独占インタビュー「ラノベの素」 駄犬先生『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』&『誰が勇者を殺したか』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2024年1月19日にGCN文庫より『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』第2巻が発売された駄犬先生です。本作はもちろん、スニーカー文庫より刊行されている『誰が勇者を殺したか』をはじめ、デビュー前にWEB連載5作品の書籍化が決定するなど、大きな話題を呼んでいます。あとがきでも記された「本屋大賞」への思いや、書籍化される各作品についてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件&誰が勇者を殺したか

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

駄犬といいます。出身は千葉県で、現在は愛知県に住んでいます。経歴としてはずっと会社員です。執筆のきっかけは、子供の受験が一段落し、空いた時間が一気に増えたことが大きかったです。これと言って今は好きなものもなく、長らく「マジック・ザ・ギャザリング」っていうカードゲームをやっていたりもしたんですが、次第に興味も薄れてしまって……。漫画やアニメも好きだったんですけど、年齢を重ねるにつれてどんどん離れてしまいました。そういった自身を誘惑する娯楽コンテンツから離れていったことも大きいかなと思います。本当に今は小説を書くくらいしかやることがなくなってしまったんですよ。なので、現在は趣味が執筆みたいなところもありますし、年齢的にも自分のアイデンティティを求めているところがあったのかもしれませんね。

 

 

――年齢を重ねるごとに娯楽コンテンツへの興味が薄まっていってしまったんですね……。

 

そうなんですよ。40歳を超えたあたりからだと思うんですけど、じょじょにそういったコンテンツに触れるモチベーションが下がっていきました。それこそ大学生の頃なんかは、2クール分のアニメをぶっ続けで見ることだってできたわけで……。ただの老化だとは思うんですけど、集中力がなくなってきたんですかね。

 

 

――趣味が執筆とのことでしたが、執筆をされていない時はどんなことをして過ごされているんですか。

 

それが本当に何もしていなくて、他にやることもないから執筆をするしかないんですよ(笑)。昔は毎週図書館に通っていたりもしましたけど、コロナあたりを契機にそういうこともしなくなっちゃって。会社でもずっと携わっていた仕事から手が離れた状態でもあったので、何かしないとなっていう感じではあったんです。

 

 

――なるほど。駄犬先生は「小説家になろう」を読者として使われていたりはしたんでしょうか。

 

「小説家になろう」は5年程前から読んでいました。もともと本が好きですし、気軽に読めるのもいいじゃないですか。最初は『転生したらスライムだった件』や『無職転生』といった有名どころを読んで、そこから年間ランキングや月間ランキングの作品にも目を向けるようになっていきました。そこからさらに週間ランキングや日間ランキングにも目を通すようになって、次第に「うーん」って思うようになっていったんですよね。

 

 

――「うーん」とはどういう感情で?

 

今は違うんですけど、昔は書籍編集の仕事をやっていたんです。パソコンとか携帯電話、懐かしのアニメや漫画の特集とかをメインでやっていて。一度だけライトノベルに関連するお仕事にも携わったりもしましたけど。ただ、編集者の仕事は時間も不規則ですし、結婚して子供が生まれたタイミングをきっかけに転職をしたんです。で、月間や週間、日間の書籍化が決定したっていう作品を読んでいた時に、「どうしてこの作品に編集者は声をかけようと思ったんだろう」って考えるようになっていったんです。

 

 

――ジャンルは違えど編集者の経験と視点で気になり、その感情がご自身の執筆活動に繋がるきっかけのひとつになったわけですね。あらためてになるのですが、小説家を目指した理由についても教えてください。

 

小説家にはなれるものならなってみたいと、漠然とですけど昔から思ってはいました。それこそ「小説家になろう」で投稿する15年くらい前でしたかね。一度だけ単身赴任のようなタイミングがあり、持て余していた時間の中で小説を一本書き上げたんです。それでライトノベルの公募に応募してみたのですが、結果は一次選考も通りませんでした。自分には才能がなくて、ダメなんだなと思いました。

