独占インタビュー「ラノベの素」 細波小路先生『お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2025年7月15日にGA文庫より『お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~』が発売される細波小路先生です。第17回GA文庫大賞にて《銀賞》を受賞し、満を持してデビューされます。企業の命運を背負うお嬢様たちの奮闘あり、笑いありの頭脳バトルを描く本作。お嬢様とブレーンのタッグで挑む様々なゲームはもちろん、親しみやすさも際立つお嬢様たちを通して描きたいもの、そして主人公を喰わんばかりの圧倒的注目キャラクターについてなどお話をお聞きしました。

 

 

お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~

 

 

【あらすじ】

あなたなら、こんな私でも連戦連勝させてくれる――でしょ? 100億円か、お嬢様と一緒に没落か!? 超痛快、最強の学園頭脳ゲーム開幕!! 栄華極まる真のお嬢様だけが通うことを許された私立雪花学院女子高――の隣に立つフツーの高校に通う俺・隼人の運命は、一人のお嬢様、晴音の手に握られていた。「ゲームの天才。百億の少年。あなたなら私を勝たせてくれるでしょ?」 お嬢様学園で秘密裏に行われる巨額を賭けた頭脳ゲーム『アクォード』。その戦いでまさかの全戦全敗を喫する最弱お嬢様・晴音が追い詰められて投じた最後にして最大の賭け――実はアクォード世界ランカーであるこの俺を最強執事として雇うこと!? お金なら出す、けど作戦は全部考えて!ってマジかよ!? だが、いいぜ。大逆転が一番面白いからな!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

はじめまして、細波小路と申します。出身は埼玉県にあるKADOKAWAさんの巨大な建物がある近辺です。中学生の頃にアルカディアのチラシの裏で執筆をするようになり、その後「小説家になろう」へのめり込んでいきました。公募の投稿は大学時代からとなりまして、5年以上10年未満という感じです。好きなものはお寿司とだらけること、苦手なものはじめっとした夏の暑さと時間制限に追われることです。普段はずっとYouTubeを視聴しています(笑)。

 

 

――YouTubeはどんな動画を視聴されているんですか。

 

王道すぎる感じはあるのですが、ヒカキンやセイキン、東海オンエアなどのメジャーなYouTuberが多く、VTuberなどはあまり見ていない感じです。大学時代のコロナ禍を契機に視聴するようになり、その熱が今もずっと続いて習慣化しました。常に更新され続けるコンテンツは抜け時がなく、何もない日だと1日8時間以上視聴してしまって、「うわっ」と思うことも多々あります(笑)。

 

 

――ありがとうございます(笑)。あらためてこのたびは第17回GA文庫大賞《銀賞》受賞おめでとうございます。まずは受賞の連絡をもらった際の率直な感想をお聞かせください。

 

最初に連絡をいただいたのは入選の時だったと思います。知らない番号から突然電話がかかってきたんですが、最近は怖い電話も多いので、一旦電話を取らずにネットで番号を検索してからかけ直しました(笑)。当時は入選の連絡ではなく、原稿に不備があっての連絡なんじゃないかと思ったというのが率直な感想ですね。公募への投稿を何年もやっていると、受賞することが「ありえない」って感情になってしまい、電話がかかってきても何かの間違いだと思ってしまうわけです。そういう意味でも実感を得たのは、電話の後にもらったメールからでしたね。

 

 

――その後《銀賞》受賞の連絡もあらためて受けたと思いますが、その際はいかがでしたか。

 

《銀賞》の連絡をもらった時は、単純に悔しかったです。正直、もっと行けたんじゃないかって思いました。とはいえ、改稿前の原稿は我ながらかなり酷かったですし、本来消さなきゃいけないマーカーが残ったままだったりと、力不足な面や甘さが目立っていたことも事実だったので仕方ないですね。それだけに悔しさも人一倍で、逆にやる気をもらったと思います。

 

 

――公募へ長らく応募をされていたというお話でしたが、そもそもライトノベルの公募に応募してみようと思った理由はなんだったのでしょうか。

 

