独占インタビュー「ラノベの素」 二語十先生『探偵はもう、死んでいる。』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2019年11月25日にMF文庫Jより『探偵はもう、死んでいる。』が発売となる二語十先生です。第15回MF文庫Jライトノベル新人賞にて「最優秀賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。様々なジャンルを内包する作品としても特徴的な本作。キャラクターをはじめとした見どころはもちろん、たったひとつの台詞から生まれたという物語の着想や内容についてお聞きしました。
【あらすじ】 「君、私の助手になってよ」 四年前、地上一万メートルの空の上で聞いた台詞から、俺と彼女の物語は始まり――終わった。俺・君塚君彦は完全無欠に巻き込まれ体質で、謎の黒服に謎のアタッシュケースを持たされたあげく、ハイジャックされた飛行機の中で、天使のように美しい探偵・シエスタの助手となった。それから――「いい? 助手が蜂の巣にされている間に、私が敵の首を取る」「おい名探偵、俺の死が前提のプランを立てるな」俺たちは、世界中を旅しながら秘密組織と戦う、目も眩むような冒険劇を繰り広げ――やがて死に別れた。一人生き残った俺は高校生になり、再び日常というぬるま湯に浸っている。なに、それでいいのかって? いいさ、誰に迷惑をかけているわけでもない。だってそうだろ? 探偵はもう、死んでいる。 |
――それでは自己紹介からお願いします。
二語十と申します。出身は福岡県で、大学卒業後2年ほど東京に住んでいましたが、現在は福岡に戻っています。ライトノベルの存在を知ったのは大学受験に失敗して浪人していた頃で、ハマる時期を間違えているだろうタイミングでどっぷりハマってしまいました。好きなものはラノベ、ゲーム、漫画、アニメをはじめ、お笑いやスポーツ観戦も好きですし、アイドルの曲とかもよく聞きます。幅広くどんなことにでも興味がある感じです。自分にできないことをやっている人たちを見たり、応援したりするのも好きですね。嫌いなことは労働です。
――多方面に興味を持たれていた中で、小説を選び、執筆したきっかけはなんだったのでしょうか。
きっかけはやはりラノベにどっぷりとハマったことだと思います。大学生になってからは自分でも書いてみたいと思うようになりました。そうしてラノベらしきものをじょじょに書き始め、公募への初投稿は大学3年の夏頃だったと思います。その作品が運よく高次選考まで進んだこともあり、調子に乗ってガンガン書き続けたのですが、残念ながら大学卒業を迎えても結果は出ませんでした……。卒業後は、某同人ゲームを作るライトノベルに影響を受け、自分でも同人サークルを作りコミケなどのイベントによく参加していました。それから2年ほど経った後、やっぱり商業で結果を出したいと思い、再び公募に取り組みだし、約1年後に今回の賞をいただきました。
――あらためて第15回MF文庫Jライトノベル新人賞「最優秀賞」受賞の感想をお聞かせください。
まず四半期ごとの「佳作」受賞の連絡をいただいた時は、嬉しさよりもホッとした気持ちが強かったですね。同時に連絡をいただくまでは別の賞への公募原稿を書いていたので、なんというか、いつの間にゴールテープを切っていたのかという不思議な感覚にもなりました。第一報をいただいた数ヶ月後に、「最優秀賞」受賞の連絡をいただき、とても嬉しかったのを覚えています。ただ、MF文庫Jの新人賞には「大賞」という枠があります。今だから正直に言いますが、応募時点では「大賞」を獲れる作品を書いたという自負があったので、獲れなかったことは悔しく思わないといけないのかなとも思います。驕らずに精進したいです(笑)。
――ありがとうございます。それでは受賞作『探偵はもう、死んでいる。』はどんな物語なのか教えてください。
どんな物語であるか、あるいはテーマやジャンルを訊かれることは当然多いのですが、なかなか一言で表せないというのが正直なところです(笑)。この物語はタイトルにもある通り、一人の探偵(シエスタ)の死から幕を開け、彼女の唯一の助手だった少年(君塚)を主人公として、ストーリーが進んでいくことになります。自分の行動理由のすべてでもあったかつての相棒を失った君塚は、ぬるま湯のような高校生活を送っていたわけですが、そんな時、君塚を探偵と勘違いしたとある少女が依頼を持って現れて……というのが最初の展開ですね。その後も次々と君塚の元には問題を抱えたヒロインが現れ、その依頼に向き合っていく中で、君塚自身もシエスタに抱えていた思いや自分の進むべき道を再確認していく、そんな物語になっているのかなと。大事なものを失った主人公が、また新しい自分を見つけていく。一見重そうなテーマではありますが、基本的にはキャラクターの明るく楽しい会話劇になっているかと思います!
