独占インタビュー「ラノベの素」 罠和ノワナ先生『やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2025年11月25日にMF文庫Jより『やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~』が発売された罠和ノワナ先生です。第21回MF文庫Jライトノベル新人賞にて「最優秀賞+鈴木大輔賞」を受賞し、満を持してデビューされます。近未来的な学園を舞台に、生成AIによって迷宮と化した校舎を攻略するゲーマーたちの活躍を描いた本作。個性豊かなキャラクターたちによるすれ違いやゲーム好きの著者ならではのこだわりについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~

 

 

【あらすじ】

人を殺せるホログラム――改め「触れるホログラム」。これを自在に生成するAIは、世界を創造するAIと呼べるのではないか。彩淵学園の管理を担うAIは、世界を書き換え放課後の学園に巨大な迷宮を生成する。目的は不明だがAIはその頂上へ辿り着く最強の生徒を常に求めており――そうして呼ばれたのが、VRゲームを極めた少年<晴斗>だった。攻略が進むにつれ、校舎型迷宮の雰囲気は不気味に変わっていく。だがそれでもAIの指示は変わらない。登れ、校舎の頂きへ――すなわち「“登校“に挑め」と。……なんて、ここまで真面目そうな空気を匂わせたところで衝撃の事実。なんとこのラノベ、ジャンルは驚異のラブコメディ。

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

罠和ノワナというペンネームで活動しています。新潟県出身で、初めて小説を書いたのは中学生の頃です。当時は友達に読ませて楽しむ程度で、大学生の頃から「小説家になろう」で本格的な執筆と投稿を始めました。趣味がゲームなので、ゲーム系の小説を書くことが多く、本作もゲームが好きなキャラクター達の物語になります。

 

 

――ゲームが趣味とのことですが、普段はどんなゲームをプレイされているのでしょうか。

 

FPSなど、様々なゲームをやりこんでいます。最近だと『ELDEN RING NIGHTREIGN』や『Hollow Knight: Silksong』をプレイしました。スマホゲームでは『ウマ娘』をやっていますね。

 

 

――あらためて、第21回MF文庫Jライトノベル新人賞「最優秀賞+鈴木大輔賞」の受賞、おめでとうございます。受賞の率直な感想をお聞かせください。

 

ありがとうございます。正直、ここまで上の賞をもらえるとは思っていなかったので、選考会で満場一致と聞いたときは素直に嬉しかったです。それに、自分ではコア層向けの作品だと思っていたので、王道と評価されてびっくりしました。でも軸を見れば、あくまでラブコメであり、主人公がヒロインを救う話でもある。そう考えると、肉付けが特殊なだけで、王道になるのかなと納得しました(笑)。

 

 

――ライトノベルの小説賞はいくつかありますが、MF文庫Jライトノベル新人賞に応募した理由は何だったのでしょうか。

 

ぶっちゃけてしまうと文字数です(笑)。自分が調べた時に、ほとんどの小説賞が120ページや130ページで応募を受け付けている中、「MF文庫Jライトノベル新人賞」と「小学館ライトノベル大賞」だけは150ページで受け付けていたんですよ。なので、当時の自分が完成させた原稿を応募できる本賞を選びました。

 

 

――ありがとうございます。それでは受賞作『やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~』について、どんな物語か教えていただけますでしょうか。

 

タイトル通り、本作は「登校に挑む」というお話です。この「登校」という言葉はそのままの意味ではなく、生成AIによって迷宮と化した校舎を「登れ」という意味になります。迷宮をAIが生成するという世界観で読む前の興味を引き、実際に読んでみるとキャラクターの掛け合いやバトルで楽しんでもらえる、そんな物語になっていると思います。

 

やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~

※主人公たちは生成AIによって迷宮と化した校舎をそれぞれの武器で攻略していく

 

 

――本作は受賞後もかなり改稿を重ねたとうかがっていますが、改稿作業はいかがでしたか。

 

受賞後に担当編集さんから様々なアドバイスをいただいて改稿した結果、当初の自分がイメージしていた完成度をさらに超えたものになったと感じています。担当編集さんから聞いた話で、受賞時点の原稿を読んでいた編集部の方から「こんなに面白かったっけ!?」と言われたと知り、とても自信を貰えました。

