【特集】『碓氷と彼女とロクサンの。』の舞台がTV番組『ブラタモリ』にて放送! 夏綺とみすずが徹底解説しちゃいます!
11月21日(土)にNHK総合『ブラタモリ』にて「軽井沢への道のり」をテーマとした放送が行われることを皆さんはご存知だろうか。軽井沢とは、かつてつらく険しい道のりを越えてたどりつく場所であったということも。群馬県と長野県の境にある「碓氷峠」は最大の難所と呼ばれ、鉄道がその急勾配を乗り越えるための工夫「アプト式」や「EF63」が用いられた。番組内ではタモリさんがそんな電気機関車の運転にも挑戦する。
そして、今回は番組でも取り上げられる碓氷峠を舞台にしたライトノベル『碓氷と彼女とロクサンの。』をご紹介したい。本作でも、そして番組でもキーワードとなっている「碓氷峠とは」、「アプト式とは」、「EF63とは」――。放送されるTV番組『ブラタモリ』をより楽しく視聴でき、ライトノベル『碓氷と彼女とロクサンの。』もさらに楽しく読める大特集! この特集のために阿羅本景先生が書き下ろしたキャラクターたちによるキーワードの徹底解説は読みごたえ抜群! これを読めばあなたも『しぇるぱ部』に入部できるかも!?
「どうもっ! みんなとはこちらではお初に掛かるかな? 碓氷峠観光開発コンソーシアム・女子学生鉄道プロジェクト、通称『しぇるぱ部』の一年生、機関士の浅間夏綺ですっ! そして今日の相方は――」 |
「好きな横軽通過列車は上り方向のEF62牽引の貨物列車の、丸池みすずです! EF62が峠を降りる時はその前方にEF63の重連が連結されるので、夢の冷却器ブロワー音三重奏が――!」 |
「みすずちゃんココ、ライトノベルの読者さん向けのコーナーだから、そんな鉄道マニア向けのコトを言ってもお客さんポカーンだよ?」 |
「あっすいません! EF210の一六〇〇トン貨物牽引も捨てがたい魅力が……ではなくて、同じく『しぇるぱ部』所属の一年、整備運用担当をやってる丸池……と申します。あの、ところで志賀さんは今日はどちらにいらっしゃるのですか……?」 |
「真ちゃんは、『こういう公式活動として人前に出る時は、女装しなくちゃいけないからヤダ』ということでお休みだそうで……『碓氷と彼女とロクサンの。』の主人公なのにねぇ?」 |
「志賀さんの気持ちもわからなくありませんが……しぇるぱ部の広報担当である、萩野先輩がいらっしゃらないのはなぜでしょうか?」 |
「えーっと、『そういうトークの場に私が居ると、話をかき混ぜちゃって進行が遅くなるからパスした方が良さそうですねー』と言って、部室でお絵かき中」 |
「いかにも萩野先輩らしいというか……」 |
「あと『かまめっしー出しちゃダメなんですかねー? だめ? じゃぁパスですねー』とか言ってたなぁ……」 |
「それ、萩野先輩が出て来たら私か夏綺ちゃんがかまめっしーの着ぐるみに入れられるってコトじゃないですか……?」 |
「うん。だから無理に出て、って言わなかった私の配慮を褒めて!」 |
「なんかちょっとヒドい気もしますけど、結果オーライです!」 |
「あとは……お嬢様、いや白鳥部長は「そういう宣伝の仕事は私の出番ではなくってよ? みすず、あなたがやりなさい」とおっしゃってましたし……では、お嬢様の信望を裏切らないように、がんばりますっ!」 |
「では早速! 上の紹介記事でのピックアップした、重要キーワードの説明を――っと、その前に!」 |
「私たちの出ているライトノベル、『碓氷と彼女とロクサンの。』の紹介から!」 |
「もし『碓氷と彼女とロクサンの。』をご存じない方へ、私たちの出ている作品を紹介すると――」 |
【あらすじ】 「このロクサンを、女子高生だけで運行するんだ!」
廃止された線路に伝説の電気機関車を走らせる、そんな壮大な計画に参加することになった僕、志賀真。れっきとした男である自分がこの活動に参加したのは、鉄道に興味があるから―ではなく、地域貢献がしたいから―でもなく、楽しそうに鉄道の魅力を語る女の 子、浅間夏綺がいたからだ。リーダーの明日香、広報の朱鷺音、機関士の夏綺、整備士のみすず。僕たちはこの伝説の地で新たな歴史を作る―! |
「……というお話で、私や夏綺ちゃん、それに志賀さんが横軽専用補助機関車EF63と共に活躍するお話ですね? ファミ通文庫さんより好評発売中です!」 |
「いや、あの時はほんっとーにどうなるかって思ったよねぇ……真ちゃんに助けてもらわなければ、タイヘンなコトになってたと思うし」 |
