独占インタビュー「ラノベの素」 荒三水先生『隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年12月28日にモンスター文庫より『隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた』第3巻が発売された荒三水先生です。隣の席になった男子を惚れさせてしまう「隣の席キラー」と呼ばれるイケイケ女子と、そんな彼女の隣の席になったぼんやり男子による軽快な攻防が見どころのラブコメを描く本作。主人公とヒロインの癖になる漫才会話劇から、ヒロインをしすぎていないからこそ生まれるキャラクターの魅力についてなど様々にお聞きしました。

 

 

隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた3

 

 

【あらすじ】

「言いなり券」騒動を巡る期末試験も終え、待望の夏休みに突入!……したのだが、「隣の席」というアドバンテージを失った唯李は、悠己をどうやって遊びに誘うか悩んでいた。一方の悠己は、慶太郎の妹・小夜と知り合うが、小夜が唯李の話を聞いた途端、様子が変わって……「あの人には気を付けてください!」プールに花火大会……夏休みイベント満載のなかで、2人の距離が急速に縮む!? ネット発必笑ラブコメ、二人の関係がもどかしい第三弾! 内容の大幅加筆に加え、書き下ろし短編「ラッキーボーイ」を収録。

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

栃木県出身の荒三水です。基本的に田舎者なので、今回のような機会がないとなかなか東京に出てくるような機会はありません(笑)。好きなものはゲームで、RPGからアクション、美少女ゲームまでなんでも好きですね。ゲームは子供の頃から遊んでいました。最近はVTuberを動画で視聴し始めたりもしていて、ゲーム実況をやられているVTuberさんをよく視聴しています。苦手なものは人混みと高い場所です。

 

 

――本作では漫才のようなキャラクター同士の掛け合いも非常に魅力的で、お笑いもかなりお好きなのかなと思っていました。

 

お笑いももちろん好きです。ただ、そこまでコアというわけではなく、それこそM-1などの大きなお笑い番組を欠かさずチェックするくらいでしょうか。子供の頃はダウンタウンさんとか、テレビで見続けていたというのもありますし、漫才に限らずギャグ漫画もよく読んでいたので、「笑い」の要素に触れる機会はそれなりに多かったように思います。特にダウンタウンさんは本当に好きで、今でも「一人ごっつ」とか「WORLD DOWNTOWN」を動画で見返したりしています。現在のお笑い番組以上に、過去のお笑い番組を見返す機会の方が多いかもしれないですね。

 

 

――本作はWEBの投稿からスタートしている作品ですが、小説を書き始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

 

大きなきっかけは『涼宮ハルヒ』シリーズや『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』などのアニメだったと思います。それまでは、アニメと言えばガンダムくらいしか見ていませんでした。『ハルヒ』や『俺妹』を契機にライトノベルも読むようになり、どんどんハマった結果、自分でも書いてみたいと思うようになりました。公募は1度挑戦してダメだったんですけど、作品を書くという行為そのものが本当に楽しかったんです。その後、あらためて「小説家になろう」で投稿をはじめるようになりました。学生の頃に図書館へ通い詰めて、一般文芸や純文学、歴史小説を読んでいたことも、今に至るきっかけのひとつかもしれませんね。

 

 

――それでは『隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた』第2巻までを振り返りながら、どんな物語なのか教えてください。

 

まず言えるのが、本当にタイトルそのままの作品であるということです(笑)。ラブコメにおける勘違いラブコメのジャンルになるんでしょうか。「隣の席キラー」と呼ばれる女子の隣の席になった主人公が、その女の子に靡くことなく、気付けば女の子の方が懸命に気を惹こうとしている、そんな物語になっています(笑)。

 

隣かい_口絵01

※「隣の席キラー」との攻防が幕を開ける――!?

 

 

――あらためて本作の着想はなんだったのでしょうか。

 

自分は今のところ敢えて読まないようにしているんですが、執筆をはじめた当時は『からかい上手の高木さん』をはじめとした隣の席系の漫画が流行っていて、WEB小説においてもハーレムではなく、主人公とヒロインの1対1の関係性を描いたラブコメに注目が集まり始めていました。自分も過去にラブコメを書いていたことがあったので、あらためて書いてみようと思ったことがきっかけです。それと「返り討ち」というワードが自分の中では大きなひらめきだったことも覚えています。厳しいだけではなくほんのりと優しさも入り混ざったようなワードであると感じて、キャラクター同士の掛け合いを考える上での大きな軸になりました。

 

 

――主人公とヒロインの漫才的な掛け合いは、他の作品にはなかなかない特徴だと思うのですが、主要な二人のキャラクターはどのようにして決まったのでしょうか。

 

