独占インタビュー「ラノベの素」 蒼井美紗先生『図書館の天才少女 ~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2025年11月10日にカドカワBOOKSより『図書館の天才少女 ~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~』第4巻が発売された蒼井美紗先生です。小説投稿サイト「カクヨム」にて、カドカワBOOKS主催で行われた「賢いヒロイン」中編コンテストの「優秀賞」受賞作として書籍化され、大きな注目を集めている本作。本で得た知識と「完全記憶能力」を駆使して活躍する主人公・マルティナの魅力はもちろん、キャラクター同士の関係性についてなど様々なお話をお聞きしました。

 

 

図書館の天才少女4

 

 

【あらすじ】

古代遺跡探索で発見した巨石が浄化石だったことを証明し瘴気溜まりの問題解決に、また一歩近づいたマルティナ。聖女送還と瘴気溜まりの研究を進める中、さらなる浄化石を探すために竜がいたとされる霊峰探索に知識協力としてサディール王国へ派遣されることになる。仕事とはいえ中古本屋や屋台飯を楽しみつつ、新たな本との出会いにワクワクが止まらないマルティナだったが、ある夜サディール王国の王子から暗号解読のお願いが舞い込み……?

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

蒼井美紗と申します。小説は2021年に書き始めたので、作家歴はもうすぐ5年です。好きなものは物語で、ライトノベルはもちろん、一般小説や漫画、アニメ、ドラマなどいろいろな作品を楽しんでいます。最近の趣味は犬を愛でることでしょうか。マルプーというミックス犬を飼っているんですが、本当に可愛いんですよ。つい甘やかしたくなって、ペットショップで犬のおやつを見かけると買ってしまいます。気づけばおやつのストックがどんどん増えてしまって(笑)。でも、その子がいるおかげで毎日ほんのり癒されています。

 

 

――物語がお好きということですが、本はいつ頃から読むようになったのですか。

 

明確なきっかけは覚えていないのですが、小学生の頃には読書をするのが当たり前になっていました。その中でも印象に残っているのは、小学5年生の夏休みに祖母が買ってくれた『ハリー・ポッター』です。夏休み中は毎日夢中になって読んでいたのですが、読み終わる頃には長編ファンタジーの魅力にすっかり取りつかれてしまって。そこから「もっとファンタジー作品を読みたい」と思うようになり、次に手に取ったのが『ソードアート・オンライン』でした。それが、ライトノベルを読み始めるきっかけにもなりました。

 

 

――小学生の頃にはすでに本は身近な存在だったんですね。最近はどんな作品を読まれていますか。

 

ジャンル問わずいろんな作品を読んでいますが、最近は特にミステリーやSFにハマっています。直近だとアンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が本当に面白かったですね。口コミで話題になっていたので、いつか読もうと思っていたのですが、読んでみたら期待以上でした。漫画では、週刊少年ジャンプで連載されている『魔男のイチ』がお気に入りです。魔法の設定がとてもユニークで、キャラクターも凄く個性豊かなんですよ。読めばきっとお気に入りのキャラクターが見つかるはずなので、ぜひおすすめしたいです(笑)。

 

 

――ありがとうございます。読者として多くの作品に触れてこられた中で、2021年のタイミングで「書く側に回ろう」と思ったのは、どんなきっかけだったんですか。

 

もともとWeb小説サイトは読者として利用していたんです。でも、いろいろな作品を読んでいくうちに、累計ランキングや月間ランキングの上位作はほとんど読破してしまって……。そこで「それなら自分が読みたいと思う作品を、自分で書いてみよう」と思い立ち、執筆活動を始めました。

 

 

――なるほど。Web小説サイトはどういう経緯で知ったんですか。

 

『本好きの下剋上』がきっかけです。アニメを見て続きが気になり、調べた際に初めて「小説家になろう」の存在を知りました。最初は無料で小説が読めるという事実にびっくりしました。「これ、後で何か請求されたりしないよね?」なんて思ったぐらいで(笑)。本を読む人からしたら夢のような場所だと思います。それからはWebでもいろいろな作品を読み漁るようになりました。

 

 

――話は戻りますが、蒼井先生はこれまでに冒険ファンタジーや溺愛系ラブロマンス、スローライフなど多彩なジャンルの作品を執筆されていますよね。あえて一つのジャンルに絞らず、幅広く執筆されている理由をお聞かせください。

 

