【ラノベの車窓から】第11回 『魔王な使い魔と魔法少女な』

とあるライトノベル読みが読者としての視点・観点で、オススメをピックアップして紹介する「ラノベの車窓から」の第11回です。ようやく春の兆しが見え始めたと思いきや既に桜は散り始めている今日この頃。ラノベの市場はまだまだ満開街道をまっしぐらなのですよ。

さて、第11回のオススメとして取り上げるライトノベルは「魔王な使い魔と魔法少女な」です。本作は第10回SD小説新人賞で最終選考まで残り、そこから刊行された作品とのことです。オビにも書かれているようにかなりの問題作であるという点は、読み終えた私自身にも思うところがあります。読んでもらわねばある意味わからない奇抜な作品となっています。

魔王な使い魔と魔法少女な

著:みみとミミ イラスト:shin

出版社:集英社

感覚的であることと論理的であることは、いずれもライトノベルを構築する上で必要なことだと私は考えています。論理的な物語の魅力、そして感覚的な物語の魅力はどちらも勝るとも劣りません。私個人としては、論理的な主軸を持った物語が好みとしてありますが、多くの読者はおおよそ半々くらいになるのではないかと考えています。そしてこの本作。ある意味で感覚的に構築された物語の代表格と言っても過言ではない感覚派推奨の作品でしょう。

物語は捨て猫同然となっていた「魔王」を「魔法少女」になることのできる少年、朝霧瑞希が使い魔として契約してしまうことから始まります。やけに経済的な魔王である少女リノを使い魔とした瑞希は、もうひとつの顔、魔法少女として近隣で起きる事件に関わっていくのです。

魔法少女という『力』を持つがゆえに戦う瑞希。その魔法少女を逃すまいと追いかける学園の記者である母里佐奈との掛け合いをはじめ、瑞希はハルと共に、救える人たちを救うことに従事します。にも関わらず、自らの行いを「正義」という言葉では語らない矛盾。魔法という力が自らに与えられた意味を、瑞希はひたすら考え続けます。そんな裏の顔を持つ瑞希は、魔法少女を追いかける友人、斎藤鼎と、不思議系少女南熊英と共に部活の一環として魔法少女、つまり自分自身を探す作戦を色々と練ることになるのですが……。本作で登場する魔法は、魔法少女へと変身することで行使が可能となる半面、使用者に多大な負荷がかかるという、錬金術ではないのですが等価交換の位置づけで使用を可能としています。本作では現実世界を機界、魔王がやってきた世界を魔界と分別し、瑞希の過去に深く密接していたりもします。独特のテンポで描かれる本作、感覚派の方にはヒットするかもしれません。

正義とは何か、を問う物語はライトノベルに限ったテーマではなく色々なところで語られていますよね。人によって思い描く正義は異なり、思想や宗教によってもそのテーマは必ずしも同一ではない。自らの正義はつまるところ自分自身なのかもしれません。よって、世の中でかわいいは正義というのも、間違いなくひとつの正義のカタチなのですよ、ドヤァ。すいませんでした。

【記事:らお】

URL:「とある僕等の小説目録(ライトノベル)」

(C) 集英社 みみとミミ/shin

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