独占インタビュー「ラノベの素」 雨川透子先生『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は「次にくるライトノベル大賞2021」にて総合部門第1位に輝いたオーバーラップノベルスf刊『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』の雨川透子先生です。20歳になると命を落としてしまう運命を繰り返す令嬢が、自らの死の近因でもあり遠因でもあり続けた皇国の皇太子に見初められて始まる本作。賞の受賞についてはもちろん、死を繰り返しながらも前向きに歩み続ける主人公、ラスボス的な存在であるという皇太子との頭脳戦など、女性だけではなく男性も楽しめるその作品の魅力について様々にお聞きしました。
【第1巻あらすじ】 「リーシェ! 僕は貴様との婚約を破棄する!!」「はい、分かりました」「えっ」20歳で命を落としては婚約破棄の瞬間にループしてしまう公爵令嬢リーシェの人生は、7回目を迎えていた。過去の人生、商人や薬師、騎士などの生き方を満喫してきたけど、今度の人生こそ長生きしてごろごろしたい! 決意して飛び出そうとしたところ、とてつもない美丈夫とぶつかってしまう。その男性は、数年後に戦争を引き起こし、リーシェが死んでしまう要因を作り出した皇太子アルノルトだった!? さらに、騎士人生で培った立ち振る舞いを気に入られたのか、彼から結婚を申し込まれて――!? 自分の死の原因であるアルノルトを探るため、リーシェは求婚を了承する。ごろごろしたい決意とは裏腹に、過去の人生で得た経験を発揮し注目を浴びていくリーシェは、果たして7回目の人生を生き残れるのか……!? |
――それでは自己紹介からお願いします。
雨川透子と申します。好きなものは旅行とカメラ、インク集めです。そして「有能な美男子が、強い美少女に振り回されるお話」が、書くのも読むのも大好きです(笑)。いま一番楽しいことは、小説を執筆することです。
――物語において「有能な美男子が、強い美少女に振り回されるお話」がお好きとのことですが、これは小説を執筆する前からお好きだったんですか。
はい、そういった物語を積極的に読んでいました。何かきっかけになった作品があったというわけではなく、子供の頃から……いえ、物心つく前からそんな妄想ばかりをしていたんだと思います(笑)。
――名刺にも同様の文章を載せられていますし、好きのレベルの高さがうかがえます(笑)。ではあらためて『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』が「次にくるライトノベル大賞2021」総合部門第1位を獲得しました。おめでとうございます。
ありがとうございます。今回の受賞の第一報を担当編集さんからメールでいただいて以降も、まだ信じられないです。担当さんへの私のファーストコンタクトは「嘘だあ……」という一言だけの返信だったんですよね(笑)。
――まったく信用していなかったと(笑)。
前置きの挨拶も一切なく、「絶対嘘でしょ!!」って(笑)。メールの件名にも「受賞の報告」って書かれていたんですけど、スマホのポップアップ通知を見た瞬間は「うそうそ、ないない」って。でも、少し時間を置いた後にあらためてメールを見ると、そこには「受賞」って書いてあり……。今回たくさんの作品がノミネートされていて、そこには私自身も好きな作品がたくさんありました。何かの端っこに引っ掛かるだけでも奇跡だと思っていただけに、びっくりしつつ、でも未だに実感はないし、受賞なんてしてないと思いながら今日まで生きてます(笑)。
――どうでしょう。そろそろ実感は湧いてきませんか?(笑)。
このインタビューの場を設けていただいたことで、ようやくちょっとだけ「本当なんだ」って思いました。受賞にあたり、本に巻く帯を新しくしていただいたのですが、拝見させていただいて「これはいかつい」と(笑)。こうして実感が湧き始めると、読者さんから選んでいただけたということをあらためて感じ、すごく嬉しい気持ちが強いです。1日1作品までという制限の中、この『ルプなな』に票をくださった方、投票期間中に、投票完了のツイートしてくださっていた方。投票終了時に「毎日投票しました」と報告をくださった方もいらっしゃいました。そういったみなさんの応援に応えることができたのが、なにより嬉しいと感じています。とはいえ、人生で表彰されることは早々ないわけで、どんな気持ちで生きてたらいいのかよくわからない(笑)。「わーい、うれしい」っていう気持ちと、「そんな恐れ多い」っていう気持ちが常にあるので。ただただ本当にありがとうございます、という感じです。
