【特集】驚異の新人作家・駄犬先生の担当編集スペシャル座談会 駄犬先生の魅力語り&WEB小説書籍化の流れについて聞いた!

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2023年にスニーカー文庫刊『誰が勇者を殺したか』、GCN文庫刊『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』が発売され、2024年も続々と書籍の刊行を予定している駄犬先生の担当編集者4名にお集まりいただきました。デビュー前にWEB投稿5作品すべての書籍化が決定した異色の作家に、各編集者はどのタイミングでアプローチをかけ、その魅力を見出だしたのか。WEB小説の書籍化の流れや注目すべきポイントなどにも触れながら、駄犬先生の作品の魅力、そしてライトノベル編集者の仕事内容にも迫る貴重なお話を座談会形式でお届けします。

 

 

駄犬先生担当編集者座談会

 

 

【座談会参加者】

■スニーカー文庫担当編集(SN担当編集)

駄犬先生の担当作は『誰が勇者を殺したか』

その他担当作に『なぜかS級美女達の話題に俺があがる件』、『お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について』など

 

■GCノベルズ&GCN文庫担当編集(GC担当編集)

駄犬先生の担当作は『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』、『死霊魔術の容疑者』

その他担当作に『霜月さんはモブが好き』、『あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です』など

 

■PASH!ブックス&文庫&コミック担当編集(PA担当編集)

駄犬先生の担当作は『追放された商人は金の力で世界を救う』

その他担当作に『スープの森』、『ダンジョンコア食ってみた★殺されたらゾンビになったので進化しまくって無双しようと思います』など

 

■オーバーラップ担当編集(OL担当編集)

駄犬先生の担当作は『悪の令嬢と十二の瞳』(仮タイトル)

その他担当作に『現実主義勇者の王国再建記』、『サモナーさんが行く』など

 

 

――今回は編集者4名の座談会という形式でいろいろお話をお伺いできればと思います。それではみなさま、自己紹介からお願いできますでしょうか。

 

SN担当編集:角川スニーカー文庫編集部の担当です。駄犬先生の作品では『誰が勇者を殺したか』を担当しております。そのほかの作品では『なぜかS級美女達の話題に俺があがる件』、『お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について』、『隣の席のヤンキー清水さんが髪を黒く染めてきた』など、ラブコメからファンタジーまで幅広く担当しております。

GC担当編集:マイクロマガジン社のGCノベルズ&GCN文庫編集部の担当です。駄犬先生の作品では『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』、そして3月発売予定の『死霊魔術の容疑者』の2作品を担当させていただいております。他の作品ですと『霜月さんはモブが好き』、『あの乙女ゲーは俺たちに厳しい世界です』などを担当しています。

PA担当編集:主婦と生活社の文芸コミック編集部の担当です。担当レーベルとしてはPASH!ブックス、PASH!文庫、PASH!コミックスなど、ノベルと文庫と漫画、混在しながら担当をさせていていただいております。駄犬先生の作品では『追放された商人は金の力で世界を救う』を担当しています。その他の担当作としては『スープの森』や『ダンジョンコア食ってみた★殺されたらゾンビになったので進化しまくって無双しようと思います』など、異世界恋愛作品やハイファンタジー作品を中心に担当しています。

OL担当編集:オーバーラップのライトノベル編集部の担当です。駄犬先生の作品では『悪の令嬢と十二の瞳』を担当させていただいています。まだこちらは仮タイトルで、正式なタイトルは決定次第あらためて告知させていただく予定です。オーバーラップには昨夏に転職したばかりで、主に引継ぎが中心になるのですが、『現実主義勇者の王国再建記』や『サモナーさんが行く』など、男性向けの作品を担当しています。元々女性向けのレーベルにいたため、女性向け作品の企画もいくつか進めているところです。

 

 

――いくつもの出版社の編集さんが集まってお話をするというのは、個人的にはかなり珍しいんじゃないかなと思っているのですが、他社のライトノベル編集者の方と集まる機会であったり、コミュニケーションの機会はあるんですか。

 

SN担当編集:他社のライトノベル編集者さんとはそこまで絡みがなくて、コミカライズの時に他社の漫画編集者さんと絡む機会の方が多いです。コミュニケーションの機会はあったらいいなとは思います。情報の交換はもちろんですし、今回の駄犬先生のように複数のレーベルで執筆される作家さんも年々増えてきています。そういった意味でも刊行時期やスケジュールの調整をしたりもできるので、交流の機会が増えたら嬉しいなって思いますね。

GC担当編集:僕はライトノベルの編集に携わって2年ちょっとなんですが、他社のノベル担当の編集さんとお話する機会は本当になかったです。積極的に交流を図られている編集さんもいるとは思うんですけど、うちの編集部ではほぼいないんじゃないかなと思います(笑)。でもスニーカー文庫の担当さんがおっしゃったように、同じ作家さんや同じイラストレーターさんを起用している作品を刊行している場合、スケジュールを押さえたりする上では連絡を取り合った方がいいんじゃないかなという場面は多かったりしますね。刊行時期とイラストレーターさんのスケジュールをどう押さえるかはかなり重要なので。僕自身、いろいろ知らないことも多いので、ライトノベルの編集をしている先輩の編集者さんからお話を聞ける機会があると嬉しいなとは思います。

