『魔女の絶対道徳』森田季節先生インタビュー
オリジナルインタビュー「ラノベの素」。
今回は11月30日にファミ通文庫より発売された新刊『魔女の絶対道徳』の著者、森田季節先生にお話を聞きました。
魔女の絶対道徳
著:森田季節
イラスト:NOCO
目の前の正義はなまやさしいものじゃない。
「束縛のない人生が一番だ」連続殺人事件の犯人を追っていた俺、水主頼斗【みぬしらいと】は、逆に縛り上げられてしまった……。そのピンチを俺は「天狗」の少女、輪月【わつき】に「天狗の血を引く」という理由で助けられた。いや、むしろ改めて輪月に拘束された。ところで、お前の手伝いをするのはいいけど、事件って解決してるの? 俺、咒師【のろんじ】っていう和製魔法使いで、事件が解決しなかったら実は死ぬんだけど……大丈夫? 正義の和製魔法使いと不純少女の青春怪奇ストーリー!
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
「こんにちは、文筆業をやっております森田季節と申します。小説を書いてない日は、だいた いどっかの町の寺社仏閣を巡り歩いております。趣味みたいですが、一応取材扱いで動いてます。実際、今回の話は和風伝奇テイストが強いですが、実地探訪し た箇所がいくつかモチーフになっています」
寺社仏閣巡りとは渋いご趣味ですね。さて、森田先生はオリジナルインタビュー「ラノベの素」2度目の登場となります。今回は森田先生の新シリーズ「魔女の絶対道徳」が発売となりますがどんな作品か紹介をお願いします。
「もし、作品にタグをつけるとしたら、和風伝奇・ちょっとだけミステリ・ちょっだけホラー・ちょっとだけ異能力バトル、なんて感じになるでしょうか。正直、自分の趣味ややりたいことを順番に入れていったら、こういう形に収まったという感じですね。正直、ここまで好きなことをやらせてもらって、本当にいいのかなと思っています。具体的な作品名が言いづらいんですが、和風の伝奇作品が好きな方にはおそらくちょうど合うんじゃないかと思います」
主人公を描く際にどこをポイントにしましたか?
「自分の中で、超人みたいな人間を想像して書くことが得意ではないので、もし一般の中高生が特別な力を手に入れてしまい、理不尽な役回りを果たすことになったらどんなふうに思うだろうか、現実的にどんなふうに行動するだろうかということを考えてやりました。なので、ラストの主人公の決断は、いわゆる正義の味方的なものとはちょっと異質かもしれません。ただ、もし自分が同じ立場だったら、そうするよな……と。これ以上はネタバレになっちゃうので控えますが」
ヒロインは最初からあのような過激なキャラでしたか?
「もともと過激にするつもりでしたが。改稿していくうちに新たに思いついた下ネタをどんどん足していって、今の状態になりました。著者校の段階でも無理矢理ネタをぶちこんだりしたので……。あと、口調も下ネタでなおかつ可愛く見せるには、これが一番よいだろうということで丁寧語を使う子にしました。たしか、一番最初の設定では、もっとぶしつけな口調だったんです。けっこう文字数多めの小説かもしれませんが、そこのところを楽しんでもらえれば、ぐいぐい読んでいただけるかなと思っています」
森田先生が一番お気に入りのキャラクターは誰ですか?
「上とかぶりますが、輪月ですね。えっちなこと、平気で言ってくる女の子が好きなので……」
えっちなことを平気で言ってくる輪月みたいな美少女はみんな好きだと思います。では、本作を書くのに一番苦労したのはどんなところですか?