 

 

――公募でライトノベルというジャンルを選ばれたとのことですが、なぜライトノベルだったのでしょうか。

 

僕自身、ライトノベルはほとんど読んでないんです。それこそ20年くらい前に、一度だけ仕事でまとまった冊数を読んだくらいで。ただ、方向性はアニメや漫画に近いものを感じていましたし、自分も好きだったので、書くならライトノベルというジャンルがいいなと思いました。

 

 

――その後しばらくしてから、小説投稿サイトに作品を投稿をするようになったかと思うのですが、あらためて公募への再チャレンジは考えなかったのでしょうか。

 

それは思わなかったです。なんとなく公募はもう通らないだろうと思っていました。ただ、ここで先ほどの「うーん」に繋がるんですけど、小説投稿サイトなら自分にも作家になれるチャンスがあるんじゃないかって思えたんですよ。これはあくまで読者だった当時の視点ですけど、一般文芸が好きで読んでいた身からして、仕事で読んだライトノベルへの印象は玉石混交でした。それから20年近くが経ち、「小説家になろう」を読んで感じたのは、相対的に石が増えたんじゃなかろうかっていう。これはライトノベルを読んできた世代の人たちが、ライトノベルを書くようになったことも作用したんじゃないかって感じたわけです。自分が浅田次郎先生や東野圭吾先生のような作品を書けるとは思ってなかったですけど、作家になる道として「小説家になろう」からであれば、自分にもチャンスがあるんじゃないかと。なので自分としては勝率の高い勝負をしに行ったつもりでした。それが『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』。でも結果は、1年間ひとつのコメントもありませんでした……。

 

モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件

※満を持して投稿した『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』は1年間鳴かず飛ばずだったという

 

 

――その当時のお気持ちは……。

 

感情としては結構めちゃくちゃでしたね(笑)。それこそ日間ランキングの上位を覗きに行って、なんで自分の作品が上に行かないんだ、おかしいだろうって思ったりしてました。もちろん自分の作品がとてつもなく凄い作品だなんて欠片も思っていなかったですけど、それでも納得はできなかったですし、意味も分からなかったんですよね。

 

 

――その苦い経験を経て、次に投稿されたのが『誰が勇者を殺したか』でした。そしてご自身を取り巻く状況は大きく変わることになります。

 

そうですね。すごく率直な感想としては、真面目な物語もちゃんとウケるんだなっていうことでした。『モンスターの肉』に関しては、ラノベっていうか、なろうってこんな感じなんだろうっていうイメージに寄せて執筆したんです。でも『勇者』は真面目に書いたので、これでもよかったんだって思いました。

 

 

――ありがとうございます。そして『モンスターの肉』、『誰が勇者を殺したか』の2作品の刊行が昨年よりスタートしました。既に刊行されている2作品を含め、デビュー前に連載していた5作品の書籍化が決定するという、駄犬先生自身が大きな話題にもなりました。あらためて当時のお気持ちもお聞かせください。

 

まず経緯から触れようと思うんですけど、『誰が勇者を殺したか』と『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』については、同じ日に書籍化の打診がきました。当時は『誰が勇者を殺したか』が注目を集めていたので、『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』で打診をしてきたマイクロマガジン社さんは、書籍化したい作品のタイトルを間違えているんじゃないかって率直に思いました。一方のスニーカー文庫さんは、具体的にどの作品とまでは書いていなかったんですけど、結構シンプルな感じで打診をいただいて。その翌日にはまたいくつかの出版社さんからも『誰が勇者を殺したか』に打診をいただきました。メールの文面の書籍化に対する情熱がすごかったんですけど、いち早く打診をしてくれたことは情熱の裏返しでもあるんだろうと思い、『誰が勇者を殺したか』についてはスニーカー文庫さんにお返事をしました。

