『探偵はもう、死んでいる。』第3巻刊行記念 二語十先生インタビュー!

※『探偵はもう、死んでいる。』シリーズのネタバレが含まれます。1-2巻読了後に読まれることをオススメします。

 

いよいよ6月25日に第3巻が刊行される『探偵はもう、死んでいる。』(MF文庫J)。「お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?」。その一文からはじまる、アクションあり、謎解きあり、軽妙な会話ありと様々なジャンルを内包した作品だ。第15回MF文庫Jライトノベル新人賞最優秀賞作品として刊行されて以降、多くの読者から好評を受け、「ラノベ好き書店員大賞2020[文庫部門]」や「ラノベニュースオンラインアワード」2019年11月刊部門4冠など華々しいデビューを遂げ、現在では累計10万部を超すヒット作となっている。今回は、そんな『たんもし』を執筆されている二語十先生に特別インタビューを敢行。前回インタビュー(https://ln-news.com/articles/102344)を踏まえ、作品が刊行された後からこそ語れる内容に踏み込み、Twitterでのハッシュタグ「#たんもし質問箱」で、読者の皆さんから募集した質問も交え、『たんもし』の誕生秘話や各キャラクターにまつわる深いお話を伺います!

取材・構成:羽海野渉=太田祥暉(TARKUS)

 

探偵はもう、死んでいる。

【『探偵はもう、死んでいる。』1~3巻の書影】

 

『たんもし』誕生秘話

――まずは『探偵はもう、死んでいる。』という作品が、執筆された経緯をお教えください。

大元を辿ると、大学受験に失敗して浪人している頃に、ライトノベルに出会ったのがきっかけです。端的に言うと、とにかくストレスで娯楽物を求めていたんですが、そのとき『バクマン。』を読んで、マンガ原作者という職業があることを知ったんですよ。そこから『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』で初めてライトノベルに触れて、いわゆるオタク文化というものを知ることになりまして。それと同時に、こういう作品を書いてみたいなと思ったのが、今ライトノベル作家をしている要因の一つですね。

 

――文章を書くこと自体に、抵抗はありませんでしたか?

文章を書くこと自体は、子どもの頃から好きだったんですよ。高校時代には書いたエッセイが賞を獲って、賞金も出たりして……。ライトノベルを書き始めてからは、大学三年生の頃に初めて公募に投稿しました。とはいえ、大学を卒業した後、一度公募から離れちゃったんです。ですが、文章を書くことからは離れないで、友人とのサークル活動や二次創作の同人活動で執筆はしていました。でも、ありがちではあるんですが、そのサークルが空中分解して(苦笑)。その後に何をやろうか考えたとき、思い浮かんだのが「オリジナル作品で結果を残そう」ということだったんです。そこで自分に一年間という制約を課して、その期間内に結果が出なかったら作家になることは諦めようと思いながら、再び公募に投稿をしはじめました。

 

――その結果、デビュー作となった『たんもし』の第1巻は、何故MF文庫Jさんの新人賞に投稿されたのでしょうか。

包み隠さず言えば、その制約のギリギリ……12月が締め切りだったということが大きいです(笑)。大賞を受賞できなかったことは悔しいですが、最優秀賞だと連絡を頂いたときは、ほっとしたことを覚えています。

 

――そんな『たんもし』ですが、探偵・シエスタが既に死んでいるという衝撃の展開から幕が開ける作品です。この構成に至った、着想のきっかけを教えてください。

僕は散歩が趣味なんですけど、歩いているときによく作品のアイデアが降ってくることがあるんです。ある日、いつも通りに散歩をしていたら、1巻の一行目――「お客様の中に、探偵はいらっしゃいませんか?」という一文がふと思いついて。そこから作品の構想を広げていった形です。

 

――そこから何故探偵が、物語のスタート時点で死んでいるという構成になったのでしょう……?