※物語は君塚を探偵だと勘違いした一人の少女によって加速していく
――本作は推理やアクションをはじめとした様々なテーマとジャンルが盛りだくさんに感じられる点も特徴だと思っています。どのような着想で本作が誕生したのか教えてください。
本作は本格ミステリや頭脳バトルオンリーではありませんし、ファンタジーやSFに振り切っているわけでもない。もちろんただのラブコメでもない。逆に言えば、カテゴリにとらわれず、あらゆるジャンルの面白さの良いとこ取りをした物語になっているのではないかなと思います。とにかく一冊通して、ずっとジェットコースターような、あるいは4分30秒間ずっとサビが続く、といった物語を目指しました。着想としては、本文一行目にある「お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?」という台詞でしたね。ふとこのフレーズが降りてきて、反対に言えばそれ以外は一切決まっていないまま、とにかく外連味溢れ、自由で、ライトノベルの面白さを全部詰め込んだような作品を書こうと思って執筆をはじめたと記憶しています。
――面白さを全部詰め込んだという言葉の通り、本作を読み進めていくと「楽しい」「可愛い」を感じながら「格好良さ」も感じられるといった、様々な面白さに触れられる作品だと思っています。既に死んでしまっているシエスタの言葉回しや、それを追いかける助手や渚の姿にも強く惹かれました。
「格好良さ」を褒めていただきありがとうございます! 実はこの物語の雛型となった小説をカクヨムで連載していた時期もあったんです。書き溜めるといった行為もほとんどせず、自分自身も先の展開が分からぬまま、とにかく目の前にある一話を最大限面白くしようと、それだけを考えて執筆していました。当然ながら、設定の粗さや矛盾も散見されたわけですが、その反面、予想できない展開を作るという経験が、本作の物語に熱さや勢いをつける大きなきっかけになったのかなと感じます。また、第1巻は大きく分けて全三章の構成になっており、どの章も「いい最終回だったな」と思ってもらえるようなオチにしたつもりです。つまりは1冊で、3冊分の物語を味わえるはずですので、そのあたりも楽しんでいただけると嬉しいです。
※シリアスなシーンからコメディなシーンまで、様々な読み応えを与えてくれる
――それでは本作で活躍するキャラクターたちについて教えてください。
まずはシエスタですね。色んな意味で「手の届かないヒロイン」なのかなと思っています。既に死んでしまっているという設定もそうですが、どれだけ近づいたつもりでも本当の意味では彼女の本心だったり、想いにはなかなか触れられないというか。美しくて、親しみやすさもあるけど、同時に儚さも身にまとわせている。私自身まだまだ分からないことが多い、神秘的なキャラクターになっていると思います。
※探偵・シエスタ(キャラクターデザインより)
君塚君彦は本作のメインヒロインですね!(笑)。いや、本当に可愛いくて可哀想なキャラクターなんです。常にアクの強い4人のヒロインに振り回され、息を吸うようにツッコミをさせられるという。なので、たまにボケに回って生き生きとしている姿を見ると嬉しくなりますね。もっとクールでニヒルな主人公になるはずだったんですが、なぜかこうなりました。
※探偵の助手・君塚君彦(キャラクターデザインより)
そしてもう一人、夏凪渚ですね。シエスタとは正反対の存在でありながら、どこか似ている部分もあるキャラクターです。強さと弱さの両方を内包していて、ある意味一番人間らしいキャラクターかもしれません。一番出番が多いヒロインになるので、読者の皆様にも好きになってもらえたら嬉しいですね。
※ヒロインの一人・夏凪渚(キャラクターデザインより)