作家として名前を売るには、一つのジャンルを極めて「○○と言えば蒼井美紗」という印象を読者の方に持ってもらうのがいいと思うんですが……。いろいろな作品を読んでいると、つい「あれも書きたい」「これも書きたい」と違うジャンルにも手を出してしまうんです(笑)。もう今は開き直ってなんでも書ける作家になろうと考えています。

 

 

――ありがとうございます。それでは『図書館の天才少女 ~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~』が、どのような物語なのか教えていただけますでしょうか。

 

本作は本が大好きな「完全記憶能力」を持つ主人公・マルティナが「もっとたくさんの本を読みたい」という動機で官吏になり、平民ながらに大活躍する物語です。魔物を生み出しながら拡大を続ける「瘴気溜まり」という問題に、知識と知恵を駆使して立ち向かうマルティナたちの姿を描いています。基本的には明るい雰囲気で、軽く読めるように書いているのですが「瘴気溜まり」や「魔法陣」などの設定はしっかりと作り込んでいるので、その点もぜひ注目していただけたらと思います。

 

図書館の天才少女

※本を読みたい、その一心で官吏となったマルティナの活躍に注目

 

 

――本作はシリーズの刊行から複数回にわたり重版も行われていますし、SNSなどで感想を見る機会も多いかと思います。蒼井先生は本作のどこが読者の方に刺さっていると感じていますか。

 

一番大きいのは、やはりマルティナというキャラクターの魅力だと思います。本作を書く上で「マルティナをいかに可愛く描くか」にはかなりこだわっています。実際に感想を見ていても「マルティナが好き」と言ってくださる方が多くて嬉しい限りです。物語の面では、聖女召喚のエピソードが印象に残ったという感想をよく目にします。マルティナたちは「瘴気溜まり」への対抗策として、日本から聖女を召喚するのですが、本作は「召喚する側」の視点で物語を描いているんです。異世界ものだと「召喚された側」が主人公になることが多いので、その違いを新鮮に感じてもらえているのかなと思います。

 

図書館の天才少女

※自分たちの都合で召喚したことに責任を感じながら、マルティナはハルカに寄り添おうと試みる

 

 

――マルティナのキャラクター性が多くの読者の方に愛されているんですね。そんな彼女は、どのようにして生まれたのでしょうか。

 

本作は小説投稿サイト「カクヨム」でカドカワBOOKSより開催されていた、「賢いヒロイン」中編コンテストに応募するために書いた作品なんです。応募要項のページに「頭脳・知識で問題をスッキリ解決する、賢い女性キャラを待っています!」とあって、それなら本で得た知識で活躍するヒロインを書こうと考えました。当初は本を読みながらみんなの役に立っていくイメージだったんですけど、それだと主人公の「凄さ」が少し足りない気がして。そこで思いついたのが、読んだり見たりした内容をすべて覚えられる「完全記憶能力」でした。

 

 

――マルティナの知識やひらめきが、問題の解決や新たな発見に繋がっていくんですよね。彼女の行動を通して、世界の謎が少しずつ明らかになっていく展開も印象的でした。

 

ありがとうございます。コンテストに応募する段階では、「瘴気溜まりがあって、それをマルティナが解決する」というざっくりとした設定しか決まっていなかったんです。そこから書籍化作業に入る段階で、瘴気溜まりの仕組みや世界に隠された謎をどう描くかを改めて詰めていきました。結果的には、マルティナと同じ目線で、読者も一緒に世界の謎を探っていけるような構成になりました。

 

図書館の天才少女

※マルティナは本の知識と持ち前の記憶力を駆使して、様々な謎に挑んでいく

 

 

――ありがとうございます。もう少し、マルティナについてお聞かせください。本好きである点にはライトノベル読者として親しみやすさを感じたのですが、報告書や資料まで嬉々として読む姿には「活字中毒者」としてのレベルの違いを感じました(笑)。彼女がここまで活字好きなのはなぜなのでしょうか。

 

マルティナにとっては、報告書も資料も読書の一部なんだと思います(笑)。というのも、彼女のいる世界は、現代のように本が溢れているわけではありません。図書館もありますし、本を買うこともできますが、それだけでは彼女の読書欲を満たしきれないんです。だからこそ、報告書でも資料でも、文字が並んでいれば読まずにはいられない、そんな子なんです。

 

 

――「完全記憶能力」を持っているわけですし、新しい刺激を本から得たいという欲求も彼女が読書好きである理由かもしれませんね。

 

それもあると思います。マルティナは一度読んだ内容をすべて覚えてしまうので、私たちのように「再読の楽しみ」がないんです。それに頭の回転も速いので、一回目で伏線や仕掛けに気づいてしまうこともあるかもしれません。そう考えると、少し可哀想な気もします。

