独占インタビュー「ラノベの素」 モノクロウサギ先生『推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2024年6月28日にエンターブレイン単行本より『推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる』第2巻が発売されたモノクロウサギ先生です。VTuberデビューしたダンジョン探索者の主人公が、ダンジョン食材を使った料理配信で名を轟かせていく本作。WEB小説で新たな流行となっている「ダンジョン配信もの」として書籍化前から注目を集めていた本作の着想や、普通の価値観では測り切れない主人公・山主ボタンについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

推しにささげるダンジョングルメ2

 

 

【あらすじ】

とんでも食材の飯テロVTuber念願のコラボ!?ガチ推ししか勝たん!最高ランクのダンジョン探索者・夜桜猪王は推しVtuberの「ダンジョン食材を使ったごはんが食べたい」の一言で、推しにダンジョングルメを食べてもらうべく自らもVtuberデビュー!チート・スキル・アイテムなんでもネタにしちゃう猪王は常にいい意味でも悪い意味でもネット民の話題の的。そんな猪王に外部事務所からコラボの話がくるが、それと同時に新たな騒動の予感も!?

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

モノクロウサギと申します。東京出身で、執筆歴は高校生の頃から小説を書いているので10年程になります。昔からWEB小説を読むことが好きで、最近ハマっていることは「ハーメルン」で二次創作を読むことです。二次創作に登場するオリジナル主人公のはっちゃけ具合が好きで、ふざけた主人公好きの私の趣味に刺さっています。ジャンルとしては『緋弾のアリア』や『呪術廻戦』、『葬送のフリーレン』、『ワンピース』などを読むことが多いです。

 

 

――『緋弾のアリア』というタイトルも挙げられましたが、ライトノベルも昔から読まれていたのですか。

 

ライトノベルは中学生の頃から読んでいました。見ていた深夜アニメの続きが気になって、原作小説にも手を伸ばしていくうちに、様々な作品を読むようになった次第です。『緋弾のアリア』や『織田信奈の野望』はアニメから入りましたし、『精霊使いの剣舞』なども読んでいました。当時の私は「カッコいいものが見たい」と思っていたので、カッコいい主人公が戦う学園バトルものが好きでした。

 

 

――ありがとうございます。アニメの続きを知りたくてライトノベルを読むようになったとのことですが、WEB小説を読み始めた理由についても教えてください。

 

『異世界チート魔術師』の帯で「小説家になろう」の存在を知ったのが入口でした。「小説家になろう」で書籍の続きを先読みできると知り、WEB小説を読むようになりました。

 

 

――ちなみに「小説家になろう」ではどのような作品を読まれていたのでしょうか。

 

私が読み始めたのは「異世界系」が盛り上がり始めてきたタイミングだったので、当時ランキングに入っていた異世界系作品は片っ端から読んでいました。特に『異世界チート魔術師』のような、強い主人公が活躍する作品を読むことが多かったです。WEB小説が流行る以前のライトノベルには、主人公が苦戦しながら、最後に逆転する展開の作品が多かったと思います。それに対して「小説家になろう」には、主人公が圧倒的な力で敵をねじ伏せる作品が多く、当時はすごく新鮮に感じました。

 

 

――ライトノベルもWEB小説も長く読んでこられたわけですが、そんなモノクロウサギ先生が小説を書き始めたきっかけは何だったのでしょうか。

 

ライトノベルやWEB小説を読み始めた理由もまさにそうなのですが、私は物語の先の展開がかなり気になるタイプなんです。小説や漫画を読んだ後に続きの展開を妄想することもよくやっていました。妄想好きが転じて、小説を書き始めるに至りました。

 

 

――ご自身で小説を書き始めた際は「こんな物語を書きたい」と思って書き始めたのか、「こんなキャラクターを書きたい」と思って書き始めたのかどちらでしたか。

 

私の場合はキャラクターが先でした。小説を書き始めた頃は、キャラクターを優先しすぎるあまり、設定がおざなりになったり、主人公のノリが寒かったりすることも多々ありました。そういった粗が目に付き、書いていられなくなることもあったほどです(笑)。自分の文章と向き合うようになり、以前より設定や主人公の行動に一貫性が保てるようになったのは成長した点だと思います。

