独占インタビュー「ラノベの素」 大城功太先生『異世界召喚された俺がHできない理由』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2019年1月25日にオーバーラップ文庫より『異世界召喚された俺がHできない理由』が発売となる大城功太先生です。第5回オーバーラップ文庫大賞にて「金賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。夢と希望に溢れる異世界へと召喚された普通の高校生が、夢描いていたファンタジーの姿と、目の前で繰り広げられる現実とのギャップにツッコミが止まらない異世界コメディを描く本作。コメディとお色気と、ちょっとした熱さも垣間見える作品の内容や見どころについてお聞きしました。

【あらすじ】

隠れオタクの高校生・守口悠人は、美少女冒険者ミリアの魔法により憧れの異世界に召喚される。ミリアに誘われるまま冒険者として過ごすことになった悠人は、魔法を使うと消費する【МP】のステータスが規格外と判明。魔法チートで一流冒険者を目指すと張り切る悠人だが、この異世界には問題があった。МPがいわゆる【マジックポイント】ではなく【ムラムラパワー】――つまり性欲で!? 性欲が溜まるほどМPが溜まり、強力な魔法が使えるこの世界。悠人を強くするため、ミリアがえっちなサービスでMPを高めようと迫ってきて!? 悠人の理性が試される冒険者生活が始まる――! えっちでイケない異世界ファンタジー!

――それでは自己紹介からお願いします。

このたびオーバーラップさんとご縁がありましてデビューすることになりました大城功太です。出身は岐阜で、2年か3年前に暁なつめ先生の『この素晴らしい世界に祝福を!』のアニメを拝見して、その面白さに触発されて筆を執りました。高校3年くらいの時に受験の合間に何本か書いて新人賞への応募はしていたんですが、高校卒業後は書くほうも読むほうも長らく離れていました。ありがたいことに第5回オーバーラップ文庫大賞にて「金賞」をいただくことができました。

――高校生の頃に執筆活動をされていたとのことですが、当時ライトノベルはかなり読まれていたんですか。

そうですね。ライトノベルを読むようになったのが高校2年生くらいの頃で、友人に勧められたことをきっかけに読むようになりました。初めて読んだライトノベルがおかゆまさき先生の『撲殺天使ドクロちゃん』で、ライトノベルってこんなにギャグやコメディに全振りした作品がたくさんあるのかと感じました。実際には『撲殺天使ドクロちゃん』は特殊なタイプの作品だったようで、他の作品を読むようになってからは、いろんなタイプの作品があることを知りました(笑)。当時は週刊少年ジャンプくらいしかサブカルチャーには触れていなかったので、大きな影響を受けた作品のひとつではあります。

――『この素晴らしい世界に祝福を!』も『撲殺天使ドクロちゃん』もコメディ作品で、大城先生の受賞作もコメディであることを考えると、影響はかなり大きかったのかもしれませんね(笑)

今回賞をいただいた作品も含めて、自分の中のコメディの礎になっていることは間違いないと思います。高校時代に書いた作品もコメディ系だったので(笑)。

――高校卒業後はしばらくライトノベルから離れつつも、このたび第5回オーバーラップ文庫大賞にて「金賞」を受賞されました。あらためて感想をお聞かせください。

受賞の嬉しさはいただいた電話を切ってから少しずつ湧き上がってきた感じです。電話をいただいたのが日中だったと思うんですけど、「受賞おめでとうございます」と言われて最初は何を話していいかわからなかったんですよね。どうにも電話での自分の反応も「はあ、……はあ?」と薄かったらしく、担当編集の方と初めて打ち合わせをした際は、連絡をした時は寝起きだったのかと聞かれるくらいでした(笑)。

――今回、オーバーラップ文庫大賞での受賞となったわけですが、オーバーラップ文庫大賞を選んだのには何か理由があったのでしょうか。

理由はいくつかありますが、ひとつは応募締切のタイミング。8月近辺をターゲットに執筆しており、タイミングがばっちりだったことです。そしてもうひとつが、オーバーラップさんの新人賞では以前に審査員制度を設けられていて、第3回に寄せられていた十文字青先生のコメントでした。WEB小説が広がっている中で、WEBに連載しないで新人賞に投稿する理由は何かといった主旨の言葉だったんですけど、この言葉にすごく惹かれたんですよ。友人が「小説家になろう」をたくさん読んでいて、原稿を執筆しながら最近の流れを聴いたりしていたのですが、僕の書いた作品はWEBという場でウケるとは漠然と思えませんでした。その時にかつての選評を見て、オーバーラップさんに投稿しようと考えました。

