【特集】『魔王学園の反逆者』&『転生魔王のジュリエット』最新刊は6月刊行へ 作品から読み解く作家・久慈マサムネ先生インタビュー

アニメ化も行われた『魔装学園H×H』や『エクスタス・オンライン』など、バトルとエロスのハイブリッドシリーズを手掛ける作家・久慈マサムネ先生が新たに送り出した新作『魔王学園の反逆者 ~人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる~』、『転生魔王のジュリエット』が好評を博している。このたび6月の2冊同月刊行に向けて、約3年ぶりとなるインタビューを敢行した。2019年に終えた2作品、そして2019年から2020年にかけて動き出した2作品。これまでの作品と現在の作品を比較しながら、作品に受け継がれたものや新たな挑戦について、さらには作家・久慈マサムネが考える主人公像やキャラクターについてなど、様々にお聞きした。ファンのみならず、久慈マサムネ作品を読んでみたくなること間違いなしのインタビューをお届けする。

 

 

魔王学園の反逆者&転生魔王のジュリエット

 

 

■完結した『魔装学園H×H』と『エクスタス・オンライン』を振り返る

 

――インタビューには約3年ぶり、そして3回目の登場となる久慈マサムネ先生です。大変ご無沙汰していました。

 

こちらこそご無沙汰しています。しかし前回のインタビューからもう3年も経つんですね(笑)。

※過去の久慈マサムネ先生のインタビューはこちら(第1回第2回

 

 

――そうですね。前回のインタビューは『エクスタス・オンライン』第2巻の刊行時でした。

 

いやあ、懐かしい(笑)。前回のインタビューの頃は『魔装学園H×H』のアニメも終わり、新シリーズの『エクスタス・オンライン』を軌道に乗せていかなくちゃいけない大切な時期でもありました。当時、会社勤めをしながらの2シリーズ執筆はかなりつらい状況にもなってきていて、当時はどうしたものかと思いながらインタビューを受けていたことを思い出しますね。

 

 

――この3年の間に専業になられたんですよね。

 

そうですね。兼業作家から専業作家になったことが、この3年の大きな変化のひとつです。それまでは時間に追われながら執筆作業をしていた節があったんですけど、専業になりずっと自宅で仕事をするという環境に変わったことで、以前に比べて一層考えて執筆するようになりました。単純な1時間あたりの生産量はやや落ちてしまった気はするんですけど、原稿1ページに対する密度は濃くなったと思っています。

 

 

――ご自身の環境の変化もありながら、2019年には『魔装学園H×H』、そして『エクスタス・オンライン』の2シリーズが完結を迎えました。

 

僕も作家としてデビューしてから6年くらい経つわけですが、完結させた作品がひとつもなかったので、シリーズの幕を下ろせたことは新しい経験でしたね。一方で、『魔装学園H×H』に関しては「終わった」という実感が今でもないんです。第13巻で一度終わった後に、番外編のような位置付けのアフターストーリーとして第14巻を刊行したりもしました。自分の中ではシリーズの完結によって、過去の思い出になったり、何らかの感慨が生まれるのかなとか、いろいろ考えていたんですけど、それがあまりなかったんですよね。自分の中でずっと生き続けているような不思議な感じがします。

 

魔装学園H×H 14エクスタス・オンライン08

※2019年に完結した『魔装学園H×H』『エクスタス・オンライン』

 

 

――『魔装学園H×H』に関しては、ということは『エクスタス・オンライン』にはまた違った気持ちを持っているということですか?

 

その通りで、むしろ『エクスタス・オンライン』は「終わった」という実感が非常に強かったです。物語の舞台となっていたVRゲーム《エグゾディア・エクソダス》が完全に終了していることも大きいですね。『魔装学園H×H』はキャラクターがみんな同じ方向を向きながら成長して動き続けてきたこともあって、みんなが向ける場所を提示すれば、物語はまだ書けそうな気がするんですよ。逆に『エクスタス・オンライン』はキャラクターが成長して、変化して、それぞれが新しい目的を見つけながら動き続けていきました。だから終着点がみんな一緒ではなく、それこそ一人ずつ物語からクリアーしていくようなイメージだったんです。これは作品の作り方の違いにも影響しているんだと思います。

 

 

――作品の作り方の違いですか。以前も『魔装学園H×H』はライブ感が強い物語だともおっしゃられていましたよね。

 

