独占インタビュー「ラノベの素」 スフレ先生『勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年9月25日にMF文庫Jより『勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち』が発売されたスフレ先生です。死んだら棺桶になってしまう勇者を復活させるために助け出す、そんなあるようでなかったレスキューファンタジーを描く本作。WEB発ではなく編集者と二人三脚で企画を考えたというスフレ先生も、インタビューには1年半ぶりの登場です。命をテーマにしながらも笑えるコメディに仕上げた作品の内容についてはもちろん、見どころなど様々にお聞きしました。

 

 

勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち

 

 

【あらすじ】

治癒魔法が突然世界から消え、五年が経った。人々は気軽に治療ができず、冒険稼業はピンチを迎えていた。そこで登場したのが、遭難した冒険者などを救出するレスキューギルド。隊員の一人であるレスクの今日の任務は「……ばたんきゅ~」 えっと、ダンジョンで弱小モンスターにやられた勇者の搬出? 世界を救う勇者だけは特別で、死んでも棺桶に姿を変える。教会で祈りを受けることで復活できるが……肝心の棺桶は誰かに運んでもらう必要があるのだ! 今週17回目の棺桶になった勇者を何とか救いだしたレスクは、隊員として今日も街の平和を守るために「ばたんきゅ~」……おっと、この話をしている間にもまた勇者が倒れたようだね。

 

 

――2019年2月以来のご登場になります。大変ご無沙汰しております。(前回のインタビュー記事はこちら

 

天才作家のスフレです。それにしてもだいぶおひさしぶりですね(笑)。あらためてよろしくお願いします。

 

 

――紙での書籍刊行もかなりご無沙汰でしたよね。ご自身を取り巻く環境に変化などあったのでしょうか。

 

書籍の刊行は今年の3月に「BOOK☆WALKER」さんで、電子版のみとなる『ダンジョン・スクールデスゲーム apology』を発売したのですが、紙の書籍についてはおっしゃる通りひさしぶりで、だいたい1年半ぶりだと思います。紙の書籍を刊行できなかった理由についてはちょっとした事情こそありましたが、自分自身を取り巻く環境に大きな変化はそこまでなかったですね。クリエイティブな方向の影響もほとんどありませんでした。影響と言えば、やっぱり新型コロナウイルスですよね。飲み会とかマジでなくなりましたから(笑)。

 

 

――スフレ先生はご自身で飲み会を主催されたりと、交流の範囲も非常に広いイメージがありました。

 

そうですね。飲み会は2日1回とか3日に1回くらいの頻度で実施していました。作家との飲み会だけでなく、ゲームやアニメの関係者とのクリエイター飲み会もやっていましたけど、新型コロナウイルスの影響で本当にゼロになりました。最近になってようやく少人数でやろうかというお話もちらほら出てくるようにはなりましたけど、それまでは本当に話にすらあがりませんでしたから。みんなで集まって話をするだとか、そういった機会はなくなりましたよね。

 

 

――たくさんの方と会うこと自体が創作の刺激になったりもしていたのかなと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

 

人に会えない寂しさのようなものはありますけど、自分の中での弊害はほとんどないです。自分が常に刺激的で特殊な天才じゃないですか。アイデアは常にあふれてきているんですよ(笑)。逆に飲み会がなくなったことで、身体の調子はすごくよくなりましたよね。これまで体調が悪かったのはお酒や大食いのせいだったのかなって。ただリモートで仕事をする機会ばかりが増えた結果、間食も増えたのでプラマイゼロに戻りつつあるのかもしれません(笑)。

 

 

――あらためて紙の書籍を1年半ぶりに、それもMF文庫Jというご自身にとって新たなレーベルから刊行するわけですが、まずは率直な感想をお聞かせください。

 

単純に1年半ぶりとなる紙の書籍なので、楽しみですよね。純粋に自分のファンへ新しい作品を届けられるということはもちろんですし、MF文庫Jというレーベルの作品を読んでいる若い世代の方々は、自分にとって新しいお客さんでもあります。自分の作品がどのように受け入れられるのかは非常に楽しみなところがあります。

 

 

――スフレ先生はこれまでWEB発の書籍刊行が主だったと思いますが、今回は企画段階から編集者さんとタッグを組んで考えられたとうかがっています。あらためて実感した違いなどはありましたか。

 

違いはたくさんあって、まずはスピード感。具体的に言うと、WEBで投稿をはじめた作品に対して3日や4日で書籍化オファーがくることもザラで、そこから3ヶ月や4ヶ月で本になることも珍しくないんですよ。一方で編集者さんと企画段階からタッグを組むと、本当にしっかりと話し合って骨子を作っていくのでそれなりに時間もかかります。そこからさらに企画会議などもあるわけで、GOサインが出るまでそれなりに長い。なので、結構時間がかかったという印象はありました。