ライトノベルはずっと前から読んでいて、大好きだったことが大きいです。今回の受賞とのご縁なのかなと思う出来事もあって、自分がライトノベルを読むきっかけとなった作品が、GA文庫さんの『月見月理解の探偵殺人』でした。コミカライズから作品を知り、小説を読み、そしてどんどんハマっていきました。それからは『甘城ブリリアントパーク』や『ソードアート・オンライン』と読む作品の幅も広がり、自分自身も自然と小説を書き始めるようになっていったんです。もともと自分で面白いものを作りたいという気持ちはあったので、特に好きだったライトノベルの延長線で小説を書くようになった感じですね。ただ、公募への応募を始めた序盤で電撃大賞の三次を通過するところまで行ったのはよかったのですが、そこからは箸にも棒にも掛からぬ暗黒の時代が長く続きました。一緒に公募で戦っていた友人が、一足先にデビューしてしまったりと、苦難の時間は長かったですね。

 

 

――ご友人と一緒に作家を目指されていたんですね。

 

そうですね。公募は大学時代から挑戦していたわけですけど、ファンタジーものばかりを書いていて、行き詰っていた時期があったんです。当時は大学の卒業も間近に迫っていましたし、いよいよ執筆活動を辞めようかなと考えていたタイミングでもありました。そんな折に、『はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。』の服部大河先生とSNSで出会い、もう一度やる気をもらった感じです。知り合った当時はお互いに創作活動をしていることは認知し合っていて、自分の方から作品読ませてくださいってアプローチしました(笑)。

 

 

――なるほど。その後お二人とも受賞されているわけですから、素晴らしい切磋琢磨があったんですね(笑)。続いて改稿作業についてもお聞きできればと思うのですが、授賞式では大森藤ノ先生から「自分たちの目が節穴だったと思わせるブラッシュアップに期待をしたい」という激励もありました。あらためて改稿作業を振り返っていただけますでしょうか。

 

改稿作業については、最終的な方向性が決まるまで二転三転あったので、担当編集さんには相当な負担をおかけしてしまったなと思います。一方で、応募時の原稿にはなかった一章を書き上げた時に、作品としてすごくよくなったという印象がありました。あの章を追加した瞬間、この物語の進むべき道が生まれたという実感を得ることができたと思います。それ以外は、どうしても頭脳戦が題材の作品なので、穴を潰す作業の量もかなり多く、苦しくて大変でした(笑)。主人公を格好良くしてほしいというオーダーもあったんですけど、ちゃんと応えられたんじゃないかなと思います。

 

 

――ありがとうございます。それでは受賞作『お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~』がどんな物語なのか教えてください。

 

本作はとある理由から借金まみれで貧乏な生活を強いられていた主人公を、没落寸前のお嬢様が大枚をはたいて人生を丸ごと買い取るところから始まります。そしてお嬢様と執事となった主人公が、多種多様な頭脳戦に挑むお話になります。企業の次期社長であるお嬢様たちが、自身の会社の進退をかけて戦う、上流階級のお話でもありますね。謎のお嬢様ポイントを得れば企業としての価値や信用度が高まり、失えれば会社の価値を棄損してしまう、そんな世界で二人が頑張ります。

 

お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~

※没落寸前のお嬢様に拾われることになる借金まみれで貧乏な主人公

 

 

――本作の着想についても教えてください。

 

自分は長らくファンタジー系の物語を書いていたんですけど、先ほども触れたように行き詰まっていた時期がありました。そんな時に、当時受賞前だった服部先生に「頭脳戦でも書けば?」って言われたのがスタートでしたね。そこから頭脳戦ものに挑戦し、一度の落選を経て、この2作目に取り掛かりました。お嬢様が頭脳戦をしたら面白いだろうなぁとか、お嬢様同士がド派手な規模感で大きなことをしたら面白いんじゃないかと考えながら、そこに株や会社という要素が加わり、着想の骨子を得た感じです。ほかにもテレビ番組の『逃走中』を見ていた時、ショッピングモールにある『キッザニア』を見た時にも着想を得ています。本編を読んでいただいた後に、このインタビューを読んでいただけたら「なるほど」って思っていただけるんじゃないかなと(笑)。

 

 

――「頭脳戦を書いてみれば?」という友人のアドバイスを受けた1本目は公募で落選してしまったとのことでしたが、実際に頭脳戦ものを書いた時に手応えはありましたか。

 

正直、1本目の作品は作中で扱うゲームの内容が難しすぎ、自分自身としては手応えがあったかどうかわからなかったというのが本音です(笑)。ただ、その作品自体はそこそこの評価をいただけたこともあって、もしかしていけるんじゃないかと思い、2作目に取り掛かった感じなんです。これは自分に書けるかもしれないと思うことができたことも大きかったですし、意外とやってみなきゃわからないなって感じました。