はい。『魔装学園H×H』はかなりライブ感の強い物語でしたね。半ば本能で書いているところも多くて(笑)。『エクスタス・オンライン』はそうではなく、頭を使って書いていたなって感じがします。物語の構成からとにかく考え抜いて、ラストに向けたドラマを組み上げ、その先に完結がありました。以前のインタビュー時に、『エクスタス・オンライン』は人間関係を描きたいというお話をしたと思うんですけど、それとあわせて「謎」や「引き」も強く意識していて、ミステリーやサスペンス的な要素を盛り込むように構成していたんです。この世界はどうなっているんだろう、このキャラクターは信用してもいいんだろうか、そういった「引き」がたくさんあったと思います。当時の僕が持っている、やれることをすべて投入したシリーズでもありました。そういう意味でも『エクスタス・オンライン』完結の自己満足度は非常に高かったです。読者さんにも面白い作品だったと思ってもらえていればありがたいし、僕個人としても満足と自信のある作品になりましたよね。

 

 

――また、この3年の間にはアニメの脚本にも携われていましたよね。脚本の経験は執筆活動に活きていますか。

 

あくまで僕個人の感想ですけど、そういう実感はないですね(笑)。以前から想像はしていましたが、あらためて職種としても別物であることを認識しました。小説と脚本は似て非なるものです。もちろん両方をこなせる人もいれば、どちらかが得意でどちらかが苦手という人もいると思います。ただ、自分は脚本も向いているなと思いました(笑)。

 

 

――脚本のお仕事をあらためて振り返ってみるといかがでしたか。

 

脚本については、会社勤めをはじめ、チームでひとつのものを作り上げる経験があると、仕事として理解しやすいのかなって思います。僕個人としては、脚本は小説ほどクリエイティブを主張する場ではないのかなって感じましたし、要望を取りまとめるスキルや対人のコミュニケーションスキルを求められる印象を受けました。映像作品ならではの考えることも非常に多くて、小説のように書いてしまうと使えないものになってしまうんだろうなと。なので、脚本家としてのスキルは伸びたと思うんですけど、小説に活かせるかと聞かれると、ちょっと違うなって。ただ、脚本のお仕事はまたやりたいと思っているので、お話があればぜひって感じですね(笑)。

 

 

■動き出した新作――受け継がれたものと新たな挑戦

 

――代表作である2作品が完結を迎えると同時に、新たに2シリーズが動き出しました。あらためて率直な感想をお聞かせください。

 

本当に率直な感想を言うと、やはり2本同時に準備をしてスタートさせるのは、なかなか大変だったなっていう(笑)。どちらもファンタジーの要素や特殊な世界をベースとした物語なので、作らなくちゃいけない設定も、考えなくちゃいけないことも非常に多かったです。一方でそれぞれテイストの異なる作品ということもあり、2作品の書き分けをしながら物語作りをしていくのは違う楽しみもありました。似たような作品だったらいろいろと混同してしまっていたかもしれないです(笑)。

 

 

――『魔王学園の反逆者』と『転生魔王のジュリエット』の企画自体はいつ頃から動いていたのでしょうか。

 

『転生魔王のジュリエット』についてはあとがきでも触れているんですけど、準備期間が長くて3年前の企画なんです。スニーカー文庫で『魔装学園H×H』がそろそろ終わるよねっていうタイミングで、第13巻刊行の一年前くらいに動き出したのが最初ですね。そこから今年2月の刊行までには担当の編集者さんが変わってしまったり、時間の経過によるトレンドの変化であったり、ファンタジア文庫さんとのご縁が生まれたり、遠大なドラマがありました(笑)。都合、様々な要因を含めてですが、本来は1回しかないはずの初稿が4回もあった作品として、それだけ思い入れのある作品になりましたね。

 

転生魔王のジュリエット

 

【あらすじ】

北方魔族に対抗するため、中立地帯に存在するグランマギア魔法魔術学院。そこで俺、平民出身魔術師・ハルトが告白されて付き合うことになった相手は―敵国の姫・イリスだった。人の前では宿敵を演じ、2人きりなら可愛く甘えるイリス。彼女に惹かれていくうち、残酷な秘密を知る。それは互いが「魔王の半身」を宿し、結ばれると世界の滅びをもたらすこと!? しかも、俺たちを強制的に結ばせようとする組織まで現れ…「それでも私は、この気持ちに嘘なんてつけないわ」 身分も、しがらみも、世界の終末も、「好き」の前には関係ない。彼女のために、立ちはだかる全てを俺は打ち砕く!

