独占インタビュー「ラノベの素」 四十万チマ先生『さようなら運命の人。二日前でまた会いましょう。』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2026年1月15日にGA文庫より『さようなら運命の人。二日前でまた会いましょう。』が発売される四十万チマ先生です。第17回GA文庫大賞にて《銀賞》を受賞し、満を持してデビューされます。目の前で命を落とした恋人を救うため、何度も時間を巻き戻す主人公と、彼と共に二日間を繰り返すことになる少女による恋愛&サスペンスストーリーを描いた本作。ループものという題材へのアプローチの方法やキャラクターの性質など様々にお話をお聞きしました。

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【あらすじ】 死に戻りの力を持つ青年・倉田修純。彼は、恋人の須美琴華を救うため、ループを知るもう一人の少女・津ケ原夜途と二日間を繰り返す。しかし、何度やり直しても、琴華が死ぬ。逃れられない死の運命に絶望する修純に、夜途の毒が忍び寄る。「私と一緒に毎日を楽しみましょう。頭を空っぽにして遊びつくすのです」「須美さんのことなんて私が忘れさせてあげますよ」琴華は死ぬ。どうせ世界はループする。やり直してしまえば、覚えているのは二人だけ。だったら――「ループを続けましょう。そうすれば誰も覚えていませんよ」ループ×恋愛×サスペンス。甘く、刺激的で、歪な“二日間”が始まる。 |
――それでは自己紹介からお願いします。
四十万チマと申します。広島県出身で、執筆歴は8年ほどになります。一人で黙々と物語を考えることが多いのもあって、海辺の公園のような穏やかな環境が好きです。逆に遊園地やテーマパークなどの人混みや騒がしい場所は苦手ですね。
――執筆歴は約8年ということですが、どういったきっかけで小説を書き始められたのでしょうか。
大学生の時に、ふと「書いてみよう」と思ったのがきっかけでした。もともと小説は小学生の頃から読んでいましたし、中学生の頃には「物語を作りたい」「小説家になりたい」という気持ちはありました。ただ、なかなか行動に移せなくて、大学でようやく書き始めたという感じです。
――小学生の頃から小説を読まれていたということは、ずっと本は身近な存在だったんですね。これまでの読書遍歴についてもお聞かせください。
小学生の時は児童文芸や図書館にあった『西遊記』なんかを読んでいました。中学に上がった頃、友達の間でラノベの貸し借りが流行っていて、その時に初めてライトノベルに触れたんです。『生徒会の一存』、『緋弾のアリア』、『とらドラ!』といった人気作品を広く読みました。高校に入ってからはミステリを読むことが増えました。
――なるほど。様々な作品を読んでこられたと思うのですが、執筆の方ではどのような作品を書くことが多かったのでしょうか。
いろいろなジャンルを手あたり次第書いていくタイプで、ラブコメだったり、バトルだったり、その時々で書きたいと感じたものに挑戦してきました。自分が面白いと思うネタが浮かんだら、ジャンル問わず何でも形にしてみる……ずっとこのスタンスで続けています。
――ありがとうございます。あらためまして第17回GA文庫大賞《銀賞》受賞おめでとうございます。受賞の連絡をもらった際の率直な感想をお聞かせください。
知らない番号から電話がかかってきまして、「何だろう」と思いつつ番号を調べたらGA文庫編集部からだったんです。「編集部からの電話という事は……受賞連絡だ!」と気づいた瞬間、あまりの喜びに思わずガッツポーズが出ました。電話口では落ち着いて振る舞おうと考えていたのですが、いざ通話が始まったら頭が真っ白で、何も聞き取れなかったのを覚えています。受賞連絡を受ける時はペンとメモ帳が必要だなって思いました(笑)。
――ちなみにGA文庫大賞を応募先に選ばれた理由は何だったのでしょうか。
タイミングが良かったのが第一ですが、幅広いジャンルを受け入れてくれるイメージがGA文庫さんにあったのも理由としては大きかったです。今回の応募作はちょっと尖った内容でしたから、こういう作品が受賞できるとしたらGA文庫大賞なのかな、という考えもあって応募しました。
――「ちょっと尖った内容」という気になるワードも出てきましたので、ここからは作品の内容についてうかがっていければと思います。まずは受賞作『さようなら運命の人。二日前でまた会いましょう。』がどんな物語なのか教えてください。
主人公・倉田修純は、殺されることで二日前に巻き戻ることができるタイムリープ能力を持っています。本作は、倉田がその能力を使って、恋人であり憧れの先輩でもある須美琴華に降りかかる死の運命を回避しようと奮闘する物語です。ここまで聞くとありきたりなループものなんですが、そこへ倉田に対して異常な執着心を持つヒロイン・津ケ原夜途が絡んでくることで、先の読めないサスペンス的な展開となっていきます。

