『三角の距離は限りないゼロ』が30万部を突破 岬鷺宮が紡ぎだすもうひとつのラブコメムーブメントも必読なワケ
電撃文庫刊『三角の距離は限りないゼロ』が累計30万部を突破した。そして同じく電撃文庫より2020年にスタートした『日和ちゃんのお願いは絶対』も重版が行われるなど、岬鷺宮氏が綴る青春恋愛ストーリーが注目を集め続けている。どちらの作品も昨今のラブコメムーブメントを賑やかす作品傾向とはやや毛色の異なる物語であるからこそ、これはもうひとつのラブコメムーブメントであると言ってもいい。作品のタイトルだけなら知っている、または聞いたことがあるという方、そして初めてこれらの作品を知ったという方に、今読んでもらいたい作品としてぜひ紹介したい。
現在のラブコメムーブメントで目立っているのは、物語の「ヒーロー」や「ヒロイン」と呼べる存在感の強いキャラクターが魅力を放つ作品。そして主人公とヒロインの二人(あるいは複数人のヒロイン)が一緒にいることで生まれる「甘い空間」を共有する、砂糖菓子のような物語を目にする機会が多い。その中において『三角の距離は限りないゼロ』など、岬鷺宮氏が綴る青春恋愛ストーリーは異彩を放つ物語のひとつと言える。そこにはヒーローのような強い意思力を持ち、存在感に溢れるキャラクターがいるわけではなく、心地の良い甘い空間がただ広がっているわけでもない。同氏の物語にはちょっとした他人との「違い」に悩む普通の男の子と女の子が、小さな一歩に一喜一憂する、等身大の青春が詰まっているのだ。もちろん青春には苦味も付き物で、その苦味が不得手だという読者もいるだろう。しかしながら、読者を物語に引き込む青春の苦味が果たす役割は決して小さくなく、読み手として登場するキャラクター達がなぜ笑い、なぜ涙を流すのか、その理由に近づくための必要なピースになっている。
『三角の距離は限りないゼロ』においてはもちろん、思春期の少年少女を描く丁寧さや繊細さ、こだわり抜かれたキャラクターの感性と自意識が、読者を物語へとより深く惹き込んでくれることも、同氏が描く作品の特徴だろう。岬鷺宮氏の物語には、背伸びをしようとするキャラクターこそあれ、年齢の割に達観したキャラクターはほぼ登場せず、年相応の少年と少女の姿が描かれる。それも、男の子側からだけではなく、女の子側からも描かれる感性と自意識は、男女問わず読者の幅を大きく広げている魅力だと感じる。日々の小さなことに悩み、喜び、泣き、笑う、そんな心の機微を男女双方の視点から細かく丁寧に描き上げることで、青春という言葉以上に、思春期という言葉の似合うキャラクターが誕生しているのだろう。シチュエーションだけではない、感性と自意識への共感こそが、岬鷺宮氏が綴る恋愛ストーリーを一層魅力的に映していることは間違いない。
そして2020年5月に第1巻が発売された『日和ちゃんのお願いは絶対』は、岬鷺宮氏の繊細なキャラクター描写を、いわゆる「セカイ系」の恋愛ストーリーの中で紡いでいる。聞いてしまえば誰も逆らうことができない「お願い」の力を持つ少女と、そんな彼女と付き合うことになり、運命を大きく変えていくことになる普通の少年の物語。逆らえない「お願い」の力を持つからこそ、好きな人の意思を自分の力で捻じ曲げたくはないと考える少女の想いは、常に切なさを抱かせ続けてくれる。甘いようでほろ苦い思春期に生きる少年少女の姿は変わらないまま、二人だけの世界ではない、二人を取り巻く世界も描かれていく『日和ちゃんのお願いは絶対』。少女の一生懸命で儚くて勇気を必要とする想いを、どう受け止めて共に歩んでいくのか。読者の心をザワつかせる、そして目の離せない恋愛ストーリーは必読だ。


上田麗奈さんが日和を演じるPVも公開!
【月刊ビッグガンガンにてコミカライズも連載中!】
『三角の距離は限りないゼロ』第6巻、『日和ちゃんのお願いは絶対』第2巻は、電撃文庫より11月10日に同時発売。今、読んでおきたい青春恋愛ストーリーがここにある。
【最新刊も同時発売!】


©岬鷺宮/KADOKAWA 電撃文庫刊 イラスト:Hiten
©岬鷺宮/KADOKAWA 電撃文庫刊 イラスト:堀泉インコ
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