独占インタビュー「ラノベの素」 いのり。先生『勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2023年11月10日に電撃文庫より『勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女』が発売されたいのり。先生です。現在TVアニメも放送中の『私の推しは悪役令嬢。』の著者が送る、新しい学園ガールミーツガールファンタジー。作品の内容についてはもちろん、登場するキャラクターについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女

 

 

【あらすじ】

「キミ、ボクと番〈つがい〉にならない?」「あなたのことは嫌いではありませんが、求婚はお断りします」 人と魔族の戦争終結の後、人類は後継育成のための魔道具『ギア』を用いて勇者学校を設立していた。勇者に憧れる魔族の娘ルチカは、そこに入学しようと訪れた都で、魔王を倒した勇者の娘、レオニーと出会う。彼女を好ましく思ったルチカは、試験の最中にもかかわらず彼女に結婚を申し込む。すげなく却下されてしまうが、ルチカはめげることなく勇者を目指し学校に通い、レオニーとも更に親密になろうと迫り――。ワケあり少女たちのガールミーツガール学園ファンタジー、堂々開幕!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

いのり。と申します。好きなことは食べることと寝ることです。花より団子とはよく言ったもので、美味しいものを食べることが人生のかなり上位の欲求に位置しています。また、嫌いなものは体重計です。それと関係するのですが、最近ハマっているのはウォーキングで、ずっと運動不足が続いていたのですが、先輩の作家さんにお誘いいただいて、ワークアウトのグループに参加していたりもします。このインタビューをしていただいているのはちょうど秋真っ盛りの時期で、ウォーキングにはもってこいの季節だと思います。

 

 

――小説の執筆歴についても教えていただけますでしょうか。

 

大学在学中に富士見ファンタジア文庫さんの新人賞に応募したことがありまして、初応募作品が3次選考までいくなど、小説を書くことが自分に向いているのではと思うようになったことが大きかったです。その後、在学中に病気になってしまい、大学の卒業、そして長い療養期間を経て、今度は「小説家になろう」さんで小説を発表するようになりました。そのうちのひとつに『私の推しは悪役令嬢。』という作品もあり、日間ランキングで1位を取るなど、そこそこの反響をいただきました。ただ「小説家になろう」さん内の公募コンテストに応募したりもしていましたが、結果は奮いませんでしたね。それでも書くこと自体は楽しかったので執筆は続けていたんですけど、後に出版していただくことになるGL文庫さんが、百合作品の原稿を募集しているのを見つけたんです。ダメで元々、という気持ちで原稿を送ったのですが半年くらい音沙汰がなく、忘れた頃に「うちから出しませんか?」というお返事をいただきました。それが私の商業作家デビューになります(笑)。

 

 

――ありがとうございます。それでは早速ですが、新シリーズ『勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女』はどんな内容なのか教えてください。

 

内容としては自分の得意なジャンルであるガールズラブの強みを残しつつ、同時に「~したい」と「~すべき」の対立というテーマを設定した物語になっています。今回は電撃文庫さんからの作品なので、これまで私の作品を読んでくださった方々に楽しんでもらえるように書きつつ、より小説という媒体が持つエンターテインメントの側面を重視しました。老若男女を問わない、幅広い読者さんに楽しんでいただける内容になっていると思います。

 

勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女

※学園を舞台に勇者を目指す少女たちのガールミーツガールファンタジー

 

 

――本作はどういった経緯で執筆をスタートされたのでしょうか。

 

前作の小説『私の推しは悪役令嬢。』の刊行にひとまずの目処がつき、そろそろ次の作品を書きたいと思っておりました。また私は専業作家なので、コンスタントに作品を発表していないと途端に生活が苦しくなってしまうんです。そうして新作を考えていた時に、ストレートエッジの編集さんと知り合い、新作の企画について相談をさせていただき、いくつかあった案の中で編集さんが一番に推してくださったのが本作でした。

 

 

――現在アニメの放送も行われている『私の推しは悪役令嬢。』、そして本作も百合、ガールズラブをテーマにした作品ですよね。本ジャンルはご自身の得意分野とのことで、あらためてその魅力について教えていただけますでしょうか。

 

元々私は小説を書くと、なぜか自然とガールズラブな作品になるんです(笑)。ヘテロな作品も書いたことはあるのですが、どうもしっくりこないんですよね。私にとってガールズラブというのは、息をするように当たり前のことで、なかなかその魅力を客観視するのは難しいです。ただ、世間一般的な意味での百合やガールズラブは繊細で淡い感情を重視することが多いですが、私のそれはよりヴィヴィッドでメリハリのある作品になることが多いです。物語的な仕掛けがあったり、個人の恋愛の話で終わらずに、より広い枠に関係して物語が展開したりすることが多いのも、私のガールズラブの特徴だと思います。先述の王道的な百合やガールズラブも私は大好きでよく読みますが、私が書くようなタイプの百合やガールズラブも面白いと感じていただけたらいいな、と思いながら書いています。

 

 

――では続いて、本作の中心にいる二人、ルチカとレオニーはどんなキャラクターなのかお聞かせください。

 

主人公のルチカは元気いっぱいな魔族の女の子です。あまり深く悩まずに動物的な嗅覚で行動するキャラだと思います。今作の作品世界では、魔族にとって同性同士の恋愛は普通のことなので、レオニーに求婚するときも「好き」という気持ちに素直で同性に惹かれたことにも特に悩みがありません。良くも悪くもアクティブな子なので、物語を駆動するアクセルの役割を担っています。