「主人公の能力のバランスですね。強すぎても、ストーリーが破綻するし、弱すぎると、本当に異形の血を引くヒロインたちに振り回されるだけになってしまうので、無茶苦茶強い技が使えるんだけど、回数制限があるという形にしました」
森田先生は、前回のインタビューで時間があれば何度でも改稿すると仰られていましたが、小説家志望の若い人たちにアドバイスをひとつお願いできないでしょうか。
「少なくとも、デビューする前の段階では、自分が本気で書きたいと思うものをとことん突き詰めて書いて投稿したほうがいいのかなと思います。
もちろん作風的に特殊すぎてデビュー作が売れないこともありますが、少なくとも私の知ってる範囲では、本気で書きたいものがあって、それを続けた人はほとんど全員、セールス的にそのあと成功してるんです。
逆に怖いのが、流行っている方向に寄せようとして中途半端になってしまうことです。
もちろん、デビュー作から大きく作風を変えて大成功した人もたくさんいらっしゃるんですが、作風を変えるって、それ自体がかなり特殊な能力なんですよね。
だから、なかにはそれが苦手な人だって当然いると思うんです。作風の変化が中途半端になって、宙に浮いてしまうような人もいます。
それだけならいいんですが、自分でもよくわからないまま書き慣れないものを書いていくうちに、『小説を書くこと自体が面白くなくなる』という事態を作り出してしまうことが稀にあります。せっかく、デビューしてプロになったのに、こんな気分になったら、最悪もいいとこです。
なので、どんなジャンルのものを書くにしても、本当に面白いと納得しているものを世に出すべきだし、投稿するべきだなと思います。
とくにデビュー作は『この作家はこういう人だ』っていう意識を読者の人にかなり強く植えつけるものなので、自分がやりたいことは入れるだけ入れるつもりで出したほうがいいかなと思います。長くなってすみません……」
いえいえとても役に立つお話だと思います。では現在注目している作品や作家さんなどはいますか?
「漫画でもよろしいですかね……?
くずしろ先生の百合漫画が超好きです。あと、今井哲也先生の漫画もけっこうはまってます。『ぼくらのよあけ』とか小学生の救いのないスクールカースト制みたいなものが、異様に生々しくて、身もだえします」
森田先生が作家になってよかった! と思えるのはどんな時ですか?
「月並みですが、自分の書いたものがちゃんと人の目に留まって、読んでもらえることですかね。デビューする前は、本当に大学の先輩一人、二人ぐらいしか読んでくれる人がいなくて……。逆に言うと、世の中には誰も読んでくれる人がいないのに応募する人もいるわけですよね。それって、相当なパワーがこめられてないとできないことだと思うんです。だからこそ余計に、悔いのないものを投稿してほしいですね」
では逆に 作家ってつらい! と思う時は?
「つらいってほどではないですが、個人事業主なので、何かトラブルがあったりした時など自分の言葉ではっきりと意思表示したり、動かないといけないことがあります。なので、あんまり気の弱い人には、実は向いてないかもしれないです……。それと、会社員の時には一切考えなくてよかったような事務的な仕事が意外と多いです。私は確定申告の帳簿つけるのとか、むしろ趣味なぐらいなんですけど、こういうちまちました仕事が面倒な人もいますよね」
なるほど、個人事業主は大変な部分もあるんですね。そろそろ時間になってきましたので森田先生の今後の予定など教えてください。
「デビュー作が出て五年目に入ったので、ちょっとこれを節目に自分なりのカラーというのを強めに出す形で動いていきたいなと思っています。吉と出るか凶と出るか、まったくわからないんですけど、これまで『広げていく』ことを一つの目標に動いていたところがあって、これからはそれを『掘り進めていく』方向に徐々に変えていきたいなと。幸い、単行本のかたちでいくつかお仕事をいただいているので、そちらはそちらで掘り進めつつ、ライトノベルはライトノベルのやり方で新しい掘り進め方ができないかやってみようと思います。上で書いたこととも重複しますけれど、自分自身も悔いのない仕事をやるようにしないといけないと感じているので」
森田季節の新しいカラーがこれから見れるんですね。楽しみです。では最後に読者の皆さんに一言お願いします。
「長々と書いてきましたが、ここまで付き合って下さって、本当にありがとうございます。
12月18日にガガガ文庫で『つきたま※ぷにぷにしています』を刊行します。こちらも新シリーズです。どうか、よろしくお願いいたします。これはこれで、なんか普通と違うぞ……ということを意識して作りました。
あと、1月18日に一迅社から『ウタカイ』という単行本を刊行します。百合姫誌上で連載していたものを加筆したものですが、百合短歌バトル小説という、おそらく前例のないものになっているかと思います。こちらもよろしくお願いいたします!」
これからも幅広いご活躍期待しています。本日はありがとうございました。
「こちらこそありがとうございました!」
森田先生ありがとうございました。
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