【このライトノベルが売れて欲しい!】第11回『虚構推理 鋼人七瀬』

――推理は真実の後に

ということで始まりました。続きが読みたい!メディアミックス展開して欲しい!単純に沢山の人に手に取ってもらいたい!という願望を織りまぜてオススメラノベを紹介する『このライトノベルが売れて欲しい!』第11回でございます。

もはやライトノベルとはなんぞや?という定義すら無視しようとしている本企画!!

今回は『虚構推理』をご紹介!!

 

著:城平京

イラスト:清原絋

 

~あらすじ~

深夜、悲運のアイドルの亡霊は鉄骨を片手に街を徘徊する。

その都市伝説の名は――鋼人七瀬。

「そんなの推理じゃなくて、欺瞞じゃない!?」

真実を求めるよりも過酷な、虚構の構築。自身もまた怪異的な存在である岩永琴子の推理と知略は本物の怪異が起こす事件を止めることができるのか。

エンターテイメント性溢れる、『本格ミステリ大賞』受賞作!!  

 

講談社ノベルスはライトノベルなのか!? という疑念が上がりつつも、ライトノベルとは広義の定義はないので大抵なんでもありなんだ! という開き直りで紹介いたしますよ!

本作『虚構推理』は第12回本格ミステリ大賞を受賞した推理小説だ!! 本格ミステリということで「難しい内容なのかな?」とお思いになるかもしれないが、まったくそんなことはない! 個性的なキャラクター、物語の怒涛の展開など――どれを取っても素晴らしいエンターテイメント小説になっている!!

本作の著者、城平京先生といえばアニメ化も決定している『絶園のテンペスト』や『スパイラル~推理の絆~』などの漫画原作として著名な作家。

イケメン主人公、格好いいけどオッチョコチョイなお姉さん、腹黒ハイテンションな美少女、ロリロリな爆弾魔など、幅広いバリエーションを描き、キャラクターメイクに定評?がある城平京先生。さらには独特な世界観で行われる、ロジカルな推理も定評がある!!

そんなエンターテイナーが描く本作は、例に漏れずエンタメ成分たっぷりでございます!! メインとなる要素は『ミニスカートのドレスで鉄骨を持って夜に現れるアイドルの亡霊』を消し去るにはどうすればいいのか!? というモノ。これだけを聞くと「もはや推理の余地とかあるの?」という疑念が湧き上がりそうだ。

しかし、本作は完璧に『推理小説』!!

 

――ただし、『真実』を推理するとは限りません。

一足一眼の美少女、カッパを見た女刑事――個性的なキャラクターに注目!!

本作の主人公である『岩永琴子』は子供の頃に神隠しにあい、連れ去られた先で『怪異』に右眼と左足を奪われ、『怪異たちの知恵の神、あるいはそのもの達のトラブルを解決する』の役割を持たされてしまう。(怪異とは妖怪、お化け、都市伝説などの異形のことだ)

彼女は日常に潜む怪異見ることができ、さらには普通に話をしたりもする。見た目は良家のお嬢様だが、性格に一癖も二癖もある個性的なキャラクターになっている。悲劇的な運命を背負いながらも、飄々とした態度を崩さない。

本作の主人公兼探偵役の岩永琴子。良家のお嬢様だがアクティヴな言動が目立つ。

その頭の回転は凄まじく、まさしく『知恵の神』にふさわしい。

さらに、メインキャラクターの『弓原紗季』は、2年前の婚前旅行先でカッパと遭遇し、そのせいで彼氏と別れることになってしまった女性警官!!

さらには紗季の元婚約者であり、現在は琴子の相棒として(琴子から一方的な恋愛対象にされて)嫌々ながらも怪異の問題に付き合う『桜川九郎』など、個性的な設定のキャラクターが登場する!!

琴子に迫られる青年、桜川 九郎。

紗季の元婚約者だが、婚前旅行の際にカッパと出会い『とある恐怖』を彼女に与えてしまい破局してしまった。その身に特殊な秘密を持っている。

虚構を推理し、現実<シンジツ>を捻じ曲げろ!!

 

これまでの説明から分かる通り、本作において『怪異とは現実に存在するもの』である!!

つまり、都市伝説、妖怪、お化けといった異形の存在が現実に影響を及ぼしてしまう世界観ということだ。怪異は『想像力の怪物』であり、人の想像力が交じり合うことによって生じてしまう現象である。

例えば、都市伝説の『口裂け女』などは全国各地に噂で広がり、明確なイメージが多くの人間の意識に刷り込まれている。本作では、多くの人間の持つイメージが実物となり、現実世界に影響をもたらしてしまうのだ!!

そして、本作では『鋼人七瀬』という都市伝説が登場し、現実へと侵食してくる!!

鋼人七瀬はミニスカートのドレスで鉄骨片手に夜の街を徘徊する顔のないアイドルの亡霊であり、実際に人間に危害を加えている都市伝説である(表紙にいるのが鋼人七瀬だ)。

身の丈以上の鉄骨を軽々と振り回し、人間に危害を加えている鋼人七瀬。

不可解な事件を引き起こす鋼人七瀬に強い事件性を感じた警察は、『現実的な調査』を行う。

しかし、警察ではこの事件を解決することができない。なぜなら鋼人七瀬とは現実ではありえない『怪異』であるからだ。

警察では絶対に解決不能な難事件を解決するために、怪異のトラブル解決の役目を持つ琴子は行動を起こすことになる。現実には認知されない『怪異という現象』――この事件を解決するために『虚構を推理する』ことが本作の肝になってくる!!

と、ここまで読んで「やっぱりどこにも推理要素無いだろ!!」「実際に化物がいるのを知っているのに、推理もクソもあるか!!」「怪異を推理とか意味がわからん!!と感じる方も多いだろう。だが、何度も繰り返すが本作は紛れも無い『推理小説』である。

ただし、現実の問題を紐解くために推理は行わない!!

なぜなら怪異とはこの世に存在しており、それは紛れも無い真実として探偵(琴子)がわかっているのだから、推理する意味が無い!!

推理するのはタイトルの通り『虚構』である。これは『嘘』と言ってもいいだろう。

鋼人七瀬という化物を消滅させるために、琴子は推理を武器にして戦うのだ!!

推理をして戦うとはどういうことか?

現実に怪異があるのに、どこを推理するのか?

といった部分は、是非本作を読んでみて確認してもらいたい。ヒントは『怪異とは人間の意思から生まれる』、『意思を爆発的に広げる現代の環境とは何か?』というところか。死角を突くように切り込んでくる虚構の推理に、ページを読む手が止まらないはずだ!!

また余談だが、本作の帯は『僕は友達が少ない』の平坂読先生が書いていることで話題になった。平坂読先生の仰るとおり、息をつかせぬ物語が展開するぞ!!

またまた余談だが、私が持っているのはサイン本であり

サインはこのような感じである↓。

完全に某ベストセラーミステリ小説のオマージュである!!

意外とお茶目な城平京先生が見られるサインではないだろうか!!

しかし、この一文があまりにも秀逸であることは、本作を読んだ人はわかるだろう。

 

ということで、第11回【このライトノベルが売れて欲しい!】は以上になります。

絶園のテンペストのアニメ化決定といい、ミステリ大賞受賞といいノリに乗っている城平京先生。是非、虚構推理の2巻も出して欲しいところですね!シリーズモノとして続けられる設定になっていますよ!

ではまた、私情入り混じるカオスな記事でお会いしましょう!!

【記事:ゆきとも】

(C)城平京/清原絋 講談社

[関連サイト]講談社ノベルス

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