 

 

――一定の評価を得たことが自信にも繋がったわけですね。1作目の反省点も挙げていただきましたが、頭脳戦をテーマにした作品を執筆するにあたり、様々なゲームのルールも考えなきゃいけないと思います。考える上で気を付けていることなどはありますか。

 

そうですね……。できる限り恣意的なものにならないように気を付けよう、とは思っています。作中ゲームの命題は、読者さんに気持ちよくなってもらうことだと考えています。そのためには納得してもらえる解法が望ましいだろうなとは思いますし、ルールとしても逆転の要素があるに越したことはありません。ピンチになってもひっくり返せるゲーム性を目指しながら考える感じですね。特に作中のゲームには、土台となるゲームの要素にプラスαで勝ち負けの要素を加えていたりもします。そうやって考えたゲームのルールに主人公たちを放り込み、実際に戦わせ、その都度ルールに立ち返るということを繰り返す感じです。

 

 

――なるほど。そういったゲームのアイデアはたくさん出てくるものですか。

 

しんどさがないと言ったら嘘になるわけで、頭はだいぶ悩ませています(笑)。ゲームそのものの面白さ、ルールの段階で考える演出、お嬢様ならではのスケール感を念頭に置いたうえ、どうしたら派手になるだろうか、どうしたら勝てるだろうか、そういったことをずっと考えながら作るので。数えきれないほどのボツ案が積み重なっていての作中ゲームです(笑)。

 

 

――ありがとうございます。それでは様々なゲームに挑む本作のキャラクターについても教えてください。

 

主人公の砂金隼人は貧乏執事ですが、格好良いキャラクターです。やんごとなき事情で苦学生となることを強いられている元御曹司で、没落しつつあるお嬢様の晴音に拾われ、もう一度頭脳戦「アクォード」で戦うことになります。基本的には頭の回るキャラで、やや毒がありつつも優しさを持っているキャラクターですね。

 

砂金隼人

※「なんでも屋」を自称している主人公・砂金隼人

 

姫条晴音は人を見る目があるポンコツなお嬢様です。他のお嬢様と比べると、比較的「普通」な感性を持っているのかなと思います。様々な人の素性を一瞬で見通す目を持っているのですが、性善説で生きているがゆえに、「アクォード」では連敗しています。嘘を吐くとわかっている人間が相手でも、無碍にはしませんし、「今この時は嘘を吐いていないかもしれない」と思ってしまう、難儀なお嬢様です。

 

姫条晴音

※人を見る目はあるのにいろいろ足りないお嬢様・姫条晴音

 

月見里厘はギャルと書いてはいますが、陽キャなお嬢様という表現があっているかもしれません。登場させるだけで作中が明るくなるキャラクターでもあるのでとても重宝しています。彼女は視野が広く、勉強とは違った意味で頭の良さを兼ね備えるキャラクターです。選択を迫られた時に「今自分が行動しなくてどうする」という感情に突き動かされる、熱いキャラクターでもあり、可愛いキャラクターでもある感じです。

 

お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~

※姫条晴音の貴重な友達でもあるベンチャー企業のお嬢様・月見里厘

 

井上加奈は一番お嬢様らしいキャラクター造形をしています。強い行動力と屈しない魂があるがゆえにメインヒロインにはなれませんでした(笑)。むしろこのキャラクターが主人公なんじゃないかと思うくらいにお嬢様をしていますし、憎めないキャラなので、読者の方には生暖かい目で見てもらえたらなと思います(笑)。

 

 

――タイトル通り、本作には多くのお嬢様が登場するわけですが、完全無欠なお嬢様がいないように感じるのも作品としての特徴なのかなと思います。優秀さとポンコツさが混在していて、ゲームに参加しているお嬢様には親近感が湧くんですよね。

 

そもそも「お嬢様とは何か」を最初に考えた時、高貴であることなんじゃないかと考えました。ノブレスオブリージュであることを根底に持たせる、そういったところは特に意識をしています。完璧なキャラクターがいないという点については、みんなが完璧すぎても面白くないですし、ダメなところを作ることはあらかじめ考えていました(笑)。また、彼女たちには「社長かくあるべき」という考え方を持たせています。社長たるもの上でふんぞり返っていてはダメ。トップオブトップなお嬢様が集まる学校、次代の社長同士が集う学校なので、上の視座だけでなく下の視座も見ていかなきゃいけないっていうのは、全員が持っている思想です。お嬢様ポイントは会社の株価を背負っていますし、心の中で彼女たちは自分と会社を同一化している部分もある。そういった考え方が、親近感に繋がっているのかもしれません。