恐らく、インパクトを重視した結果だと思います。キャッチーさというか……。実は、『たんもし』の前に応募した公募で最終候補まで残った作品があったんですが、そのときに選評で「面白いけど、ライトノベルっぽさが足りない」と書かれていたんです。ずっと近代文学を専攻していたこともあってか、今ひとつ時流のライトベル像を捉えきれていなかったんだと思います。ですのでそういった経験を踏まえ、キャッチーさや、ミステリの要素にアクションもの、ラブコメや軽快な描写と、ライトノベルの面白さを詰められるだけ詰めようとした覚えはありますね。

 

――そのフィードバックが、二語先生に大きな影響を与えていたんですね。

そういえば、『たんもし』を書く前に、ベースになるような作品が何作品か存在していたんです。一番近いのは、それこそ探偵と助手のバディもので、探偵は不治の病に冒されているというものでした。そのときも助手の名前は今と変わらず君塚君彦だったんですが、探偵の名前は犀川唯でしたね。苗字の漢字はもちろん、今とは全然性格も違いますし、アイドルですらないんですが……。でも、そういうベースとなるものがあったからこそ、『たんもし』という作品が書けたんだと思います。応募時は、3ヶ月くらいで執筆しました。

 

キャラクターたちの魅力について

――では、各キャラクターについて、生まれた経緯やお気に入りポイントを伺いたいと思います。まずメインヒロインのシエスタについては、いかがでしょうか?

正直なことを言えば、応募原稿を書いていた頃、ここまでシエスタが人気になるとは思っていなかったんですよね。もちろん人気が出たことは嬉しいんですが、最初はここまで目立った形で書いていなかったんです。というのも、受賞してから担当さんと打ち合わせを重ねていくうちに、シエスタを軸に回していこうという方針が決まり、徐々に出番が増えていったという裏話がありまして……。応募原稿の時点だと、君塚と夏凪、斎川がメインになっていました。シエスタはあくまで彼らの背中を押すような存在でしたね。加えて、今でこそ『たんもし』の公式Twitterになっていますが、あのアカウントは刊行までシエスタ名義で運用されていました。そのシエスタと君塚のやりとりは僕が書いていたんですが、そのツイートで試行錯誤しながら、シエスタ像が固まっていった感じがありますね。

 

探偵はもう、死んでいる。

【今は亡き名探偵・シエスタ】

 

――では、二代目・名探偵となった夏凪渚はいかがでしょうか。

さっきもお答えした通り、応募原稿ではシエスタはあくまでも君塚の背中を押す存在だったので、そういう意味では夏凪こそメインヒロインのつもりで書いていたんです。それこそベースの作品にも裏人格のヘルの原型――そのときは「夕凪渚」という名前でしたが――そういうものが組み合わさって今の夏凪像が出来ていると思います。「夕凪」も強い一面の中に弱さが見え隠れしているキャラクターだったので、『たんもし』でもそういった強さの中に弱さを内包した性格にしようというイメージは、最初から持っていました。

 

探偵はもう、死んでいる。

【君塚のもとに現れた依頼人の女子高生・夏凪渚】

 

――ベースとなった作品では探偵だったという、斎川唯についてお教えください。

元作品でこそ探偵でしたが、僕はアイドルが大好きなのでどこかにアイドルキャラを出そうと考えていたんです。そこで、それこそ名前が「さいかわ」なキャラクターですし、これも組み合わせで、というか……(苦笑)。二次元・三次元問わずアイドルには、表向きの明るい部分だけじゃなくて、舞台裏の努力している部分があるじゃないですか。そういうところを表現できたらなと思いながら、今の斎川を書きました。

 

探偵はもう、死んでいる。

【国民的アイドルにして二人目の依頼人・斎川唯】

 