「と、その辺は未読の方にはネタバレになってしまいますので控えめに……」 |
「ああんっ、そうだった。今回の紹介キーワードは見ての通り、私たちの活動にひっじょーに縁の深いものばかりなんだよね? だから、私たちがここでわかりやすく面白く紹介することになったんだけど――」 |
「それでは不肖・丸池みすず、「EF63」の解説から始めさせていただきま――」 |
「――の前に、キーワード1「碓氷峠」から!」 |
「あうっ!? ロクサンを語らせてくれないんですか?」 |
「まず線路の方から話してかないと、みんな訳わからないままだよ?」 |
「そ、そうですね……キーワードの順番、ロクサンは最後ですし……それまでは我慢します」 |
碓氷峠
「碓氷峠は長野県と群馬県を繋ぐ、古くからの交通の要所だよ。中山道の関所と宿場町がここにあって……でも、全国にもたくさんある峠道の中で、なぜ碓氷峠が話題になるのかというと!」 |
「ここに東京と名古屋・京都へつながる鉄道を通そう! という明治の開発計画が実行され、高低差800mもある急勾配の碓氷峠を汽車や列車が通ることになったからなんですね」 |
「……でも、なんで東京から名古屋に鉄道を通すのに、海沿いの東海道を先に選ばなかったのかな? あっちの方が平たくて楽そうに見えるんだけど?」 |
「その辺は日本鉄道史の重要問題で……まず、箱根越えがあるので東海道に線路を敷くのはそれはそれで楽でもありません」 |
「そうだったよね。♪箱根の山は天下の険~、って歌もあるし」 |
「それに東海道には平行する、海運という優れた交通手段があるので鉄道の必要性が一段低かったこと。それと、当時ならではの理由があります」 |
「ほむ? 当時ならではの理由って?」 |
「外国から日本が攻められた時、海沿いの線路は軍艦から砲撃を受けて壊されるので、出来るだけ海岸線から遠いところに、日本の主要都市を繋ぐ鉄道を造りたい。そうなると、碓氷峠を通る中山道は申し分なく内陸に通っているなので、防衛上都合がいい、と」 |
「はぁ……な、なんか物騒だね」 |
「明治という時代は、そういうことも考えないとダメだった世知辛い時代ということですね。もっとも、碓氷峠を通る鉄道は中山道沿いの東西輸送よりもむしろ、東京と新潟を繋ぐ日本を縦断する経路としての重要性を帯びるコトになったのですが――」 |
「とにもかくにも鉄道車両が碓氷峠を越えなくてはいけない、そのために横川駅-軽井沢駅間の急勾配、通称『横軽』という難所が生まれ――それが『鉄道の聖地・横軽』になった一つの理由が」 |
アプト式
「キーワードその2! 「アプト式」だね!」 |
「はい! 横軽に通された線路は短いのに急な坂を上らざるを得ず、その勾配は66.7‰……1000m行って66m上りという大変なものになりました」 |
「徒歩だとちょっときついかな? って坂でしかないんだけどねぇ」 |
「鉄道はレールの上に車輪が走ってるので、摩擦が少ない為に勾配に弱いんです。そのために坂を上り下りする為の特殊な機構が導入されました」 |
「それは、レールの間に凹凸のあるもう一本のレール、ラックレールを通してそこに機関車の方にもかみ合う歯車、ピニオンギアをつけて噛み合わせて走る、アプト式と呼ばれるラック式鉄道です」 |
「アプト、というのはこの方式を考えたドイツ人の名前から付いたんだよー」 |
「ラックレールを使う鉄道は他にも何種類かあるのですけど、日本では主にアプト式なので……日本ではアプト式=山岳用特殊鉄道、という感があります。山岳鉄道国家であるスイスとかは、各種ラック式鉄道の博覧会みたいな感じなんですよね」 |
「ねぇねぇ? 碓氷峠以外にも、日本にアプト式の鉄道ってあるの?」 |
「大井川鐵道の井川線もアプト式で、こちらは90‰という碓氷峠以上の急勾配を登るためにアプト式が採用されていて、現在も運用中ですね」 |
「他にはないの? 日本は山ばっかりだから、もっとたくさんあると思ったのに」 |
「そうですね、何故かラック式鉄道が少ないのかというと……」 |
「と、いうと?」 |
「トンネルを掘って山を貫通すれば勾配を抑えた線路が作れます。なのであえて特殊な軌道と機関車を用意する必要がないから、ですね。おかげで日本は世界に冠たるトンネル技術大国になりましたが……」 |
「なるほど……碓氷峠は軽井沢の方が標高の高い片持ちの造りだから、トンネルじゃダメだっていう話なんだよね」 |
