独占インタビュー「ラノベの素」 立川浦々先生『公務員、中田忍の悪徳』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2021年9月17日にガガガ文庫より『公務員、中田忍の悪徳』が発売された立川浦々先生です。第15回小学館ライトノベル大賞にて「優秀賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。超リアリストな地方公務員である主人公と、《エルフ》という未知の存在との出会いを描いた本作。作品誕生にまつわるエピソードはもちろん、中田忍というキャラクターの在り様についてなど、様々にお聞きしました。
【あらすじ】 区役所福祉生活課支援第一係長、中田忍(32歳独身)。責任感の強い合理主義者。冷酷だが誠実、他人に厳しく自分自身にはもっと厳しい男。ある深夜、帰宅した忍は、リビングで横たわるエルフの少女を発見。忍は悟る。「異世界エルフの常在菌が危険な毒素を放出していた場合、人類は早晩絶滅する」「半端な焼却処理は、ダイオキシンの如く地球を汚しかねない」「即座に凍結し、最善で宇宙、次点で南極、最悪でも知床岬からオホーツクの海底へ廃棄せねば……」 だがその時、《エルフ》の両瞼がゆっくりと開き―― |
――それでは自己紹介からお願いします。
はじめまして。第15回小学館ライトノベル大賞において「優秀賞」をいただきました、立川浦々です。人にお話しできるほど造詣が深いわけでもないのですが、漫画やアニメは好んで見ています。最近はテレビアニメ『ゾンビランドサガ』にドハマリして、聖地巡礼のために佐賀旅行へ何度か行きました。『ゾンビランドサガ』は現実の佐賀に対する解像度がかなり高くて、登場した場所やお店を巡るだけでもかなりの満足感があるし、何より食べ物がすっごく美味しいんです。イカ刺しを食べて感動したのは生まれて初めてで、まだアニメにも登場していない、美味しい佐賀の名物を探してみたりもして……。自分にとっての第三の故郷という感じです。ちなみに第二の故郷は「肉汁たっぷりのミディアムレアで焼き上げる、げんこつハンバーグ」が自慢の「炭焼きレストランさわやか」を擁する静岡県ですね。小説のアイデアが行き詰った時は、ちょっと頑張ってさわやかまで足を伸ばし、道中で天啓を得るのが立川浦々的ピンチ脱出法でした。コロナが落ち着いたら、どちらにもまた行きたいですね。
――故郷って増えるものなんですね(笑)。あらためて第15回小学館ライトノベル大賞「優秀賞」受賞、おめでとうございます。作品の応募に至った理由をお聞かせください。
ライトノベルを書こうと決め、2017年の冬頃、『公務員、中田忍の悪徳』の前身となるWeb小説を書き始め、公開していました。当時は「作品を書き上げる」以前に「どうしたら読んでもらえるのか」で散々悩まされました。例えば一人のWeb小説読者が、1年に50作品を読むとしても、Web小説界隈には数百万単位の作品が溢れています。「自分の作品を読んでもらえる順番はいつ来るのだろう?」と、そんなことを考えながら作品を公開し続けるのは、時に空しく、苦痛さえ感じることもありました。だったらいっそ、出版社の主催する公募に参加し、「望まれて」作品を発表したいと考えるようになったんです。
――ちなみに「ライトノベルを書こうと決めた」というお話からも、ライトノベルは元々お好きだったんですか。
小さい頃から小説が好きで、中学生の頃は何百冊とライトノベルを読み漁っていました。ただ……お恥ずかしい話、かれこれ10年以上ライトノベルをまったく読んでいませんでした。
――そうだったんですね。10年以上ラノベから離れていた中で、作品の執筆と応募に至ったのはまた違った凄さを感じてしまいます。