――今回の受賞に関してですが、女性票が多かったというのはもちろんなのですが、10代~50代すべての年代で、本作は上位3作品に選ばれていました。これは本当にすごいことだと思っていて、各年代にしっかりと作品を受け止めてもらえていることの証だと思います。
ありがとうございます、恐れ多いです……。あまり幅広い年代を意識しているということはなかったのですが、私は「有能な美男子が、強い美少女に振り回されるお話」が大好きです。なのでこのお話を執筆する上で、強い女の子が活躍するということを第一にしつつ、ヒーローにあたる男性キャラクターもそんな女の子以上の存在として描きたいと頑張っています。ヒロインは自立していて、自分だけでも難局を切り抜けられる強さを持つように。ヒーローもまた、そんなヒロインのやりたいことを尊重してくれる存在として。ヒーロー自身も人間として有能な存在でありながら、ヒロインの自由を束縛しない、そんなヒーローとヒロイン像を模索しながら書いています。『ヒロインにとって頼れるヒーローとのロマンチックな恋愛』と、『生き生きとした、強くてなんでもできるヒロイン』。私としてもそのどちらかを選択して描くようにはしないように心がけていたので、そこが幅広い年代の読者さんに支持をしていただけたのであれば嬉しいです。
――本作については親子で読まれている層もかなりいらっしゃると聞いています。親子2世代でファンがついていることも、今回の受賞のきっかけのひとつかもしれませんね。
そうですね。そしてコミカライズの影響も大きかったと思っています。特に若い世代の方々に作品を届けるためには、pixivやピッコマなどの、若い世代がいるプラットフォームに作品が展開されることも重要だと思っています。コミカライズの木乃ひのき先生のお力で、普段小説を読まない人たちも入ってきてくれたんじゃないかなと。魅力的なコミカライズをきっかけに、幅広い層に小説が届いたことが、今回の受賞に大きく影響しているのではないかと思います。
――もうひとつ、受賞の要因としてSNSを通じた読者との距離の近さもあったかと思います。SNSの活用ではどんなことを意識されていたのですか。
私はTwitterも作品表現における1つのコンテンツといいますか、読書体験の一部にできたらいいのかなと思っています。特にこの作品は最初から最後までの展開がプロットで決まっているので、寄り道の余地もほとんどありません。でも執筆をしていると、当初予定していた以外にも、書きたいエピソードはいくつも出てくるんです。また、本編では書くことの出来なかった舞台裏や、主人公以外の心情を書きたくなります。そういう時にTwitterを使うことが多いです。私は書いていて楽しいですし、読者さんにも楽しんでいただけていて嬉しいです。+αで作品の情報を得ることができる、Twitterはそんな位置付けです。小説の執筆期間中という空白の期間も、読者の方々に少しでも楽しい気持ちを継続していただくために、SNSで作品の裏話や設定、小話などを少しずつでも展開しようと思っている感じです。私が想像した以上に、多くの方が作品の様々なことに興味を持って訊いてくださるので、とても嬉しいです。
――ありがとうございます。それでは『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』はどんな物語なのか教えてください。
本作は婚約破棄をされた公爵令嬢が、その婚約破棄を機会に新しい人生を送ろうとするも、20歳で必ず命を落としては婚約破棄の瞬間に戻ってしまうループ現象の只中にいます。ヒロインはそんなループの度に、異なる職業を選び、異なる人生を楽しみながら生きてきました。今回の7回目の婚約破棄後、次はどんなことをやって生きていこうか! とワクワクしていたところに、自分の過去の人生すべてにおいての死因となっている元敵国の皇太子に出会います。うっかり気に入られ求婚され嫁ぐことになるのですが、これを機会に自分の死の元凶たる皇太子の言動を自ら止めようと、過去の人生で得たすべての知識をフル活用しながら、戦争回避のために頑張る物語です。
※7回目の人生で宿敵とも言える皇太子に求婚されて――!?
