独占インタビュー「ラノベの素」 モンスターレーベル10周年記念インタビュー【第1弾】向日葵先生『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回はMノベルスf刊『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』より、向日葵先生です。3ヶ月連続となるモンスターレーベル10周年記念企画として実施されるインタビューの第1弾。2024年1月から3月にかけてはTVアニメの放送、そして2024年7月10日には最新17巻も発売された本作について、アニメの振り返りはもちろん、ストーリーやキャラクターに触れながら、作品の魅力に迫る様々なお話をお聞きしました。
※本インタビューは第16巻までのネタバレを含みますのでご注意ください
【第17巻あらすじ】 獣人たちの暴動を、獣王様が収めた直後に見つかった氷漬けの不審者は、ユーシェが捕らえたものだった。大切な場所を侵されたユーシェは怒り心頭! そんなユーシェをなだめるべくネマは、氷のオブジェで部屋の飾りつけを提案する。魔物っ子たちとも一緒に、楽しい雪遊びだ! 一方で聖主の正体を探っていたヴィルヘルトは、初代国王が記したらしき不思議な書物を発見。見せられたネマは気づいてしまった。書かれていたのは、この世界にはないはずの文字。「これは……漢字っ!?」 大人気異世界もふもふファンタジー、急転直下の第17弾! |
――それでは自己紹介からお願いします。
向日葵と申します。出身は福岡県で、執筆歴については『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』がデビュー作となり、現在はこの1本でやってます。好きなものは本作を読んでいただければわかると思うのですが、生き物がとにかく大好きで、時間がある時はひたすら猫の動画を見ています(笑)。苦手なものは、カプサイシン系の辛い物でしょうか。
――やはりと言いますか、作品そのままに生き物がお好きなんですね(笑)。生き物であれば分け隔てなくお好きなんですか。
昆虫類や両生類、爬虫類は触るのがちょっと……とはなるんですけど、それも理由があるんです。よく網戸にカナブンがくっついていたりすると思うんですけど、掴んで取ろうと思った時に、小さいから脚が取れちゃうんじゃないかとか、傷つけてしまうんじゃないかっていう恐怖が勝るんです。なので、見かけた時は基本触らず、種類を調べたり、観察するに留めることが多いですね。
――では、向日葵先生が特にお好きな生き物はなんですか。
一番好きなのはシャチですね。世界名作劇場に『七つの海のティコ』という作品がありまして、主人公がシャチのティコと一緒に世界中の海を冒険するというストーリーなんですけど、それを見てめちゃくちゃ羨ましく思ったんです。それからシャチが好きになり、その後に『フリー・ウィリー』という映画に出会いました。水族館にいるシャチと仲良くなった主人公が、最終的にシャチを海に逃がすお話なんですけど、人間と生き物が仲良くなるエピソードが本当に大好きで。加えて、それが大きい生き物であればあるほどロマンを感じます。いつかクジラやシャチに直接触れる機会が来るかもしれないと思って、スキューバダイビングの資格も取得済みです(笑)。
――ということは、まだその願いは叶っていないということでしょうか。確か日本にもシャチと触れ合える水族館があったと思うのですが、足を運ばれたりはされていないんですか。
まず、シャチのいる日本の水族館は鴨川シーワールドと名古屋港水族館、リニューアルした神戸須磨シーワールドの3箇所です。近々そのうちのひとつに行く予定を立てたので、この記事が公開されている頃には、シャチに触れている可能性があります!(笑)。
――なるほど、実現しているといいですね。また、生き物以外でも『名探偵コナン』がお好きだとか(笑)。
そうですね。小学生の頃に読み始めて、一度離れていたんですけど、2018年に公開された『名探偵コナン ゼロの執行人』で再びドハマりしました。そこからは担当編集さんにも、原稿が終わるまでは映画を観に行きすぎないようにしてくださいと注意されるくらいには、映画館に足を運んでいますね(笑)。映画版は物語性が強いですし、最近は監督さんが毎回変わられたりしているので、監督さんや脚本家さんによる演出や構成がめっちゃ深いなと思いながら衝撃を受け続けています。特に『名探偵コナン 紺青の拳』は、ストーリーの構成的なバランスがすごくいいなと感じましたし、私もこういうお話がいつか書けるようになりたいと思って、5、6回は観に行きました(笑)。