PA担当編集:私もこの編集部の約2年間、ほぼ皆無でしたね。連携や情報交換はしたいなとは思ってはいて、『勇者』や『モンスターの肉』のように既に動いている作品はもちろん、今後出る各作品とも連動できればと思っています。発売情報や書影を共有するような関係はあっても、プロモーション戦略などの踏み込んだお話まではしたことがないので、そういう動きができると面白いんじゃないかなと思いました。

OL担当編集:私もみなさんと一緒でそういう機会はほとんどありません。他社さんのライトノベル編集部の方とご連絡を取る機会というのが、良い意味でご連絡をさせていただくわけではなくて……(笑)。

一同:――(笑)。

OL担当編集:でもこういった編集者さん同士が集まる機会があれば、「これめちゃくちゃ面白いです」って言いたいですし、「これ好きです」みたいなお話もできたらなと個人的には思ってます。スニーカー文庫の担当さんと一緒で、漫画の編集部の方とはそういう話をすることは多いんですけどね(笑)。

 

 

――ありがとうございます。ライトノベルの編集をやられているみなさんは、ライトノベルやWEB小説を日々どのくらい読まれているんですか。

 

SN担当編集:基本的には毎日、暇があれば読むという感じのスタンスです。「小説家になろう」や「カクヨム」、「ハーメルン」、あとは個人のブログ形式のものを読んでます。

GC担当編集:僕は出社にあわせて「小説家になろう」はチェックしてますね。サイト自体は毎日見ていますし、気になった作品はさっと読んで、面白そうだと思った作品は時間を取って一気に読んでみたり、そんな感じです。

PA担当編集:私は業務中に読み始めると止まらなくなってしまうので、通勤時間でのランキングのチェックをルーティンにしています。あとは夜、子供を寝かしつけた後に気になっている作品や作家さんの更新や新作を一気に読んだりしますね。サイトとしては「小説家になろう」を中心に、「アルファポリス」や「カクヨム」などもコンスタントに追いながら、気になるタイトルに目を通しています。

OL担当編集:私は「小説家になろう」と「Pixiv」に育てられた世代で、学生の頃に『謙虚、堅実をモットーに生きております!』などがリアルタイムで更新されていたんですよ。なので、WEB小説を読む時に仕事という感覚になれず、就業時間に読むことはあまりありません。仕事を終えて、寝る前に読むことが多いですし、ちょっとひねくれているのでランキングも下の方を見てみたりして、読んでいます。もちろんバラつきはありますけど、4、5時間は毎日読んでいるかもしれません。

 

 

【駄犬先生の魅力は独特な世界観と異質感、読者を裏切る中にある安心な読み口】

誰が勇者を殺したか

 

――駄犬先生がSNSで話題になったのは2023年下半期だったと思うのですが、みなさんの目に留まったきっかけやタイミングはいつ頃だったのでしょうか。

 

SN担当編集:異世界ファンタジージャンルで面白そうな作品がないか探していた時だったか、『誰が勇者を殺したか』が目に入って、すごくキャッチーなタイトルだなと思いました。読んでみようと思ったきっかけがまさにそれで、タイミングは連載がもう少しで終わるかなってくらいのタイミングだったと思います。2月か3月くらいですかね。

GC担当編集:僕は駄犬先生に連絡を取ったのが、確か3月だったと思うんですよね。『誰が勇者を殺したか』が公開されて、ランキングにも入って、実際に読んでみて面白かった。編集部内でも共有しましたし、編集長にも読んでもらって、確かに面白いねと。一方で、「シリーズ化は難しいのでは?」という話にもなりました。

PA担当編集:私も最初に拝読したのは『誰が勇者を殺したか』でしたが、出遅れまして……。部内で書籍化提案をしていたんですけど、その結論が出る前にもう書籍化の一報が出たんですよね。自分の初動が遅かったことに後悔もありましたが、部内でも評価が高く、作家買いが起こるレベルの作家さんだという認識を持ちました。次の新作が出たら、いち早く読もうと思っていました。

OL担当編集:私も駄犬先生を知ったのは、おそらく完結ブーストかなにかで『誰が勇者を殺したか』がランキングの上位にきた時なので、2月か3月くらいですかね。個人的に読んでいて、めちゃくちゃ面白いと思っていたんですけど、当時所属していた編集部は女性向けで、カテゴリーエラーで出せないことはわかっていたので……。ただただ残念だなという気持ちと悔しいなという気持ちを持ってましたね。

 

 

――やはりみなさん、2月か3月には目に留まっていて、スニーカー文庫の担当さんやGCの担当さんに至ってはすぐに行動に移されていたんですね。

 

