『シュヴァルツェスマーケン』内田弘樹さんインタビュー
今回は、執筆担当の内田弘樹さんと、株式会社ixtlの山崎彬さん(以下「山崎」)、株式会社エンターブレインの比企さん(以下「比企」)らに『シュヴァルツェスマーケン』についてお話を伺いました。
※本文は一部敬称略いたします。
――本日はよろしくお願い致します。
――まずは内田さん個人のことなのですが、仮想戦記の作家をしていたそうですね。
【内田】
大学時代に趣味で二次創作のミリタリーものを書いていました。
今となっては大きな声で言っていいのかどうかわかりませんが、○eafさんの『T○ Heart』のキャラクターたちが戦場で~みたいな、ちょっと変わったジャンルの同人SSをWEB上で公開などしていました。
その当時は作家になるつもりはなかったのですが、同人誌を出したりしているうちに、知り合いの編集さんから「何か企画ない?」とお話を頂戴しまして。そこで「こういうのであれば書けますけど…」と切り出したところ、「企画書にして持ってきて」と言われたのがスタートですね。企画書を提出したところ、ありがたいことにそれが採用されて本になりました。
――編集さんに見初められた感じでしょうか。
–
【内田】
そうですね。それからは仮想戦記作家として、主に第二次世界大戦関係の本を20冊以上執筆させていただきました。
――そこから「シュヴァルツェスマーケン」に移るきっかけはなんですか?
【内田】
当時のアージュスタッフの中に自分の知り合いがいまして、その人が吉宗さん(註・吉宗鋼紀 株式会社アシッド代表。『マブラヴ』『マブラヴ オルタネイティヴ』『トータル・イクリプス』などの原作者)に、独ソ戦とか戦史に詳しい人がいると、ボクの名前を挙げてくれていたんです。
それでアージュさんが『MUV-LUV ALTERNATIVE INTEGRAL WORKS』(通称・メカ本)をエンターブレインさんから出版される際に、整備兵の短編を書かせていただいた、というのが始まりですね。
それから1年後くらいに、ボクの方から「オルタ世界のドイツで~」みたいな企画書を持ち込んだんです。
その企画書では、物語の舞台が西ドイツと東ドイツの合同の衛士訓練校で、そこで色々事件があって、きゃっきゃうふふと青春してるうちに、やがてBETAの欧州侵攻が始まって~なんて感じのわりとライトな感じの企画だったんですよ。
ところが、それに対して原作の吉宗さんが「いやぁ、内田さんの持ち味はそうじゃないでしょ。もっと鉄くさくて血生臭い話でしょ。無理しなくていいんですよ」と(笑)。
それで実は吉宗さんの中に、オルタ世界のドイツの話で考えてた企画があるんですと聞かされたんです。で、「これを書いてみないか?」「ぜひ!」みたいな感じでしたね(笑)。
――執筆ペースについて教えてください。
【内田】
連載前に書き溜めていた分はとっくの昔に消化してしまって、いまは締め切りに追いまくられながら頑張っています!
なにぶん連載というのはボクにとって初めての経験でして、最初のうちはなかなかリズムが掴めませんでした。ですので、大変申し訳ないのですが、今までやっていた仮想戦記のシリーズは一時お休みさせて貰ってます。
現在は「マブラヴ」関係の仕事に集中していまして、毎月一本の連載を書きながら、ムックの仕事も受けているという感じでしょうか。
――作家としての目標を教えてください。
【内田】
アニメ化したら嬉しいなって……あと、当面の目標は作家で食べていくことです!
――ありがとうございます。では本編の話に移らせて頂きます。
――原作と作家が違うのですが、どういったシステムになっているんですか?
【山崎】
これに関しては、原作版権の管理会社ixtlの私から回答させていただきます。
『シュヴァルツェスマーケン』は原作者・吉宗鋼紀が考えていた大まかなストーリーの流れをベースに、内田先生と編集者の比企さん、それと『マブラヴ』シリーズの全体構成の役割で私、山崎が会議をしながら、細かい内容を決めていくという感じで、作業が進められています。
内田さんを中心にストーリーを練って、メインキャラの細かい心情や、脇役などの肉付けをして、それを吉宗さんに見せてOKがでれば採用みたいな感じです。
とにかく大変な企画なので、内田さんが手を挙げてくれなければ、このタイトルが陽の目を浴びることはなかったでしょうね(笑)。
【比企】
現在の連載は、内田さんが一話ごとのプロットを作成。それを叩き台にして、月に一度の内田さん、山崎さん、私の会議で詳細を詰める。その後、内田さんに原稿を執筆いただき、出来上がったものを山崎さんと私で編集するという流れですね。
――ということは、最初からエンディングは決まってるんですか?
【山崎】
物語のエンディングに関してはほぼ決まっています。世界情勢に関しては『マブラヴ オルタネイティヴ』に繋がりますので、弄れません。ですから東ドイツがBETAを撃退することは、残念ながらありません。メインキャラクターに関してもほぼ決まっていますが、サブキャラクターなどに関しては若干の揺れ幅がありますね。
–
【内田】
ゴールが決まっているキャラに、どう肉付けしていくのかが、楽しいですね。
歴史物の面白いところは年表に記載されている事項は、実はこうだった、という点にあるのかなと思っていますから。
–
【山崎】
『シュヴァルツェスマーケン』の舞台は1980年代の欧州ですが、2000年代の欧州を描いた『DUTY -LOST ARCADIA-』という企画も動いています。この辺がシェアード・ワールドの面白いところになると思うのですが、意外なキャラが意外なシーンで別のタイトルに登場するかもしれません。
――苦労した点はどこですか?
【内田】
連載なので、毎月とにかく起承転結をつけなきゃいけないのが難しいところですね。毎月の連載を成立させつつ、単行本にまとまった時の構成も考えなければいけない。厳密にいえば、この物語が完結するまでの全体像も考えないといけないというのが、一番アタマを使うところですね。
あとはBETAに対する戦術や地形、軍の動かし方など、その辺を考察しながら執筆していくのは、やはり簡単ではない作業です。
――イラストを見ての印象はどうでしたか?
【内田】
イラスト担当がCARNELIAN先生に決まったと聞かされた時は思わず、「これで勝てる」と(笑)。
本当に美しいイラストを毎月、ありがとうございます! この場を借りてCARNELIAN先生に感謝を申し上げます!
キャラ設定の文字情報をCARNELIAN先生にお伝えして、返ってきた設定画を初めて見た瞬間は思わず、ため息が……。
【山崎】
執筆者が決定した後、吉宗さんとしては硬派な内田さんには、優しいタッチのイラストレーターがマッチするんじゃないかと考えていたようです。いわゆる萌え絵系の人でミリタリー描けそうな人を探してよ、というオーダーがありましたので。
ところが、その絵師選定の一環で、吉宗さんがツイッターでイラストレーターを公募したところ、いの一番にCARNELIAN先生が手を挙げてくれまして(笑)。
ご存知かもしれませんが、以前におふたりは一緒に仕事をしていたので、トントン拍子に話がまとまったようです。
――作中で気に入っているシーンはどこですか?
【内田】
3巻のラストですね。とにかく書いていて楽しかったです。アイリスディーナとカティアの理想のひとつの形をテオドールが作り上げるというシーンなので、1巻からの苦労がようやく報われたなと思いました。
基本的にボクはロボットアニメやアクション映画などの格好良かったなーと思ったシーンを自分なりに書くのが好きで、その雰囲気は上手く表現できたのではないかと思います。
また1~3巻まで、巻末は必ずテオドールが成長するシーンがありますが、それはどこも好きですね。
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