――ちなみにせっかくなので、好きなキャラクターについても教えてください。
いわゆる箱推しになるんですけど、警察学校組が好きです。降谷零(安室透)が警察学校にいた頃の同期で、みんな性格が違うのに、その5人がわちゃわちゃしているのが好きなんですよ。原作の今の時間軸だとちょっとアレではありますけど、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は、警察学校組が事件の解決にかかわる物語になっていて、特に好きな映画のひとつです。
――ありがとうございます。それでは『もふなで』のお話にも入っていければと思います。まず2024年1月から3月にかけてTVアニメの放送も行われました。あらためて感想をお聞かせください。
本当に個人的なことになるのですが、チームでひとつの作品を作るということそのものが、非常に楽しかったです。特に「脚本をこうしてほしい」と私の方からお伝えして、「映像ではその演出が難しいので、こういった案はいかがですか」といった、アイデアのやり取りがすごく印象に残っています。私はずっと文章で、アニメは見るものでした。なので、どういった表現が可能で、どういった表現が難しいのか、やり取りをする中でその違いを掴むのが結構大変でした。それこそ「その演出は難しい」と言われるたびに、「なるほど」と感じていましたし、小説とアニメーションの違いを学びながらやり取りさせていただいていました。もちろん、書籍にもたくさんの方が関わってくださっているんですけど、実際にやり取りするのは担当編集さんだけだったりするので、たくさんの人と関わりながらの創作は楽しかったです。放送がスタートした後はあっという間でしたけど、リアルタイムで視聴者さんのリアクションを見るのは楽しかったですね。
※2024年1月から3月にかけてTVアニメが放送された
――アフレコ現場には足を運ばれたりはされましたか。
行ける時は現場までお邪魔させていただいて、そうじゃない時はリモートで参加させていただいていました。プロの声優さんの凄さを感じる機会も多く、ネマ役の加隈亜衣さんは表現の仕方に迷ったところがあると、常に確認をされて、その都度「どうすればいいか」を細かく言ってくださっていたのは、非常に印象的でしたね。
――アニメを振り返り、印象深かったエピソードがあれば教えてください。
やっぱり11話と12話でしょうか。武の氏長という、見た目がドーベルマンのおじいちゃんコボルトがいたと思うんですけど、そのおじいちゃんとネマが会話しているシーンが印象に残っています。絵コンテをいただいた時も、ついポロっと泣いてしまいました(笑)。
――ありがとうございます。続いては小説の執筆についてお聞きしたいのですが、向日葵先生は2012年頃から「小説家になろう」で小説の投稿を開始されたかと思います。あらためて執筆のきっかけは何だったのでしょうか。
もともと趣味レベルではありましたが、完結しないことは当たり前、序盤やプロットだけを書いて満足しながら小説を書くという行為を、小中学校の頃からやっていました。「小説家になろう」で投稿を始めたのは、職場が変わって半年ほどが経ち、時間に余裕が生まれるようになったことがきっかけでした。自分の読みたいWEB小説がなかったので、自分で書いてしまおうとスタートした感じです。
――小中学生の頃から書くようになったというお話でしたが、その頃から小説も読まれていたのでしょうか。
小学校に上がる前から読んでいたと思います。初めて読んだ作品が、折原みと先生の『アナトゥール星伝』でした。母親が折原みと先生をすごく好きで、母の蔵書は全部読んだと思います。それ以前は『なかよし』や『りぼん』をはじめとした漫画を読むことが多かったんですけど、『アナトゥール星伝』をきっかけに小説の読書量が増えていきました。そして中学生の頃に、富士見ファンタジア文庫さんの作品にハマっていったと記憶しています。WEB小説については、「アルファポリス」がきっかけのひとつで、そこから「小説家になろう」に辿り着き、読むようになった感じです。
――なるほど。WEB小説ではどういった作品を好んで読まれていたんですか。
当時人気の出ていた作品はほとんど読んでいたと思います。ハイファンタジーや異世界転生・転移系も読んでいましたし、『俺の死亡フラグが留まるところを知らない』や『勇者互助組合 交流型掲示板』、『サモナーさんが行く』もめっちゃ読んでました(笑)。今は異世界恋愛ジャンルを読む機会が増えていますが、毎日ランキングはチェックしていますし、1日数時間は読んでいます。私自身が、読んで刺激をもらわないとアウトプットできないところがあるので、やる気を出すためにみなさんの作品を読ませていただいている感じです。