 

 

――本好きなのに再読の楽しみや伏線回収の気持ちよさを味わえないのは、ちょっと不憫ですよね。それに、「完全記憶能力」は一見するととても便利な力ですが、悪い記憶まで残ってしまうという難しさもあるのかなと思います。

 

そうですね。もちろん普通の人より忘れられないことへの苦悩はあります。ただ、それで病んでしまうかと言われると、そこまでではありません。ネタバレになるのであまり詳しくは言えませんが、そこにはマルティナが持つ「完全記憶能力」の性質が深く関わっていたりします。このあたりの設定は今後の物語で明らかになっていきますので、楽しみにしていただければと思います。

 

 

――ありがとうございます。続いて、マルティナと周囲の関係性についてもお聞きしたいのですが、彼女は本当にみんなから慕われていますよね。国全体で貴族と平民の垣根をなくそうという流れになっているとはいえ、ここまで身分問わず色々な人達から愛されるのはなぜなのでしょうか。

 

マルティナの真っすぐさや素直さが、周囲のキャラクターたちから愛される理由なのかなと思っています。「完全記憶能力」という特別な力を持っていると、どうしても周りから持ち上げられる場面が多くなると思います。でも、彼女はそこで過剰に謙遜したり、驕ったりせず、素直な心で「自分の能力がみんなの役に立って良かったです」と言えるんですよね。そういう真っすぐな気持ちが、周りの人を惹きつけているんだと思います。それに、「完全記憶能力」を持っていても完璧なわけではなくて、できないこともたくさんあります。体力が全然なくて森を歩くだけでへとへとになったり、魔法も戦闘もまったくダメだったり。頭では分かっているのに体が追いつかない、そんな不器用なところもマルティナの魅力の一つですね。

 

図書館挿絵

※天才だけど、抜けているところがあるのもマルティナの魅力

 

 

――乗馬の練習をするシーンはまさにそうでしたね。それに、マルティナはいろんな人から頼られる存在である一方、周囲の人たちからは妹や子供のように可愛がられている印象もあります。その関係性がとても微笑ましく感じました。

 

ありがとうございます。まさにそこが、マルティナの魅力なんです。本を読み耽っている最中にご飯の時間を知らせてもらったり、同僚にメイクをしてもらったり……。知識の面ではみんなに頼られているけど、同時にみんなの優しさに甘えてもいるんですよね。そういう持ちつ持たれつの関係性が、キャラクターたちの間に温かい空気を生んでいるのだと思います。

 

 

――ありがとうございます。マルティナのお話についていろいろお聞きしてきましたけれども、マルティナ以外のキャラクターについても教えていただけますでしょうか。

 

まずはマルティナの上司のロランですね。ロランは最初からマルティナをそばで見守ってくれていて、時には厳しいことを言いながらも導いてくれるキャラクターです。マルティナにとって一番信頼できる存在で、ロランがそばにいてくれることで安心して仕事ができていると思います。

 

ロラン

※マルティナの頼れる上司・ロラン

 

ナディアはマルティナの親友です。伯爵令嬢でマルティナとは身分差があるんですけど、それをまったく感じさせない関係になっています。マルティナが「かわいい」タイプだとしたら、ナディアは「きれい」なタイプ。すごく美人で仕事もできるので、マルティナはひそかに憧れています。マルティナはナディアのことが好きなんですけど、ナディアの方がマルティナのことを大好きだったりします。

 

ナディア

※マルティナのことが大好きな同僚・ナディア

 

シルヴァンは、読んでいただいたら分かると思うんですけど、典型的なツンデレキャラです。最初は貴族至上主義ということもあり、平民のマルティナをなかなか受け入れなかったのですが、彼女のことを認めてからは一転して過保護になるんです。でもそれを悟られたくなくて独り相撲している、そういうキャラクターです。彼は書いていて凄く楽しいですね。シルヴァンが出てくると会話シーンがどんどん長くなってしまうので、あとから削ることもあります(笑)。

 

シルヴァン

※世話焼きでツンデレの同僚・シルヴァン

 

あとひとり挙げるとしたら、ハルカでしょうか。聖女として召喚された日本出身の女の子で、芯が強くて優しくて、はっきり意見を言えるタイプです。そういうところが「聖女らしさ」に繋がっていると思っています。マルティナとは本好きという共通点もあって気が合うんですよね。食べることも好きなので、この世界に日本食をもたらしてくれたりもします。

 

ハルカ

※マルティナのおかげでこの世界に打ち解けた聖女・ハルカ

 