――本作の主人公であり、ヒロインであるリーシェは、6回も死を迎えているにも関わらず、そこに諦めというものはなく、非常に前向きで明るいキャラクターですよね。自立した強いヒロイン像というお話もありましたが、リーシェはどのようにして誕生したのでしょうか。
まず、物語の根底には人生をひたすら繰り返し、その都度異なるスキルを極める主人公の姿が頭の中にありました。おっしゃるように人生を繰り返し続ける、それも不条理な出来事が原因であれば、なおさら諦めであったり、性格として擦れていってしまうこともあったと思います。何度努力をしてもそれがゼロに戻ってしまえば、心だってきっと折れてしまう。でも、そんなところをスカッと明るく楽しんでいるヒロインがいいなと思ったんです。物語の冒頭は、婚約破棄を告げられたヒロインがケロッと快諾するシーンから始まるんですけど、最初にそのシーンを想像した時に、このヒロインはこの先もずっとこんな調子なんだろうなと思ったんです。そうした妄想の中で続いていくシーンを考えて、やっぱりループの度にわくわくしている、色んな人生を楽しめる主人公がいいなって。次第に何が起きても楽しそうなヒロインができあがっていき、最終的には明るいキャラクターに固まりました。
※宿敵に嫁ぐことになっても、その前向きで明るい姿勢は変わらないリーシェ
――彼女の明るさや前向きさは、ループしていることで培った知見や技術、考え方をはじめ、精神的な成熟にも起因したりはしているのでしょうか。すごくしっかりとしている一面はもちろん、年齢相応のシーンもあるわけですが。
私は人の精神年齢=生きた年数じゃないと思っているんです。知識や落ち着き、常識という観点ではなく、精神年齢は周囲からどのように扱われているかが大きいのかなと考えています。たとえば、5人兄弟の長男の10歳と、5人兄弟の末っ子の10歳では、同じ10歳でも違うと思うんです。精神年齢は、10年生きたから10歳の精神年齢になる、何年生きれば「ここ」まで大人びる……とはならないのではないかな、と。本作のヒロインも、ループで人生を繰り返していますが、その年数だけで極端に成熟したり、擦れていくことはないと思っています。特にリーシェの場合は、ループするたびに違う人生を体験しています。嫌なことばかりが続けば擦れていく可能性もあったと思いますが、なにせ人生を楽しんでいるので、メンタルは楽しいままなんですよね(笑)。
――なるほど。よく男性は何歳になっても子供だと言われることもありますしね(笑)。そういう意味でもリーシェからは、男らしさを想起させられることも多い気がしますね。
人間の格好良さは、男性的と表現されることが多いのかなとは思います。格好いい女性のことも男前って言われたり。だから、なんとなくそこがイコールになるのかなって感じました。筋の通っている凛とした強い女の子の姿をこれからも描いていければいいなと思っています。
※リーシェの凛とした姿も垣間見えるシーンは少なくない
――では続いて、これまでのリーシェの死の原因であり続けた皇国の皇太子アルノルトについてもお聞かせください。
皇太子・アルノルトのコンセプトはラスボスです。ヒロインの過去の人生のすべては、直接的間接的を問わず、アルノルトの影響でバッドエンドを迎えます。過去の人生では一度も勝つことができませんでした。一方で、アルノルトは自身が抱えている秘密や目的、生まれや育ちの環境から、がんじがらめの状態でもあります。強い信念を持ってはいますが、アルノルトが選ぼうとする手段は非常に狭い。そしてアルノルトの性格上、最適だと判断した以外の事柄を一切考慮しません。これは原作小説の第3巻まででも見え隠れしていて、リーシェにとっての最終関門がアルノルトなんです。アルノルトの考え方を変えなければ、リーシェの思う通りにはいかないという、対比や対立の存在としても描いていますね。
※これまでの人生におけるリーシェの死には必ずアルノルトの影響があって……
――リーシェとアルノルトの対比や対立について、もう少し具体的に教えていただけますか。
ヒロインであるリーシェは、とにかく新しい世界を目指し、いろんな可能性を尊ぶ存在です。逆にヒーローであるアルノルトはひとつの道、ひとつの正解に向かって突き進みます。そんなアルノルトに対して、リーシェは少しずつ、彼が見据える一本の道以外の選択肢を見せたり、示したりしています。出会いの時点から完璧なアルノルトですが、優秀な力を持っているのに反して、彼が最善と判断したこと以外は視野が広くありません。だからリーシェが長い時間をかけながら、説得を続けているわけですね。また、アルノルトはリーシェのことを、単純に庇護する対象としての婚約者や令嬢として見てはいません。リーシェもループの積み重ねをする中で、公爵令嬢として生きてきた年数よりも、さまざまな職業人として生きた年数が圧倒的に長いです。どちらもただの皇太子と令嬢ではないという二人の姿から、甘いだけの物語ではないヒーローとヒロインの関係性を描けたらいいなと思っています。