※恋人を救うため奮闘する倉田のもとに、異なる思惑を持った津ケ原が接近する
――着想についてもお聞かせください。
物語を考えるとき、ストーリーから入るときとキャラクターから入るときがあるのですが、本作に関しては前者で、最初にループものを書こうと決めて書き始めました。ループものといえば『STEINS;GATE』をはじめ、「ヒロインの死」という悲劇的な運命を回避するため、主人公が単身で同じ時間を繰り返すという展開が王道だと思います。ただ、その展開をそのまま踏襲してもインパクトが足りないと思い、何か一つ変わった要素を付け加えようと考えました。そこで思いついたのが、ループする主人公になぜかヒロインがついてくるというアイデアだったんです。主人公と違った思惑を持つヒロインがループに同行したら、より複雑で面白い物語になるんじゃないかと思いました。
――受賞後の改稿作業について、あとがきでは苦労した箇所も多かったと語られていました。特に大変だったことは何でしょうか。
作中描写の調整が一番キツかったです。実は本作、応募原稿の段階だと生々しい性描写がありまして、担当編集さんからは「性描写が強すぎて、みんな高評価はつけるんだけど、いざ担当するかというと手が挙がらない状況だった」とお聞きしました(笑)。結果的に「全部カットすると、作品の魅力の一つである毒々しい雰囲気が失われる」というアドバイスもいただきつつ、現在の形に落ち着きました。逆にそうした尖った部分を残しつつ、バランスを取るために、応募原稿の時よりループの途中のイベントを追加しています。メイド喫茶や学校に行くシーンなど、津ケ原の可愛らしさが垣間見えるシーンを入れることで、より彼女の異常性が際立つようになりました。
――津ケ原の「異常性」という点ですと、倉田への異常なまでの執着心と行動力には、若干の恐ろしさすら覚えました。
津ケ原のキャラクター性の原点はループのギミックにあります。ループについていけるだけの精神力を持っているとなると、やはり強烈な動機や理由が必要になると思います。そこで、まだ見ぬヒロインに思いを馳せたとき、見えてきたのが「主人公に対する執着心や独占欲」でした。担当編集さんからは、「目標に対するアプローチがズレているんだけど、本人はそれを正攻法だと思っているのが津ケ原の特徴」と言っていただいて、その普通じゃないところ、底知れなさみたいなものは、読む人を惹きつける魅力にもなるのかなと考えています。

※ズレた感性と底知れなさが、津ケ原の恐ろしくも魅力的なキャラクター性を形作っている
――津ケ原について色々と触れていただきましたので、あらためて本作の登場人物についてご紹介いただけますか。
主人公の倉田修純は、大学を中退してバイトも辞めた無職で、自己肯定感の低いちょっと残念な男です。彼は殺されることで二日前に戻る能力を持っており、その力を使って恋人の須美琴華を救うため、何度も時間を繰り返していくことになります。ヤンデレ好きだったり、めちゃくちゃ卑屈だったりと、ヒロインの陰に隠れていますが意外と普通じゃないキャラクターです。

※等身大で感情移入のしやすいキャラクターでありつつ、普通じゃない一面もある倉田修純
メインヒロインの津ケ原夜途は、深夜の寂れた公園にいるような、ミステリアスな雰囲気がある不登校の女子高生です。目的のためなら手段を選ばない危険な女の子でして、彼女の存在が本作の魅力の半分以上を占めているんじゃないかなと思っています。賢いんですがぶっ飛んだ発想をしているんですよね。彼女の異常な発想と行動力が物語をうまくかき乱してくれています。

※ぶっ飛んだ発想と行動力でストーリーに混沌をもたらす津ケ原夜途
もう一人のヒロイン、須美琴華は倉田の大学の先輩で恋人です。有名なインフルエンサーとして名が知られており、芸能界デビューも決まっているスター的な存在となっています。もともと芸能界デビューという夢にかなり固執しているキャラクターなんですが、物語はまさにその夢が叶う直前の状況から始まります。