GC担当編集:結果として、僕は『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』にオファーをしたんですけど、タイミングとしてはスニーカー文庫の担当さんとほとんど一緒だったみたいです。シリーズ化が難しいかもしれないという話になった時に、もう1作品あったので、長編っぽいそちらを読んですごく面白かった。『勇者』は既にランキングの上位に食い込んでいましたし、既にどこかの出版社が声をかけているだろうなと思い込んでいました。仮に競合してしまうと断られてしまうかもしれないですし、『モンスターの肉』の方が長く続けられそうというのもあって、こちらでオファーしようと考えました。駄犬先生からは「勇者じゃなくてそっちですか?」って言われたのをよく覚えてますね(笑)。ただ結果論ではありますけど、スニーカー文庫さんが担当されて、プロモーションもすごいしっかりとしたものが行われていましたよね。それにパッケージを見た時に、これは僕じゃ難しかったかもしれないとも思わせられたところもあるので、駄犬先生のためにも、スニーカー文庫さんが素晴らしい形で世に送りだしたのはよかったんだろうなと、あらためて思いました。

SN担当編集:ありがとうございます。

PA担当編集:私の方は新作の『「足手まといなんだ!」と言われてパーテイーを追放された商人は、金の力で世界を救う。「ずっと仲間だと思っていた」と言われても、今更遅い。』が公開された時に読んで即、必ず部内の了承は勝ち取るので書籍化オファーとして留め置きくださいと、駄犬さんにご連絡しました。内容も文章も「これは!」と思えたのと、『勇者』の時の部内の反応的に、確実にGOが出ると思っていたので、かなり前のめりでした。

OL担当編集:私はその後オーバーラップに転職をして、男性向けの作品も手掛けられると思っていた時に、『悪の令嬢と十二の瞳』が更新され始めたんです。それで読んでいたんですけど、実は最初、駄犬先生だって気付いてなかったんですよ(笑)。すごく面白いと思って作者を見たら駄犬先生で、これはオファーをかけたいと思い、部内で協議したっていう感じでした。

 

 

――みなさん駄犬先生の作品にオファーを行い、書籍化に向けて動かれたわけですが、あらためて駄犬先生の作品に感じた魅力はなんだったのでしょうか。

 

SN担当編集:『勇者』は構成力が素晴らしいと読んでいて感じました。WEB小説では俺TUEEEや無双系が多い中で、ミステリ要素も絡めつつ、魔王を倒した後の話で、なかなか他の作品では見ない切り口と構成だったのは才能を感じる部分です。独特な世界観を生み出していることも、他の作品にはない異質感を感じました。イラストレーターを駄犬先生とご相談させていただいた中でも、作品と同じように異質感のあるイラストを描く方がいいということで、toi8先生にご連絡をさせていただきました。同時刊行された『モンスターの肉』や他の作品もそうなんですけど、幅が広いんですよね。WEB系の作品に限らず、俺TUEEEものを書き続ける作家さんもいれば、ラブコメを書き続ける作家さんも多いんですけど、執筆する作品に幅を持たせられるっていう点は、駄犬先生の大きな強みで武器でもあるのかなと感じました。

 

 

――少し補足なのですが、駄犬先生にインタビューを行った際、みなさんから構成力の高さが魅力だと事前にうかがっていたので、駄犬先生にもお伝えさせていただいたんです。そうしたら「構成力ってどこと比べて高いと思ったのか?」と逆質問をいただきましたので、あわせて教えていただきたいです。

 

SN担当編集:駄犬先生の作品は、キャラクターの掘り下げ、見せたいエピソードをピックアップしつつ、物語に落とし込んでいる構成力が一線を画しているところなのかなと感じています。

GC担当編集:全体的な駄犬先生の文章力や構成力の高さは、スニーカー文庫の担当さんがおっしゃった通りです。僕的には『モンスターの肉』って『勇者』に比べるとかなりコメディ寄りなんですけど、駄犬先生のユーモアや笑いの作り方にすごく惹かれました。笑わせようとして笑わせているのではなくて、自然と読者がニヤリとしてしまう笑いを作ることが上手いんじゃないかなって思います。それと駄犬先生の質問返しは、編集者に答えづらいことを答えさせようとしている、性格の悪さが垣間見えるんですよ(笑)。

一同:――(笑)。

GC担当編集:もちろん悪い意味ではないことは強調しておきたいんですけど、一緒にお仕事をしているみなさんもご存知だとは思いますが、癖が結構強いじゃないですか(笑)。でもそこから生まれる面白さは間違いなくあると思うんです。たとえば『モンスターの肉』は、なろう小説っぽいタイトルにはしているけど、他の作品と違うところを見せつけてやろうっていう気持ちは絶対あると思いますし、『追放商人』も「追放されてもう遅い」的な、なろうのトレンドになったようなタイトルをつけておきながら、中身は全然違うわけじゃないですか。「こういうのが人気あるんでしょ、だからこういうタイトルで出しますよ」ってやりながら、でもその内容はことごとく裏切っていくというか、全体的に人間の内面に寄る作品を作っていて、それを駄犬先生は心のどこかで「こういう方が面白くない?」みたいに楽しんでいる節があると思うんです。そういう本人の内面が作品の随所に出ているので、そこがすごい面白いんですよね。駄犬っていう作家の内面が現れるからこそ、全部の作品が読んでいる人間を裏切るようなことをしてくる、それが魅力なのかなと思ってます。

