独占インタビュー「ラノベの素」 あまなっとう先生『犬と勇者は飾らない』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年3月25日にオーバーラップ文庫より『犬と勇者は飾らない』第1巻が発売されるあまなっとう先生です。小説投稿サイト「エブリスタ」で7年以上に渡り連載されている本作が満を持して書籍化されます。作品執筆のきっかけや、練り込まれた世界観について、そして『犬と勇者は飾らない』というタイトルに込めた想いなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

犬と勇者は飾らない

 

 

【あらすじ】

中1の夏、幼馴染に振られたその日に勇者として異世界へ召喚され、魔王を倒して数年ぶりに帰還した佐藤草介――18歳、小卒、老け顔。どこにも就職できずバイト生活を送る草介は、幼馴染との距離感に悩んだり巨乳な同僚(JK)と仲良くなったりと穏やかな日々を送っていた。しかしそんなある夜、地球には存在しないと思っていた“魔術師”と“魔物”の戦闘に遭遇! 魔物をあっさり倒した草介だったが、その力を見込まれて魔物討伐に巻き込まれることになり……!? 無職と魔術が交差する時、勇者の拳が炸裂する! 小説投稿サイト「エブリスタ」で話題沸騰の最強ヒーロー譚、ついに登場!!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

福岡出身の作家、あまなっとうです。現在は東京在住で会社員をしております。好きなものは漫画が一番好きで、休日を使ってかなり読んだりしています。ほかにも動画配信サービスで番組を見たり、YouTubeを見たりすることも多いです。苦手なものは食器洗いが死ぬほど嫌いで、紙皿をやラップを引いた上に盛り付けてご飯を食べることが多いです。かつては自炊も積極的にしていたんですけど、現在住んでいるアパートの台所があまりにも狭すぎて……。スペースがないとやる気もなくなりますよね。

 

 

――漫画がかなりお好きとのことで、どんな作品を好んで読まれるんですか。

 

たくさんあるので難しい質問なんですが、ここ最近では葦原大介先生の『ワールドトリガー』を楽しく読んでいます。特に自分は漫画などを読む際に、自分で可能な発想かどうかを考えることが多くて、『ワールドトリガー』は絶対に自分では再現できないだろうなって発想がぽんぽん飛び出してくるんです。「面白い」と感じることはもちろんなのですが、それと同じくらい「すごい」とも感じています。それと自分の嗜好的にはグルメ漫画もかなり読むほうだと思っています。『美味しんぼ』も本当に面白いですし、作者の知識量に感服しながら、登場する人物の考え方にも唸らされることが多いです。食べることも好きなので、ご飯を食べながらグルメ漫画を読む、みたいなことも少なくないです(笑)。

 

 

――このたび書籍化された『犬と勇者は飾らない』は約7年前からWEB上で執筆されている作品ですが、執筆のきっかけはなんだったのでしょうか。

 

小説を書き始めるようになる以前から『ゼロの使い魔』などのラノベもかなり読んでいました。その傍らでモバゲー小説にもすごくハマっていたんです。今でこそお馴染みの「異世界転生もの」の作品も非常に多かったですし、たくさん読んでいました。そんなある日、とある作品にレビューを書いたんです。自分としては作品を応援するつもりで書いたんですが、作者の方は批判的に受けとめてしまったようで、「じゃあお前が書けよ」ってメッセージを僕のマイページに残されていったんですよね。残念なすれ違いではあったんですけど、その「お前が書けよ」って言葉をきっかけに、書いてみようと思いました。

 

 

――なるほど(笑)。その当時、小説投稿サイトは現在ほど多くはなかったと思うのですが、その中でエブリスタを投稿先に選んだ理由は何だったのでしょうか。

 

正直深い意味はありません(笑)。私が使っていたモバゲー小説に投稿をするとエブリスタにも自動投稿される仕組みがあったんです。後にモバゲー小説は消滅してしまうんですけど、残ったエブリスタでそのまま利用を続けているという(笑)。「小説家になろう」を知ったのも、小説を書き始めるようになってから2年後くらいで、書き手というよりは読み手として活用していました。『無職転生』なんかもすごく面白く読ませてもらっていました。

 

 