――そこから第4回ネット小説大賞を本作で受賞し、作家デビューすることになりました。コンテスト応募のきっかけはなんだったのでしょうか。
第3回のネット小説大賞が盛り上がっていたことは知っていて、それなら自分の実力がどのくらいあるのか、試しに応募してみようと考えました。とはいえ、書籍化を目指して書き始めた作品でもありませんでしたし、最終選考まで残るとも思っていなかったので、双葉社さんにお声がけいただいたのは驚きでした。そのおかげもあり、現在まで執筆を続けることができている感じですね。
――自分の読みたいものを書くというスタンスから、結果として商業作家となったわけですね。
それこそ最初の数年は、いつ打ち切りになってしまうのかずっとドキドキしていました。次も出していいよって言ってもらえる限り、しっかりと書いていこうとは思っていますが、こんなに長く続けられるとも思ってはいなかったので別の驚きもある感じです(笑)。後は横書きと縦書きの読みやすさの違いや、感覚に慣れるのも大変だった思い出があります。それでも見本誌を手に取った時はすごく嬉しかったですし、発売日には本屋にも足を運びました。店頭に自分の本が並んでいる様子を見て、何度も夢じゃないよねって確認してましたね(笑)。
――ありがとうございます。それでは『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』の物語について、第16巻までを振り返りながら教えてください。
本作はお仕事で苦労し、過労死してしまった主人公が、生まれ変わった異世界で大好きな生き物との触れ合いを満喫するために、いろんなことを頑張るお話です。動物ともふもふする時間をなんとかして確保したい、確保しなくちゃいけない。そのためにこの問題を解決しなくては!というお話がいろいろと続くので、様々な問題を解決しながら、そして触れ合える動物たちを増やしながら楽しみつつ、一方で問題が大きくなっていくっていう感じでしょうか(笑)。
※多くの生き物たちと触れ合いながら、様々な事件に巻き込まれていく
――本作の着想についても教えていただけますでしょうか。
当時「小説家になろう」を読んでいて思ったんです。異世界転生、異世界転移ものの作品では、主人公が魔獣や神獣といった、力のある生き物をお供にしたりするお話はあったんですけど、だいたい一匹か二匹って感じだったんです。そういった作品を読みながら、「もっといっぱいいてもよくない?」と思うようになり、それならいっぱい登場する物語を自分で書こうと考えました。たくさん登場させるからには、ファンタジーの王道であるドラゴンやスライムはもちろん、あまり他では見ないような生き物も書いていきたいと思い、その結果大所帯になりました。レア感のある生き物でいうと、ムシュフシュを仲間側として描いている作品はそんなにないんじゃないですかね(笑)。とにかく自分の好きな生き物や動物を出そうと思って書いていましたね。
※たくさんの生き物たちと絆を結んでいくことになる
――そんな多くの動物たちに囲まれる主人公のネフェルティマ(以降、ネマ)はどんなキャラクターですか。
ネフェルティマは前世の意識を持ったまま異世界に転生し、忙しかったOL生活の反動で、自分の好きなことを満喫したいという行動原理で動いている子です。よく読者の方から、中身がアラサーとは思えないという感想をいただいたりするんですけど、実はちょっとネタバレになるような理由もあったりします。ただ、大人になっても子供の頃にやっていた遊びに、楽しいっていう感覚を持つことはあると思うんですよ。なので、ときたま楽しいという感情に引っ張られ過ぎ、結果周囲が見えなくなり、暴走しがち、という一面もあったりします。そういったところをネマの周りにいるキャラクターがフォローをしてくれるわけですね。でもネマが実際に存在したとしたら、ちょっとガキ大将っぽいかもしれません(笑)。
※お転婆という言葉が似合うネフェルティマ
――読者が抱くネマへの印象も、本作が一人称で書かれているからこそ、より感じやすいのかもしれません。一人称で書こうと思った理由はあったりしますか。
実はそこまで大きな理由はなく、一番は自分が書きやすいからに尽きます。たまに三人称を使って閑話を書くこともありますが、自分としてはわかりにくくなりがちなイメージがあるんです。なので、わかりやすさや描写のしやすさを考えた時に、自分には一人称が合っているかなと思いました。一方で、ネマの考え方と自分の考え方がリンクしていない部分もあったりします。貴族のお嬢様になりきれないところは、自分の経験不足が反映されているかもしれません(笑)。
