独占インタビュー「ラノベの素」 魔石の硬さ先生『転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2022年6月10日にTOブックスより『転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~』第2巻が発売となる魔石の硬さ先生です。生まれながら傀儡の皇帝として祭り上げられている幼子に転生した主人公が、名実ともに帝国を統べる君主になるまでの道のりを描く本作。皇帝という権力者に転生しながらも、トントン拍子では進まない物語の根底にある着想や、物語を支える世界観作りなど様々お話をお聞きしました。

 

 

転生したら皇帝でした2

 

 

【あらすじ】

暗殺に怯える皇帝・カーマインは、"無力な少年"の仮面の下でほくそ笑んだ。夢にまで待ちわびた、悪徳貴族を処刑できる唯一のチャンス――即位式が数日後に迫ってきたのだ。万全を期すため、悪行の裏付けを取ろうと、初めて宮廷外の偵察へ赴くことに。そこで目の当たりにしたのは、領地争いの内乱に巻き込まれ、傷つき貧する民達の姿だった。これ以上誰も死なせない! ビビる心を奮い立たせ、ついに"お飾り帝"の汚名返上へ! 「運命よ、そこをどけ、余が通る! 」 秘めた魔力を解き放ち、自ら剣を手に武力で10年分の倍返し! エスプリ幼帝の痛快王政サバイバルファンタジー第2弾!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

『転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~』でデビューしました、魔石の硬さと言います。日本大学芸術学部の文芸学科を卒業しており、大学では講義や課題で小説を書いていました。ただ、本格的に長い文章を書くのは本作が初めてです。好きなものはゲームで、シミュレーションRPGを昔から遊んでいます。あとは媒体問わず戦記ものが好きで、たくさん読んだり見たりしていますね。

 

 

――戦記ものがお好きとのことですが、どのような作品に触れてこられたのでしょうか

 

最初に触れた戦記ものの作品は、小学生の頃に読んだ田中芳樹先生の『銀河英雄伝説』でした。アニメだと『ガンダム』シリーズも小さな頃から好きでしたし、戦記ものとは少し離れるかもしれませんが、戦国時代の武将にも興味を持っていましたね。

 

 

――魔石の硬さ先生はかなりお若いですが、小学生の頃に『銀河英雄伝説』を手に取るきっかけはなんだったのでしょうか

 

『銀河英雄伝説』は父親の書斎に置いてあったんです。たくさんの本が並んでいたんですけど、ひときわ目立っていたのが『銀河英雄伝説』でした。ほかの本と比べて巻数も多かったので、それで興味を持ちました。小学生ながらも読み始めてからは完全にハマりましたよね(笑)。

 

 

――なるほど。そこから小説を読むことにハマり、自身でも小説を書いてみようと思ったわけですね。

 

そうですね。文芸学科に在籍していた当時は、履修していた講義の関係でライトノベルよりも純文学系の小説を書くことが多かったです。だけど、本数をこなしていくうちに「自分に純文学は向いていない」という思いを抱くようになっていました。そこで自分の好きな戦記ものであれば、という気持ちも湧いて来たんです。ただ、戦記ものについては、読むのはもちろん大好きでしたが、書くとなるとしっかりとした考証や設定が必要だと考えてしまって手を出せずにいました。そんな中、大学3年から4年の頃に大怪我をしてしまい、入院生活を送ることになったんです。数ヶ月にわたって入院生活やリハビリが続いたのですが、この期間に何かやらなくてはと思い、「小説家になろう」で投稿を始めることにしました。そこでスタートしたのが本作です。

 

 

――WEBでの執筆をスタートさせた『転生したら皇帝でした』ですが、書籍化の声が掛かった際はどのような感想を抱きましたか。

 

素直に嬉しかったですね。知り合いにも小説家としてデビューしている人がいて、彼らに感化されて書いている部分もあったので、自分も同じところに立てたなと。あとは、ほぼ同時に複数のレーベルさんから打診をいただいてびっくりしました。

 

 

――ひょっとしたら言いづらいかもしれませんが、打診のあったレーベルの中からTOブックスを選んだ理由は何だったのでしょうか。

 

表紙に子どものイラストを使ってくださるという点が大きかったです。本作は第1巻が幼少期の主人公を描くエピソードということもあり、表紙でも子どもの姿を見せたいと考えていたんです。その点、TOブックスさんは表紙に子どものイラストを使用している前例もありましたし、自分の希望ともマッチしたのが決め手になりました。

 

転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~

※幼少期の主人公の姿が描かれた第1巻の表紙イラスト

 

 

――ありがとうございます。それではあらためて『転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~』がどんな物語なのか教えてください。

 