 

 

――ありがとうございます。それでは、第1巻を振り返りながら『推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる』がどんな物語なのかを教えてください。

 

デビューするも燻っていたVTuber・山主ボタンが、自分で調達したダンジョン食材を使った料理配信を始めたところ、一気に拡散されて有名になっていく物語です。第1巻では有名VTuberとなったボタンが、他のVTuberを巡る事件のあおりをうけて炎上してしまうのですが、探索者としての力を駆使して乗り越えていくこととなります。

 

推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる

※ダンジョン探索者でVTuberの山主ボタンが……料理配信で大バズり!?

 

 

――本作は「ダンジョン」「VTuber」「グルメ」と様々な要素が盛り込まれていますし、ダンジョン探索者が地上で配信をする話がメインなのも驚きました。ぜひ着想についても教えていただけないでしょうか。

 

私は元々現代ファンタジーが好きだったのですが、ここ数年WEB小説においては「現代ファンタジーと言えば現代ダンジョン」みたいな状況が続いていたんですよね。また、「VTuberもの」も1ジャンルを確立するぐらいには流行していました。VTuberについては私自身よく見ていましたし、配信の空気感も分かっていたので「ダンジョンで配信でもさせればいいんじゃない」と思ったのが、着想になります。ただ、ダンジョン内で動画配信をさせようと考えた際、様々な障壁にぶつかってしまいました。「ダンジョンの中でネットは繋がるのか」であったり、「モンスターを倒す動画となると流血は大丈夫なのか」であったり、考えなければならない要素がたくさん出てきたんです。正直、これらすべてに整合性を持たせるのって大変じゃないですか(笑)。それだったら主人公がダンジョン探索者であることを活かした配信を地上ですればいいと考えたんです。視聴者の目を引くダンジョン要素はなにかと考えた時に浮かんだのが「ダンジョン産食材を使用した料理配信」というアイデアでした。

 

 

――なるほど、好きな要素を盛り込みつつ整合性を損なわないようにした結果、生まれたのが本作だったという事ですね。そして山主ボタンの配信の目玉である「ダンジョングルメ」の要素に関しては、読者からも「美味しそう」や「お腹が空く」という感想が多く挙がっていたかと思います。調理シーンを描く上で意識されていたことはありますか。

 

調理シーンについては実際に料理系YouTuberの動画を見て、文字に起こすイメージで書いています。とはいっても、細かな作業については結構省略しているんですよね(笑)。小説だと調理の工程を細かく書いても、クドくなるだけだと思っています。細かい作業はボタンの力技でうまく省略しつつ、ボタンを「ヨイショする」と言いますか、視聴者がボタンを持ち上げる場面にすればいいかなと考えていました。YouTubeには野外で豪快な料理を作る動画ってたくさんあると思うんですけど、本作の主人公・山主ボタンの調理スタイルはそれに近いです。繊細な作業より、おおざっぱな調理方法の方が見栄えがいいこともありますからね。

 

推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる

※山主ボタンによる豪快な調理シーンには注目してほしい

 

 

――視聴者が盛り上がるシーンですと、ボタンが熱々の中華鍋を手づかみして驚かれるシーンは印象的でした。

 

このシーンに関しては「ボタンなら別に濡れタオル要らないな」と彼のキャラクター設定から逆算した描写でした。視聴者がボタンを持ち上げる場面については、煩雑な調理工程を強引に解決するボタンに対して、視聴者がツッコミをいれるという一連の流れを作ることは意識していました。

 

 

――ありがとうございます。では続いてダンジョングルメ配信で話題をさらった主人公・山主ボタンについて教えてください。

 