これは私の矜持なのですが、「他の誰かが書ける小説なら、自分がわざわざ書く意味はない」というのがあるんです。ライトノベルを読み漁っていた頃、「いつか自分も小説を書いてみたい」と考えながらも、周りの面白い小説と自分の小説が似てしまうのが嫌で、結局形にできなかったんです。その後、生活環境の変化などで、一切ライトノベルを読まない空白期間ができました。で、ある日突然、天啓のように「今書いたら、面白い小説が書ける気がする」と思い立ち、筆を執ったところ、ありがたくも受賞させていただいたという次第です。敢えて最新の流行に触れず、自分の中の創作性を、自分の中だけでメチャクチャに育てた結果、いつの間にか「自分にしか書けない小説」を書ける自信が生まれたのかな、と思っています。
――なるほど。でもこれまでは新人賞をはじめとした公募への応募経験はなかったわけですね。
そうですね。Webのコンテストを除いた、公募のために作品を用意するという、ガチの公募に参加したのは2回目でした。1回目の時は箸にも棒にも掛からず、評価シートすらもらえない段階で落選しました。その後、作品をブラッシュアップし、小学館ライトノベル大賞へ応募したことで、今回栄えある賞をいただけた次第です。
――数ある公募の中で小学館ライトノベル大賞を選択した理由はなんだったのでしょうか。
小学館ライトノベル大賞を選んだのは、原稿の制限枚数が他より多かったことと、レーベルの作風に惹かれたところが大きいです。実はアニソンをよく聴くんですが、「ギミー! レボリューション」をきっかけに知った水沢夢先生の『俺、ツインテールになります。』のブッ飛んだ設定を見て、「このレーベルなら、中田忍を受け入れてくれるんじゃないか」と期待していました。
――ここまでのお話を聞いていると、『公務員、中田忍の悪徳』を世に送り出すために未知の力と物語が裏側で働いていたのではないかという気さえしてしまいます(笑)。受賞時の率直な感想もお聞かせいただけますか。
まず、これも私の矜持なのですが「自分が世界一面白いと思えない作品を、人様にお見せするのは失礼である」というのがあります。貴重な可処分時間を割いて私の作品を読んでくれる方へ「つまらないかも知れませんが読んでください」と言うのは、謙虚な姿勢ではなくて、自尊心を守るための逃げだと感じるからです。お読みいただいた結果に賛否が生まれるとしても、作者自身は「世界一面白い」という気持ちで世に出すべきだと思うんです。そうすることで自分も作品に対して真摯になれる、スポーツ選手のルーティーンみたいな感じ……とまで言ってしまうと、ちょっと格好つけすぎでしょうか(笑)。そんな経緯があったので、『公務員、中田忍の悪徳』も一回目の落選をバネに磨き上げ、大賞間違いナシの自信で応募させていただいた、最高の自信作でした。だから、「大賞」でなく「優秀賞」をいただいたと伺った時は、「そっか優秀賞か……ありがとうございます」という感想が正直なところでした。ただその後、担当編集さんの指摘などもあり、改稿を重ねるうちどんどん面白くなっていく作品を見て、「オッ、また世界一を更新する作品を創ってしまったな」と、自分の力不足を痛感しながら思ったりもして、結局懲りることなく今に至っています(笑)。
――ありがとうございます。それでは受賞作『公務員、中田忍の悪徳』がどんな物語なのか教えてください。
『公務員、中田忍の悪徳』は、区役所で生活保護関連の業務を担当する32歳男性「中田忍」の自宅へ、突然金髪巨乳のエルフらしき美女が顕現する、いわゆる〝落ちもの〟系のフィクション作品です。〝落ちもの〟というジャンル分けは作品を書き始めてから知ったのですが、概念自体は『うる星やつら』、広義で見れば『竹取物語』の時代から続く、誰にでも親しみやすいおなじみの設定かと思います。ただ本作は、その受け手側である主人公「中田忍」の方が、《エルフ》よりよっぽどやべーやつでした。未知の来訪者である割に、従順で御しやすい感じの《エルフ》に対し、忍は自分なりの努力で問題点を洗い出し、普通なら考えなくてもいいような懸念を徹底的に追究して、自分の護るべきものを護ろうと足掻き続ける。シリアスとサスペンスとコメディとハートフルが境界線ナシに同居する、他ではなかなか読めないであろう、楽しい作品に仕上げたつもりでいます。
※未知のエルフを中心にシリアスでサスペンスでコメディでハートフルな物語が描かれる……!?