PA担当編集:構成力という質問に関して言うと、私はライトノベルをここ2~3年でドカッと読んだタイプで、それほどたくさん読んできてないんですね。ただ、小さい頃から文芸作品を中心に本はずっと好きで読んできたので、今まで自分が読んできたものの中で構成力が高いと感じました。GCの担当さんの言われた作品や作家性の魅力については、かなり近しいものを感じましたし、スニーカー文庫の担当さんが表現した異質感というお話もすごく腑に落ちています。周囲に迎合しない感というか、絶対に染まらない感が本当に強くて、『追放商人』もテンプレっぽいタイトルをつけてきたけど、絶対そうじゃないでしょっていう(笑)。ご本人がどれほど意識されているかはわかりませんけど、ありきたりのものをこの人は絶対に書かないんだろうなと思わせるところが、ひとつの作家性だと思いますし、強い意志を感じます。

OL担当編集:私はもともと、綿矢りさ先生や中村文則先生のような、一般文芸作品を読むことが多かったんです。昼間は一般文芸作品を読んで、夜は部屋の電気を消してネット小説を読むみたいな生活をしていたんですけど、駄犬先生の作品については、このまま刊行物として世に出せるじゃんっていう感想を抱きました。WEBからお声がけして刊行をする場合、お話の筋を整えるといいますか、構成的な面でご提案をさせていただくことは結構あるんですけど、駄犬先生の作品は書店に並んでいる刊行物、編集者の手を通っているものと同じレベルにあるかなと感じたところではあります。今のWEB小説と一線を画しているというのは、みなさんのおっしゃる通りで、読み口が変化したり、それこそ純文学味を感じることもあります。『悪の令嬢』も読み進めていくと、最後にガラリと景色が変わります。ご本人の性格の悪さについては、根っこに優しさを感じるところがいいなと思います(笑)。他人に強要したり、押し付けたりするタイプの方ではなく、包括的な目で、優しく受け止めるみたいな、年長者としての眼差しが文章の中にもあるのかなと。なので、安心して読めるというのが、『悪の令嬢』以外の作品に関しても共通して言える気がします。普段のやり取りでも対応はものすごく早いですし、言えば伝わるというか、調整してくださるので。

PA担当編集:今のWEB小説とは一線を画しているっていうフレーズ、欲しかった一言だなと思いました(笑)。

GC担当編集:すいません、本当に優しい方だと思いますってGCの担当も言ってたって書いてもらっていいですか(笑)。

一同:――(笑)。

 

 

――駄犬先生の個性の強さはみなさん感じていらっしゃるようで、これまでのやり取りで印象的なエピソードとかあればぜひお聞きしたいです(笑)。

 

OL担当編集:基本的に対応が鬼早いです。改稿のご提案をすると、なんか知らないですけどすぐ返ってくるので、逆にこっちがすぐに読めないっていう(笑)。改稿の提案にも少し具体的に「こういう風に直す必要があるんですか?」と、ややマイナスから入ってくるところはあるんですが、戻ってきた原稿を読むとしっかり反映されているんですよね。一言二言あるにはあるんですけど、しっかりお仕事してくださるので、優しい方なんだなって思ってます(笑)。

PA担当編集:私が印象的だったのは、イラストシーンの選定の際ですかね。私からの提案と希望をうかがったところ、「この本をどういう方向で売るのか、そのイメージと意図によりますね」という旨のお返事で。私はこの作品をコメディ風味だけど本筋は人でなしのダークヒーローによるダークファンタジーという風に見せたくて、こういう意図でこういう効果を狙って、ここをイラストにしたい、と返したら、「わかりました、その考えならそれでOKです」みたいな。厳しいのか優しいのかわからないんですけど、何を狙っているのか、何を意図しているのか、根本を確認した上で検討される姿勢はすごく印象的でした。『追放商人』の書籍化のやりとりの最中に『悪の令嬢』についても、連載序盤で、すごく好きで面白いのでうちで書籍化提案したいという話をさせていただいたんですけど、「いわゆる“なろう的”な結末ではないので、完結まで読んでから判断してください」という返事をいただきました。やはり戦略をもって書かれていると思いますし、もちろんご本人が目指すところに向かって書いておられるとは思うんですけど、読者の姿を見ているというか、客観的に作品を見ているんだなって感じました。

SN担当編集:自分の駄犬先生とのやり取りなんですけど、PASH!の担当さんとのやり取りを聞いてどうだったか振り返っていたんですが、全体的に結構サラっとしてるんですよね……。

PA担当編集:スニーカー文庫の担当さんと駄犬先生がすごくハマってるからなんじゃないですかね。

SN担当編集:昨年KADOKAWA全体の謝恩会もあって、初めて直接お会いしたんですけど、少し変わった人だなと感じました(笑)。

OL担当編集:謝恩会後に電話で駄犬先生にご連絡したんですけど、会のことはすごく言ってました(笑)。

GC担当編集:実は謝恩会の直前に駄犬先生のインタビューの取材をしていたんですよ(笑)。その後謝恩会に行かれて。

SN担当編集:そうだったんですね、なるほど。

PA担当編集:どんなことがあったのかめちゃくちゃ気になるんですけど(笑)。

SN担当編集:大したことはないんですけど、駄犬先生に「素晴らしいですね、すごいですね」っていろいろお伝えしたんですけど、嬉しさを全然表に出さないといいますか。2巻を出す時はこういうことを狙っていきましょうねってお話もしたんですけど、「うんうん」みたいな。全体的に反応が薄めだったんですよ(笑)。