まず、前提として山主ボタンは彼自身の物語を既に終えているんですよね。世の中の物語には、主人公が様々な経験をして成長していく形が多いと思います。それに対して、本作はすでに最強と呼ばれるまでに成長しきったボタンが余暇を楽しむお話です。よく読者の方からボタンの人間性を突っ込まれるのですが、ダンジョンという過酷な環境で常に命のやり取りをしてきた彼が、普通の人間と同じ感性のはずが無いじゃないですか(笑)。最強探索者の感性を下地に、VTuber好きな一面やオタクな一面を纏わせることによって、一見普通だけど随所に異常性が見えるようなキャラクターに仕上げました。

 

夜桜猪王

※テコ入れがハマり、一躍人気VTuberとなった最強探索者・山主ボタン/夜桜猪王(キャラクターデザインより)

 

 

――最強ゆえに考え方もぶっ飛んでいるボタンが、たくさんの注目を集めていくわけですが、ボタンの配信が視聴者にウケているポイントを教えてください。

 

未知のものに対する興味というものは大きいと思いますし、それと同時に災害の動向をチェックするみたいな視点の視聴者も多いと思います(笑)。山主ボタンはVTuberですから、VTuber好きのオタクはエンタメとして見に行きます。それと同時にこの世界でダンジョンは一つの産業ですので、主人公の異常性が露見していくにつれて、ダンジョン関係の視聴者も増えていくことになります。

 

 

――また、人間離れしたボタンだけでなく、配信を盛り上げるコメント欄も本作の魅力の一つだと思います。配信コメントを書く時やコメント欄にいる人間を考える際はどのようなことを意識されていますか。

 

基本的にコメント欄に居る人を描く際は、VTuberファン、ボタンの異常性を覗きにきた視聴者、アンチやユニコーンと呼ばれる人たちを切り分けて考えています。また、コメント欄や掲示板を書く際はSNS上の投稿をかなり参考にしています。SNSは見ているだけで、様々な人間の考え方を知ることができるので本当に役に立つんですよね。それもあって、読者の方からもアンチや炎上の解像度が高いといった感想はよくいただいています(笑)。

 

 

――確かに、第1巻の山主ボタンの炎上の仕方などは何とも言えない生々しさを感じましたし、VTuberを取り巻く環境の描き方には表裏問わずこだわられていた印象でした。

 

ありがとうございます。SNSでは毎日様々な事件や炎上が起こっています。そういったものを見ておくことで、作品に登場させるキャラクターや事件の背景を描く上でリアリティを持たせることができるんです。可能なら、作家は書く小説のジャンル関係なしに、SNSを見ておいた方がいいのかもしれないとは思っています。ただ、SNSを参考にするには向き不向きもありますからね……。私は炎上などを他人事として見ることができるのですが、暗い話題ばかり見ていると気持ちが沈んでしまう方もいると思います。そういった方は逆に見ない方がいいと思います。

 

 

――続いて、ボタン以外のキャラクターについてもご紹介をお願いします。

 

ボタンが所属するVTuber事務所の同期で、一番ボタンとの絡みが多いのが雷火ハナビです。ボタンにとって一番身近な一般人として描いたこともあり、基本的にはいい子です。VTuberには様々な性格の方がいると思っていて、中には表と裏で言動が変わる方もいるかと思います。ただそういった二面性を描くとなると、身近なキャラクターではないなと思ったので、彼女には仲のいい同期という立場に落ち着いてもらいました。

 

日南朱里

※ボタンにとって一番身近な一般人として描いたという雷火ハナビ/日南朱里(キャラクターデザインより)

 

もう一人挙げるとすれば、天目一花でしょうか。彼女はボタンが所属するVTuber事務所の先輩です。同期に対してはフランクなボタンも、天目先輩に対してはちゃんと礼儀正しく振る舞います。第2巻では、天目先輩の交友関係を通じてボタンが様々なキャラクターとつながっていくことになります。

 

瀬良双葉

※ボタンの事務所の先輩にあたる天目一花/瀬良双葉(キャラクターデザインより)

 

 

――ありがとうございます。そして、書籍化に際してはイラストをクロがねや先生が担当されました。あらためてキャラクターデザインを見た時の感想や、お気に入りのイラストについて教えてください。

 