本作は異世界の帝国に、生まれながらの皇帝として主人公が転生するところから始まります。とは言っても宰相や式部卿などの貴族が専横を極める暗黒期。傀儡としての利用価値が無くなれば、いつ暗殺されてもおかしくない状況でした。貴族たちの目を欺きながら協力者や情報を集めていくカーマインを描いたのが第1巻です。第2巻以降では、カーマインが様々なキャラクターの思惑が交錯する中、いかにして皇帝の座につき、君主としてどのような立ち回りをしていくのかが描かれることになります。

 

 

――本作の着想についても教えてください。

 

「成り上がらない物語」という部分が着想の根幹にあるのかなと思っています。本作の投稿以前から「小説家になろう」で小説を読んでいましたが、その際に感じていたのは持たざる者が力を得て立身出世する「成り上がり系」の作品が多いという事でした。もちろん王道とも言える展開ですので当然面白い作品も多いです。ただ、自分が書くとなると先行する作品に埋もれてしまうのではないかという危惧がありました。本作ではそれらの作品たちと差別化するべく、これ以上成り上がれない位置である皇帝に主人公を据えることで「成り上がらない物語」にしました。

 

転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~

※主人公が転生したのは、これ以上成り上がることができない皇帝という立場だった

 

 

――なるほど。最初から最高位にいるから「成り上がらない物語」なのですね。成り上がり系の作品では、主人公が「力を得る」という点も重要な要素として描かれることが多いですよね。「成り上がらない物語」である本作では、主人公の「力」をどのように描こうと考えられていたのでしょうか。

 

「成り上がらない」という持ち味を活かすため、いかに主人公の持つ力に制限をかけるかという点は意識していました。カーマインは皇帝としての権力や、転生者のアドバンテージである前世の知識に加え、幼少期から魔法を使えるなど多くの力を持っています。ただ、それらの力を使ってすんなりと大帝国を築き上げても面白くないと思うので、周囲に対して都合のいい愚鈍な傀儡を演じなければならないという、主人公が大手を振って力を使えない状況をセッティングしました。本作では「力」を使って大立ち回りをするというよりも、いかに能力を行使できる状況を整えていくのかがメインのお話になっています。切り札はここぞという時に使ってこそ、ですからね。

 

転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~

※駄々をこねたり、時には泣きついたり。巧みな演技と策略で有利な状況を作っていく

 

 

――戦記ものということもあり、本作は世界観や設定もかなり緻密です。設定を考えるにあたっては、何か参考にされたりしたのでしょうか。

 

物語の舞台に関しては、もともと世界観を考えるのが好きだったというのもあり、ストーリーのアイデアが浮かぶ前からある程度できていました。本作はそのあらかじめ考えていた世界の中にちょうどいい国があったので、キャラクターを当て込んで書き始めた作品でもあります。なので、ストーリーを練る時に設定を考えたというより、あらかじめ用意していた舞台をもとに書き始めたというのが、スタートです。

 

 

――なるほど。逆に設定が多い上に物語を成り立たせたという観点からも、設定と物語との整合性を維持するのが一層大変そうですね。

 

そうですね、常に大変な思いをしております(笑)。ただ、あらかじめ設定を細部まで練っていたことが功を奏していて、その設定に沿うことでズレは生まれにくいのかなとも思っています。例えば、本作は魔法がある世界を舞台にした戦記なので、戦争で魔法がどのような使われ方をするのかは、最初の時点でかなり細かく決めていました。戦場で召喚獣やゴーレムを弾除けに使うという発想もその際に考えたものです。ただ、魔法を無制限に使えてしまうと、自分の趣味である大砲や銃などを登場させづらくなるので、魔法一辺倒にならないように条件も付けました。その条件というのが、魔法を使うには空気中の魔力を使う必要があり、使いすぎるとその場所の魔力が尽きてしまい、しばらく魔法が使えなくなるという設定です。

 

 

――魔法の存在を前提に発達した技術や戦術、その隙間に活きる実弾の武器など、歴史小説のようでもありますよね。

 

ありがとうございます。魔法や技術面もそうですが、過去からの時間の流れを意識して作っていたため、「歴史小説っぽさ」に繋がっているのかなと思います。実際の歴史を題材にしている歴史小説は、積み重ねてきた時間の持つ重みと深みをダイレクトに活かすことができます。本作では最初に作品世界の歴史そのものをゼロから作るという方法を採用しているので、史実をもとにしている歴史小説のような深みに繋がっているのであれば、非常に嬉しいです。

 

 

――ありがとうございます。続いて作品世界の歴史を紡ぐキャラクターたちについても教えてください。

 

主人公のカーマインは、歴史好きの転生者にして傀儡扱いを受けている幼き皇帝です。皇帝という立場もあり、貴族や武将からどう見られているのかであったり、彼らの心が離れないよう意識した行動をとったりと、ある意味受動的なキャラクターになっています。常に自分がやりたいことと、やる必要があることの間で板挟みになっているキャラクターですね。