「そもそもラックレールを使わなければ上り下り出来ないような急勾配の峠に、無理して鉄道を通すことはないんじゃないの? 別の迂回のルートはないの? という話になってきたりもしますし……」 |
「あっ、なんかまた切ない話になってきた! では、そのキーワードの話題はここまで!」 |
EF63
「それじゃキーワード3、私も乗っている「EF63」の説明を始めようかー! みすずちゃん、興奮してきた?」 |
「はいっ、もちろんです! では参ります!」 |
「碓氷峠を通っていたアプト式の補助機関車は、メリットもありますがデメリット――一言で言うと、遅い――もあって、第二次世界大戦の後にこれじゃダメだ、って話になって廃止されたんです」 |
「ですが新しく碓氷峠に敷かれた線路は、同じ66.7‰の勾配のまま。だけどアプト式は使わず、粘着式鉄道――普通の鉄道と同じ車輪とレールを用いて運転する。その無理を可能にした、横軽専用の補助機関車こそ「EF63」なのです!」 |
「通称『ロクサン』のすごさは『碓氷と彼女とロクサンの。』の中でもみすずちゃんがみっちりと説明しているから、ここはわかりやすく三行で!」 |
「え?」 |
「あとは読者さんにわかりやすいように、そうだな……ガ○ダムで例えてみて?」 |
「ちょ、なんですかその無茶ぶりは、夏綺ちゃん!?」 |
「3.2.1、はいっ!」 |
「ロクサンは」 |
「日本鉄道界の」 |
「ビ○ザムです!」 |
「……あ、なにかすごく大変な感じがする。特殊装備山盛りだもんね、ロクサンは……量産の暁にはれんぽーなどモノの数ではない……」 |
「そうは言いますけど、二十五両も量産しましたよ? もっとも往年の日本の貨客輸送の背骨を担った、同世代の機関車のEF65に比べると「二十五両ぽっち」かもしれませんけど、11.2kmの区間だけしか使わない補助機関車としてはたくさん作ったものだなぁ、と思わなくもないですし……」 |
「碓氷峠、そして横軽が鉄道を良く知る人たちの間で人気があるのは、こういった「アプト式」や「EF63」などの他の路線にない、特別でロマンのある要素がぎゅーっと詰まっているからなんです」 |
「うんうん、碓氷の鉄道は燃えるよね! だけど、そんな横軽が『聖地』と呼ばれるようになったのか? というと……」 |
「同じ碓氷峠を並行して走る長野・北陸新幹線の開通に伴い、97年に信越本線・横川-軽井沢間が廃止となってしまったから、ですね……今はない廃線だからこそ、栄光の日々が記憶に刻まれた伝説の路線へと、聖地になった、と」 |
「寂しいもんだねぇ……そういえば、どうして新幹線はラックレールも補助機関車もなしに碓氷峠を上れるの?」 |
「それは横川の手前にある安中榛名から軽井沢まで、長いトンネルを掘って勾配の比較的緩やかな路線を新しく敷いたから、ですね。それでも30‰という新幹線の限界に近い勾配になりましたが」 |
「なるほど。日本はトンネル技術大国になったから、碓氷峠でもなんとかなっちゃう様になったってコトか」 |
「はい。ですが新幹線のためにお役御免となったEF63は、横川機関区跡に作られた『碓氷峠鉄道文化むら』に納められ、今でもここを訪れるお客さんに向けて機関車の体験運転を行う余生を送っています」 |
「そして、横軽復活にむけて活動する私たち『しぇるぱ部』も、同じ場所で在りし日の横軽伝説の復活に向けて日々、がんばってます! その活動は、『碓氷と彼女とロクサンの。』で読んで体験してね」 |
「そうですね、この記事を読んだのを機に、『碓氷と彼女とロクサンの。』を手に取っていただけると嬉しい、とお嬢様も、そして作者さんも思っているそうですよ?」 |
「試し読みもあるよ! こちらからどうぞー!」 |
「もう持ってる! っていう人は復習もかねてもう一回読み直してみてね? みんな、よろしくねっ! それじゃ――また小説で会おうねっ!」 |
ファミ通文庫より『碓氷と彼女とロクサンの。』は好評発売中となっている。TV番組『ブラタモリ』放送前でも放送後でも、この特集を読んで少しでも興味を持った方にはぜひ手に取ってもらいたい作品だ。今回ここには登場しなかったキャラクターたちも強力な個性と魅力に溢れ、夢に向かって突き進んでいく。その姿もぜひ追いかけてもらいたい。
彼女たち(?)が夢に向かって突き進んでいく姿をぜひ本作を読んで楽しんでもらいたい。
この機会に『碓氷と彼女とロクサンの。』をぜひ読もう。
©阿羅本景/KADOKAWA エンターブレイン刊 イラスト:バーニア600
[関連サイト]