OL担当編集:でも謝恩会でスニーカー文庫の担当さんに会えてよかったって言ってましたよ。それだけで行く価値があったって(笑)。

SN担当編集:ホントですか? 謝恩会の最後の方にあったビンゴ大会は見届けられたようではあるんですけど、すぐに「帰ります、お疲れ様です」って早々に帰宅されたんですけどね(笑)。

一同:――(笑)。

OL担当編集:謝恩会の後だと思うんですけど、東海道新幹線で不審物騒ぎがあって、運転を一時見合わせたじゃないですか。ちょうどそのタイミングに乗っていたらしく、帰宅に時間がかかったっておっしゃってました(笑)。

PA担当編集:すごい引きですね(笑)。

GC担当編集:やっぱり持ってる(笑)。

SN担当編集:またネタができましたね(笑)。

PA担当編集:そう運命づけられていたからこそ、謝恩会は早々に去ることになったのかもしれませんね(笑)。

GC担当編集:自分の印象的な出来事というか、『モンスターの肉』の発売前に、イラストを使った大喜利をやったんですけど、「こんな難しいお題に誰が答えられるんだ」みたいなことをSNSでもつぶやかれていて、未だに根に持っている節があるんですよね……。新しい企画を始めたら「今回は大喜利じゃなくてよかった」とか、なかなか許してもらえません(笑)。あと、最近僕が2巻のあらすじを書いてSNSに載せたら、「それにしてもひどいあらすじだ」ってあって、僕の書いたあらすじがひどいっていう意味なのか、内容がひどいっていう意味なのか、どっちなんだろうって。心配になって「駄犬先生、あらすじひどかったですかね?」って確認したりもしましたね(笑)。

SN担当編集:みなさん、しっかりとコミュニケーション取ってますね。

PA担当編集:GCの担当さんが特別に取ってるんだろうなって思ってます(笑)。

GC担当編集:特別というか、駄犬先生の地元にはコミカライズ担当の漫画家さんとの顔合わせもあって、2回お伺いしているので、直接お会いした回数が皆さんより多いぐらいですよ。

PA担当編集:駄犬先生は作品でも「あなたはどう思う?」と問いを投げかけてきますよね。

GC担当編集:『勇者』はすごい顕著ですよね。読者がどう受け取るかみたいな。あとがきに書いていた「だって勇者のように生きてみたいじゃないですか」って言葉も、自分では言うけど、「みなさんも勇者のように生きましょう」って強要するわけでもないし、受け取った人がどう思うかを、相手に委ねる余地を与える人なのかなって思います。

SN担当編集:ちなみにみなさん、改稿はがっつりされた感じなんですか?

OL担当編集:『悪の令嬢』は終わり方の調整をしましたね。

PA担当編集:『追放商人』は文字数が少なかったので、改稿というより大幅に加筆いただいた感じです。

GC担当編集:『モンスターの肉』の1巻はそこまで変えてないです。ページ数の調整でエピソードを追加してもらったくらいですね。

SN担当編集:『勇者』はまったくと言っていいほど改稿をしていなくて、最後に追加のエピソードを書いてもらったくらいなんですよね。駄犬先生からは「何もしなくていいんですか?」って何回も聞かれて、逆に不安だったのかなって。

GC担当編集:それはすごい僕も言われました。

SN担当編集:自分はGCの担当さんのように密なコミュニケーションを取らなかったせいなのか、問いがなかったので、自分はあんまりなかったんだなって聞いていました(笑)。

GC担当編集:少し話が変わるんですけど、スニーカー文庫の担当さんにおうかがいしたかったのが、『勇者』って読んだ時点で『葬送のフリーレン』のことは頭に浮かんだんですか?

SN担当編集:『葬送のフリーレン』っぽさがあるなとは感じました。

GC担当編集:発売日が初回放送日と重なったり、読者からもフリーレン味を感じるって声が出たり、狙って引き出したのだとしたら本当にすごいなと思って。

SN担当編集:そこはもう偶然です。そもそも9月29日に出せるかどうかも瀬戸際でしたから(笑)。

GC担当編集:そこはもうすごいタイミングで世に出たなって思います。

SN担当編集:自分も「駄犬先生持ってるな」って思いながら見てましたね(笑)。

OL担当編集:でも『勇者』発売前は、打ち合わせ中でも、ご本人はすごい不安だっておっしゃってましたね。

GC担当編集:どうせ売れませんよって言ってましたからね(笑)。

OL担当編集:そうそうそうそう(笑)。私も担当作じゃないのに、「大丈夫ですよ!」って言ってました。

SN担当編集:そんな不安がってたんですね。自分のところでそういう話は聞かなくて、駄犬先生にも「売れたらラッキーですね」って、自分の方から言ってたからですかね……。