――ありがとうございます。それでは受賞作『異世界召喚された俺がHできない理由』はどんな物語なのか教えてください。

一言で言うと異世界コメディ作品になると思います。ファンタジーに夢見る普通の高校生が、ヒロインである女の子の冒険者によって異世界へと召喚される物語です。ファンタジーという世界に憧れいっぱいの主人公なのですが、その憧れや描いていた夢は次から次へと崩れていく。いざ蓋を開けてみたけれど、思っていたものとは違う出来事が目の前で起こり続けるわけですね。また、MPだけはチート級に凄いんですが、MP(ムラムラパワー)と魔力の関連性や、与えられる二つ名、現れる敵など、言葉遊びやギャグの面にも注目してもらいたい作品です。お色気シーンも結構ありますが、コメディのために用意されたシーンも少なくないので、下ネタ的なコメディが割合としてはかなり多いのかな(笑)。作中の出来事は最終的に笑いに持って行くスタイルなので、読んだ方が笑ってくれることが一番だと思ってます。

※憧れのファンタジー世界で主人公を待ち受けるものとは……?

――本作は『この素晴らしい世界に祝福を!』の影響を受けて執筆を始めたというお話もありました。執筆時の着想や苦労したこと、楽しかったことがあれば教えてください。

『この素晴らしい世界に祝福を!』に触発されて執筆を始めたものの、『この素晴らしい世界に祝福を!』の笑いとは少し違う下ネタコメディに突き進んでいたんですよね(笑)。僕自身が下ネタ好きというわけでもなく、アイデアがどう出てきているのかは判然としていないのですが、筆が乗るのはそういったシーンばかりで(笑)。一方でちょっとシリアスなシーンやラブコメシーンではキーボードのスピードがどうしても落ちてしまうという。改稿時ではそういうところに苦労した気がします。発売にあたって特典用のSSもいくつか書いていて、どれもコメディ中心だったので、特に苦労することなく書けたのですが、キャラクターの二つ名を考えるところはコメディの性質が違ったせいか、かなり苦労しました。今後は苦戦しないで書いていけるようになりたいですね。

――それではコメディやお色気を彩る登場キャラクターについて教えてください。

ユウトは異世界から召喚された普通の高校生です。異世界やファンタジーにただならぬ強い憧れを抱いた思春期男子で、ファンタジー世界に夢を裏切られつつもツッコミが冴えわたる主人公でもあります。思い描いたファンタジーと現実のギャップにぶち当たるとすぐに落ち込むのですが、ちょっと新しいファンタジーの香りがすると、すぐに復活するノリのいいキャラクターでもあります。MP(ムラムラパワー)だけが異常な数値になっているところも特徴ですね。

※ファンタジーを夢見る思春期男子・ユウト

ミリアは本作のヒロインの一人で、正義感に溢れた冒険者の女の子です。ユウトと違ってMPが少なく非力ではあるんですが、街の皆に対して優しく献身的で、街のマスコット的な愛されキャラクターでもあります。魔力自体は強くないのですが、正義感が強く、より効率的に成果を出すため、炎の魔術で股間をピンポイントに狙っていく戦闘スタイルが定着しています。笑いどころではあるのですが、彼女からすれば自分の力をしっかりと認識して、最大の戦果を挙げるために真面目にやっているんです。ユウトから見たら冷や汗ものですし、男性にとってはえげつないことこの上ないのですが、立派な戦術なんです。

※魔力が少ないゆえに編み出された戦術がえげつないヒロイン・ミリア

――ミリアの戦術もそうですが、異世界の人達の真面目な言動は主人公から見るとギャグにしか見えないシーンもたくさんありますよね(笑)

異世界の常識ではそうせざるを得ないようなことも、ユウトの視点ではちょっとズレて見えるわけです。このズレは作品の見どころで笑いどころだと思っています。逆に異世界側から見ると、ユウトの夢描くファンタジー的な観点は、現実的ではないことがほとんどなわけです。このあたりをぜひ楽しく読んでいただきたいですね。