 

ルチカ

※自由という言葉がぴったりな勇者を目指す魔族の少女・ルチカ

 

逆にヒロインのレオニーは思慮深く冷静な子です。勇者の娘であることもあり、色々と重たい背景を背負っている子で、読者さんが共感するのはむしろヒロインである彼女かもしれませんね。人族にとって同性愛はタブーなので、そこに悩む役割を担うのも彼女の方になります。ルチカとは対照的に悩んでしまう子なので、動か静かでいえば「静」の部分を担うことが多いと思います。

 

レオニー

※勇者であることに固執する少女・レオニー

 

 

――ルチカ、レオニー以外にも様々なキャラクターが登場しますが、第1巻で特に思い入れの強いキャラクターを選ぶとすると誰でしょうか。

 

やはり主人公のルチカには思い入れが強いです。前作『わた推し』のレイもそうでしたが、同性に求愛するという行為が私にとっては重要らしく、その主体であるルチカはやはり特別です。もっとも、前作のレイがそれなりに同性愛について思い悩んでいたのに対して、ルチカはあまりそこには悩みがありません。私自身は色んな事に悩んで身動きが取れなくなってしまうタイプなので、自分を反面教師にしつつ明るくて前向きな女の子を楽しく書かせていただいています。

 

 

――ありがとうございます。また本作は、ルチカの自由奔放さが目立つ一方で、勇者の血を継ぐ少女たちの多くが、その血脈に縛られての不自由さ、閉塞感を抱えていることも、ある意味で対称的でもあり、非常に印象的でした。

 

そうですね。人間って何かしたいなあと思っても、色々な問題があって案外それを自由に実行できないと思うんです。例えば能力不足だったり、未知への恐怖だったり、育ちや経済状況などの環境だったり、義務や世間体みたいなややこしいものだったり、色々なものが選択肢を狭めることが多いと思います。でも、ちょっと立ち止まって、自分の中にある「何かをしたい」という気持ちとその価値を見つめ直せたらいいなと思うんです。義務や正しさからくる「~べき」が何かと重視される昨今、「欲求」や「意思」の価値を今一度問い直してみたいです。

 

 

――あわせて世界観についても触れたいのですが、ギアの存在も非常に大きな要素として描かれているかと思います。あらためて作品世界における注目ポイントを教えてください。

 

作品世界において、人類は魔族との戦争に勝利しました。ですが、その後に続く世界は必ずしも完璧な平和ではなく、ある種のディストピアめいたものになっています。ギアは簡易的な未来予測と個人の才能判断すらしてみせますが、それが果たして喜ぶべきものなのかどうか。そんな世界の中で色々なしがらみに囚われているレオニーが、破天荒なルチカと出会うことでそれらとどう向き合うのか、ぜひ注目しつつご覧になって欲しいです。

 

勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女

※魔族の少女と人族の少女との出会いが世界を変えるきっかけになるのかもしれない

 

 

――ありがとうございます。そして、書籍化に際してはイラストをあかもく先生が担当されました。あらためてビジュアルを見た時の感想や、お気に入りのイラストについて教えてください。

 

あかもく先生には素晴らしいイラストと挿絵を描き下ろしていただきました。どれも素敵なイラストですが、なんと言ってもやはりカバーのイラストが最高です。ルチカの天真爛漫な感じ、レオニーの思慮深い感じ、背後に描かれた世界の広がりなど、魅力的な物語を予感させるには充分すぎるカバーだと思います。私の書いたものが、先生のカバーに見合うものであることを願ってやみません。

 

勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女

※いのり。先生も絶賛するカバーイラスト

 

 

――あらためて、著者として本作の見どころや注目してほしい点はどんなところでしょうか。

 

『ボクキミ』は「~したい」と「~すべき」の物語なので、本当はなにかしたいことがあるのに、それを何らかの理由で諦めている人には読んでいただきたいですね。あと、百合やガールズラブを愛好している皆さまはもちろんのこと、悩みすぎ・考えすぎの傾向がある人や意志の弱さを感じている人などにも響くのではないかなと思っています。少し堅い書き方をしましたが、『ボクキミ』は一種のラブコメ的な側面も持ち合わせていますから、恋愛の話を楽しく読みたい方にも楽しんでいただけると思います。

 

 

――今後の野望や目標があれば教えてください。

 

あまり大それたことは思っていなくて、長くこの職業を続けていけたらいいなと思います。私は専業作家で職歴もなく、望んでライトノベル作家になったというよりは、これ以外の生き方がなかったという方がしっくりきます。本作のテーマはもしかしたら、そういう自分自身への問い直しの側面もあるかもしれませんね。専業である以上、作品をコンスタントに売っていくことにシビアさがあります。もちろん、『わた推し』の時のようなヒットやメディアミックスに繋がれば言うことはないですが、まずは一定の水準の売り上げを達成することを目指したいです。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

勇者を目指す自由な魔族の少女と、勇者の血を継ぎ、勇者であることに縛られる少女達のガールミーツガールを綴ったいのり。先生にお話をうかがいました。見どころは百合やガールズラブだけでなく、様々なものを抱え、ギアに囚われている少女たちの姿からも目が離せない本作。学園を舞台に破天荒な少女と生真面目な少女が勇者を目指す『勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女』は必読です!

 

<取材・構成:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

©いのり。/KADOKAWA 電撃文庫刊 イラスト:あかもく

kiji

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勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女 (電撃文庫)

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