――それではあらためて『犬と勇者は飾らない』はどんな物語なのか教えてください。

 

舞台は現代社会の日本なのですが、秘密裏に魔法も存在するという世界です。主人公の佐藤草介は、中学1年生の頃に幼なじみに振られてしまい、その悲しさを若さと青春で表現している最中、異世界に勇者として召喚されてしまいます。その後、数年間ほど異世界での戦争に身を投じることになるのですが、強制的に帰還させられてしまいます。物語は草介が異世界から日本に帰ってきたタイミングから始まっており、学歴も小学校卒業止まり、社会経験もない中、就職を試みるも50社近く落ちてしまいます。それでもスーパーのアルバイトをしながら日々を過ごしているのですが、かつての幼なじみとの再会や、バイト仲間が充実した青春を送る姿を見て、このままじゃダメだと思い始めるんです。そんな矢先に、この世界にも魔法や魔物が存在していることを偶然に知り、戦いに巻き込まれていく物語です。

 

犬勇口絵

※異世界から帰還した草介を待っていたのはアルバイター生活……!?

 

 

――本作の執筆にあたって、異世界からの帰還やバトルといったジャンルで書こうと考えた着想はなんだったのでしょうか。

 

まず、自分で書くならバトルものだと考えていました。というのも週刊少年ジャンプをずっと読んできた世代でもあって、『ONE PIECE』や『NARUTO』も大好きだったことが影響していると思います。また、当時の読み手の視点から楽しそうだと感じたのが、今でいう「俺TUEEE」系の主人公でした。これは私自身が強くなるまでの努力描写のイメージが浮かびきらなかったこともあり、主人公の強さは上から数えた方が早いキャラクターにしようと考えたことがきっかけです。その一方で、強いなりの理由も欲しくて、あくまで当時の感覚ではありますが、異世界に行く物語は多くとも帰ってくるお話はそれほど多くなかった印象があり、現代社会で暴れる話にしようと考えたのがおおまかな構成ですね。設定はかなり作りこんでいて、メモ帳には当時の設定がまだ残っていたりもします(笑)。

 

 

――設定の部分ですが、主人公が帰還した現代にも陰ながら魔法や魔物が存在しているんですよね。現代側の世界観についても教えてください。

 

主人公が帰還する現代は、表面上においては現代社会を想像していただいて問題ありません。その一方で、陰ながらではありますが、魔術の国や組織が存在しています。作中ではアルテリアという名称の組織が登場しますね。魔術の組織には様々な魔術師が所属しており、仕事の斡旋や資格の取得などを行うことができ、トップ層には天位魔術師と呼ばれる本当に一握りの存在にしか与えられない特別な位もあったりします。魔術は秘匿されるものとして扱われており、魔術を秘匿するための仕事や、魔物の討伐、魔術災害に対応したりしています。それ以外にも魔術師でしか解決できない事態が発生した際に、政府からの要請で手配されることもあります。魔術師は基本的に資格を持っていないと逮捕されるので、草介が空気を読もうと作中で口にしたフリーの魔術師というのは、第1巻を最後まで読んでいただけるとわかると思いますが、あんまりいい結果には繋がらないんですよ(笑)。

 

犬勇口絵

※現代社会にも魔術師や魔物と呼ばれる存在が暗躍している

 

 

――ありがとうございます。続いて本作に登場するキャラクターについて教えてください。

 

主人公の佐藤草介は、数年間異世界へと召喚され、その後に現代へと帰還した少年です。コンセプトは異世界に召喚された勇者が帰還して現代を舞台に暴れまわったら面白いだろう、からきています。性格はマイペースで誰にでも優しく、近所の気のいいあんちゃんをイメージしています。作中ではギャグ寄りのキャラクターでもあって、真面目な顔でアホなことを言ったり、ボソッとキツめのことをぼやく姿も魅力かなと(笑)。読者の方に覚えてもらえるよう老け顔であることも含めて、濃い目のキャラクターですね。身体能力が非常に高く、先ほどもお話した通り上から数えた方が早いレベルで「強い」です。ただ、本人は現代での戦いにおける活躍にはあまり興味を抱いていません。そして老け顔については、他人に触れられるとすぐキレますし、彼の倫理観は異世界側で培われた部分も多く、現代社会とのズレも少なくありません。普段は温厚で真面目ですが、キレると狂犬化する、そんなキャラクターです。