――この二つの世界のズレを上手く繋いでくれているのが、ミリアの付き人でもある獣人のメイドであるローナなんですよね。

そうですね。ローナはミリアとユウトの間に生まれるギャップの摺り合わせをしてくれる存在でもあります。ユウトがちょっと欲望に忠実なアクションやリアクションを取ったりした時に、ミリアが引きすぎないように繋げてくれるんです。冒険者とは違う付き人として、うまく立ち回りながらユウトにも好意を寄せていくヒロインの一人でもあります。

※ミリアの付き人としてじりじりとユウトに迫ってくるローナ

――そんな魅力的なキャラクター達がsune先生によってイラスト化されました。

イラストのsune先生には全体的にふわっとしたオーダーで描いていただいたこともあって、苦労をおかけしたと思います。色の入ったジャケットイラストを初めて見た時は、本当に感動しました。いよいよ本になるんだという実感も湧きましたよね。曖昧然としていたキャラクター達が、sune先生の手で仕上げられていく様子を見て、いち読者の視点でその様子を見ていたように思います。これがミリアで、これがローナなんだなって(笑)。あとは文字面からだけでは想像しづらい、ED侍なんかもダークな雰囲気をまとったイケメンに仕上げられていて、本当にお気に入りです。sune先生には感謝しかありません。

※ダークな雰囲気を醸し出すイケメンの名はED侍

――それではあらためて、作品に見どころや注目してもらいたい点があれば教えてください。

兎にも角にも笑ってもらいたいということがひとつ。そしてコメディだけでは物足りないという方には、ちょっとしたお色気シーンや終盤に向けた熱さを感じさせられるシーンもあるので、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。キャラクターと作品の雰囲気を気に入っていただいて、ぜひ読んでいただきたいです。

※コメディシーンだけでなくお色気シーンにも期待!?

――今後の目標や野望があれば教えてください。

僕自身の執筆歴は決して長くないので、まずは文章をたくさん書くようにしていきたいと思っています。それはコメディ以外にも作家としての自分の武器を探して行きたいということでもありますし、この物語の続きはもちろん、新しい作品を書いてみたいという思いも強いです。とにかくここから頑張っていきたいですね。

――最後に本作へ興味を持った方、これから本作を読んでみようと思っている方へ一言お願いします。

『この素晴らしい世界に祝福を!』以外にも笑える異世界コメディを読んでみたいという方、笑いに飢えている方に手に取っていただきたいです。そうして手に取っていただいた方に笑ってもらうことはもちろん、大笑いしてもらえたら嬉しいです。笑いたい人へ、今年の初笑い用にぜひ読んでいただきたいです(笑)。

■ラノベニュースオンラインインタビュー特別企画「受賞作家から受賞作家へ」

インタビューの特別企画、受賞作家から受賞作家へとレーベルを跨いで聞いてみたい事を繋いでいく企画です。インタビュー時に質問をお預かりし、いつかの日に同じく新人賞を受賞された方が回答します。そしてまた新たな質問をお預かりし、その次へと繋げていきます。今回の質問と回答者は以下のお二人より。

第31回ファンタジア大賞「大賞」受賞作家・上川景先生

 ⇒ 第5回オーバーラップ文庫大賞「金賞」受賞作家・大城功太先生

【質問】

新人賞へ送る応募原稿は受賞をすると1冊の本になって出版されるわけですが、応募作品には自分の詰めたい要素をすべていれましたか。それとも書ききれなかった要素があって7割や8割だったりするのでしょうか。執筆に臨むにあたってどんな姿勢で挑んだのか教えてください。

【回答】

目標としては全部入れたいと思って臨みました。今回受賞した作品でも思いついたことは詰められるだけ詰めようと思っていましたし、応募原稿自体が文庫換算200ページくらいで、文量的にも多くはなかったんですよね。なので、余計にそこから入れられるものをさらに入れたという背景があります。なので、今回は入れ切ったと思います。個人的には100%にかなり近いイメージになっていると思っています。

――ありがとうございました。

<了>

ファンタジーに強烈な憧れを抱く少年が異世界へと召喚され、理想と現実のギャップにツッコミが冴えわたる異世界コメディを綴った大城功太先生にお話をうかがいました。ほんの少しでも理想に準じたファンタジーを主人公は見ることができるのか。現れる敵の一人一人にさえ笑わずにはいられない『異世界召喚された俺がHできない理由』は必読です!

©大城功太/オーバーラップ イラスト:sune

[関連サイト]

『異世界召喚された俺がHできない理由』特設ページ

オーバーラップ文庫公式サイト

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