 

 

『魔王学園の反逆者』は書籍刊行の1年程前から動き出した企画だったんですが、今のスニーカー文庫でどんな作品を書いたらいいのか、かなり迷いながら考えていた記憶があります。その中で、最近は数が減ってきている学園異能バトルでいこうとなりました。この作品も原稿の完成には紆余曲折ありまして、イラストレーターのkakao先生にもご迷惑をおかけしてしまいましたし、僕は僕でズラせないスケジュールの中、田舎に法事で帰省をしながら執筆するという、妙なテンションで書くことになってしまった作品でもあります。どちらの企画も刊行までに違った大変さがあり、『転生魔王のジュリエット』は長距離マラソンを経て、『魔王学園の反逆者』は短距離走を経て刊行に至ったイメージですね。振り返れば笑い話なのかもしれませんが(笑)。

 

魔王学園の反逆者

 

【あらすじ】

魔族にとって人間は奴隷でしかない──。次期魔王候補に選ばれた普通の男子高校生・盛岡雄斗は、転入した悪魔の学校『銀星学園』で蔑まれる。「──あなたを魔王にしてみせる。だから私を……眷属にして」魔族の美少女・姫神リゼルとの出逢いが、雄斗の人生と世界を変えていく。どんな魔法も一瞬で身に付け、眷属の少女と肌を重ねることで魔力を無限に吸収する。それは魔族にはない、人間の雄斗にだけ許された特別な力。魔王候補となった人間が、正義の魔王となるべく、最強の悪魔たちに戦いを挑む! 爽快にして妖艶。成り上がり学園魔術ファンタジー、開幕!

 

 

――ファンタジア文庫での刊行は久慈マサムネ先生としても初だったわけですが、『転生魔王のジュリエット』の執筆時において、スニーカー文庫で執筆する時との違いはありましたか。

 

具体的にファンタジア文庫だからこうしましょうという話はありませんでしたけど、王道なファンタジーを描きたいですねという話は当初からしていて、僕としてはファンタジア大賞で賞を獲れる、あるいは狙える作品をイメージしていました。そういう意味では、ファンタジア文庫らしい作品を目指したと言えるかもしれませんね。

 

 

――それではあらためて新シリーズについて教えてください。まずは『魔王学園の反逆者』はどんな作品なのでしょうか。

 

『魔王学園の反逆者』は、学園異能バトルを現在のテイストでできないかというコンセプトで執筆した作品です。少年ジャンプをはじめとした少年誌の熱いバトルものを、今一度やりたいという想いが根本にあります。もちろんエロスも重要な要素ではあるのですが、この作品の最大の魅力は何かと問われれば、「熱さ」と答えます。すごく利己的な考え方に特化した魔族と、自分以外の大切な何かのために戦える人間という2つの種族の対比構造があり、その一方で人間はこの2つの要因をどちらも持っているわけです。だからこそ誰かと対立したり、自己矛盾を抱えていたりする。それを魔族と人間にわけることでわかりやすさを前面に出しながら、彼らがどんな答えを出していくことになるのだろうと考えながら書いている作品です。

 

魔王学園の反逆者 口絵1

※盛岡雄斗の前には様々な魔王候補が立ち塞がる『魔王学園の反逆者』

 

 

――本作は主人公である盛岡雄斗の成長や、学園内で成り上がっていく姿が魅力ですよね。

 

キャラクターの成長はすごく意識した作品でもありますね。成り上がり要素は成長に付随した切り口のひとつだと思っていただければと思います。キャラクターの成長は、本当はもっとつらい目にあったり、修行をしたり、そういった成長過程を描くことで説得力をあげられるとも考えましたが、今作では作品の良さを伝える上で細かく描写しないという判断もしています。周囲が魔族ばかりの中で、主人公が他の魔族のヒロインと交流したり、認めてもらったり、一緒に修行をしたりして、力を得て敵わない相手に打ち勝つ、がテーマでもあります。魔族と人間という種族の違いもあり、正義と悪の二元論で語れないのも本作の特徴だと思っています。

 

 

――魔族と人間、2つの価値観や理屈のぶつかり合い。その解決に至るまでのプロセスに少年漫画らしい「熱さ」があると思います。

 