――ネマの考え方と向日葵先生の考え方でリンクしていない部分というのは、他にどんなところがあるのでしょうか。
たとえば、ネマの生き物に対する考え方ですね。実は、自分自身とは相容れない考え方を盛り込んだりもしています。「そういう意見も聞くことがある」という考え方を盛り込むことで、生き物に対する考え方は十人十色であることを常に意識しています。なので、ネマの考え方を受け付けない方もいると思いますし、それはそれで間違っていないとも思っています。実際に鯨や熊など、たびたび話題に挙がりますが、一方から見たら悪く見えるけど、もう一方から見たら良いこともあったりするわけです。そういった見方を変えることで、物事には良し悪しがあるということを、なんとなくでもいいので、この作品を通じて感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
――ネマもいろいろ考えていると思いますが、楽しく欲望に忠実なところも魅力のひとつですよね。
ネマが「あれをやりたい」、「これやりたい」となった際のエピソードは、できる限り楽しいエピソードとなるように心がけています。読んでいてほのぼのしたり、ちょっと笑えたり、何かしら読者さんの感情を揺さぶることができるよう意識していますね。また、作中ではネマが懐かしい遊びをいろいろとやっていると思います。これらも読者の方が「昔そういう遊びをやっていたな」っていう、楽しかった感情や記憶、思い出を呼び起こしてもらえたら、と考えながら書いていたりもします。私自身、いろんな物語を読む中で、楽しいであるとか悲しいであるとか、感情を揺さぶられることが多いんです。なので、自身もそういう物語を書きたいと思いながら執筆しています。
※作中では懐かしさを感じる様々な「遊び」も描かれている
――ありがとうございます。そんなネマの家族についても触れたいのですが、オスフェ家の家族の在り方も非常に印象的です。家族仲の良さ、愛情の深さ、すごくいい家族ですよね。
そうですね。ネマの家族は私の理想的な家族像でもあるんです。私も姉とはかなり仲が良い方なのですが、それ以上に仲の良い兄妹や姉妹はどうなるんだろうって考えちゃいます。めちゃめちゃ仲の良い兄弟姉妹の話は、友達から聞いたりもするんですけど、フィクションでしかできない、度を超えた仲の良さを本作では描いています。お兄ちゃんのラルフはネマを諫めることもあるし、しっかりとした長男って感じですけど、お姉ちゃんのカーナが、書いているうちに想像を超えたシスコンになってしまったりもしました(笑)。また、オスフェ家では、お父さんが厳しくてお母さんが優しいという、日本的な家族像とは逆なんです。お父さんのデールラントが優しくて、お母さんのセルリアが厳しい、そういうギャップも楽しいかなと思って書いています。まあ……デールラントについては、あそこまで残念にする予定ではなかったんですけどね(笑)。オスフェ家には家族としての理想が詰まっています。こんな家族の中に、子供としていられたら、楽しいだろうなって思いますね。
※家族の愛と絆の深さも見どころのひとつになっている
――それでは続いて、オスフェ家以外の登場キャラクターについても触れていただけたらなと思います。人気のあるキャラクターからお願いできればと思うのですがいかがでしょうか。
まずはヴィルですね。ヴィルは読者人気が本当に高くて、ラルフ推しの作者としても嫉妬の対象です(笑)。ヴィルについてはネマを諫めたり止めたりする立ち位置ではあるものの、ワンセットであるラース君がネマをめちゃくちゃ甘やかすので、ここはプラマイゼロみたいな感じになってます。
※ラースの契約者でありガシェ王国の王太子
続いてパウルですが、いつの間にかスーパー万能執事になりました(笑)。作中で唯一と言ってもいいくらい、ネマの暴走を止められる人でもあります。本作についてはネマを全肯定しがちなキャラクターが多く、皆がネマのお願いを叶えてあげようとする傾向が強いんです。ただ、パウルはネマに対して、飴と鞭の鞭をしっかりと使ってくれる貴重なキャラクターになっています。
※ネマにとってもネマの周りにとってもお目付け役的な存在のパウル
ダオとマーリエは、ネマにとってライナス帝国で初めての友達です。
※ライナス帝国では行動を共にすることが多い二人
――振り返ると、ネマには意外と人間の友達が少ないという……。
そうなんですよ。ガシェ王国にいた時も、家か王宮かでしか基本的には動いていないので、同年代の子たちと知り合う機会がほとんどありません。ゴブリンに誘拐された時に、ピィノとニィノという双子に出会い、友達になりました。作中では詳しく書いていませんが、文通をして交友を深めています。パーティーに出席したりもするんですけど、そこまで同年代とのかかわりは多くないんですよね。ネマがもう少し大きくなったら、行動範囲も広くなり、増えていくんじゃないかと思います。増えるかな?(笑)。