一同:――(笑)。

PA担当編集:私も「売れますよ!」って担当作じゃないのに熱くなってましたけど、スニーカー文庫の担当さんの飄々としていた感じが、逆に良かったのかもしれないですね。

SN担当編集:まあ、自分も担当作じゃなかったら同じように言ってたと思いますよ。「いけるいける!売れたらご飯ごちそうしてください」って(笑)。

一同:――(笑)。

 

 

【各編集部のWEB小説書籍化の流れ、女性向け作品へのアプローチは早い!?】

誰が勇者を殺したか

 

――みなさんはWEB小説の書籍化も多数行ってこられているかと思いますが、あらためてどんなところに注目しているのか、何を判断材料にしているのか、編集者の視点からお聞かせください。

 

SN担当編集:WEB小説はまず、タイトルでひとつ判断しているところはあると思います。タイトルからどんな作品なのか、ジャンルであったり、読者からみた気持ちよさがどの程度伝わってくるかどうか。あとは、自分が読んだ時にパッケージを思いつくかどうかが大きいです。『勇者』に関しては、読んでいてこうしようってパッケージの完成形が見えていたので、結果に繋がったひとつの要因だったんじゃないかなとは思ってます。なので、パッケージ、キャッチー、あらすじ、そして戦略が、具体的に自分の中でまとまって出てくるかが判断基準ですね。

 

 

――一昔前はWEB連載の開始から数日、1週間も経たずにオファーなんてことも珍しくなかった時期もあったと記憶しています。現在としてはオファーに際して、どのあたりまで確認はしたいといった基準のようなものはあるんでしょうか。

 

SN担当編集:そうですね。私は連載序盤で声をかけたことがあまりないので、判断基準のようなものがあるわけではないのですが、ひとつはどういったキャラクターかわかるところまでは見たいっていうのはあります。ファンタジーでいうなら、主人公はどんな主人公なのか。現代ラブコメでいうなら、どんなヒロインなのか。キャラクターを自分の中で落とし込めるまでは読みたいです。その後は物語がどういった方向に進んでいくのかで判断していることが多いですね。

GC担当編集:僕もタイトルは気にしてます。ご自身で何を考えてつけたのか、どう人目を惹こうとしているのか、タイトルにはそういう要素が集約されていると思ってます。「小説家になろう」では長文のタイトルをつける方もすごく多いし、もちろんそれもひとつの正解だとは思うんですけど、他の作品と伝わってくる内容が変わらなかったりもする。そういった中で、駄犬先生のようにバシッと自分で決めたタイトルで勝負してくる方もいる。一時期「短文タイトルでランキングの上位に上がってくる作品にはハズレなし」みたいなことも言われてましたけど、実際そういう側面はあったと思っています。なので、タイトルで目を惹くものがあれば、ランキング関係なく見てます。

PA担当編集:私もまずはタイトルから入りますが、主人公に思い入れられる作品では序盤でお声がけすることもありますね。キャラクターの個性や、会話というかセリフの魅力などはある程度の段階でわかるので。とはいえ自分の好みが偏っている自覚があるので、データと併せて客観視するようにしています。ポイントよりはUUの動きやブックマーク、感想、その作家さんの過去作などを見ていますね。ネット小説大賞のような賞に参加した際には、運営からの推しコメントなども参考にしています。

OL担当編集:私もだいたいみなさんと同じなんですけど、タイトルとあらすじをみて、面白そうかどうか判断して読むことが多いです。タイトルやあらすじを読んで意味が入ってこない時は、この作家さんは作品をコントロールしきれていないのかなと感じてしまうので。これはどういうキャラクターが登場する物語なのか、過不足なく書ける作家さんなのか、という点を重要度高く見ています。内容に関しては読んで、文章力の有無や面白さ、キャラの魅力であったり、エンタメなので読み口や読後感は問題ないか、そのあたりを気にしながら読ませてもらっています。その後、お声がけするかどうか、会議にかけるかどうかの判断になるのですが、お仕事は作品とではなく、作家さんとすることになるので、SNSなどはちょっと確認したりしますね(笑)。相性の問題も大切だと思いますし、お互いやりにくいと作品にとってもよくないので。

 

 

――なるほど。書籍化したい作品を見つけた後は、具体的にどのような動きになるのでしょうか。

 

SN担当編集:編集部としてお声がけする基準に関しては、他の方と同じかもしれませんが、編集長に売りたい方向性や面白さをプレゼンして、OKが出たらお声がけさせていただくっていう流れです。裁量についてはプレゼンが通れば、後は各担当の判断でやってくださいねって感じになっています。

GC担当編集:うちの編集部では毎週火曜日に部内の定例会議があって、まずそこで企画を通すところから始めます。毎週誰かしらが企画を出すのが理想ではあるのですが、そこでプレゼンして、班の全員から意見を聞きます。その後、毎週木曜日にある全体会議でもプレゼンします。プレゼンの上手い下手はそれぞれあると思うんですけど、大切なのは作品の魅力を企画書にまとめ、発表し、みんなに面白そうだねって思わせること、担当編集者がしっかりと面白さを第三者、イコール読者に伝えられる作品なのかどうかが大事っていう考え方です。それらを通過した上でオファーをかけましょうっていう形です。

PA担当編集:『魔女と傭兵』もそんな感じだったんですか?