魔族の価値観と人間の価値観はどちらかが絶対的に正しいのかと言えばそうではないわけです。魔王が独裁的にすべてを決めることをよしとしない魔族もいれば、第2巻で登場したイビザのように、己の快楽を満たせればいいんだという純粋な欲求に従って行動する魔族もいます。イビザは若干悪寄りですけど、魔族としては正しい価値観のひとつなわけです。でも人間の価値観としては受け入れがたいものでもあるわけですね。だからこそ、拳で理屈をぶつけ合って、お互いを理解して、解決策を模索していく。そんな主人公たちの姿は少年漫画らしさだと思っています(笑)。

 

 

――では続いて『転生魔王のジュリエット』はどんな作品なのか教えてください。

 

先も触れましたが、準備期間が非常に長い作品だったこともあり、積み上げた設定や盛り込みたい要素が山盛りで、取捨選択が大変な作品でした(笑)。作品のテーマには、国を背負っている少年と少女が、世界と恋を天秤にかける二律背反があります。二人が結ばれれば国同士の問題はもちろん、世界そのものを敵に回してしまうことになります。それでもヒロインとの恋を押し通す姿にカタルシスを感じていただきたいです。ハルトとイリスの二人の関係性を何よりも大切にしている作品でもあって、みんなに隠れながらイチャラブするしか二人の逢瀬はありません。でもその行為や行動が世界に危機を招いてしまう。設定だけみると、非常に重たい話ではあるのですが、その重さを感じさせず、二人のポジティブさや前向きさ、明るさ、障害を蹴散らす熱さを大切にしています。また、テーマにちなんでシェイクスピアネタもたくさん織り交ぜているので、興味がある方はぜひ探してみてください(笑)。

 

転生魔王のジュリエット1

※ハルトとイリスの二人の関係性が大きなテーマになっている『転生魔王のジュリエット』

 

 

――この新たな2作品には、完結した過去作品から引き継いでいるものや、これまでにはなかった新たな試みはあったりするのでしょうか。

 

わかりやすく引き継いでいるものとしては、バトルものであることやエロス要素とのハイブリットなのかなと(笑)。エロスな要素も設定として盛り込み、キャラクターの関係性に影響する形に組み込むことで、物語の鍵のひとつにもなっています。ただ、エロスといっても『魔王学園の反逆者』も『転生魔王のジュリエット』も異なるテイストを狙っています。『魔装学園H×H』よりも間口を広げていきたいという思いは常々あって、エロス表現を細かく描写するのではなく、シチュエーションに寄せた構成にするようにしていますね。これがひとつ新しい試みなのかなと思っています。

 

魔王学園の反逆者挿絵2

 

魔王学園の反逆者挿絵1

※圧倒的バトルシーンとシチュエーションに寄せたエロスは見どころばかり

 

 

――なるほど。新シリーズを比較してみると、『転生魔王のジュリエット』はエロスの要素を薄くしているのかなという印象を受けました。

 

そうかもしれません。例えば『魔王学園の反逆者』には魔族や悪魔といった、怪しさであったり呪術的な要素であったり、作品のバックボーンを支える要素が、淫靡な雰囲気を作り出しやすいという点があります。一方で『転生魔王のジュリエット』は、主題が恋愛なんです。恋愛の過程や心の動きを描くことが肝要で、エロスな行為を前に出し過ぎてしまうと、本来の目的と違ってきてしまうわけです。二人のプラトニックで純粋な関係や、世界と恋人を天秤にかけるという作品の大きな魅力が霞んでしまうわけで。そういう意味でも、『魔王学園の反逆者』はハーレムもののテイストに近かったりして、『魔装学園H×H』の流れをより強く汲んでいるのかもしれません。一方で『転生魔王のジュリエット』は、僕としてもヒロインが固定の物語は初めてなので、より具体的な違いとして出てきているのかもしれませんね。

 

転生魔王のジュリエット挿絵2

※イリスとハルトの間にはラッキースケベのような展開も少なくない

 

 

――読者の間口については『エクスタス・オンライン』の際も、『魔装学園H×H』より広げたいというお話をされていたと思うのですが、そこからさらに広げていくというイメージなのでしょうか。

 