 

犬勇扉絵

※異世界から帰還した草介の「強さ」は本物だが老け顔であることをかなり気にしている

 

識神こづみは草介の幼なじみで、本作のヒロインの一人です。魔術の世界でも名家と知られる家のお嬢様でもあり、男女交際については固く禁じられています。草介が振られたと思ってしまったのも、そのあたりが原因ですね。本人は割となんでもこなせるのですが、おどおどしたような内向的な性格もあって、草介との間に誤解を生む要因にもなってしまいます。

 

犬勇扉絵

※中学生の頃に草介の告白を断ってしまうのだがそこには理由があって……?

 

笹峰ミコは第1巻ではサブヒロインのようなポジションですね。決して巨乳のキャラクターを登場させたかったわけではありません(笑)。草介と同じスーパーでアルバイトをしている女の子で、バイトのシーンでは必ずといっていいほど登場します。草介の日常サイドを支えるキャラクターでもあり、日常パートのヒロインがミコ、非日常パートのヒロインがこづみといった感じでしょうか。とはいえ、彼女も先々では重要なポジションのキャラクターとなるため、ぜひ注目していただきたいです。

 

犬勇口絵

※草介の日常パートを支えるアルバイト仲間の笹峰ミコ

 

 

――設定をかなり作りこまれたというお話でしたが、主人公の設定も非常に特殊な印象があります。小卒で社会経験が乏しく、全裸で異世界に飛ばされ全裸で帰還させられる。おまけに老け顔で、異世界に行っている最中に両親を事故で亡くしていますよね。主人公にとって帰還した現代はハードモードなイメージも強かったです。

 

傍目から見れば確かにそうかもしれません(笑)。主人公の草介はめちゃくちゃ強いんです。物語でも一番活躍することになるわけですが、活躍させすぎてもあまり面白くないと考えていました。その結果、草介の設定を考える際に、長所以上に短所や欠点もたくさん考えるようにしたんです。これは本人の強さとバランスを取るためのものでもあって、ゆえに物語の展開上ではかなり苦労していると思います。過酷な状況に身を置いてもらったのは、読者の方に親しみを持ってほしいという思いと、草介の活躍を一番に褒めてほしいのが、作中のキャラクター達ではなく読者のみなさんであってほしい、そんな願いも込められています。とはいえ過酷な状況ではありますけど、本人はきちんと跳ね返せるだけの力は持っていますので明るく見守ってほしいです(笑)。

 

 

――そしてあらためてお聞きしたいのが、作品のタイトル『犬と勇者は飾らない』における「犬」の部分です。少なくとも第1巻を読む限りにおいては、この単語と紐づく要素は見受けられなかったと記憶しています。タイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか。

 

訊かれると思っていましたし、WEB版を読まれている多くの方も同様の感想を持ち続けていると思います(笑)。まず、この作品タイトルの本当の意味を読者の方に理解していただけるであろうタイミングは、恐らくですが物語全体におけるラストの直前になると思います。なんでそんな状況になってしまっているかと言うと、書き始めた当初は1年くらいで完結する予定だったんです。1年くらいであれば、引きとしても許容範囲内だろうと考えていたのですが、気付いたら7年という月日が……。ここまで延ばすつもりがなかっただけに、タイトルの引きが盛大な謎と化してしまったんですよね(笑)。

 

 

――なるほど。となると、現時点ではタイトルの意味に触れるのは難しいでしょうか。

 

とはいえ、何も答えないわけにはいかないと思うので、WEB版でも触れている範囲、或いはそこからもう一歩だけ踏み込んだお話をできればと思います。WEB版の更新を長らくサボった時期などもありましたし、そのお詫びを込めて「犬」の部分にほんの少しだけ触れようかと(笑)。

 

 

――ではネタバレになり過ぎない範囲でお願いします(笑)。

 