 

誰が勇者を殺したか

※『誰が勇者を殺したか』は連絡が一番早かったスニーカー文庫が射止めることに

 

 

――早い者勝ち的な感じだったんですね(笑)。

 

ただ、早い者勝ちで決めた時に読者さんから、「早い者勝ちで決めない方がいいですよ」って言われて、「なるほど、そういうものなのか」とも思いました(笑)。ただ、それ以降の作品に関しては、最初の打診から1週間くらい待つようにしてみたんですけど、特に来なかったので別にいいかと。結局、複数の出版社から一気に連絡が来たのは『誰が勇者を殺したか』くらいでしたね。

 

 

――なるほど。その後の作品については書籍化に際して悩むことはなかったんですね。

 

そうですね。『追放された商人は金の力で世界を救う』も投稿してから約2週間で主婦と生活社さんからオファーをいただきましたし、『死霊魔術の容疑者』もそのくらいのタイミングでマイクロマガジン社さんからお声がけいただきました。『悪の令嬢と十二の瞳』に関しては、『勇者』と『モンスターの肉』の書籍化決定記念みたいな感じで、読者にアプローチできたらと思って投稿していた作品だったんですけど、連載半ばくらいにオーバーラップさんから打診をいただきました。『悪の令嬢』については、打診段階で想定している物語の結末ではないと思うので、最後まで読んでから判断した方がいいですよと、ご連絡させていただいたりもしましたね。

 

 

――結果、デビュー前に5作品の書籍化が決まったわけですが、作業量に対する不安や心配はありませんでしたか。

 

すごく考えたのは、本当に売れるのかな、大丈夫なのかなっていう疑問が中心だったと思います。作品自体はベースが出来上がっていましたし、加筆修正をどの程度やるのかというお話がメインだったこともあり、作業量としてもそこまで大変だったわけではなかったです。加筆についても一応編集者さんにお聞きするんですよ。打診をしてきたからには、何か加筆してほしいところがあるんだろうなって。実際は参考になったり、ならなかったりするんですけど(笑)。

 

 

――編集者さんも試されていますね(笑)。

 

試すつもりは別にないんですけどね(笑)。でも最初は3作品の書籍化が立て続けに決まった時、それぞれの編集さんとじっくり話し合う時間も多くなり、非常に大変になるのではと思ったので、締切もやや長めにしてもらったりしたんです。でも蓋を開けてみたら、思ったほど大変ではなくて。もっと直しがいっぱいくるのかと思っていたら、全然来なかったんですよね。それこそ『誰が勇者を殺したか』については、まったく指摘がなかったです。「ライトノベルってこんな感じなのかな?」と思っていました。編集さんもひとりで作家さんをたくさん抱えているみたいなので、ひとりにそんなリソースはさけないのかなと。後々聞いたら、修正させる時はちゃんと時間をかけて修正させているみたいですけどね。自分は単に直しが少なかっただけだったようです。

 

 

――ありがとうございます。そうして書籍化が決定し、作家としてデビューをされました。作品はもちろんなのですが、『勇者』のあとがきでも書かれていた「本屋大賞が欲しい」という言葉も印象的でした。

 

順番としては、作家になれた以上は「本屋大賞」も狙っていきたいよねって感じです。ただ、こういった賞はシリーズものだと非常に引っかかりにくいイメージがあります。一方でライトノベルの多くがシリーズ展開を前提にしているわけじゃないですか。でも自分は単巻でいいと思っていて、1冊で綺麗にまとめる作品を書いていきたいというのが希望です。もともとファンタジーっていうジャンルは人を選ばないですし、読者層も広くとれるはずなので、ライトノベルでも狙えないことはないんじゃないかなって思ってます。なので、僕は単巻でいいので、狙えるなら積極的に「本屋大賞」を狙いたいって感じですね。

 