そうですね。本当は『エクスタス・オンライン』でもエロスは控えめにするつもりだったんですが、当時は『魔装学園H×H』も並行して執筆していましたし、担当編集さんも一緒で、エロスに対する基準値がおかしくなっていたんですよ(笑)。当時の『魔装学園H×H』最新刊に比べたら全然表現としてソフトになっていると思っていたんですが、あらためて見てみるとそんなことはなかったという(笑)。なので、今回はより冷静にシチュエーションや舞台設定での雰囲気づくりに注力しています。あとは物語としての読み応えをはじめとした、口当たりの良さっていうんですかね。そういった点でも『エクスタス・オンライン』、『魔王学園の反逆者』、『転生魔王のジュリエット』は若干異なっていると思います。

 

 

――ご自身として2つの新作の刊行を経て、前作の読者はついてきてくれていると感じていますか。

 

基本的にライトノベルは作品に読者がつくのであって、作家にファンがつくことは少なく、或いはあまりないと聞いていました。僕自身の実感としてもそう感じていた部分は少なくなかったのですが、驚くことに前作から追いかけてくれている方も結構いらっしゃるという印象です。僕の作品はバトルとエロスのハイブリッド的な要素があって、共通している点も多い一方、作品によってテイストや雰囲気が結構違うので、追いかけづらいんじゃないかと勝手に思っていました(笑)。また僕から見える範囲にはなりますが、『魔王学園の反逆者』や『転生魔王のジュリエット』から初めて僕の作品を読んだという方も多いなっていう印象があります。新シリーズ2作品から過去の作品に興味を持ってくださる方も結構いらっしゃるんですよね。特に『転生魔王のジュリエット』を刊行してからTwitterのフォロワーも増えたので、新規の方を実感するきっかけにもなっています。特にファンタジア文庫では初の作品だったので、ファンタジア文庫のファンの方にももっと僕の作品に興味を持ってもらえたらって思います。

 

 

――作家としてご自身についても振り返っていただければと思います。自身が考える強みや課題について教えてください。

 

作家としての強みですか……。普通に答えると僕は構成力なのかなって思ってます。あとは文章力の向上を日々目指している感じですね。ほかにも作品としての読みやすさもすごく意識するようになりました。小説を書き始めた最初の頃は、ちょっと格好良かったり、少し気取った小難しい言葉や表現、気の利いた比喩表現をどんどん使おうって考えていた節があったんです。それが今はあまりない。読みやすくてわかりやすい、平易な言葉でパッと頭の中に入ってくる表現を用いるようにしようと試行錯誤するようになりました。小説家や劇作家をやられていた井上ひさし先生の「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」という言葉がすごく心に響いていて、そうなりたい、そういうものを書けるようになりたいと強く思うようになりました。さらっと文章を追いかけるだけで、情景を思い浮かべやすく、かつ実際に見てきたかのような印象を与えられる文章を目指しています。実感はどうしても読者の反応などから拾っていくしかないと思うのですが、今のところは成長できていると思います(笑)。

 

 

■久慈マサムネが目指す主人公は「嫌われない主人公」

 

――これまで久慈マサムネ先生は4シリーズを手掛けられてきているわけですが、あらためて自身が描く主人公像について教えてください。

 

難しい質問ですね(笑)。僕の手掛ける作品に登場する主人公の特徴としては、いずれも「いい子」であることなのかなと。正義感があったり、品行方正だったり。堂巡駆流は若干こじらせているんですけど、根はいいやつですよね(笑)。飛弾傷無、堂巡駆流、盛岡雄斗、ハルト・シンドー。いずれのキャラクターも「わるい子」ではないと思います。

 

飛弾傷無堂巡駆流

※左:飛弾傷無 右:堂巡駆流

盛岡雄斗ハルト・シンドー

※左:盛岡雄斗 右:ハルト・シンドー

 

 

――主人公に関して『転生魔王のジュリエット』のハルト・シンドーは、他の3人と比べると若干毛色が違うイメージがあります。ハルト以外の主人公は全体的に受け身な印象が強いんですよね。

 

それは正しい認識だと思います(笑)。ハルトが受け身タイプではなく、少しやんちゃなイメージの主人公であることには理由もあって、物語のコンセプトも大きく影響しているんですよ。世界の運命に抗い、悲劇的な状況を前向きに打破していくには、よりアクティブなキャラクターでないと表現がしづらかった。とにかく主人公が動かなくてはいけない状況が多いので。また、ヒロインのイリスは帝国の貴族の出自で、綺麗で品行方正なイメージも強く、無頼なハルトはその対比でもあるんですよね。みやま零先生からキャラクターデザインをいただいて、自分が考えていた以上に激しいイメージで描いていただいたことも大きく、かなりイラストの印象に影響された側面もありました。イラストの力ってあらためてすごいなって感じましたよね(笑)。

