編小説を書こう、と思い始めたのは小学6年生くらいだったような……。

割と、日々を過ごすなかで自然とそういう意識が生まれていったので、明確なきっかけはなかったかなと。

たぶん、幼稚園~小学2年生の頃に巡り合った『エリア88』『ドラゴンクエストⅤ』『スレイヤーズ(小説版)』などが、僕に『書こう。書かねば。いや、書くんだ。書け!』という最初の熱情を与えてくれたのだと思います。

小説を書くのに一番気をつけているのはどんなことですか?

『いかにして、楽しんでいただくか』というところです。

書きたいこと、やりたいことというのはもちろんたくさんあるのですが、単にそれをぶちこむだけではなく、『楽しんでいただくためには、今やりたいことに、どんな要素を入れていけばいいだろう?』と意識するよう心がけています。

作家としてのこれからの目標を教えてください。

『あいつが書いたものなら、きっと面白いだろう』と思っていただけるほどのパワーを、常に発揮できるようになることです。その領域に達したい。達さねば。達そう。達せ。と、内なる声が吠えてます。はい。やります。がんばります。

そのためにも、書いて書き続けて出して出し続けて楽しんでいただくための趣向を凝らし続けること……ですね。もう、本当に、書きたくて書きたくて、作りたくて作りたくてたまらないというのが本心です。それを自己満足で終わらせず、多くの方に楽しんでいただけるよう、工夫を凝らすのも大好きです。願わくば、一生ずっと、毎日小説を書き続けて、刊行し続けたいです。

それができるようになるには、「本が売れる」ことが必要ですので、

「書きたいことを書く」「読者の方に楽しんでいただく」「書き続けられるくらい売れるように工夫する」という観念が三位一体的に相互作用し合う、トリニティなクリエーションをしていかねばと思っております。あれ? すいませんなんか言語的ノリが変な方向に。

先生にとってファンになってくださる読者はどんな存在ですか? あとファンレターはやはり嬉しい?

いやもう、僕の書いたものを楽しんでくださる方がいらっしゃるというのは、本当にありがたい限りでございます。『おまえはさらに書き続けてもよい』と言っていただけることこそが、僕にとっては励みとなり、大いなる勇気となります。

そして、だからこそ、そう言っていただけるための努力をし続けなければならないと、そう感じています。

ファンレターをいただけるのは、うれしいと言いますか、感謝の念に堪えないあまり、五体投地をし始めるレベルと言いますか……

どこがおもしろかった、というご感想は非常に参考になりますし、何よりもう、ホント単純に、『書いてよかった……!』と感じます。

最後に読者の皆さんに一言お願いします。

いまだ力不足の面が否めず、日々、未熟さを痛感しておりますが、それでも、限界以上の力と意志と情熱を注ぎ、お楽しみいただけるための趣向を凝らすべく、今後も精進を続けてまいる所存です。

恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします!

紫藤先生ありがとうございました!

紫藤ケイ先生の新作『クラッキング・ウィザード 鋭奪ノ魔人と魔剣の少女』は絶賛発売中です!

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