――続いて、ネマの友達も多い、生き物サイドで人気のあるキャラクターについて教えていただけますでしょうか。
やっぱり人気が高いのはラース君とディーですね。ラース君は序盤からずっと登場しているのもありますし、みんなが憧れる大きいニャンコですから。意外と年齢は300歳くらいなので、中身はアレですけど(笑)。
※常にネマを甘やかす存在でもある天虎のラース
ディーについては、第4巻で女神様のところへ旅立ち、一度お休みしました。今でも思い出せるくらい、その当時の反響は大きかったです。私は先の展開を考えながら書いている立場ではあるので、「ちゃんと戻ってくるよ」と思いながら、その反響を眺めていました(笑)。その代わり、どういう形でディーを戻すかは、非常に悩みました。
※第4巻ではネマを守るために奮闘したディー
森鬼は男性キャラのポジションなので、どちらかというと人間寄りの人気になるんですかね?(笑)。
※愛し子であるネマの守護者としても活躍する森鬼
海は意外と読者からリアクションをもらわないキャラクターかもしれません。私自身、掴みどころのない不思議ちゃん、というイメージで書いているので、読者もどんな子なのか、いまいち掴めていないのかもしれないですね。
※ネマの欲望も大好物である海
スピカは当初すごい元気っ子でしたけど、パウルをはじめとした厳しい修行があり、今ではしっかりネマの専属侍女として頑張っています。ただ、やはり監視の目がないところでは、元気っ子として、そしてコボルトの群れで遊んでいた頃の感覚が戻ってきてしまい、はしゃいでしまうことがあります。ネマの侍女としてしっかりとしたスピカと、ちょっと問題を起こしちゃうスピカと、そのギャップは楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。
※ネマと一緒に成長するスピカ
――女神の下へ旅立ったディーとの再会のエピソードでは、ネマとの繋がり以上に、ラルフとの繋がりを強く感じたことも印象的でした。
ディーはラルフの情操教育の一環としてもらわれた子なんです。なので、ラルフと一緒に成長をしてきました。ディーにとっては、カーナもネマも、守らなきゃいけない妹分なので、戻ってきた時も、妹分はラルフと一緒に守るという気持ちがあったんです。ディーとネマ、そしてカーナももちろん強く繋がっていますが、精神的な繋がりで言えば、ラルフとの繋がりが一緒に育ってきている分とても強かったわけです。
※ディーとの再会ではラルフとの絆の深さがしっかりと描かれた
――続いてはイラストについても触れさせてください。本作のイラストは雀葵蘭先生が担当されています。カラー口絵の枚数が多いのも大きな魅力ですよね。お気に入りのイラストなどについても教えてください。
雀葵蘭先生はとにかく色遣いが綺麗なので、毎回イラストがあがってくるたびに喜んでいます。順番を選ぶのは難しいんですが、特に気に入っている一枚として、第12巻のカバーイラストですね。ラルフとカーナが初めてカバーに描かれた一枚でもあって、衣装もガシェ王国のものではなく、ライナス帝国寄りの華やかな衣装になっています。お兄ちゃんとの久しぶりの再会で、ネマの弾けた笑顔もすごくお気に入りです。また、雀葵蘭先生は小さいキャラクターを可愛らしく描かれるんです。表紙のカバーイラストでも、帯に隠れる部分に白やアリさんがいたりと、ちょっとした遊び心もあって、毎回楽しみにしています。
※向日葵先生がお気に入りだという第12巻のカバーイラスト
キャラクターデザインを最初に拝見した時は、ネマってこんな顔だったんだと、ぼんやりとしていたイメージが固まるきっかけにもなりました。常に私がイメージしているものよりも、期待を超えた解像度のイラストが送られてくるので、衝撃を受け続けていると言いますか、毎回新しいキャラデザが上がってくるのを楽しみにしています。カラーイラストでは、第9巻のヴィルとカーナがちゃんばらごっこをしている1枚が好きですね。ちゃんばらごっこなのに「ぷおん」っていう効果音も入れて描いてくださっています(笑)。
※懐かしい「遊び」にも繋がるお気に入りの一枚
――イラスト化されたことで執筆に影響を与えたキャラクターはいますか。
コボルトの星伍と陸星は、より可愛く表現してあげようってなりました。雀葵蘭先生の描く星伍と陸星はめっちゃ可愛いので、さらに可愛くしなくちゃと思っちゃいます。第6巻の口絵で描かれている、ネマと星伍と陸星のスリーショットは、マジで可愛いので一押しです!(笑)。