誰が勇者を殺したか口絵01

※『誰が勇者を殺したか』のあとがきには「本屋大賞」への思いも綴られていた

 

 

――なるほど。駄犬先生のWEB投稿作に関しては、『モンスターの肉』を除くと、文字数としては1冊に収まる物語が多いですよね。そこはやはり1冊のボリューム感を意識されていたのでしょうか。

 

いえ、そこは何も考えてないです(笑)。これは単純に、自分の考えたストーリーを書き連ねたら結果として7万文字前後になることが多かっただけなので、具体的に文字数を意識したことはありません。ただ、物語のエンディングは書き始める前から決めていることがほとんどなので、毎回長い物語にはならないだろうと思いながら執筆しています。長期シリーズを見据えての結末を考えることはないというか……むしろ逆にみなさんがどうしているのかが不思議なくらいです。それこそ『モンスターの肉』でやろうとしたけど、うまくいかなかったわけで……。それに1冊で終わった方が、物語としては美しいと自分では感じます。最初から最後まで綺麗に作り込めるので、読者もイメージしやすいんじゃないでしょうか。そこは読者からの見え方としても長期シリーズとは違うところなんじゃないかなと思いますね。それにしても『勇者』の2巻の発表は早すぎじゃないかと……。

 

 

――第1巻の発売から間もなくの発表でしたよね。

 

僕としては、初速がそこまでよかったと思っていなかったので、「次はないですね」って連絡がくるんだろうと思っていたんですけど。もちろん書籍化に際しては、続刊も考えたいというお話はスニーカー文庫さんからもありましたし、ライトノベルの戦略としても継続する意味は理解していたので、書くには書くつもりでいたんですけど。一応方向性は決まっていますけど、これからって感じです。

 

 

――なるほど(笑)。とはいえ、その後重版も複数回にわたって行われるなど、かなりの勢いで反響は広がっていったと思うのですが、ご自身はどのように受け取られていましたか。

 

重版に関しては、もっと早くできなかったのかなとは思いましたけどね(笑)。営業としての判断とか難しいところがあったとは思うんですけど、ネットショップもほぼすべてが売切れ状態でしたし、ハラハラしていました。なので、重版に対しては喜びというよりも安心という気持ちが強かったように思います。

 

 

――反響に関しては『誰が勇者を殺したか』の声が大きかったとは思うのですが、同時発売となった『モンスターの肉』への反響はいかがでしたか。

 

おっしゃる通り、『勇者』と比較すると少なくはありました。比べるようなものでもないとは思うんですけど、個人的には『モンスターの肉』の感想を見かけると、ちゃんと読んでくれている人がいるんだって嬉しくなります。『勇者』と『モンスターの肉』はそもそも成り立ちのベクトルも違いますし、シリーズものなので人気が出てくれないと困るなとは思っていたので、そういう意味でも2冊同時刊行の相乗効果はあったと思います。『勇者』が面白かったから『モンスターの肉』も読んでみようっていう声もいくつか見かけましたし、僕としてもこの2冊は是が非でも一緒に出したいと考えていました。

 

 

――物語の成り立ちというお話も少しありましたので、あらためて駄犬先生が小説を執筆する上で考える作品への着想についてもお聞かせいただきたいです。

 

『モンスターの肉』はコメディで、『勇者』はシリアスだと思うんですけど、コメディを書いたらシリアスを書こう、シリアスを書いたらコメディを書こう、基本こんな感じです(笑)。コメディを続けて書くとか、シリアスを続けて書くとか、連続で書くと精神的に疲れちゃうんですよ。肩肘張らなくちゃいけない作品と、少し肩の力を抜いて書ける作品と、交互に書くことが多いです。『死霊魔術』を書いた後もめちゃくちゃ疲れたんですよね……。

 

 

――独自の執筆サイクルがあるんですね(笑)。物語の骨子を考える上ではいかがですか。

 

