独占インタビュー「ラノベの素」 岩井恭平先生『東京侵域:クローズドエデン』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は6月1日にスニーカー文庫より『東京侵域:クローズドエデン』第3巻が発売となる岩井恭平先生です。本作に込められた魅力、最新第3巻のストーリー展開についてもお聞きしました。

東京侵域3

どれだけ傷ついても、どれだけ絶望に囚われても、戦うことを諦めない。

【あらすじ】

蓮次と叶方の存在がついに救務庁に知られてしまった。臨界区域では宿敵“ハーメルン”が忽然と姿を消し、いよいよ追い詰められた蓮次と叶方は決死の行動を取る。送る者と征く者、二人の魂と絆をかけた戦いが始まる。

――お忙しい中ありがとうございます。本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。なるべく読者の皆様に興味を持ってもらえるような回答ができればと思います。

――『ムシウタ』で岩井先生をご存知の方も多いと思いますが、まずは自己紹介をお願いします。

生まれは茨城県の水戸市です。最近また水戸に戻ってきましたが、父の仕事の都合も含めて学生時代から関東地方を中心に各地を転々としていました。ハマっているものはマンガとゲームです。これは小さい頃から現在まで変わらぬ趣味ですね。好きなマンガのジャンルは少年マンガと四コママンガで、書いている文章もよく少年マンガ的と言われます(笑) ゲームはアクションや戦略シミュレーションが好きで、最近ではダークソウル3という有名なゲームにハマってます。steamという海外のゲーム配信サイトには100本近くのソフトを登録しています。仕事に差し支えない範囲で遊んでます。本当です。

――作家さんはみんなそう言……ごほん。さて、いよいよ3巻が発売です。待ち望んでいたファンも多かったと思いますがいかがですか。

お待たせしました、と。ツイッターなどでも続きを待ってくださる読者様からのお声をいただいているので、とても嬉しいですし、楽しんでもらえるだけの内容になったと思います。前巻にも増してハードな内容だし、そのぶんページ数も増えちゃいましたけどね(笑) どうにも書きたいことが多すぎて。

――まず、2巻までを振り返って『東京侵域:クローズドエデン』がどんな物語であるか教えてください。

この『東京侵域』シリーズは、現代の東京がすっぽりと謎の侵略者たちに乗っ取られてしまう話です。侵略された時に東京にいた人々はその侵略者、EOM(エネミー・オブ・マンカインド)という圧倒的強者に吸い込まれてしまい、主人公の少年は奪われた幼なじみを取り戻すために戦うわけです。でもその主人公自身も事件当時に被害にあって身体半分を失っていて、失った身体の代わりになぜかEOMが棲み着いてしまい、半分は人間、半分はEOMという奇妙な存在になってしまっていて……というお話です。見た目は一応、普通の男の子ですよ。東京に入らなければ。

――第1巻と第2巻が上下巻構成になっていたと思うのですが、新シリーズでは珍しい構成になりましたよね。

最初は上下巻に分ける予定ではなかったのですが、書いていくうちにボリュームが増えてしまい、これは分けようと。そう決めたらもっと書きたいことが増えて、構成を見直して、エピソードも増やして……と現在のような形になりました。作中ではあっさりと登場人物が死にかけることが多いので、そうなるとハラハラする状況でそうなって欲しいじゃないですか。そういう展開が大好きなので、止まりませんでした(笑)

――本作はクリティカル・エリアを核とした人間ドラマ、という印象を受けました。そしてとにかく1ページを捲るたびの緊張感が凄まじく、作中で繰り返される「ゴー」や「ショット」の掛け声がより拍車をかけていますよね。

前の質問で答えちゃいましたけど、緊迫感がある演出は大好きです。それだけに何度も命の危機に陥るような場面を作りたい。でも何度も都合良く助かってしまったら、運が良すぎるだけで緊迫感がなくなってしまう。それならいっそのこと、そういう世界にしてしまおうと。何度も死にかけるし、何度も助かる世界。それが作中の東京であり、「ゴー」や「ショット」などの掛け声はその象徴です。「ゴー」と言えば今から死にかけるぞという意味だし、「ショット」と言えば一瞬で助かってしまう、そんな世界なんです。

――そんな本作ですが、どういった着想のもと誕生したのでしょうか。作品における生死感をはじめ、岩井先生の代表作でもある『ムシウタ』を彷彿とさせる場面も見られているような気がします。

意識して『ムシウタ』に近づけた部分もあります。おっしゃる通り、生死感なんかがそうですね。単なる個人的な希望や願望のために、そんなことは知ったこっちゃない厳しい世界の中で生き延びるというテーマです。主人公たちは自分のワガママを押し通したいわけですから、もちろん敵も多いです。その敵が『ムシウタ』では世間や組織でしたが、東京侵域ではもっと強力な相手にしたいと思いました。それが絶対に人類が敵わないような侵略者、EOMになったわけです。