自分は物語を考える時、掛け合いや会話劇から考えることが多いんです。とりあえずキャラクターの候補を考えて、掛け合いをさせてみるんです。そこで面白い掛け合いが生まれたら、その掛け合いに沿った形でキャラクターを構築していきます。なので、かなりいろいろな試行錯誤がありました(笑)。それこそ今の主人公よりももう少しツッコミ系だったパターンも試したりしましたね。ただ、他のキャラクターとの掛け合いを考えた時に噛み合わない部分もあり、現在の性格に落ち着いた感じです。主人公とヒロイン二人だけの掛け合いではなく、他のキャラクターとの掛け合いも意識しながら、キャラクター像は固まっていきました。

 

 

――実際にキャラクターを形作っていく上で、「これだ」という最初の掛け合いは何だったのか覚えていますか。

 

自分は結構パロディも織り交ぜているんですが、第1巻にも収録されている成戸悠己と鷹月唯李の「君の肝臓を破壊したい」のくだりだったと思います(笑)。これを考えた当初は双葉社さんと特段の接点があったわけでもなかったのですが、結果としてモンスター文庫さんから刊行されることになりました。まさかの偶然が本当にうまいこと噛み合って、第1巻にそのまま収録されることになったんですよね(笑)。

 

 

――本作ではヒロインが「隣の席キラー」と呼ばれていますが、荒三水先生のこれまでの人生で「〇〇キラー」な方と出会ったことはありますか。

 

高校時代は男子校だったので女子はいませんでした(笑)。ただ、モデルというわけではないんですが、唯李のようなハイテンションな方は過去の職場にいました。本作に登場するキャラクターは、学生時代以上に社会人になってから出会った人たちの影響を強く受けているかもしれません。でも現実やラノベ以上に、美少女ゲームの影響を受けている気がします。特にKeyの『CLANNAD』という作品が本当に好きで、本作を読んでいただいている方の中には、なんとなくそんな空気感を感じ取られている方もいるかもしれませんね(笑)。

 

 

――それでは続いて、必見の掛け合いを見せてくれる成戸悠己や鷹月唯李をはじめとしたキャラクターについても教えてください。

 

成戸悠己に関しては、ぼっちで陰キャなイメージで登場していると思うんですが、僕個人としてはコミュニケーションも決して苦手というわけでもない、優しいお兄ちゃんキャラなんですよね。そして喧嘩が強いとか頭が切れるといった方面ではない、僕なりの最強主人公でもあるんです(笑)。言語化が少々難しいんですが、気にしない、気にかけない強さとでも言えばいいんですかね。もちろんヒロインに対する無敵さもあります(笑)。ボケが目立ちがちではありますが、たまにツッコミもしたりと、意外と器用さも兼ね備えているキャラクターです。ただ、物語上ではまだ悠己自身の掘り下げはほとんど行われていないので、今後意外な一面を見られる可能性があるので、ぜひ楽しみにしてもらいたいです。

 

隣かい_挿絵02

※左:成戸悠己/右:速見慶太郎

 

鷹月唯李はもともと大人しい女の子で、それがおもしろ人間になることで、「隣の席キラー」と呼ばれるようになります。僕も小中学校の頃、決して社交的なタイプではなかったんですが、それでも面白いことを口走ることで友達ができたりしました。唯李にはそんな僕自身の成功体験も織り交ぜつつ、人気者になるにはまず面白い人間になること、という下地が要素としてありました。お笑いが好きであったり、過去の成功体験であったり、悠己以上に僕自身の経験が唯李には詰まっている気がします。それと彼女に関しては極力お色気要素を控えめにしようと意識しています。得意な分野でもあるギャグ要素を強めにして、ギャグが面白いからこそ成り立つ楽しいヒロインを目指しました。

 

隣かい_挿絵01

※このヒロインは翻弄する側なのか、それとも翻弄される側なのか……

 

悠己の妹の成戸瑞奈は、一見ブラコンの妹のように見えるんですが、それだけにはしないようリアルな面倒臭さも内包しているキャラクターをイメージしています。第3巻に登場する小夜という新キャラとの絡みも楽しみにしていただければと思います。

 

隣かい_口絵02

※人見知りな妹と唯李の掛け合いも見どころのひとつ

 

最後にもう一人、速見慶太郎は悠己の悪友のようなポジションなんですが、第3巻の書き下ろしを含むすべてを読んでいただくとかなり印象の変わるキャラクターなんじゃないかなと思います。第1巻で仕込んでいた伏線を第3巻では回収もしています。ただの友人キャラという位置づけにはしたくなかったので、注目していただきたいキャラクターの一人ですね。

 

 

――また、本作においては主人公とヒロインとのラブコメ以外にも、兄妹や姉妹関係のエピソードも多く、物語全体を通してすごく優しい物語という印象も受けました。

 

ありがとうございます。ただ、これは気が付いたらそうなっていただけなので、大きな狙いや意図があったりするわけではないんですよね(笑)。登場するキャラクターの関係値を描く上で、最も描きやすかったのが血縁だったのかもしれません。もちろん、悠己と瑞奈や唯李と真希を見ていただければわかるんですが、関係性の中にも良いところと悪いところがある、そんなバランスを維持して描いています。

 