わかりました(笑)。まず、タイトル『犬と勇者は飾らない』の「勇者」の部分は草介を示しています。そして「飾らない」の部分は草介が何も装備をせずに殴りスタイルで戦う姿を意味しているんです。そして肝心の「犬」の部分はWEB版でも片手で数えられるくらいしか触れていません。「犬勇」と呼ばれるこの物語は、「犬」と呼ばれている存在と、勇者である草介の長い戦いの歴史を、草介の視点で描いている物語なんです。つまり「犬」に該当するキャラクターがこの物語のどこかに存在している、ということだけお伝えさせていただければと思います(笑)。

 

 

――ありがとうございます。ひとつ謎に近づいたかもしれませんね(笑)。そして本作の書籍化にあたり、イラストはヤスダスズヒト先生が担当されています。感想をお聞かせください。

 

本作はバトルシーンも非常に多いので、躍動感のあるイラストを描ける方としてヤスダスズヒト先生にお願いさせていただきました。漫画も描かれていますし、幅広い年齢層のキャラクターも描かれているので、草介もしっかりと再現していただけたと思っています。また、本作の挿絵イラストは章扉をイラストにしていただいており、各章の見どころのシーンを描いていただきました。そのためイラストの枚数も通常の作品より多く仕込んでいただいています。また、ヤスダスズヒト先生から「デザインのプロデュースもあわせてやりたい」と申し出があったとのことで、通常であればデザイナーさんが担当される表紙などのデザインもすべて手掛けていただいています。表紙はもちろん、口絵も含めて魅力的にデザインしていただいておりますので、イラスト周りも見どころのひとつだと思います。

 

犬勇扉絵

 

犬と勇者は飾らない

※表紙や口絵のデザインはヤスダスズヒト先生による完全プロデュース

 

 

――あらためて著者として本作はどんな方が読むと一層面白く感じてもらえると思いますか。

 

僕が週刊少年ジャンプっ子で、その影響を大きく受けているのが本作でもあります。ジャンプのバトル漫画好きな方には一層楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。同時にギャグも散りばめられていて、真剣なシーンでわけわからんことを言ったりと、様々なジャンルの方に楽しんでいただけると思います。ジャンプに限らず少年誌が好きな方にはぜひ手に取っていただきたいですね。

 

 

 

――今後の目標や野望があれば教えてください。

 

目標はもっとたくさん、いろんな人に『犬と勇者は飾らない』を読んでもらうことでしょうか。書籍の刊行によって、より多くの方の目に留まっていただけたらと思います。可能であれば漫画化などもできたらうれしいですよね(笑)。

 

 

――最後にここまでWEB版を追いかけてこられている方、そして新たに本作を知った方へ一言ずつお願いします。

 

まずWEB版から追いかけてきていただいているファンのみなさまには、ありがとうございますと御礼を申し上げたいです。みなさまの支援があったからこそ、書籍化することができました。そして第1巻の発売にあたり、より深い世界観を提供できるよう、WEB版とは設定を変更している点もあります。これはより作品を練り込みたいという思いから行わせていただき、文章の面でも一層面白くなるよう加筆しています。それらの違いもぜひ楽しんでいただけたらと思います。そして書籍化にあわせて本作を知っていただいたみなさま。第1巻は面白い作品であると自信を持って送り出しておりますので、少しでも興味があればぜひ手に取っていただければと思います。予想外の発破と趣味から書き始めた本作ですが、書籍化は7年の執筆が結実したひとつの結果だと思うので、今後とも応援とご支援の程をよろしくお願いいたします。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

かつて異世界を救った勇者がアルバイターとして生計を立てながら、現代の非日常に巻き込まれていく最強バトルファンタジーを綴るあまなっとう先生にお話をうかがいました。WEBでの7年の執筆活動が結実して書籍化された本作。練り込まれた設定とド迫力のバトル、そして随所に仕込まれたギャグと見どころ満載な『犬と勇者は飾らない』は必読です!

 

 

©あまなっとう/オーバーラップ イラスト:ヤスダスズヒト

kiji

[関連サイト]

『犬と勇者は飾らない』特設サイト

『犬と勇者は飾らない』公式Twitter

オーバーラップ文庫公式サイト

 

犬と勇者は飾らない 1 (オーバーラップ文庫)

ランキング

ラノベユーザーレビュー

お知らせ