 

 

――なるほど。そのスピード感はスフレ先生にとってまどろっこしさに繋がったりはしませんでしたか。

 

それはなかったです。逆にすごく多くの発見がありました。WEBで執筆を始める場合は、ある種「遊び」の感覚から書き始めたりすることも少なくないんですが、企画の場合は最初から「商業」を意識して取り組むことになるんです。特にMF文庫Jというもともと読者の存在しているレーベルで作品を作るわけなので、MF文庫Jの主要な読者層も意識しなくちゃいけません。「商品」としての考え方が最初からあるかないかという点は大きな違いだと感じました。

 

 

――企画段階から編集さんとバチバチ戦ったりはしませんでしたか?(笑)。

 

それはなかったです(笑)。特に今回の企画は、担当編集さんがバディもの好きで、自分もバディものが好きで、そこから生まれた企画でもあるんです。初期企画の時点からお互いの意識のすり合せはできていたので、すんなりと進行しました。もちろん人と人である以上、相性もあるので、その点においてもよかったんだと思います。バチバチはありませんでしたよ?(笑)。

 

 

――それでは『勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち』はどんな物語なのか教えてください。

 

ストーリーはざっくり言うと、勇者の棺桶を運ぶ物語ですね(笑)。着想のお話にも繋がっていくのですが、『ドラクエ』でキャラクターが死んで棺桶になるじゃないですか。そしてその後に教会で復活するというお約束がある。そこで描かれていないその「間」ってどうなっているんだろう、ダンジョンで死んでそのまま教会に行くわけじゃないよなって。そこからファンタジー世界における裏方の職業というコンセプトに繋がっていきました。この物語の核になっているレスキューギルドという、勇者の棺桶を運ぶ存在。世界観としては因果が少し逆転していて、治癒魔法が世界からなくなったことで、命の価値が高まることになります。そんな世界で、現実でいう救急隊員のようなレスキューギルドが登場する。彼らの役割が、ダンジョンで遭難してしまった冒険者なり、街中の細かい助けを必要としている人達の助けになることです。そういった任務のひとつとして、世界で唯一蘇生できる勇者が死んで棺桶になってしまうので、それを運び出すという仕事があるんです。

 

勇者の棺桶挿絵02

※棺桶になってしまった勇者を教会へ移送するのもレスキューギルドのお勤め

 

 

――前作とは違い、非常にコメディ寄りの明るい作品ですよね。

 

そうですね。前作の『ダンジョン・スクールデスゲーム』は、デスゲームものということもあり若干暗めの物語でもありました。今回の作品はタイミング的にも新型コロナウイルスの話題が広がりはじめ、こういう暗い時代を吹き飛ばすような明るい王道な作品を創ろうと思って執筆に取り掛かりました。笑えて泣けて、読み終えた後にちょっと元気の出る物語になっていると思います。

 

 

――それでは本作で活躍するキャラクターについても教えてください。

 

主人公のレスクは熱血漢で正義感が強く、命というものを深く考えているキャラクターです。過去にちょっと暗いトラウマを抱えていて、傷ついている人を見たら放っておけない性格ですね。救援スキルを2つ持っている特殊な立ち位置にも注目です。真面目な性格ではあるのですが一辺倒というわけではなく、要所でギャグっぽさもきちんと発揮してくれるキャラクターです。

 

レスク キャラクターデザイン

※主人公のレスク(キャラクターデザインより)

 

ティリィは勇者で、ポンコツ娘です(笑)。本来なら勇者をやれるような女の子ではないのですが、女神の天啓に従い、勇者として活動を続けています。勇者になってからまだ3ヶ月足らずで、本当にひよっ子勇者なんです。レスクをはじめとした大切な人たちを魔族から守りたいという気持ちを持っており、弱さを努力で補おうと、必死に頑張っている女の子ですね。現時点では、上位の冒険者や野盗と戦ったら一瞬で棺桶になってしまうくらいの強さですが(笑)。

 

ティリィ キャラクターデザイン

※勇者のティリィ(キャラクターデザインより)

 

カレンはレスクの幼馴染みで、一番ヒロイン力が高いキャラクターかもしれません。本人は隠しているつもりですが、周囲にはレスクのことを好きだという想いがだだ漏れのツンデレです。レスクと同様に過去にトラウマを持っており、自分と似た境遇であるレスクとの距離は非常に近いです。レスクにとってもカレンは家族以上の存在で、カレンにとってもレスクは家族以上の存在ですね。

 

カレン キャラクターデザイン

※幼馴染みで同僚のカレン(キャラクターデザインより)

 