――シリアス、サスペンス、コメディ、ハートフルと様々なジャンルが混在していますが、着想はなんだったのでしょうか。
作品を書き始めようと考えた2017年当時、ライトノベル界隈の主流派とされる作品の多くは「少年少女が特異な能力を授かり、ゆうゆう世界を攻略する、異世界無双系」で、その読者の多くは中高生であると、何かのサイトで語られていました。直接作品を見ることはなくても、コミカライズ作品やアニメ作品、果てはダイジェスト型Web広告で散々目にしていたので、ある程度どんなものかは想像がつきました。これは私も納得がいくところで、「すごい力を持った主人公が問題に直面し、読者の予想を超える解決を見せ、カタルシスを与える」という構図は、過去のライトノベルに限らず、漫画やドラマ、演劇の舞台などでも広く楽しまれている、受け入れられやすいテンプレートなんですよね。
――そんな2017年当時に、本作の前身にあたる作品の執筆をはじめられたんですよね。
はい。とはいえ自分がそのままそれを書くと、矜持のひとつ「他の誰かが書ける小説なら、自分がわざわざ書く意味はない」に触れるので、書く気にはなれなかったということもあります。そこで私は徹底的に逆張りをして「いい大人の主人公が現実と向き合い、失敗を重ねて足掻きながらも、内面を洗練してゆくことで、目の前の世界をクリアに輝かせる、ガチ目のヒューマンドラマ」を突き詰めてみようと考えたんです。大人の読者は喜んでくれそうだと感じましたが、それにしたってあまりにも地味で暗い作品になり、そもそも誰にも興味を向けられない恐れがあったので、ところどころに不条理系エンターテイメントの皮を被せたところ、噛みどころ次第で甘かったり辛かったりする、不思議系作品に仕上がりました。
――不思議系作品というのはまさにその通りで、受賞時の作品概要はもちろん、発売前のあらすじでも「異世界エルフの常在菌」や「知床岬からエルフを投棄」といった、奇怪なワードのオンパレードでした。
順を追ってお話しますと、私がまず書こうとしたのは「異世界ではダイヤが採れるから、俺は小豆の先物相場に投資した」でした。逆張りありきの発想で、読めば読むほど投資の知識が得られる一方、インサイダー取引や環境問題などの社会問題へ真摯に向き合う作品にしたかったんです。ただ、専門知識を調べる労力の割にあんまり面白くならなかったので止めました(笑)。その後段々考えが煮詰まり、逆に異世界存在を凌駕する規格外の人類、「中田忍」を軸に物語を作ろうと決めたんです。本編における忍の“活躍”全体から見ると、エルフを冷凍する話は、そう際立っておかしいエピソードでもなかったりするんです。むしろ比較的地に足の着いた考え方の、まとも寄りのエピソードと言うか。ただ、初見の読者様に「中田忍」のキャラクターを伝えつつ、意表を突いて興味を引ける、象徴的なエピソードとして丁度良かったので、まずはこれを、と前面に押し出しました。忍が持つ二面性のひとつ、客観的なコミカルさを押し出した形ですね。
※意表を突いた発想を着地させる中田忍の行動にも見どころは多い
――なるほど。客観的なコミカルさと対をなす中田忍の二面性のもうひとつの面とはどういったものなのでしょうか。
忍は「社会に役割を持って参加している、ちゃんとした大人」でもあります。大人は自分自身の決断から逃げられません。生きているだけで自分自身の、あるいは自分自身に関わるすべてへの責任を負います。本作のキャラクター造形を考えるに当たり、あたかも実在するかのような、人間としての厚みを備えたキャラクター性を持たせようと決めていました。忍についてはそれを特に意識して、「自分の考えをしっかり持った人間」として見せることができるよう心掛けています。忍の「生活保護担当の地方公務員」という職業設定については、キャラクター性以上に、作品全体での現実の解像度を上げるために設定しました。現代社会において多くの方にとって身近でありながら「自分が知らないうちに、然るべき人たちが、勝手にいいように解決してくれている問題」とされている後ろ暗い部分を敢えて書き、「それでも世界は美しい」と伝えたかったんです。