――続いて本作の主人公である秋月蓮次と弓家叶方のコンビについてお聞きします。二人はそれぞれ役割をきちんと持っている良いコンビだと思うのですが、描写にあたって気を付けている点や詰め込んでいる魅力などがあれば教えてください。

コンビを描く物語が好きなので、今回も色んな描きたいものを詰め込んでいます。まずは二人とも完璧ではなく、長所と短所がはっきりしていること。これは絶対ですよね。せっかく二人組を描くなら、お互い支え合い、ケンカもしたりするようなドラマを描きたいと思いました。あと絶対なのは、ピンチに陥っても自力で助かってはいけない、ということですね(笑) 絶対と言いつつ絶対ではないのですが、やっぱりいずれかが危機的状況に陥ったら、それを助けるのは自分ではなくパートナーであって欲しいです。それがコンビというものでしょう。

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※秋月蓮次/弓家叶方

――ちなみに岩井先生のお気に入りのキャラクターはいますか。

個人的に敵役や脇役好きということもあって、主人公以外でも色々な設定を考えているのですが……それだけに主人公二人を妨害する側の、救務庁や木村アルテミスという殺人鬼には期待して欲しいですね。前者は真っ正面から主人公たちの行く手を阻んで欲しいし、後者はジョーカー的な役割で常に読者の想像を裏切って欲しい。そういうわけで敵役にも力を入れてるので、注目して欲しいところですね。

――作中に登場する人類の敵、EOMは様々な能力を持っています。これらの能力はどのようにして考えているのでしょうか。

EOMという名前が人類の敵、ということもあって、人類をどう消し去るかというイメージがまずあります。ボールみたいに単純に殺すだけでも撲殺や斬殺など色々あるし、ラスボス的な立場にあるハーメルンのように吸い込んでしまったりと。その後にどんな姿形をしたものがそれをしたら怖いだろう、という考えがあります。そんな風に人類の消し去り方と、それをする存在の造形という二つの組み合わせで考え込んでます。

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※人類の敵EOM「ハーメルン」

――2巻までは蓮次と叶方がひとつの結果を示すまでの物語、いわば本当のはじまりはここからだという印象でした。そして3巻では救務庁と、蓮次を取り巻く人間関係の動きが肝のひとつだと思っています。3巻のストーリー展開について教えてください。

変わり果てた東京の内部で何が起きるか、またクリティカル・エリアという災厄を抱えてしまった世界がどうなるか。世界的な動きはもちろんのこと、その世界の中で生きる主人公たちの生き様を描いております。読者の皆様にはぜひとも主人公たちの苦しくも激しい戦いを楽しんでいただきたいですし、その世界にいるような気持ちで読んでいただければ嬉しいです。

――それではいよいよ発売となる『東京侵域:クローズドエデン 03.人類の敵VS人類の敵』の内容や見どころについて教えてください。

3巻は前巻で主人公二人がかろうじて得た成果が、どのように世界に影響したかを描いております。二年前に消えた人々を大勢取り戻したわけですが……その影響は、必ず良いことばかりとは限りません。特にそれを成し遂げた主人公二人は、色々な勢力に目をつけられることになるわけで、それだけピンチも増えます。つまり3巻も二人の主人公は危ない目に遭いっぱなしということです(笑) 彼らがどうやって何度も危機を乗り越えるか、お楽しみにしてください。

――作家としてこれからの目標や、やってみたいことなどもあればぜひ。

ライトノベル作家として色々なものを書きたいという意欲、目標は変わらずあります。マンガやゲームという相変わらず好きなものを、ますます中高生向けのエンターテインメントで表現していきたいし、一方で大人っぽい雰囲気のものも手がけてみたい。マンガ原作やノベライズもまたやってみたいし、とむしろやりたいことを絞ることが第一ですね(笑) やりたいことは多くても、結局は中二病という不治の病は変わらないでしょうけど。

――それでは最後に3巻の発売を楽しみにしていた読者へ、そしてまだ本作を読んだことがない方へ向けて一言ずつお願いします。

3巻の発売まで、少しお待たせしてしまいました。そのぶん内容は充実しているかと思います。2巻までの流れのまま、ますます激しい内容になっているので、お楽しみいただければ幸いでございます。また本作を読んだことがない読者の皆様も、バトルと青春の両方が入り組んだアクションを楽しんでいただけると思いますので、ぜひとも手にとっていただければ嬉しいです。

――本日はありがとうございました。

ありがとうございました!

<了>

成果をもぎ取った蓮次と叶方に待ち受ける怒涛の展開を描いた第3巻が発売となる、岩井恭平先生にお答えいただきました。「ゴー」と「ショット」の掛け声が生み出す圧倒的な緊張感はぜひ読んで体験してください。『東京侵域:クローズドエデン』は必読です!

©岩井恭平/KADOKAWA 角川書店刊 イラスト:しらび

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[関連サイト]

『東京侵域:クローズドエデン』特設ページ

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