やっぱり過去に読んだ小説、映画の影響は大きいなと思います。子供の頃から、自分もこういう物語を作りたいって想像することはたくさんありましたし、そういった記憶を拾ってきて、繋ぎ合わせているイメージです。ただ、最近執筆するコメディ作品については、自分の悪いところが出てるなとは思うんですけど。

 

 

――悪いところというと、具体的にはどんなところですか。

 

たとえば、追放ものの作品って、自分は追放された瞬間が物語としてのクライマックスだと思ってるんですよ。なので、追放が作品の序盤に描かれている作品を読むと、出オチ感が否めなくて。なので、出オチに負けないエンディングの作品を書いてみようとか。あとは悪役令嬢ものって、全然悪役じゃないから、ちゃんとした悪役を作ろうとか。そういったメタ的な考え方で書こうとしちゃうことが多いんですよね。

 

 

――なるほど。『誰が勇者を殺したか』についての着想はどのような感じだったのでしょうか。

 

ある意味『勇者』が一番酷いまであります(笑)。まず、インタビューの原稿を3つ書きました。すべてはそこからスタートして、結末も何も決まっていなかったんです。この3本のインタビューは『モンスターの肉』より先に書いたもので、執筆時点で暗い話だしウケそうにもないからやめて、『モンスターの肉』を書こうと切り替えていました。でも『モンスターの肉』には読者からの反応もなく、それならこっちを真面目に書こうと思って取り組んだ感じです(笑)。『勇者』に関しては全部書き上げてから一話ずつ公開したんですけど、最初は反響も少なくて。でも完結した直後くらいから反響が広がり、そこで初めて完結した作品を読む層がいるんだっていうことを知りました。次第にアクセス数も上がっていって、たくさん感想もいただいて、「よかった。次も頑張ろう」ってなりましたね。

 

 

――投稿時の読者からの反応に関しては、『モンスターの肉』についた最初のレビューにもあとがきで触れられていましたよね。

 

レビューが付いたのは完結させた後でしたね。なんというか、本当に報われました。今だから言えますけど、『モンスターの肉』を書き終えた後、一切読者からの反応がなかったという落胆もあって、次回作まで一定の期間を設けようと思っていたんです。そんな時にレビューがつき、その内容も作品というより僕自身に対するレビューだったんです。「力のある作家さんだと思います」と。そのひとつの感想がもらえたことで、間を空けずに次の作品を投稿しようとなりました。あのレビューがなければ、『勇者』の投稿はもっと遅れていたと思います。

 

 

――最初にレビューを書いた方は、駄犬先生の次回作を早めるというファインプレーでしたね。

 

本当にそうですね。その方には助けられました。そしてその後『勇者』がヒットしたので、その感想を送ってくれた方へぜひ読んでみてくださいってメッセージを送りました。ただ、あれ以降ログインはしていないみたいで、その後もずっと反応はなかったです。

 

 

――すごく数奇な運命を感じてしまうお話でした。また、インタビューを実施するに際して、各作品の担当編集者より、作品の魅力についてお聞きしました。そこではみなさんが声を揃えて、駄犬先生の「構成力の高さ」に注目をされていました。ご自身としては、構成力についてどのように捉えてらっしゃいますか。

 

構成力に関しては、特に自分が優れていると思ったことはなくて、至って普通だと思ってます。自分の作品を客観的に見られないんでわからないですけど、一般文芸と比べてすごいという話なのか、ライトノベルの中で比べてすごいという話なのか。もしライトノベルと比べてすごいという話なのであれば、ライトノベルはそもそもそういうものではないのではと思ってしまいますね。さきほども名前を出させていただきましたが、恐らく僕は浅田次郎先生と東野圭吾先生の影響を受けていると思います。若い頃からおふたりの作品が好きだったもので。たとえば『勇者』だと、『壬生義士伝』っていう浅田次郎先生の作品の影響があります。インタビュー形式で人物像を浮かび上がらせていく、そんな作品を書いてみたいと思っていました。『モンスターの肉』もいろいろあって、『ファイブスター物語』や『ファイアーエムブレム』の影響もあるかなと。読者さんからはよく『オーバーロード』を引き合いに出されるんですけど、自分の場合勘違い系で思い浮かべるのは昔のヤンキー漫画です。『カメレオン』とか『エリートヤンキー三郎』とか、ああいうノリで書いた作品だったりします。自分が10代や20代の頃に読んだものや触れたものの影響が、自分の作品には強く出ているのかなと思います。