※夢であった芸能界デビューのため上京をするはずだった須美琴華
――主人公の倉田は「自己肯定感が低くて卑屈」とのことですが、そんな彼になぜヒロインの二人は惹かれるのでしょうか。
確かに倉田は頼りないダメな男なんですが、優しさと決断力は持っているんです。殺されることでループをする能力である以上、恐怖心や痛みに負けない芯の強さが必要になります。須美に対してはどうしても助けたいという一心でタイムリープを繰り返しますし、津ケ原が暴漢に襲われているところに遭遇した際も、当時は初対面だったにもかかわらず助けに入っています。要するに情けないところはありつつ、やる時はやる男なんです。津ケ原も須美もこの健気さみたいなところに愛おしさを感じているのかもしれません。
――確かに倉田はここぞというタイミングでは勇敢さを発揮しますよね。その一方で、津ケ原と行動している際は、彼女のペースにかなり巻き込まれている印象もありました。
そうですね。倉田は須美を助けるためにタイムリープを繰り返すのですが、物語の途中からは津ケ原と共に行動するようになります。その過程で、倉田は自分で行動を決めていたはずが、いつの間にか津ケ原の思惑にハマっていってしまうんです。読者の方には、ぜひ津ケ原の手によって深い沼へと墜ちてゆく感覚を倉田と共に味わっていただければと思います。

※津ケ原に翻弄される感覚には、背徳的な心地よさが潜んでいる
――ありがとうございます。続いてイラストについてもお聞きしたいのですが、本作では書籍化に際してNardack先生がイラストを担当されました。キャラクターデザインを見た際の感想やお気に入りのイラストについて教えてください。
キャラクターデザインを拝見した時の衝撃は本当に大きかったです。特に津ケ原は、まるでNardack先生に脳みそを覗かれたのかと錯覚するぐらい、イメージ通りのビジュアルでした。意志の強そうな顔つき、黒を基調とした制服、栗色の髪の毛に紅い眼。ビジュアルを見たことで、僕の中の彼女のイメージもより鮮明になりました。イラストについては、表紙が素晴らしいのは言うまでもありませんが、それ以外だと最初に登場する津ケ原の挿絵は特に好きです。津ケ原はただ可愛いだけではなく、危うさや妖しさなど他のヒロインとは一味違う魅力を持っています。このイラストはそんな彼女の多面的な魅力が一目で分かるのもあって、気に入っています。

※四十万チマ先生が特にお気に入りだと語るイラスト
――また、書籍発売に先駆けて津ケ原夜途のスペシャルボイスも公開されていますよね。
スペシャルボイスでは声優の春咲暖さんに津ケ原役を演じていただいています。津ケ原の魅力が引き出された素晴らしい演技で、とても嬉しかったです。台本は僕が書かせてもらったんですが、小説本文とは違う切り取り方をしている話もいくつかあります。書籍購入特典として、Webでは公開されてないボイスドラマもついていますので、ぜひ小説と一緒に楽しんでいただければ幸いです。
――著者として、本作はどんな方がより楽しめるか、あるいは特にどんな方に読んでほしいですか。
本作は甘いラブコメというより、先の読めないハラハラしたサスペンス的な展開を好む人がより楽しめると思います。とはいえ、ループものは誰でも楽しめるジャンルだと思っているので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。
――今後の目標や野望などがあれば、教えていただけますでしょうか。
頭にあるアイデアをすべて小説の形にできたらいいなと思っています。ライトノベルはもちろん、一般文芸やミステリ、児童文芸などいろいろな作品のアイデアがあるので、小説として世に出していきたいです。あとは自分の作品がきっかけで読書をするようになる人が、一人でも増えてくれたら嬉しいです。
――最後に本作に興味を持ってくれた読者の方へ一言お願いいたします。
「そこが繋がるのか!」というループものならではの驚きや読後の気持ちよさは、ある程度組み込めたと思います。他のジャンルにはない刺激を、ぜひ読んで体験してみてください。
――本日はありがとうございました。
<了>
目の前で命を落とした恋人を救うため何度も二日間を繰り返す主人公・倉田修純と、彼に異常な執着心を持ちながらループに同行するヒロイン・津ケ原夜途が織り成す物語を綴った四十万チマ先生にお話をうかがいました。ミステリアスで底知れない魅力を持つ津ケ原はもちろん、先の読めない展開から目が離せない『さようなら運命の人。二日前でまた会いましょう。』は必読です。
<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>
©四十万チマ/ SB Creative Corp. イラスト: Nardack

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『さようなら運命の人。二日前でまた会いましょう。』特設サイト
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