――さて、応募原稿の時点ではメインキャラクターの中に名前が挙がっていなかった、シャーロット・有坂・アンダーソンについてもお伺いしたいのですが……。

そうですね。シャルは応募原稿だとたまたま船の中で出会う、けれども《SPES》とは因縁があるくらいのキャラクターだったんです。もちろん名前も違いますし、純日本人でした。君塚やシエスタとも知り合いではなかったです。なので、一番変化したキャラクターといっても過言ではないと思います。現在のシャルになった主な要因は、担当さんと打ち合わせを重ねる中で、三部構成になっている1巻で最後に出てくるヒロインなので、君塚との絡みを増やして印象に残るようにしたいというアイデアが出たからですかね。そこで、夏凪や斎川よりも早く君塚と出会っているようにしたり、夏凪と対立構図を生み出したりと色々なものを組み合わせた。その結果が今のシャルになっています。あと、純日本人だったキャラクターが金髪のハーフになったのは、決して某作品のオマージュではなくて、ヒロインが黒髪ばかりになるのを防いだ結果というか、バランス的な問題ですね(笑)。でも、金髪でハーフでと決まったら、自然にあんな性格になっていきました(苦笑)。

 

探偵はもう、死んでいる。

【君塚と腐れ縁のエージェント・シャーロット・有坂・アンダーソン】

 

――狂言回し的な主人公・君塚君彦はいかがでしょうか。

先ほどお伝えしたベースとなった数作品は、すべて君塚が主人公だったんです。でも学園青春ものだったり、学園闘争劇だったりジャンルはまちまちでした。なので、君塚を書くのは『たんもし』で四回目だったんですが、その間にジャンルは違えど、その作品の世界観に最も適した君塚像に熟成されていった印象があります。ですので、君塚は一番書き慣れているというか、最もお気に入りのキャラクターです(笑)。書いているのも、君塚とヒロインの掛け合いが一番楽しいと言いますか……。なので、君塚対ヒロインの掛け合いが詰まった店舗特典のショートストーリーも是非読んで頂きたいですね(笑)。

 

探偵はもう、死んでいる。

【巻き込まれ体質の主人公・君塚君彦】

 

読者参加型企画「#たんもし質問箱」!

――さて、ここからはTwitterのハッシュタグ「#たんもし質問箱」で読者の皆さんから募集した質問にもお答え頂ければと思います。まず、こちらですね。シエスタ以外のキャラクターの誕生日は考えられているのでしょうか?

これについては、「たんもし」が過去と現在と未来が交錯する物語ということもありまして、いずれお伝えできればと思います。

 

――これからもヒロインは増え続けますか?

まずはキービジュアルで描かれているメインの五人をちゃんと掘り下げたいという想いが第一にあるんですけど、シリーズが続いていく中では、もしかしたら新たなヒロインと言える存在も出てくるのかな……。

 

探偵はもう、死んでいる。

【キービジュアル】

 

――お酒を飲んだあとのシエスタと君塚は、本当に何もなかったんですか?

君塚は1巻では「何もなかった」って言ってはいるんですが、記憶を失っていたことも分かったわけですし、君塚は信頼できない語り手ですから……。何があったのかは、シエスタのみぞ知るというか。そこは読者さんのご想像にお任せします、ということで(笑)。

 

探偵はもう、死んでいる。

【あの夜。シエスタと君塚の間に、本当に何もなかったのか…?】

 

――各キャラクターにコードネーム、二つ名を付けるとしたら?

1巻でシエスタのことを「白昼夢」と表現するシーンがあるんですが、それと対比する形で君塚に「黒影」というコードネームを付けようとしたことがありました。でも、担当さんから「ちょっとイキってる感じがします」と、ダメ出しがあり……。とはいえ、そのうち使おうかな、と密かに企んでいます(笑)。

 

――二語先生自身が、作家になったんだなと実感する瞬間を教えてください。

本当に起きたときから眠りに就く直前まで、『たんもし』の展開を考えているんですよ。朝、目覚めた瞬間に寝る直前の続きから考えたりするのが、まさに作家だなと実感するときですね。

 

――二語先生の執筆スタイルはどんな感じなのでしょうか。

最近は新型コロナウイルスの流行で外出自粛の波ですけど(編注:この取材は6月上旬にZoomを用いて行われた)、その前まではファミレスや喫茶店で、ポメラを使って書いていました。今は専らデスクトップかノートパソコンで、Wordを使って書いています。