 

 

――上でふんぞり返っているわけではないお嬢様の在り方が親近感を抱かせる要因になっているわけですね。さて、そんなお嬢様について語っていただいたわけですが、本作にはある意味でお嬢様以上に力と気合が入っているように感じられる、主人公喰いのキャラクターがいると思うんです。愛宕レイナの筆頭メイドである飴崎早紀。掴みどころがない強キャラとして、ファンが付きそうだなと感じずにはいられませんでした。

 

ありがとうございます。飴崎早紀は、お嬢様である愛宕レイナのブレーン的な存在で、主人公にとっては強敵と言って差し支えありません。見え方としては敵キャラクターのような立ち位置ではあるんですけど、可愛くて憎めないキャラクターにしたいという思いがありました。自分自身も愛着がありますし、縦横無尽に作中を動き回るキャラクターです。彼女はメイドなのでお嬢様ではないのですがが、ある意味で誰よりもお嬢様な一面も持っています。頭の切れるキャラクターという以上に、冴えているキャラクターなのだと思います。掴みどころのないキャラクターではありますが、読者の方にもぜひ、サキサキを可愛がってほしいですね(笑)。

 

お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~

※飴崎早紀の存在が物語そのものの面白さを加速させていく

 

 

――ありがとうございます。続いてイラストについてもお聞きしていければと思います。書籍化に際してはイラストをAIKO先生が担当されました。あらためてビジュアルを見た時の感想や、お気に入りのイラストについて教えてください。

 

キャラデザを最初に拝見した時、想像以上のものがやってきて、非常にはしゃいだのを覚えています。執筆にあたっても、自分の中ではキャラクターのビジュアルがふんわりとしていた部分も多かったので、あらためてこのキャラクターはこういう顔をしていたんだって感じました。作品も一気に色づいたというか、実体化した気がしましたよね。お嬢様はみんな可愛いし、主人公のデザインもすごく格好良くて、魅力が一層高まりました。好きなイラストは井上加奈がヘリから降りてくる挿絵があるんですけど、これが一番お嬢様っぽくて好きです(笑)。

 

お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~

※THE・お嬢様でもある井上加奈の登場イラストがお気に入りとのこと

 

 

――著者として本作の見どころや注目してほしい点を教えてください。また、どんな読者が読むと、より本作を楽しめると思いますか。

 

本作の見所はタイトルそのままですが、お嬢様が頭脳戦をしているところです。ゲームやお嬢様というキャラクター造詣が好きな人は基本的に楽しめると思いますし、見所にもなるんじゃないかなと思います。お嬢様がその名に恥じない大きなことをやっているので、ぜひ注目してもらいたいです。作中のゲームもそこまで難しいことをしているわけではないので、頭脳戦をあまり知らない人にもお勧めしたいですね。

 

 

 

――今後の野望や目標があれば教えてください。

 

とりあえず10年生き残るのが作家としての目標になります。そして作品名をパッと言った時に、「あれね」って思ってもらえるくらいの認知を獲得できたらいいなと思います。

 

 

――それでは最後に本作へ興味を持った方へメッセージをお願いします。

 

この作品はライトノベルです。面白ければそれでいいの精神で書かれています。めちゃくちゃ重たい話でも悲しい話でもありません。ぜひ気軽に手に取っていただければ幸いです!

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

上流階級の次期社長でもあるお嬢様が集い、熾烈な頭脳戦を繰り広げていく学園物語を綴った細波小路先生にお話をうかがいました。お嬢様とブレーンのタッグで挑む頭脳戦は、白熱した展開だけでなく笑える展開も盛りだくさん。己と会社の命運、そしてお嬢様ポイントを賭けたバトルが繰り広げられる『お嬢様頭脳戦~お嬢様は頭脳ゲームの完全勝利をご所望です~』は必読です!

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

©細波小路/ SB Creative Corp. イラスト:AIKO

kiji

[関連サイト]

『お嬢様頭脳戦』特設サイト

GA文庫公式サイト

 

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