 

――キャラクターひとりひとりの魅力はもちろん、登場人物同士の掛け合いも本作の大きな見どころですよね。ご自身で書いていて、特に楽しいと感じる組み合わせはありますか。

 

やっぱりシルヴァンが出てくる場面は筆が乗りますね。ツンデレキャラを書くのが好きなので、何でもない日常会話がどんどん長くなってしまうんです。シルヴァンがマルティナに世話を焼いて、それをロランにいじられる。この一連の流れは書いていて本当に楽しいです。あとは、ロランとマルティナの関係性を描くのも凄く好きです。二人は恋愛に発展しそうでしない絶妙な距離感をずっと保っているんですけど、そのもどかしさを書くのが楽しいんですよ(笑)。

 

 

――続いてイラストについてお聞きできればと思います。本作のイラストは緋原ヨウ先生が担当されていますが、お気に入りのイラストについて教えてください。

 

第1巻の本に目を輝かせるマルティナのカラーイラストはお気に入りです。彼女の性格が表れていて、本当に可愛いなと思います。あと、第1巻の番外編で描かれる猫耳姿のシルヴァンのイラストも大好きです。第4巻のカバーイラストも素敵で、本を持って楽しそうな表情のマルティナがいいんですよね。本屋さんに並んでいたらつい手に取ってしまうような魅力があると思います。

 

図書館の天才少女

 

図書館の天才少女

※蒼井美紗先生が特に気に入っているというイラスト

 

 

――また本作は鈴よひ先生によるコミカライズの連載も行われています。漫画ならではの魅力や見どころについてもお聞かせください。

 

ころころと変わるキャラクターたちの表情は、漫画ならではの魅力ですね。あと、鈴よひ先生は背景まで凄く丁寧に描き込んでくださっているので、建物や街並みなどからも世界の息づかいを感じられるんです。そうした細部にも注目しながら読んでいただけると、『図書館の天才少女』の世界観をより楽しめるかと思います。

 

コミックス 図書館の天才少女

※コミカライズ版は「B’s-LOG COMIC」にて連載中

 

 

――続いて発売された第4巻の見どころについても教えてください。

 

第4巻では、マルティナたちがサディール王国を訪れることになります。冒頭で散りばめられた伏線が中盤以降で回収されていくので、そこを意識して読んでいただくと面白いかと思います。そして第3巻のラストで示された「世界の行く末を左右する存在」が本格的に物語に関わってきます。シリーズの中でもターニングポイントとなる巻ですので、これまで以上にスケールの広がりを感じていただけると思います。

 

図書館の天才少女

※王子からの依頼や霊峰の探索――これらが世界の謎に近づくカギとなっていく

 

 

――今後の目標や野望について教えてください。

 

目標というよりは夢になるのですが、やっぱりアニメ化ですね。私自身アニメが大好きなので、自分の作った物語やキャラクターたちが動いて、声がついて、世界が広がっていく、そんな瞬間をいつか見られたら本当に幸せだと思います。あとは、『図書館の天才少女』以外にも作品を書かせていただいているんですが、まだまだ書きたい物語がたくさんあるので、これからもいっぱい書いて、いっぱい作品を世の中に出していきたいです。

 

 

――最後に第4巻を楽しみに待っていたファンの方、そしてこれから本作を手に取ってみようと思われている方に向けてそれぞれメッセージをお願いします。

 

まずは、第4巻を楽しみに待っていてくださった皆様、本当にありがとうございます。皆様が応援してくださるからこそ、ここまで物語を紡ぎ続けることができました。第4巻では新たな舞台やキャラクターの登場など、これまで以上に世界が広がっていきますので、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。そして、これから『図書館の天才少女』を読んでみようと思ってくださっている方へ。本が好きな方なら、きっとマルティナに共感できる部分があると思います。気軽に楽しめる物語だと思うので、読んでいただけたら嬉しいです。

 

 

――ありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

まだ見ぬ本を求めて官吏となった少女が、類稀な記憶力を発揮しながら活躍していくビブリアファンタジーを綴った蒼井美紗先生にお話をうかがいました。マルティナの活躍はもちろん、ロランやナディアたちとの微笑ましい日常も魅力の本作。第4巻からは新たなキーマンも登場するなど、気になる展開が続く『図書館の天才少女 ~本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!~』は必読です。 

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>

 

©蒼井美紗/KADOKAWA カドカワBOOKS刊 イラスト:緋原ヨウ

kiji

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『図書館の天才少女』シリーズページ

カドカワBOOKS公式サイト

 

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