 

――ライトノベル作家としての目標をお聞かせください。

『たんもし』を、納得のいく形で最後まで完結させたいですね。君塚たちの物語を、最後まで書いてあげられることが一番の目標です。何巻まで出していいかは別にして……。でも、この後、物語上でやらなくちゃいけないことを考えていくと、自分の中では最低でもあと5~6冊は必要かなと思っています。

 

『たんもし』の物語は更に深部へ

――さて最後に、ストーリーについてもお伺いしたいと思います。1巻を執筆される上でのポイントは何だったのでしょうか。

1巻はシャルの改稿が大きな変更点ぐらいで、それ以外は大きな問題がなかったように覚えています。すらすら書けたというか……。なので、そこまで苦労もなかったかもしれません。でも、その代償というか、2巻の執筆は大変でしたね。

 

――2巻で苦労された点は、具体的にどこでしょうか。

普通の作品なら、2巻は1巻の続きの時間軸になるところを、担当さんの提案で「過去編にしよう」ということになったんです。だから、過去のことを一から考えなければいけなかった。応募原稿を書いた時点では、シエスタの死んだ理由や、君塚とシエスタの過去に何があったのか、細部までハッキリとは決めていなかった……というのが苦労した主な理由ですね。シエスタが単純にカメレオンに殺されたとは思っていなかったんですけど、デビューしたばかりの勝手な妄想では、7巻とかそのあたりで7.5巻として過去編の短編集をやりたいなと思っていたので、予想以上にそこを掘り下げるのが早くなりまして(笑)。でも、シエスタのキャラクター像はツイートなどで掴みつつの執筆だったので、大変でしたけどその分楽しく執筆できました。

 

探偵はもう、死んでいる。

【二巻では、ウェディングドレスや制服姿のシエスタが見られる】

 

――2巻ではシエスタの真相が明かされ、3巻ではシエスタにそっくりな美少女が登場します。まさに過去を解き明かす内容になっていくわけですが、この構成にしようとした理由をお教えください。

元々、2巻を過去編じゃなくて、1巻の続編として書く場合のプロットがあったんですね。結果として、2巻は過去編になったので、そのプロットを再利用しつつ、構成し直したら現在の3巻の内容に落ち着いた……という感じです。構成としては、章ごとにヒロインの話に分かれていて、敢えて1巻を踏襲する形になっています。なので、1巻と比べて各キャラクターたちがどう成長しているかも楽しみにして頂きたいですね。また、この物語が何処に向かうのか、それが決まる結末にもなっているので、そこもご注目ください。もちろん、うみぼうず先生のイラストも毎巻素晴らしいので、店舗特典のショートストーリー含めてチェックして頂けると非常に嬉しいです……!

 

探偵はもう、死んでいる。

【3巻ピンナップとして公開されているメイド服の少女。彼女の正体とは…?】

 

――それでは最後に読者の皆様へ一言お願いします。

いつも応援ありがとうございます!SNSでの感想やファンレターなど、本当に励みになっています。また、今回のこのインタビュー記事を通して初めて『探偵はもう、死んでいる。』を知ってくださった方もいらっしゃると思います。現在、Twitterで公式アカウント(@tanteiwamou_)も稼働中ですので、そちらの方でも作品情報などを見ていただけたら嬉しいです。今後ともどうぞ「たんもし」への応援、よろしくお願いいたします!

 

 

©二語十/KADOKAWA MF文庫J刊 イラスト:うみぼうず

kiji

[関連サイト]

『探偵はもう、死んでいる。』特設サイト

『探偵はもう、死んでいる。』公式Twitter

MF文庫J公式サイト

 

※このページにはアフィリエイトリンクが使用されています
NO IMAGE
探偵はもう、死んでいる。3 (MF文庫J)
NO IMAGE
探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

ランキング

ラノベユーザーレビュー

お知らせ