GC担当編集:『魔女と傭兵』は編集長が担当しているんですけど、あの作品も一気にランキング上位にいきましたよね。そういった時に「小説家になろう」のアクセス解析などを確認して、アクセスの跳ね上がっている期間や注目度、ファンがどの程度形成できているかを判断するんですが、そこからは早いです。状況によっては定例をすっ飛ばして全体会議にかけるみたいなパワープレイもあります。そのあたりは臨機応変っていう感じです。

PA担当編集:なるほど。うちの編集部の提案のフローは、チャットツールに新作提案のチャンネルがありまして、そこへ書籍化したい作品とプレゼン資料を添えて投下し、部内のみんなが読んで検討という形です。最終的に判断するのは編集長なんですけど、他の部員のコメントや盛り上がりが後押しになりますね。

OL担当編集:うちでは編集部の会議に出して、面白さのポイントと売り方の両面からお話をさせていただいた上、編集部内の全員が読み、刊行可否について協議する会議が週に2回あります。一人だけだと読む方向性が限られちゃうんですけど、編集部全員でやっているので、幅広いジャンルを読めるようになったこともいいことかなと思っています。あと、先ほど鈴木さんがおっしゃっていた、オファーのお声かけが早い時期があったっていうお話ですが、たぶん女性向けが今そうです。

 

 

――女性向け作品のオファーのスピードが上がっているんですか。

 

OL担当編集:女性向けの異世界恋愛作品は、物語の序盤でお声がけすることが多いです。理由もいくつかありまして、これは何をする物語なのかという目的が明確に、序盤から読み取れることが多いんですね。そこから最後まで書き切れるであろう作家さんも明確なジャンルだったりするので、早い段階で声をかけようっていう流れはありますね。

PA担当編集:その認識は私も一緒で、女性向けの異世界恋愛は、長編ではなく1巻や2巻で完結するものが多いのも理由かもしれません。キャラクターと設定とあらすじから、数話の段階で声をかけないと間に合わないケースもあります。人気のある作家さんであればなおさらで、極端なものだと連載告知の段階でオファー殺到なんてことも聞いたりします。あとはうちが他社さんと少し違うのは、コミカライズも同じ編集部内で担当するので、コミカライズ映えするキャラクターと設定で、序盤の掴みが強ければもうGOです、みたいな感じもありますね。

GC担当編集:コミカライズも自分で担当しているんですか?

PA担当編集:編集プロダクションなど漫画編集さんと組むことが多いですが、何作かは自分で直接担当している作品もあります。

OL担当編集:ネームのチェックは?

PA担当編集:直接担当する作品だと最初の段階からやってます。なのでタイミングによっては、到着したネームをチェックして打ち合わせをして、別の漫画原稿をチェックして写植指定して入稿して、コミック連載の更新作業をして…って、小説の原稿が一文字も読めてない!っていう日もあったりもします(笑)。

SN担当編集:それは大変ですね……。

OL担当編集:漫画と小説って頭のチャンネルが違うと思うので、なおさらすごいなって感じます。

PA担当編集:私が漫画関連の部署での経験があったことが一つの要因と思いますが、原作の世界をどう料理するのかという話ではあるので、原作小説をわかっている人間が担当するほうがスムーズなのかなと思うのですが、実際はどうなんですかね。みなさんはどれくらいの感じでコミカライズのチェックをされてるんですか?他の編集部だったり、他社さんだったりするんですよね?

SN担当編集:コミカライズは漫画編集部に漫画家候補さんを出していただき、原作者さんに確認を取る流れですね。そこでOKが出ればキャラクターデザインをいただいて、イラストレーターさんにも確認してもらう。ネームがきたら私や原作者さんの方でも確認はするんですけど、台詞まわりが中心ですし、ネーム、ゲラの確認までです。表紙やデザインなどは、短編などの小説を盛り込んだ場合に監修が回ってくるくらいで、基本漫画の編集部さんにお任せしてます。

PA担当編集:監修に回ってきたネームがちょっと違う……みたいな場合は?

SN担当編集:たまーにありますけど、一応漫画の編集部に伝えて、あとは原作者さんの温度感ですね。これは絶対に直してほしいとか、キャラクターが崩壊しているとか。もちろん私の方でもそれを思えば、原作読んでないでしょみたいな指摘はします。あとは今後の関係性なども鑑みながら判断ですね。PASH!の担当さんみたいにがっつりやることはないです。

OL担当編集:うちは他社さんにお願いすることもありますし、ガルドの社内でやることもあります。どちらにしても、小説的な見せ方と漫画的な見せ方は違うのかなと思っていて。私は漫画の方に詳しくはないので、原作者の方と相談して、絶対に譲りたくない、作品の核になる部分は確認をしてもらいます。ただ、絶対に譲らないところ以外は基本お任せしますというスタンスになるので、漫画はお任せですかね。あとは監修が回ってきた時に、このキャラクターはこんな喋り方はしないよねとか、文章まわり、台詞まわりのお話だけお願いする感じです。本当に漫画の編集さんはすごいと思いますよ。ここ指輪ありませんとか、普通に気付きますからね(笑)。

