インタビュー「ラノベの素」。榊一郎先生「アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1 」

――初めて送った原稿はどんなものですか?

富士見のファンタジア長編小説大賞です。第七回、だったかな。 実はこれを色々改稿した結果、エンターブレインで出版してもらった『戦魔』になります。

――賞をもらった時はどんな気持ちでしたか?またその後最初にした事を教えてください。

司法書士事務所で働いておりましたが、家に帰る前に電話を入れると母が「あんた、なんか小説の新人賞に応募してたの?」と言われまして。どうも原稿が一枚紛失していたらしく、受賞告知ではなく、編集部からの連絡は「最終選考に残っているのだが、1ページだけ足りない。すぐに送ってくれ」というものでした。 当時は途中経過発表なんて無かったので、驚きました。

職場を辞して駅に向かうまでの間、妙に体重が軽いというか『ああ、これが雲を踏むような気持ちなんだなあ。本当にあるんだなあ』などと的外れな事を考えていた記憶があります。

当然、帰宅して最初にしたのは、問題のページを印刷して、富士見書房に送る事でした(笑)。

――初めて自分の本を手に取った時はどんな気持ちでしたか?

「ああ、本当に出てるよ。かつがれてたんじゃないんだなあ」です。

実はいまだに欺されてるんじゃないかと想う時がありますが。本当は小説家デビューなんてしてなくて、実は、編集さんも読者の人も、みな、役者さんなんじゃないかとか。

 ――デビューしてからのことをお聞きします。デビューしてから驚いた業界の事情などありますか?

作者本人の知らない間に、絵師さんが決まっている事(笑)。

いや、今はそうではないですけど。デビュー作は決定された後で告知されました。田沼さんと組ませて貰ったのは望外の喜びでしたが。

――デビューしてから、自分の変わったところなどは?

デビュー前は漠然とした絶望感がありまして。あまり司法書士事務所の仕事が自分に合っていないという事が分かっていましたので、『法学部まで行って、俺は何をしてんだろうなあ』と。

なので、デビュー後は、むしろ『この幸運を手放したら駄目だ。とにかく必死で書くぜ!』と。

あまり根性が在る方ではないのですが(マラソンとかで最初に歩いちゃう奴)、好きな事だったせいか、相当頑張っていた記憶があります。「ああ、好きな事なら踏ん張れるな、俺」と思いました。

 ―― 一番辛かった事はどんなことですか?

この仕事、良くない編集者にあたると、その編集者のミスを全て押しつけられます。

私は二度ばかり某社と揉めていますが、どちらも編集長が自分のミスを私に押しつけてきて、知らん顔をしていました。編集者に限らず、たまに変な人と仕事で一緒になると、脚を引っ張られ、しかも大抵は、そうするのが一番無難という事で、世間的には小説家の責任にされてしまうのがかなり辛いです。

――逆に嬉しかった事は?

辛かった事の逆で、良い編集者や仕事相手とあたると、とても楽しく仕事が出来ます。楽しい上にお金が貰えるのでとんでもなく有り難い。

嬉しいというか、感動したのは、以前、あるサイン会で車いすの子がわざわざ来てくれた事。大変だったろうにと。そうまでしてサイン会に来て貰えるほど、自分の作品を愉しんで貰えたというのは、感動でした。

――作家という仕事についてお聞きします。仲の良い作家さんは?

一番親しいのは、神野オキナさんでしょう。

モデルガン好きという同好の士。創作論の話もしますし、二人で「ああ、もっと売れたい、将来の不安が無くなる位!」とか言ってます、よく(笑)。

麻生俊平さんともよく電話をします。

日高真紅さんは故・大迫純一さんと同じく、仕事仲間です(内弟子の管理等をお願いしています)。

同じ関西組という事で、高殿円さん、五代ゆうさん、友野詳さんらとは、割と仲良くさせていただいているかと思います。

メッセンジャーでは浅井ラボさんや三田誠さん、といった方ともたまにやりとりをします。

若手では空埜一樹さんが割と仲良くしてくださいます。

私が大阪に住んでいるため、普段から密に付き合いがある訳ではないのですが、パーティ等で会えば仲良くしてくださる作家さんには、あかほりさとるさん、舞阪洸さん、あざの耕平さん、鏡貴也さん、時雨沢恵一さん、有沢まみずさん、三雲岳斗さん、逢空万太さん、等々(細かく挙げていくと多分、この数倍)。

後は、元教え子の氷上 慧一さん、ひびき遊さんとも逢う事は多いですね。

――すごい交友関係ですね! では読者について教えてください。読者はどんな存在ですか?

神様です――とまではさすがに言いませんが、単純に有り難い存在です。

読者の人達が居ないと、私はただ、妄想を紙に書き殴っているだけの、何の役にも立たない駄目人間ですので。「お前の妄想をお金と時間を費やして買ってやる」という人が居なければ、作家なんて成り立ちません。

私を小説屋たらしめている人達、というか。

そういう意味では読者の方を含めて「榊一郎」なのかも。

――作家業として一番気をつけていることは?

自己満足になりすぎない事。 ひいては原稿の向こう側に居る読者の人達を意識する事、ですね。

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