ケイアはティリィに負けないくらいのギャグ要員です。最強薬というワケのわからない薬を世界に広めようとしている天才で、その才能を完全に間違った方向に使ってしまっています。とにかくハチャメチャなキャラクターなので注目していただきたいですね。

 

ケイア キャラクターデザイン

※天才の無駄遣い・ケイア(キャラクターデザインより)

 

シスターカトレアは、イラストにパンツが出てくるのに顔は出てこないキャラクターです(笑)。後ろ姿だけは描かれているので、どんな美人さんなのか想像しながら楽しんでほしいですね。この世界にはたくさんの教会があって、シスターカトレアは勇者蘇生の祈りを捧げることのできるキャラクターでもあります。

 

勇者の棺桶挿絵01

※イラストではパンツと後ろ姿しか描かれていないシスターカトレア

 

 

――本作の特徴として、レスキューギルドの隊員が戦うシーンはほとんどありませんよね。

 

レスキューギルドの隊員たちは、モンスターとバトルすることはありません。戦って倒すことよりも、助けて逃げ帰ることに重きを置いているので、そのあたりは普通のファンタジー作品とは違うのかなと思います。レスキューギルドの隊員は、レスキューに特化した救援スキルを持っているので、戦うより逃げ帰ることの方が圧倒的に有利なんです。仮に冒険者と戦うことになってしまったら、まず冒険者が勝つでしょうね。

 

 

――また、本作には魔族と災害の原因となるモンスターが登場しますが、この2つの種族は繋がっているわけではないんですよね。

 

そうですね。たとえば作中の4大災害と呼ばれているモンスターは、生物というよりも自然現象に扱いが近いです。台風や竜巻、地震のように、ふとした時に発生する災害そのものです。一方の魔族は人類とゆるく抗争を続けており、中には強くなりすぎた魔族が災害指定されたりすることはありますが、基本的には別物です。

 

 

――そんな本作のイラストは可愛いイラストで定評のあるclear先生が担当されています。

 

clear先生の第一印象はとにかく可愛いイラストを描く方、でした。ファンタジーの衣装も非常にいい感じに描いていただきました。ケイアのイラストもすごく可愛く描いていただいていますし、挿絵には棺桶から足を生やしたティリィを必死に隠そうとするシーンがあるんですけど、大変面白いイラストに仕上げていただています。口絵の棺桶から目覚めるティリィの眠たげな表情など、どのイラストも可愛さがあって素晴らしいと思います。

 

勇者の棺桶挿絵03

 

勇者の棺桶口絵01

※キャラクターの表情に可愛さが映えるイラストの数々に注目!

 

 

――著者として本作はどんな方が読むとより面白いと感じられると思いますか。

 

コメディが好きな人にはぜひ手に取っていただきたいですし、テーマのひとつに「救い」があるので、救われたい人にオススメですね(笑)。暗い気分や辛い何かを抱えている人であれば、そんな気持ちを笑って吹き飛ばしてあげられるんじゃないかなと思います!

 

勇者の棺桶口絵02

※「救う」ことを仕事にするレスキューギルド隊員たちの活躍が大きな見どころ

 

 

――前回のインタビューでもお聞きしましたが、あらためて今後の目標や野望を教えてください。

 

最低でもアニメ化は目標ですね!(笑)。担当編集さんがめちゃくちゃ苦い顔してますけど、7億部くらい売りたいです! まずはその足掛かりとして、漫画化を目指したいですね。担当編集さんにドンドン推していただいて、いろんなメディアミックスを展開しながらステップアップしていきたいです!

 

 

――それでは最後に、ファンの方や本作に興味を持った方へ一言ずつお願いします。

 

もともと自分の作品を読まれている方へは、自分自身、常に最高の作品を書き続けているので、読者さんの期待を常に超えながら、今回も超えたものをお届けできたんじゃないかと思います。そしてMF文庫Jの若い読者さんへは、面白い作品を読みたかったら、ぜひこの作品を手に取っていただきたいです。個人的には『このすば』好きな人たちには特に楽しんでもらえる作品になっていると思いますので(笑)。著者は常に最高の面白いものを書いていて、その「面白い」を更新し続けています。本作もぜひよろしくお願いします!

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

死んだ勇者の棺桶を運ぶレスキューギルド隊員の奮闘を綴るスフレ先生にお話をうかがいました。ファンタジーのなかなか見えない部分を題材として、軽快なコメディに仕上げられている本作。「命」の価値にも迫っていく『勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち』は必読です!

 

 

©スフレ/KADOKAWA MF文庫J刊 イラスト:clear

kiji

[関連サイト]

『勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち』特設サイト

MF文庫J公式サイト

 

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勇者の棺桶、誰が運ぶの? ポンコツ娘は救われ待ち (MF文庫J)

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