 

 

――改稿作業の中で大変だった点はありますか。

 

メインヒロインである緋菊七姫のキャラ付けにはかなり悩みました。応募段階では、主人公である晴斗のアバターであるレイニと関わることはあっても、晴斗本人とは最後まで関わらないぐらいの立ち位置だったんです。だからこそ、七姫と晴斗のふたりの接触は貴重なものにしようと思っていたのですが……担当編集さんから「もう少し恋愛してほしい」と言われ、応募原稿時よりも親近感のあるキャラクターに変化していきました。

 

やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~

※普段は凛とした佇まいの緋菊七姫にも、おバカで親近感のある一面が

 

 

――ありがとうございます。キャラクターについてはまた後ほど詳しくお聞きできればと思います。続いて本作の着想について教えていただけますでしょうか。

 

自分は物語を書くときに、まずキャラクターから考えます。こういうキャラクターがこんな活躍をしたら面白いだろうなっていうところから始まり、次にキャラクターを動かすための世界を決めていくんですね。今回は性別を変えたキャラクター同士の物語を描きたくて、その場でおしゃべりできるアバターというアイデアを選びました。そこからアバターの表現方法として「触れるホログラム」を思いつき、最近流行りの生成AIならホログラムも出力できそうだなと考えていきました(笑)。

 

 

――主人公の羽零晴斗は女性アバターであるレイニを、ヒロインの緋菊七姫は男性アバターであるアキを用意して、それぞれ本人に接触を図ろうとしますよね。この設定がすごく印象的でした。

 

ありがとうございます。本作の根幹には、以前に「小説家になろう」で執筆していた、VR空間で女の子のVTuberになる少年の物語があります。リアルとVRで異なる性別の姿を持っているという設定が好評だったので、そこを引き継ごうと考えたんです。着想がキャラクターからという話もまさにこの部分になり、自身の別作品で好評だった要素を用いて、本作へと発展させました。

 

やぁ“登校”に挑めニンゲン口絵02やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~

※恋愛経験ゼロ同士の羽零晴斗と緋菊七姫は、互いに別姓のアバター(二枚目)で接触を図る……!?

 

 

――なるほど。現実とアバターとで性別が異なる作品だと、キャラクターのギャップに視点が当たることが多いですよね。本作では女の子の時と男の子の時とで人格の変化は意識しているのでしょうか。

 

晴斗&レイニは素直なキャラクターとして描きたかったので、意識して変化しないようにしています。一人称を“僕”にしたのも、男女どちらでもいけるようにという考えがありました。もちろん、手段として必要になれば、女性らしい演技も躊躇わずに行うキャラクターですが、普段から性格を変えるような形には今後もしないと思います。あくまで内面は男の子のままガワだけ女の子になって、七姫にアプローチをしているだけですからね(笑)。時代と逆行しているのかなと思いつつも、TSして男らしさを出すというのは本作の魅力の一つだと感じています。

 

 

――七姫&アキの場合は何かこだわりはありますか。

 

七姫&アキは、主人公である晴斗とその親友の蓮司の間にヒロインを混ぜたかったという点がこだわりに繋がっています。あのふたりの絡みがものすごく好きなんですが、その際にヒロインを仲間外れにしたくないなと(笑)。アキのことは身近なキャラクターとして描いていますが、中身は推しを前にしたファンなので、その絶妙な距離感を楽しんでもらえたらなと思いますね。

 

 

――キャラクターの相関図を作ったら、矢印がものすごく複雑になりそうです(笑)。

 

そうですね(笑)。タイトルに「相関図がやばい」といった要素を持ってこようかなと思ったくらいには、本作のキャラクター同士による関係性の複雑さは自分も自覚しています。今後もアバターであるレイニのことをAIと勘違いしたキャラクターが出てきたりと、勘違いを加速させる方向で関係性をより複雑にしていくので、楽しみにしていてください。

 

 

――では、あらためて本作の主要キャラクターについても紹介をお願いします。

 

主人公で世界最強のVRゲーマーである「セイテン」こと羽零晴斗は、友達にいたら面白そうなキャラクターです。おバカだけど頭の回転は速い。考え抜いた末のおバカな行動が特徴で、「そこに落ち着くのね、発想が」というキャラクターであり続けてほしいなと思いながら書いています。