自分の書いたキャラクターがイラストになるというのは書籍化した作家の特権だと思っているので、とても嬉しかったです。特に表紙イラストは気に入っています。キャラクターデザインについてですと、本作はVTuberものなので、同じキャラクターにVTuberモデルとリアルの姿の2つのデザインがあるのですが、私はリアル側のキャラクターデザインも好きなんですよね。こんなにかわいい女の子たちに囲まれているなんてボタンは羨ましいなと思います。

 

推しにささげるダンジョングルメ

※モノクロウサギ先生が特に気に入っているという第1巻カバーイラスト

 

 

――また、本作は「コンプティーク」にて、藍川蓮先生によるコミカライズ連載も決定しています。ネームを見た際の感想や、漫画版ならではの見どころについて教えてください。

 

小説の序盤が綺麗にまとめられていましたし、コマ割りなどの見せ方も凝っていて、読んでいて背筋がゾクゾクする感覚を久しぶりに感じました。できるならば、今ここで見せびらかしたいぐらいです(笑)。漫画ならではの魅力ですと一番は読みやすさでしょうか。小説だと数百文字かけて説明するところが、漫画だと一目でわかりますからね。その上、小説では描写しきれないキャラクターの表情の変化も表現されているので、よりキャラクターのイメージが鮮明になるかと思います。スムーズな展開とキャラクターの表情は小説にも勝る点なのかなと考えています。

 

推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる

※コミカライズの連載開始も楽しみに待ちたい

 

 

――ありがとうございます。著者として、『推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる』は特にどんな方に楽しんでもらえるとお考えですか。

 

リアル寄りのVTuberものが好きな方にはおすすめしたいですね。VTuberの配信の空気感は再現出来ていると思いますので、楽しんでいただけるかと思います。後は、周囲の人間に驚かれるような最強主人公が好きな方にも合うのかなと思います。ただ、バトルシーンはほとんどないので、バトルものを求めている方にはミスマッチかもしれません。それでも自信をもって面白いと言える作品にはなっています。

 

 

――発売された第2巻の見どころについても教えてください。

 

第2巻で追加された書き下ろしのエピソードは見どころの一つだと思います。WEB版を読まれている方からは、絶対に「2巻の表紙の子、誰?」ってツッコミが入ると思うんですよね(笑)。彼女はエピソードの追加によって初めて正式に形となったキャラクターなので、WEB版既読の方にも注目してほしいです。

 

推しにささげるダンジョングルメ

※赤髪の子の正体は…… 新規追加エピソードにも注目したい

 

 

――今後の目標や野望を教えてください。

 

他の作品でコミカライズは経験しているので、本作ではボイスドラマ化やアニメ化もできると嬉しいです。あとは、現在も専業作家なのですが、安定して食べて行けるようになるのが目標です。ボタンみたいに好きなことだけやって生活していくのが一番の理想ですよね(笑)。

 

 

――最後にファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

 

ありがたいことに「美味しそう」とか「お腹が空く」という感想をいただいていますが、読者の方には料理にも挑戦してほしいですね。作中のダンジョン食材は現実の食材をモチーフにしていますし、作中の料理を再現してみるのも本作の楽しみ方の1つだと思っています。特に1巻に登場したなめろうはおすすめなので、ぜひ作ってもらって感想をいただけると嬉しいです。

 

 

――ありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

テコ入れのためにダンジョン食材の料理配信をはじめたVTuber山主ボタンが、次第に多くの人の注目を集めるようになっていくダンジョン×VTuber×グルメストーリーを綴ったモノクロウサギ先生にお話をうかがいました。リアリティを追求した配信の空気感やボタンの人間離れしたキャラクター性なども魅力の本作。美味しそうな料理の数々に飯テロ不可避の『推しにささげるダンジョングルメ 最強探索者VTuberになる』は必読です。

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・宮嵜/鈴木>

 

©モノクロウサギ/KADOKAWA エンターブレイン刊 イラスト:クロがねや

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[関連サイト]

KADOKAWAオフィシャルサイト

 

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