隣かい_挿絵03

※エピソード内での兄妹・姉妹の掛け合いも必見

 

 

――いろんな関係性が描かれている本作において、やはり悠己と唯李の関係性が一番心地よくて楽しい見どころだと思います。本作ヒロインの魅力をあらためて教えてください。

 

やっぱりギャグになるんですかね(笑)。一方で唯李を単独で動かそうとしたり、悠己以外のキャラクターとセットで動かそうとすると、どうしても一歩引いてしまうんです。悠己と一緒に動かすからこそ映えるキャラクターであり、魅力を生み出すキャラクターなんだろうって思っています。悠己に対してはズバズバと素をさらけ出せる点が彼女の大きな魅力だと思います。

 

隣かい_挿絵04

※本作を読めば唯李にハマること間違いなし!

 

 

――イラストを担当しているさばみぞれ先生の描くキャラクターも本作を一層引き立てていますよね。最初にキャラデザを見た時の印象や、気に入っているイラストがあれば教えて下さい。

 

最初にいただいたラフイラストが実はめちゃくちゃ気に入っているんですよね。書籍になることで自分の物語のキャラクターにビジュアルが付いて、いざその姿を見たらイメージ通りでした。瑞奈のイラストもすごく気に入っています。ラフをもらった瞬間から、キャラクターのイメージががっちりと固まりましたよね。気に入っているイラストについてはどれも素晴らしくて好きなんですけど、メガネをかけた唯李と、第2巻のジャケットイラストでしょうか。ジャケットイラストはさばみぞれ先生が作業の生配信をやられていて、自分もこっそり見ていたこともあって、印象が強く残っています。挿絵では第2巻のデビル唯李、そして第2巻ラストの凛央がすごく好きです。描かれている表情が本当に素晴らしいとしか言いようがありません。さばみぞれ先生と引き合わせてくれた編集さんにも感謝です。

 

隣かいラフ

※キャラクターラフイラストより

 

隣かい_ジャケット2

隣かい_挿絵05

隣かい_挿絵06

※荒三水先生絶賛のイラストはぜひ物語と一緒に楽しんでもらいたい

 

 

――今年はコミカライズ連載もスタートしました。漫画版ならではの魅力についても教えてください。

 

原作でもパロディシーンは多いんですけど、漫画版では文字では表現しきれないパロディを表現してくださっています。セリフ回しも含めてギャグ要素がマシマシになっていると思います。小説を読んでいる方も、小説版とは違った楽しさを感じることができると思うので、ぜひこちらも読んでいただきたいですね。

 

隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた 漫画

※ギャグ要素満載のコミカライズ版もあわせて読みたい(連載ページはこちら

 

 

――発売された第3巻はどんな物語となるのでしょうか。また見どころも教えてください。

 

第3巻では悠己たちが夏休みに突入していきます。これまでは教室であったり、悠己や唯李のどちらかの家が物語の舞台になっていたと思いますが、そういった箱から飛び出して動きのある巻になっているんじゃないかなと思います。タイトルにもある通り、本作は「隣の席」がひとつのテーマではないですけど、大きな意味を持っています。かつて唯李の隣の席だった慶太郎、そしてそんな彼の妹である小夜。新しいキャラクターも加わり、学校から海やプールといった外に飛び出す悠己や唯李のラブコメ模様に注目していただけたらと思います。もちろん恒例の漫才パートもパワーアップしていますし、書き下ろしにも力を入れました。隅から隅まで楽しんでいただけたらと思います。

 

隣かい_口絵03

※第3巻では夏休みのイベントが盛りだくさん!?

 

 

――今後の目標や野望があれば教えてください。

 

続刊を頑張りたいという気持ちはもちろん、他の作品を書きたい欲もあるんですけど、しばらくは本作に注力していきたいと考えています。そして叶うことなら、悠己と唯李二人の漫才を耳で聴いてみたいですね(笑)。

 

 

――最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。

 

おかげさまでコミカライズもスタートし、小説も漫画もどちらも楽しんでいただけたらと思っています。本作はまだ3巻なので、今からでも十分手に取りやすいシリーズだと思います。興味を持っていただけたなら小説の第1巻からでもコミカライズからでも本作に触れてもらえたらなと思います。『バカとテストと召喚獣』のような「笑い」が好きな方、『CLANNAD』をはじめとしたKey作品が好きな方、そういったみなさんにも手に取ってもらえたら嬉しいなと思います。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

夫婦漫才のような軽快な掛け合いが魅力のラブコメを綴る荒三水先生にお話をうかがいました。読めば読むほどヒロインの可愛さが人間として増していく、ラブとコメのバランスが絶妙の本作。「隣の席キラー」が返り討ちにあわず、一歩前に進むことができるのかも気になる『隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた』は必読です!

 

 

©荒三水/双葉社 イラスト:さばみぞれ

kiji

[関連サイト]

モンスター文庫公式サイト

 

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隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた(3) (モンスター文庫)
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隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた(1) (モンスター文庫)

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