 

転生魔王のジュリエット挿絵1

※野性味も感じられるハルト・シンドーは他の主人公よりもアクティブな印象が強い

 

 

――多少の違いはあれど、4人の主人公に共通する点も少なくないんじゃないでしょうか。

 

僕が描く主人公は読んでいて嫌われない主人公であることだと思っています。物語のシチュエーションと主人公の内面が合致していることも大きいのかなと思っていて、たとえば『魔王学園の反逆者』の盛岡雄斗がハルト・シンドーのような性格だったら、嫌だと思う読者もいたと思うんですよね。雄斗はあの立ち位置だからこそ、控えめで謙虚な感じが望ましいのかなって。ほかにも敵を敵のままに終わらせない姿も共通しているのかなと思います。罪を憎んで人を憎まずじゃないですけど、善人であってほしいし、誰かに対して優しくあってほしい。そして間違っていることには意見をぶつけてほしい。力が強いことを笠に着せて、独善的に自分の意見に従わせて改心させるのではなく、お互いの落としどころを見つけられる優しさや、相手を認めて自身を理解してもらう、手を取り合う主人公であってほしいんです。また、ハルトが若干特殊ではありますけど、みんな最初からめちゃくちゃ強かったり、強敵をガンガン倒していくようなタイプの主人公ではありません。『魔装学園H×H』でも書いた「人間の価値ってなんだろう?」という部分が大きく影響しているんだと思います。人間の価値は能力が高いか低いかではなく、どんな生き方をしてきたかが人間の価値だと思うんです。これは今後も手掛けていくであろう僕の作品において、脈々と継がれる要素なんだろうと思います。いずれにしても、過去のキャラクターと比較して新たなキャラクター像を考えることはあまりなくて、ストーリーや面白さを描く上で必要なキャラクターにおのずと落ち着いていく感じですね。

 

 

――登場するヒロインについてもお聞きします。過去のシリーズも含め、飛弾怜悧しかり、哀川愁子しかり、リゼルしかりと年上系(お姉さん系)のキャラクターが結構重要なポジションにいることが多いような気がします。

 

確かにそうですね。お姉ちゃんキャラ好きですし、年上タイプが好きなんですよ(笑)。怜悧は理想の姉像ですし、哀川さんはこんな上司がいたらいいなっていう願望だだ漏れなキャラクターでもあります。ヒロインを考える時は、主人公に依存したりすることなく、独立した存在であってほしいと思っています。綺麗で可愛くて、自分の価値観や意思で動いてくれる。かといって主人公が望むように動いてくれる存在ではなくて、血の通った自分なりの生き方や考え方を貫いてほしいんです。その結果として、影響を与えてくれたり、引っ張ってくれる存在であってほしい。自分の前を歩いているキャラクターに惹かれる傾向が強いのは間違いないと思います。女性のインテリジェンスにセクシーさを感じるとでもいいますか。ライトノベルはどうしても妹キャラの方が相対的に強いじゃないですか。でも自分は年上キャラを語らせたらうるさいぞみたいな(笑)。

 

飛弾怜悧

 

哀川愁子

 

姫神リゼル

※順に飛弾怜悧、哀川愁子、姫神リゼル

 

 

――キャラクターについて最後にもうひとつ。これまでに一番筆が乗ったキャラクター、あるいは勝手に動き出したキャラクターなどがいれば教えてください。

 

書きにくくて困ったことはそんなにないんですけど、勝手に動いたという点で挙げるなら、『魔装学園H×H』のガートルードがすぐに思い浮かびます。彼女はメインキャラでもなんでもなく、モブキャラの一人だったにも関わらず、気付いたら活躍するキャラクターになっていました。シリーズを通して大好きなキャラクターの一人でもあります。僕の場合はキャラクターに一定の役割を持たせたうえで登場させる節があるので、勝手に動くということは基本的にはないんですよ。そんな中で、傷無を助けるキャラクターが誰もいなくなってしまったタイミングがあり、登場したのがガートルードだった。そこで傷無とタッグを組み、活躍し始めたんですよ。

 

ガートルード

※『魔装学園H×H』より著者として唯一のイレギュラーだったというガートルード

 

 

――ガートルードについては『魔装学園H×H』のインタビュー時にも同様のことをおっしゃられていましたね。

 