※星伍と陸星のもふもふ具合がしっかりと感じ取れる一枚
――そして本作のコミカライズも連載中となっており、高上優里子先生が担当されています。あらためて漫画版ならではの魅力について教えてください。
コミカライズは高上先生の構成力が本当に光っていると思います。小説はネマの一人称でストーリーが進むわけですけど、漫画は俯瞰視点で描かれることになります。小説ではネマの知らない出来事は、他のキャラクターの視点で補っていますが、それらを織り交ぜて、綺麗にストーリーを整えてくださいます。私自身、毎回「こういうまとめ方があるのか」と勉強をさせていただいていますね。そして高上先生が描くネマの百面相(笑)。ちょっとしたことでもネマに表情をつけてくださるんです。アニメでも目が点になるシーンもありましたが、高上先生もそういったシーンを可愛く描いてくださるので、いつも楽しみにしています。
※コミカライズは「がうがうモンスター」にて好評連載中
――あらためて著者の視点より、本作の見どころや注目ポイントについて教えてください。
本作のメインストーリーとしては、ネマが愛し子として転生したことにより、愛し子の存在を知る謎の集団に狙われ続けています。周りの大人たちの協力を得ながら、謎の集団と攻防を繰り広げているわけですが、そこは子供たちが立ち入れない部分でもあります。大人たちがごそごそとやっている時に、ネマは友達と遊んだり、動物をもふもふしたりしている。その温度差が、見どころのひとつでしょうか(笑)。でも一番は、ネマや子供たちが遊んでいるエピソード、動物をもふもふしているエピソードを、癒し動画を見るような感覚で楽しんでもらえたら嬉しいです。メインストーリーの進み具合は遅いですが、ようやく敵の存在も見えてきたところなので、その敵が誰なのかという謎を、今後明らかにしていきたいと思います。
※愛し子としてのネマを取り巻く物語はもちろん、ほんわかできるエピソードも盛りだくさん
――今後の目標や野望について教えてください。
今後の目標は、『もふなで』以外のシリーズを出したいと思っています……が、正直執筆のスピードが遅いので、『もふなで』と息抜きの二次創作で手一杯な感じはあります。ただ、寝かせている物語のアイデアもいくつかありますし、別のお話への思いはずっと持っているので、今年こそは形にできたらいいなって考えています。
――それでは最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。
『もふなで』もようやく終盤に差し掛かってきました。第17巻では物語の軸になる情報がたくさん出てきます。これまでにもちらほらと出てきていた愛し子の大きな答えがいくつか描かれていますので、その答え合わせを楽しみながら、ネマのやからしも楽しんでいただけたらなと思います。17巻は終わり方がアレなので、読者のみなさまはやきもきされるかもしれません。何卒ご容赦ください(笑)。また、アニメ化の際には、WEB投稿初期から本作を読んでいたという方からもたくさんお声がけをいただき、8年以上も追いかけ続けてくださっていた読者さんがこんなにもいたんだと驚かされました。みなさまの支えがあったから書き続けられています。これからも最後まで、今の物語が終わるまでお付き合いをお願いします。そして本作のメインストーリーが終わった後も、「第二部的な感じで物語を続けていけたらいいね」と、担当編集さんとはお話していたりもしますので、引き続き『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』をよろしくお願いします!
※第17巻ではもふもふに加えてメインストーリーにも大きな進展が!?
――本日はありがとうございました。
<了>
モンスターレーベル10周年記念企画第1弾として、異世界の様々な生き物をもふもふしたいネマの物語を綴る向日葵先生にお話をうかがいました。愛し子の謎や秘密もいよいよ明らかとなりつつあるメインストーリーはもちろん、ほんわかした気持ちで読めるネマと動物たち、そして友達とのほっこりしたやり取りも見逃せません。まだ本作を読んだことがない方はもちろん、アニメを見たという方もぜひ原作小説で物語の続きを追いかけてみてください。『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』は必読です!
<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>
©高上優里子・向日葵
©向日葵・高上優里子/双葉社・もふなで製作委員会
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