 

 

――これから刊行を控えている3作品についても、影響を受けた作品はあったりするんですか。

 

『追放商人』は特にこれというのはありません。しいて言うなら世界観が『ドラクエIII』みたいってことでしょうか(笑)。『死霊魔術』は映画の『ユージュアルサスペクツ』みたいなことをやってみたいという思いはありました。『悪の令嬢』は映画『フルメタル・ジャケット』の影響を受けていると思います。自分の作品は「こういう作品が作りたい」がひとつ大きなきっかけになっているものが多いかもしれませんね。

 

 

――書籍化に際しては、ご自身の作品にイラストも描かれました。あらためて感想をお聞かせください。

 

まず『モンスターの肉』ですが、自分の作品にイラストがつくということに対して、率直に感動しました。自分は小説を執筆する際、キャラクターのビジュアルをほとんどイメージしないので、あらためてこんな外見をしていたんだなって思わされることになりました。芝さんもすごい実力のある方なので、この方に描いていただけて本当によかったなって思います。特にカバーがお気に入りで、こんなにすごいカバーはなかなかお目にかかれないんじゃないかってくらい凄いと思ってます。カバーについても2案あり、ヒロインのフラウも前面に出ている方が採用され、その結果、外伝を書こうという話にも繋がりました。採用されなかったもう一案は口絵として収録されているので、ぜひ見ていただけたらと思います。

 

モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件

 

モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件

※カバーに採用されたイラスト(上)と、口絵として収録されたカバー候補だったイラスト(下)

 

『誰が勇者を殺したか』についてもよかったですね。カバーの表紙については担当編集さんの発案で、ちょっとドタバタしたところもありましたけど、toi8さんのイラストも素晴らしかったですし、担当編集さんの方向性もバッチリだったんじゃないかって思います。個人的に一番印象に残っているイラストは、冊子収録以上に、toi8さんが描いてくださったカウントダウンの応援イラストでしたね。後は「(厭な眼で)マリア様がみてる」のイラストとか(笑)。

 

誰が勇者を殺したか

※方向性もバッチリだったというカバーイラスト

 

『死霊魔術の容疑者』についてはカバーがとにかく素晴らしいです。遠田志帆さんに担当していただいているので、ぜひ楽しみにしてほしいです。作品の内容については、真面目に書いた作品ではあるんですけど、反響はそれほど大きくはなく、でもレビューは『勇者』の次くらいについているので、好きな人には好きな作品になっていると思います。遠田さんのイラストをきっかけに多くの方へ届いたらなと思います。

 

『追放された商人は金の力で世界を救う』のイラストは、叶世べんちさんに担当していただいていて、イラストも順次到着している段階なので、こちらも楽しみにしてもらえたらなと思います。

 

追放された商人は金の力で世界を救う

※カバーイラストも早速到着!