※職場での中田忍の在り様は、己に厳しく、客観的合理主義に徹している
――あらためて、立川先生にとって中田忍とはどんなキャラクターなのか教えてください。
中田忍は「当時の流行の逆張り」に加え、「私の思い描く、最もカッコイイ大人」を繋げて具現化した存在です。斜に構えて冷笑したり、傍観者的視点で救う相手を選ぶような真似はせず、自分の意思で問題に立ち向かう。要領良く解決する能力もないし、欠点も多いけれど、言葉の責任は自分で取り、失敗を重ねても絶対に挫けず、最善の結果のため力を尽くせる。文中の表現でこだわった点として、忍は“知恵”の回転が速いだけで、“頭”の回転が速いわけじゃないんです。頑張って色々アイデアを出すけれど、それをスマートに形にする能力には欠けている。そこがもどかしくて、傍から見ると間抜けに映るんです。見ていて爽快感はないでしょうし、彼を笑う人も多いでしょう。でも、多分ある程度の年齢から、或いは忍と同じように踏ん張りながら社会を生きている方ほど、実は忍に共感したり、めげない忍の頑張りに憧憬を抱いたりするのかな、なんて思うんです。「完璧であること」も大変なのでしょうが、「完璧であろうと挑戦し続けること」はものすごくバイタリティが必要ですし、そう在れなかった方も少なくないはずです。読者の皆様それぞれに、中田忍の生き様を応援してやって欲しいですね。
※主人公・中田忍の生き様にも注目してもらいたいという
――では中田忍以外のキャラクターについても教えていただけますでしょうか。
異世界エルフこと《エルフ》ですが、これは忍たちが勝手に使っている呼称であり、登場時点で「異世界」や「エルフ」を担保する要素は、せいぜい長い耳くらいで、本質的に謎の生物的な存在です。当然日本語も理解できないので、何処から来たのか、どうやって来たのか、何をしにきたのかも一切不明。ただ、《エルフ》の存在と出自は、物語の大切な一要素ではありますが、すべてではありません。本作の主軸には、常に「人間」がいますので。
※中田忍の部屋に突如現れたエルフ
直樹義光は一見無個性なお人よしの忍の親友なのですが、その動向をよくよく見ると、彼の持つ比類なき個性に気付かされるかと思います。本作は登場人物を絞った分、一人一人の造形や描写をディープに掘り下げるよう心掛けました。誰が主人公になってもおかしくない中、一番やべーやつだった中田忍が主人公の物語になったのです。
※中田忍の唯一の親友でもある直樹義光
そして中田忍のカウンターパート、一ノ瀬由奈です。単体で見れば賛否両論立つであろう、奔放で辛辣な彼女のキャラクター性が、忍の「やりすぎている」面を中和し、本作の調和を形作っています。……という聞こえがいい建前はさておき、私はこういうキャラクター性が大好きです。
※中田忍と同じ職場で働く一ノ瀬由奈
――本作はエルフと「出会ってから」の物語ではなく、「出会い」そのものを、観察のごとく執筆されているという点が大きな特徴のひとつだと思います。作中でも実質4日間の出来事に終始しており、そのほとんどをエルフとのコミュニケーションに費やしています。出会いの先の物語を書きたくはなりませんでしたか。
これは担当編集さんにあんまり言っちゃダメって言われてるんですけど、今回書籍化した『公務員、中田忍の悪徳』は、Web公開していた前身作の最序盤部分を材料に、書籍映えする形で新たに書き上げたものなんです。この先のアイデアのようなものは、漠然と自分の中で固まっていますから、その伏線となるような描写もこっそり差し挟んでいます。ただ今回、あらためて「中田忍」と向き合う中で、Web執筆当時よりも自分のスキルが上がっていたり、一度書き上げたからこそより良く描けるアイデアなども生まれているので、今私が想像している以上の結末を、読者の皆様にはお見せできるかもしれません。どのみち「この先」を描く気は満々ですし、どのような手段を用いてでも、皆様へお目に掛けられるよう力を尽くします。なので安心して、「1巻」の気分で書籍をご購入いただければと思います(笑)。
※中田忍とエルフが織り成す先の物語にも期待せずにはいられない
――書籍化にあたり本作のイラストは楝蛙先生が担当されています。お気に入りのデザインやイラストについても教えてください。