 

転生皇帝カーマイン幼少

※常に貴族や武将から視線を向けられる立場にいる主人公・カーマイン

 

ヒロインのロザリアはベルベー王国という国の王女であり、主人公の婚約者でもあります。彼女もまた、主人公からは何を考えているのかわかりづらい人物で、ヒロインだからといって無条件に信頼できるパートナーというわけではありません。ヒロインという側面と同時に、一国の王女という政治的・外交的にも重要な人物でもあるので、主人公としても距離感を掴みづらいキャラクターになっています。

 

ロザリア

※カーマインの婚約者であり、一国の王女でもあるロザリア

 

ヴォデッド宮中伯は本作で一番設定を盛っているキャラクターです。早い段階からカーマインの協力者に名乗りを上げることになるのですが、なぜ協力してくれているのかが主人公からは非常に見えにくいキャラクターでもあります。カーマインもヴォデッド宮中伯が何をきっかけに敵側へと回ってしまうのかわからないので、協力関係にありながらも警戒しなければならない存在です。

 

 

――ヴォデット宮中伯やロザリアなど、主人公の周囲にいて、味方のように見えるキャラクターでも、基本的には油断できないキャラクターが多い印象です。

 

まさにその通りで、本作では主人公と渡り合える強力なキャラクターをたくさん登場させています。それも、本作で書きたかったことのひとつに「人間同士の駆け引き」があったからなんですよね。本作には耳障りのいい言葉を口にしていても、実は大きな裏があったり、協力的に見えても腹の内はわからないキャラクターが多く登場します。カーマインがそんなキャラクターたちの思惑を推測しながら、一手一手を打っていく姿を楽しんでいただきたいですね。

 

転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~

※人間同士の駆け引きにも注目して読んでいただきたい

 

 

――本作のイラストは柴乃櫂人先生が担当されています。あらためてイラストの感想やお気に入りのイラストがあれば教えてください。

 

本作には宰相や式部卿という年老いた悪役貴族も多く登場するので、イラストレーターの希望を聞かれた際も「悪い表情の老人を描ける方にお願いしたい」という要望をしていました。それで柴乃櫂人先生のお名前が挙がったんです。実際に届いたイラストを拝見させていただいて、宰相も式部卿もいかにも悪そうな渋い顔のキャラクターに仕上がっており、本当に感動しました。ヴォデッド宮中伯も想像以上に深みのある表情にしていただいて、自分の中での宮中伯像がより鮮明になりましたよね。お気に入りといいますか、物語を書く上でも大きな力になるイラストでした。

 

ラウル公

 

アーキカル公

※イメージ通りの悪役だったという宰相(上)と式部卿(下)

 

 

――著者として本作はどんな方が読むと、一層面白く感じてもらえると思いますか。

 

戦記ものが好きな方はもちろん楽しめると思いますし、これまで戦記ものを読んでこなかった人にも、ぜひ読んでいただきたいです。これといった予備知識が必要なわけではないので、気軽に戦記ものに触れるきっかけになればと思っています。

 

 

――発売される第2巻の見どころなどについても教えてください。

 

第1巻では主人公が異世界人として、そして皇帝としての人生を歩み始める物語でした。第2巻では即位式という一大イベントを迎え、晴れて傀儡としてではない、本当の皇帝としてのスタートラインに立つ物語となっています。皇帝としての道を歩み始めるにあたって、カーマインがどんな人間と出会い、どんな会話をして、どんな関係性を持っていくことになるのか注目してほしいです。

 

転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~

※カーマインはいかにして実権を手にするのか注目してもらいたい

 

 

――今後の目標や野望があれば教えてください。

 

目標は本作を完結させることですね。カーマインの生涯とまではいかないですけど、彼が歳を取って次の代にバトンタッチするところまでは書きたいと思っています。

 

 

――本作の読者、または本作を読んだことが無い読者の方へそれぞれ一言お願いします。

 

まずは、読んでくださっている方が少しでも楽しんでいただけるような物語が書けていればと思っております。あとは本作も含めて、戦記ものに興味を持ってくださる方、戦記ものを読んでくださる方が増えると嬉しいなと思います。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

生まれながらの皇帝に転生し、様々な人間たちの思惑が交錯する中で立ち回ってゆく王政サバイバルファンタジーを綴る魔石の硬さ先生にお話をうかがいました。一筋縄ではいかない駆け引きや、作りこまれた世界観による深みも魅力的な『転生したら皇帝でした ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~』は必読です!

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>

 

©魔石の硬さ/TOブックス イラスト:柴乃櫂人

kiji

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