マジですか(笑)。第7巻の時だから、確かにそうですね。変化したのは第5巻くらいだったと思うので。でも本当にそれ以前も以降も、大きくポジションがブレるキャラクターはいないんですよね。

 

 

――ご自身の考える主人公像や物語について色々と触れていただいたわけですが、あらためてまだ久慈マサムネ先生の作品を読んだことがない方へ伝えたいことがあればぜひ。

 

とりあえず新作からでも過去作からでも、面白いと思うのでぜひ読んでみてください(笑)。特に『転生魔王のジュリエット』は、僕自身これまで書いてこなかったヒロインが1人の恋愛ものです。エロスに傾いでないぶん、女性の読者にもとっつきやすいですし、読者の間でも久慈マサムネの入門編として最適だと評判です(笑)。『魔王学園の反逆者』は普段少年漫画は読んでいるけどライトノベルはあまり読まないという方にも刺さると思います。また、かつて学園異能バトル作品を読んでこられた方にも自信をもってオススメできますので、気軽に手に取ってみてください。

 

 

――3年前にもお聞きしましたが、今後の目標や野望を教えてください。

 

ベースとしてより楽しく面白いクオリティの作品を作り続けていきたいですね。あとはKADOKAWA全レーベルから作品を刊行して制覇することでしょうか(笑)。脚本のお話も含めて、活動の場を一層広げていければよいかなと思っています!

 

 

――それでは最後のファンのみなさんへ一言お願いします。

 

ファンの方にはいつも支えられています。いろんな感想をいただくのが本当に嬉しくて、『魔装学園H×H』『エクスタス・オンライン』共に完結まで書き上げることができました。本当に感謝しかないです。現在進行中の新シリーズ2作品も同様で、応援してくださっているみなさんに支えられています。おかげさまで『魔王学園の反逆者』のコミカライズも「ドラゴンエイジ」でスタートしました。少年漫画のテイストを目指した作品で、漫画としてもすごく映えているので、ぜひ読んでいただけたらと思います。そして今後のスケジュールですが、6月に『魔王学園の反逆者』第3巻、『転生魔王のジュリエット』第2巻が同月に発売されるので、楽しみにしていてください。『魔王学園の反逆者』第3巻は新展開を迎え、癖の強いキャラクターや魔王候補がさらに続々登場します。雄斗の人間関係の広がりやキャラクター同士の騙し合いも増えるので、これまで以上に楽しんでいただけるのではないかと思います。『転生魔王のジュリエット』第2巻は修学旅行という大きなイベントとなり、ハルトが皇帝でもあるイリスの親父さんと対面するというプレッシャーのかかるイベントも控えています。ほかにもみんなで温泉や楽しげなイベント、イリスに関わる意外なキャラクターの登場など、見どころが満載となっておりますので、楽しみにしていてください!

 

魔王学園の反逆者挿絵4

※『魔王学園の反逆者』第3巻挿絵の一部を一足早く公開

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

完結した『魔装学園H×H』『エクスタス・オンライン』、そして新たに幕を開けた『魔王学園の反逆者』『転生魔王のジュリエット』の4作品を織り交ぜながら久慈マサムネ先生にお話をうかがった。作家・久慈マサムネの一端が垣間見えるお話の数々に、作品はもちろん作家本人に興味を持った読者も多いに違いない。新たに動き出した2本の新作をこの機会にぜひ読んでみよう。『魔王学園の反逆者 ~人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる~』最新3巻はスニーカー文庫より2020年6月1日、『転生魔王のジュリエット』最新2巻もファンタジア文庫より2020年6月20日に発売する。

 

 

©久慈マサムネ/KADOKAWA スニーカー文庫刊 イラスト:Hisasi

©久慈マサムネ/KADOKAWA スニーカー文庫刊 イラスト:平つくね

©久慈マサムネ/KADOKAWA スニーカー文庫刊 イラスト:kakao

©久慈マサムネ/KADOKAWA ファンタジア文庫刊 イラスト:みやま零

kiji

[関連サイト]

『魔王学園の反逆者』特設サイト

『転生魔王のジュリエット』特設サイト

スニーカー文庫公式サイト

ファンタジア文庫公式サイト

 

魔王学園の反逆者3 ~人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる~ (角川スニーカー文庫)
転生魔王のジュリエット (ファンタジア文庫)
魔王学園の反逆者 ~人類初の魔王候補、眷属少女と王座を目指して成り上がる~ (角川スニーカー文庫)

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