本作のイラストレーター様は、私から担当編集さんに頼み込んで、楝蛙先生に依頼していただきました。先程お話させていただいた通り、『公務員、中田忍の悪徳』は「それでも世界は美しい」を皆様へお伝えできるよう願い、執筆した作品です。本作が伝えたいテーマをイラストとして具現化していただけるのは、楝蛙先生をおいて他にないと感じていました。楝蛙先生からも、本作の内容に目を通してくださった上で、イラストを請けたいとお返事いただいたと伺っており、イラストを見る度に喜びを噛みしめています。ちなみに私の一番のお気に入りは、カバーイラストの《エルフ》の下半身です。《エルフ》の服装は、『七年目の浮気』のマリリン・モンローのように、レースカーテンのような白い布をドレス風に纏っている、とだけお伝えしていたんですが、いざ上がってきたデザインでは……絶妙に透けてるんですよ、下半身が。やられた、と思いました。これがプロか、と思いました。そして同時に「この作品は、絶対に成功する」という、形のない確信を抱きました。幸か不幸か初版では、私の拙いSDイラストが載った金帯により隠れていますが、お手元に書籍のある方は、ぜひこっそりとカバーデザインをご確認ください(笑)。
――著者として本作はどんな方が読むとより面白いと感じられると思いますか。
「普段ライトノベルをお読みにならない方」や「かつてライトノベルを楽しんでいた大人」、そして「女性読者」ですね。本作はライトノベル作品でしばしば押される「ファンタジー感」「ご都合感」「ハーレム感」が薄い代わりに、「謎」「伏線」「心理描写」「人間ドラマ」などの要素を強く押し出した、一般文芸とライトノベルの真ん中ぐらいの気持ちで書いています。一般文芸よりはとっつき易く、ライトノベルよりはライト感の薄い、「たのしい小説」として、ライトノベルを読む習慣のない層の皆様へ、ひとつ読書のきっかけになったなら、これに勝る喜びはありません。ただ、中高生のライトノベル読者層を排除するものではないと、はっきり明言しておきます。私自身の十代を振り返ると、実はそんなに幼くなくて、大人が考えるよりもひとつ上の世界を覗きたがっていたことを思い出します。私としては様々な層の方に本作をお読みいただき、「自分は〇〇だけど、こういうところが面白かったよ!」ですとか、「こういうところが共感できたよ!」というところを、教えてもらえると嬉しいです。
――今後の目標や野望があれば教えてください。
『公務員、中田忍の悪徳』を、最高の形で完結させること。これだけです。私はまだ自分自身を「作家」とは認識していなくて、「自分の好きな作品を本にしてもらいに来た、ただの素人」だと考えています。私の考えるプロの「作家」は、自身の作品を客観的に観察できたり、自分の好みや思いと違う次元で作品に手を加え、「書きたい」ではなく「求められている」作品を創れる存在です。今の私はまだ、自分の大好きな作品を、自分の大好きな形で世に出すことしかできません。だから私は、私が世界一面白いと考えている『公務員、中田忍の悪徳』を最後まで書き上げ、読者の皆様に披露し認めてもらうことで、ひとつの区切りを付けたいのです。それができた時、私は初めて「作家」となり、次のステージで作品を創れるようになると信じています。だから今は、『公務員、中田忍の悪徳』の理想的な完結に向けて、全力を注ぎたいと考えています。
――本日はありがとうございました。
<了>
超合理主義者である公務員・中田忍と、未知の塊である《エルフ》との遭遇によって始まる物語を綴った立川浦々先生にお話をうかがいました。《エルフ》との邂逅はもちろん、中田忍の生き様もしっかりとその目に焼き付けてほしいという本作。様々な謎や人間ドラマを時にシリアスに、時にコメディで描く『公務員、中田忍の悪徳』は必読です!
<取材・構成:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>
©立川浦々・楝蛙/小学館「ガガガ文庫」刊
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