 

羽零晴斗

※世界最強のVRゲーマーである主人公・羽零晴斗

 

メインヒロインで生徒会長の緋菊七姫は、人間の七姫としては高嶺の花であり、アバターのアキとしてはコメディができる、二面性を持ったキャラクターです。基本的にはかなり冷静で、頭の回転も速い人間なんですが、セイテンが絡むとおバカになる限界オタクな側面もあります。得意なジャンルは『風来のシレン』をVRゲーム化したようなローグライク系で、本作の迷宮はまさに彼女の得意分野になります。

 

緋菊七姫

※高嶺の花の生徒会長・緋菊七姫

 

藤野蓮司は晴斗の悪友で、世間一般からするとめちゃくちゃゲームが上手いキャラクターです。ゲームによっては世界一をとれる能力があり、『モンスターハンター』の対大型モンスター戦などで活躍するタイプになっています。苦手なゲームもあるんですが、そのお話は2巻以降で書けたらいいですね(笑)。蓮司の配信に晴斗がコメントする場面など、野郎ふたりの絡みはおバカ全開でお気に入りです。

 

副会長の黒宮白乃は、晴斗の中に「緋菊七姫は女の子が好き」という勘違いが生まれた諸悪の根源です(笑)。得意なゲームは格闘ゲームで、一番負けず嫌いなキャラクターでもあります。また、作中では男性とも女性とも恋愛ができるといったニュアンスで描かれていますが、どちらかというと女性の方が好きなキャラクターです。実際、中身が晴斗だとは知らずにレイニのことを狙っており、黒宮の存在によって相関図がより複雑化する結果にもなっているわけで(笑)。元々、生身の晴斗を好きなヒロインと、晴斗のアバターであるレイニを好きなヒロインを作ろうと考えていたわけですが、結果として黒宮はかなり癖の強いキャラクターになってしまいました。

 

 

――メインキャラクターはレヴェリレートで上位に入るゲーマーたちですよね。特に晴斗と七姫はレヴェリレート一桁台ですが、同じ一桁でもかなり差があるように感じました。

 

1位の晴斗と9位の七姫の間に大きな差があるのはその通りで、今後を考える上で枠を絞らないように差を大きくしました。最初は七姫を2位にする案もあったんですけど、今後の展開を考えてギリギリ一桁にしているので、2位のキャラクターをどうするべきか、今でも考えています(笑)。

 

 

――現状は圧倒的な頂点として「セイテン」こと晴斗が君臨しているわけですね(笑)。

 

レヴェリレートは身体能力や反射神経といった、ゲームの戦闘に関連する要素を一律化し、強さとしてランキング化したもので、その1位である晴斗はシンプルに「天才」と言えます。自分は「天才」を慣れるのが早い、適応力のある存在だと考えていまして、晴斗の場合は優れた反射神経と動体視力であらゆる状況に適応していくんです。ただ、その能力はレイニの時に使えなくなります。具体的には、アバターとして動かす関係で身体の遅延が0.1秒あり、反射神経の良さを活かせず、さらに眼球の動きも制限されてしまうわけです。結果として動体視力の良さも潰れてしまうんです。このように、レイニの時は上手いこと晴斗の特技を奪う形にして、周囲の人間に晴斗の正体をバレにくくしていたりもします。

 

やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~

※レヴェリレートの頂点に君臨する天才ゲーマー・セイテン(晴斗)

 

 

――ちなみに、罠和ノワナ先生が現実で天才だと思った人はいますか。

 

何人かいますが、その天才たちに絶対に負けないキャラクターとして、全員を超えたイメージで描いたのが晴斗なんです。あくまで現実と比較した時に、現実ではちょっとあり得ないラインの強さを意識しています。

 

 

――ありがとうございます。作中では、晴斗と七姫は《イーテル》を使って別姓のアバターを、AIは校舎の中に迷宮を作り上げていました。活用手段の多い《イーテル》ですが、もし現実にあったらどんなことに使いたいですか。

 