 

 

――あらためて現在刊行されている作品、そして今後刊行を控えている作品について、見どころを教えてください。

 

『モンスターの肉』は2巻も面白いと思います。何がっていうよりも、とにかく気楽に楽しんでもらえたら嬉しいですね。注目はカーミラっていう新キャラクターでしょうか。あわせてフラウにも注目してほしいです。1巻以上にマルスの意図を、周囲がより勘違いして深読みが加速していきます。そして1巻以上に加筆も多くなっているので、従来の読者さんにも楽しんでもらえるんじゃないかなと。ぜひ気楽に読んでください。

 

モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件

※2巻より登場する新キャラクターの動向はマルスにどんな影響を及ぼすのか

 

『勇者』については2巻の準備も順次進めていますが、読者のみなさんにはぜひハードルを下げていただけると嬉しいです(笑)。あくまで個人的にではありますが、2巻については1巻を前提に読んで欲しいとは思っていません。もちろん同じ世界なので、1巻に登場した彼らも出てくるとは思いますが、テーマはがらりと変わります。ぜひフラットな感じで読んでいただけたらなと思います。

 

『追放商人』は、追放ものだと思って読んでいただけたら楽しめると思います(笑)。こちらはコメディの作品なので、楽しく読んでいただけたら嬉しいですね。

 

『死霊魔術』はとある女の子のインタビューを通してある事件の真相に迫るお話です。『勇者』を読んでくださった方は楽しんでもらえるのではないでしょうか。一昔前には永遠の命が大きなテーマとなっていた作品も多かったと思うんですけど、最近は見かける回数も減りました。みなさんの長生きへの執着がなくなっているのかなとは思いつつ、人の価値をテーマに据えた作品ですので、楽しんでいただけたらと思います。

 

『悪の令嬢』は人生をやり直して頑張るお話です。物語のテーマはなぜ断罪されたのか。何が問題で何が原因だったのか。ちょっとメタ的な部分もあって、やり直しにおける精神的な年齢の積み重ねもテーマのひとつになっているかなと思います。たとえ18歳で断罪されてしまう未熟な人間であっても、そこから繰り返し精神の年齢を積み重ねることによって、人は変わっていくんじゃないか。いつまでもそのままではなく、悪であっても変わっていくんじゃないか。周りに気づかされることもあるんじゃないかっていうそんな物語です。とはいえコミカルな物語なので、真面目な話だと思って読まれると逆に困ってしまいます。そこのところ、何卒よろしくお願いします(笑)。

 

基本的に刊行を控えている作品は、1冊でも満足できる作品になっていると思いますので、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。

 

 

――今後の目標や野望についても教えてください。

 

作家を続けていくのであれば、「本屋大賞」は狙っていきたいです。1冊で綺麗な作品を書き続けて、ラノベ好き以外の層に向けても作品を出していきたいです。とはいえ、ずっと書籍化の打診が続くとも思っていないので、どこまでやれるかなってところです。新作については『勇者』の2巻に目途がついたら書こうと思ってます。

 

 

――それでは最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。

 

『勇者』の2巻に期待してくださっている方も多いと思いますが、それも含めて今後刊行される作品も一緒に読んでもらえたら嬉しいです。自分の中では『モンスターの肉』以外の作品は、1冊で満足度の高い物語を作っているので、ぜひ他の作品にも興味を持っていただければ。この先、自分という作家に対して、この人は一発屋だったなと思われたらそれはそれでしょうがないんですけど、継続して面白いと思っていただけるよう、期待に添えられるよう頑張っていきたいと思います。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

 

<了>

 

 

デビュー前に投稿5作品の書籍化が決定、発売された『誰が勇者を殺したか』でも非常に大きな話題を呼んでいる駄犬先生にお話をうかがいました。多くがシリーズ化を目指すライトノベルという媒体において、1冊で満足できる物語へのこだわりを言及する姿勢など、新たな風を呼び込むきっかけになるのかもしれません。既に発売されている『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』、そして『誰が勇者を殺したか』に続き、駄犬先生の作品は順次刊行されていきますので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

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©駄犬/オーバーラップ

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[関連サイト]

『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』特設サイト

『誰が勇者を殺したか』特設サイト

『誰が勇者を殺したか』公式SNS

GCノベルズ&GCN文庫公式サイト

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モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件 2 (GCN文庫)
誰が勇者を殺したか (角川スニーカー文庫)

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