 

 

――ここまで駄犬先生のお話からWEB小説のお話、そしてコミカライズに関するお話など、ありがとうございました。最後になりますが、各々が担当している駄犬先生の担当作の魅力についてお願いします。

 

SN担当編集:『誰が勇者を殺したか』は、お話に出てきた通り、ファンタジーでありつつミステリの要素もあります。おかげさまでシリーズ累計は6万部を突破しており、本当に今勢いのある作品だと思います。今までのファンタジー作品にあまりない切り口、構成、見せ方、まったく新しいジャンルであり、そこが一番の魅力です。2巻に関する具体的な時期はまだお伝えできない状況ではありますが、駄犬先生が一生懸命頑張って執筆して、非常に面白い作品が出来上がるんじゃないかなと思っています。読者の皆様も1巻以上に楽しめることを期待して、お待ちください。

GC担当編集:『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』は、『勇者』とは世界観も内容も全然違いますが、『勇者』を読んだ方で、手に取っていただいた方には「駄犬先生にはこういう面もあるんだ」と、楽しんでもらえたんじゃないかなと思ってます。殺伐とした世界観ですけど、ちょっとしたブラックユーモアや笑いがふんだんに盛り込まれている娯楽作品です。こちらはシリーズ作品として、しばらく続けられたらなと思っていますし、コミカライズもスタートしていますので、そちらも楽しんでいただきたいです。そして3月には『死霊魔術の容疑者』を出させていただきます。この作品はどちらかというと、『誰が勇者を殺したか』と同じ、ファンタジーミステリというジャンルになるのではと思います。駄犬先生のファンタジーミステリが好きなら楽しめるはずですので、読んでいただけたら嬉しいです。イラストも一発でミステリだとわかる方が担当してくださっていますので、ぜひご期待ください。

PA担当編集:『追放された商人は金の力で世界を救う』は3月1日の刊行を目指して制作を進めています。作品の魅力としては、駄犬先生からの挑戦状というか、テンプレを偽装した、そこからの逸脱と裏切りの物語といった感じでしょうか。人でなしの商人が金に物を言わせて、非人道的な魔王討伐を始めるという入り口はダークでコミカルな感じの作品で、『モンスターの肉』のようなユーモアもあれば、最後には『勇者』のような、裏切られる場面もあります。私はWEB連載の時から少なくとも10回以上本作を読んでいますが、原稿を校正するたびにまた泣いてしまいます(笑)。期待を裏切らず、予想は裏切ってくる魅力ある作品だと思うので、先の2作を読んでいる方にも全力でオススメできますし、未読の方には本作からはまってもらえたら嬉しいです。4万字超120ページ以上が書き下ろしなので、WEBで既読の方にも楽しんでいただけると思います。よろしくお願いします。

OL担当編集:『悪の令嬢と十二の瞳』はまだ仮のタイトルなので、ちょっと変わったりするかもしれないですが、7月25日の発売予定で動いています。読み口としてはちょっと物騒な勘違いギャグコメディの体を取りつつ、実は最後まで読むとタイトルの意味がわかったり、主人公の成長にうるっときたり、優しいお話っていうと詐欺って言われちゃうかもしれないんですが、そんな物語になっています。内容としては主人公の公爵令嬢が聖女に、婚約者である王太子を横取りされそうになってしまうんですね。なので彼女は泥棒猫の聖女を殺そうとするのですが、失敗して処刑されてしまいます。でもなぜか巻き戻り、2回目の人生がスタート。彼女は改心するかと思いきや、今度は完膚なきまでにそいつをぶちのめしてやる、絶対勝つぞ、しかも己の手を汚さず、育成した凄腕の従者に全部やらせて完全犯罪だ、と悪行の限りを尽くすお話です。暗殺毒殺なんでもござれの従者を育てる、面白くて優しい話だと思いますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

4人の担当編集が駄犬先生の作品に魅了され、書籍は順次刊行されています。既に発売されている作品も、これから発売される作品においても、「この作品、読んでみたい!」と感じた方はぜひ手に取ってもらえたらと思います。2024年は異色の作家、駄犬先生の作品から目が離せません!

 

駄犬先生インタビュー:1冊で終わった方が、物語としては美しいと自分では感じます

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

©駄犬/マイクロマガジン社 イラスト:

©駄犬/KADOKAWA スニーカー文庫刊 イラスト:toi8

©駄犬/主婦と生活社 イラスト:叶世べんち

©駄犬/オーバーラップ

kiji

[関連サイト]

『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』特設サイト

『誰が勇者を殺したか』特設サイト

『誰が勇者を殺したか』公式SNS

GCノベルズ&GCN文庫公式サイト

スニーカー文庫公式サイト

PASH!文庫公式サイト

オーバーラップノベルス公式サイト

 

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モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件 (GCN文庫 タ 01-01)
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誰が勇者を殺したか (角川スニーカー文庫)

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