面白い質問ですね(笑)。自分は日常生活で、「これ欲しいけど高いな」って感じた時に使うくらいかもしれません。実現できることが多い《イーテル》ですが、一応制限はしていまして。校則で生徒ごとに使えるサイズの限界が決められているんです。文化祭などがあれば、「この部活はこのサイズのものまでなら使っていいよ」という感じになると思います。

 

 

――文化祭時に割り振られる部費みたいですね。本作は放課後の迷宮踏破がメインストーリーになっているわけですが、学園ものらしく部活やイベントごともあるのでしょうか。

 

メインは迷宮ですが、小ネタ程度には考えています(笑)。クラスメイト同士の関係が希薄な設定にしているので、代わりに部活の仲間や縦のつながりを強くしました。本作の舞台は高校ですが、選択式のカリキュラムなど、ところどころに大学的な設定も混ざっているんです。

 

 

――ということは、晴斗や蓮司は他の生徒から、クラスメイトや同学年の人間という以上に、生徒会のメンバーとしてより強く認識されているのかもしれませんね。

 

そうですね。特に生徒会は、レヴェリレートが高い人が入るという共通認識が生徒間にはあります。なので、生徒会所属の時点で「あいつは強い」と一目置かれるような立ち位置になっています。実際の強さはまだ周囲にバレていないので、その辺のお話もどこかでやりたいですね。

 

 

――ありがとうございます。ではイラストについてもお聞きかせください。書籍化に際してはイラストをらうと先生が担当されました。キャラクタービジュアルをはじめて見た時の感想や、お気に入りのイラストについてはいかがですか。

 

最初に見た時は、自分がイメージしていたものをしっかりと形にしてくれて、さすがだなと感じました。らうと先生と直接お話をする機会は少ないんですけど、自分の要望をしっかりと読み取ってくれる方で、信頼があります。キャラクターデザインのイチオシはレイニで、らうと先生から提案された帽子のデザインがものすごく可愛いなと思いました。全体で一番のお気に入りはカバーイラストです。キャラクターはもちろんですが、背景の雰囲気がものすごく好きです。

 

やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~

 

やぁ“登校”に挑めニンゲンカバーイラスト

※罠和ノワナ先生イチオシのレイニとお気に入りのカバーイラスト

 

 

――続いて、どんな読者が読むと、より本作を楽しめると考えていますか。

 

MF文庫Jからの刊行なので、基本的な読者層は高校生や大学生になると思います。ですが、一番読んでほしいのは、昔ラノベを読んでいたけど最近は読まなくなってしまった方々でしょうか。昔のライトノベル特有の面白さを現代の感覚に戻し、当時の「面白かった」を感じられるような作品を目標にしてきたので。

 

 

――本作の見どころや注目してほしい点も教えてください。

 

本作の舞台は、迷宮やダンジョンといった風貌ではありつつも、他とは一線を画す設定になっているので、新しい世界観だと思っています。あとはキャラクターの関係性に注目して楽しんでもらえたらなと。笑って読めて、最後は熱くなれる作品です。

 

 

 

――今後の野望や目標があれば教えてください。

 

まずは第一巻の大ヒットでしょうか。どれくらいの人に読んでもらえるのか、不安はずっと感じています。また、担当編集さんとはアニメ化を目指して行きたいと話しています。あとは、この作品を読んだ人が「自分がイーテルを作るんだ」って研究者になってくれたら嬉しいかなと。でも、まずはホログラムを発展させてほしいですね(笑)。

 

 

――最後に本作へ興味を持った方へ一言お願いします。

 

読んで後悔させない作品になっていると思うので、是非一度手に取ってほしいなと思います。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

生成AIによって生み出された迷宮を、ゲーマーたちが“登校”する物語を綴った罠和ノワナ先生にお話をうかがいました。別姓のアバターを用意し、アプローチを掛け合う主人公とヒロインのすれ違いに笑い、ゲーマーたちの戦う姿には熱くなれること間違いなしの本作。レーベル史上初となるW受賞を果たした『やぁ“登校”に挑めニンゲン ~ゲーマー共は武器を片手に歪んだ校舎を踏破する~』は必読です!

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・三上/鈴木>

 

©罠和ノワナ/KADOKAWA MF文庫J刊 イラスト:らうと

kiji

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