――シエスタや君塚をはじめ、本作のキャラクターはシリアスなシーンでも読者を楽しませる軽口が平気で飛びだします。この会話劇も作品の大きな魅力だと思っています。この特徴はひとつひとつの台詞はもちろん、キャラクターにも現れていると思っているのですが、キャラクターの造型で意識した点などはあったのでしょうか。
そうですね、全体を通してシリアスになり過ぎないようには気を配りました。やはりキャラクター自身が楽しそうにしていないと、読んでいる側も楽しめないと思うんです。各キャラクターたちは、ある程度どんな状況でも軽口を叩けるくらいの経験を積んできているので、そういった余裕もあるわけですね。割となんでもありの自由な世界観の中で、主人公とヒロインが自在に動き回れる、楽しい会話ができる、そんな物語にしたいと思って書きました。
※どんなシーンでも楽しそうにしているキャラクター達の一面も見どころ
――お気に入りのシーンやイラストがあれば教えてください。
お気に入りのシーンは、君塚とヒロインたちが頭の悪い会話をしているパートがいくつもあるのですが、大体お気に入りです(笑)。イラストについては、うみぼうず先生に最強のイラストを描いていただいているので、どれも見ごたえ抜群だと思います。特にオススメしたいのは表紙イラストです。多くは語りませんが、物語を読み終えた後にもう一度……何度でも見たくなるカバーイラストだと思います。私自身もいまだにシエスタの表情に泣きそうになりますね。挿絵では3章のクライマックスでしょうか。最後のシーンに描かれている何枚かの挿絵は本当に素晴らしいので、文章と合わせてぜひ沢山の方に見ていただきたいです。
※デザインでも目を惹くカバーイラストは二語十先生もオススメの1枚
――著者としてこの作品はどんな方が読むとより面白いと感じることができると思いますか。
これまでも申し上げている通り、ミステリ、SF、アクション、ラブコメ、青春などあらゆるジャンルを横断した物語になっています。ですので、どんな方が読まれても何かしらは好みに引っかかってくれるのではないかなと期待しています。また、この作品で最も力を入れたのは「キャラクター」です。可愛いヒロインやその活躍を見たい人にとっては、様々に楽しんでいただけるライトノベルになっているかなと思います。
――これからの目標や野望があれば教えてください。
やはりそう問われると「アニメ化」が大きな目標の一つにはなってきますが……。その前に自分はライトノベル作家ですので、まずは何よりも、面白く、クオリティの高い作品を創り続けることが大事かなと思っています。その先にメディアミックスなど、色々と新しいチャレンジをさせてもらう機会があれば、積極的に挑戦していきたいなと思います。
――それでは最後に発売への意気込み、本作へ興味を持った方へ一言お願いします。
本当にいろんな方の協力を賜りまして、発売前から大きく展開させていただいており、とてもありがたいと思うと同時になかなかのプレッシャーも感じています(笑)。今はそういったご期待に少しでも添える結果になるといいなと祈っています。この記事を読んで初めて『探偵はもう、死んでいる。』を知ってくださった方もいらっしゃると思います。現在、Twitterで公式アカウント(@tanteiwamou_)も稼働中ですので、そちらの方でも作品情報などを見ていただけたら嬉しいです。自分の考える、あらゆるエンタメを詰め込んだライトノベルです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
――本日はありがとうございました。
<了>
あらゆるエンタメを詰め込んだという物語を書き上げた二語十先生にお話をうかがいました。様々な魅力を凝縮したキャラクターたちが、果敢に事件へと立ち向かう姿、そしてシエスタに想いを馳せる姿からも目が離せない本作。『探偵はもう、死んでいる。』は必読です!
©二語十/KADOKAWA MF文庫J刊 イラスト:うみぼうず
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