※2人の関係性は婚約者でありながらも永遠のライバルなのかもしれない
――ちなみにリーシェには8回目のループへ至る可能性はありますか。
タイトルが変わっちゃいますね(笑)。リーシェ自身が第1巻で「次があったとしてもこの人生ではないはず」と口にしていますが、何かが少しでも変化すれば、未来が変化する可能性も大いにあります。リーシェが今回の人生でも死んで、そのあとの「次」を迎えたとしても、リーシェはアルノルトと、7回目のループで至った関係性をそっくり同じように築き上げることはできない、と私は思っています。仮に6回目の人生で出会っていても、この7回目のこの人生のようにはなっていません。だからもし仮に、今回もリーシェが死んでしまい、その失敗を踏まえた「次」があったとしても、アルノルトとリーシェの物語はまったく違った方向に行ってしまうと思います。7回目の出会いで始まった、リーシェの取った行動のすべてがアルノルトの興味を惹いているのですが、ループ8回目を迎えたリーシェは、きっとあのときとは全然違った行動を取ると思います。
――ありがとうございます。せっかくなのでこれから読んでみようと思っている方々に向けて、女性視点から見るアルノルトの魅力、そして男性視点から見るアルノルトの魅力のそれぞれについて教えていただけますか。
女性から見たアルノルトの魅力、というより私が考えている魅力という意味でお伝えすると、他人に対して冷酷で、心を閉ざしている男性が、ヒロインにだけは心を開きつつあって、かつ思いやりをみせているというギャップが、書いていて楽しいなと思っています。ただ、アルノルト自身は決して善良な人間というわけではありません。リーシェが下手を踏めば一気に破滅ルートへと向かってしまいそうな危うさを持ち合わせているキャラクターでもあるので、強いんだけど危ういそのギャップが魅力かもしれません。
男性視点からは、アルノルトについては、倒すべき敵という物語の視点で読んでいただくというのはどうでしょうか。悪役であり強敵のアルノルトが、婚約者であるはずのリーシェに頭脳戦を仕掛けてきて、リーシェが上をいったと思ってもさらにその上をいきます。そういった駆け引きが繰り返されていますし、ループを経て、チートとも言える様々な知識や見識、考え方を持っているリーシェですら、勝つか負けるかのギリギリの勝負の中にいます。そういった心理戦は男性読者にも楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。
――もうひとつ、本作はリーシェとアルノルトの二人にどうしても視線が向きがちになってしまうのですが、この二人以外で注目してほしいキャラクターがいれば教えてください。
第4巻で登場するラウルというキャラクターは、第1~3巻に登場した他のキャラクターとは少し違った関わり方をすることになります。ラウルは過去のリーシェの人生の中において、リーシェに惚れたことがあるキャラクターなんです。今回の人生においても、作中ではっきりと明言はしていないものの、リーシェに一目惚れをしています。そういった恋愛要素における第三勢力というだけではなく、ラウルに与えられた役割について、これまでとは少し異なるサブキャラクターとして楽しんでいただける要素があると思いますのでぜひ注目していただきたいです。また、第1巻でリーシェに婚約破棄を突き付けた王太子ディートリヒ、その婚約者であるマリーも、リーシェたちと大きく絡む機会がこの先に待っていますので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
――さて、美麗なイラストも特徴な本作ですが、イラストは八美☆わん先生が担当しています。あらためてイラストへの印象や気に入っているイラストなどについてもお聞かせください。
キャララフをいただいた当初、印象に強く残ったのはアルノルトでしたね。第1巻の書籍化時、キャラクターデザインを最初にいただいたのですが、あまりにもアルノルトが格好良すぎて、ついつい自腹でそのキャララフをA1サイズのポスターにしちゃいました(笑)。印刷用に描いていただいたものではないのですが、その後表紙のイラストをいただくまで部屋に貼っていました。その後も今度は表紙のイラストも勝手にA1ポスターにして壁に貼っています。
※アルノルト(キャラクターデザインより)
お気に入りのイラストについては、悩みに悩んだ上で1番を挙げるとしたら、第3巻の口絵の2枚でしょうか。ひとつは毒を吸い出すシーンで、救命行為ではあるんですけど、危うい色気をかもしだしてほしいとお願いさせていただいたイラストです。もうひとつはリーシェが泣いているシーン。これまでのイラストの中でも、こういった雰囲気のイラストはあまりなかったと思っていて、二人の親密さと、神聖で恭しい空気感が非常に好きです。どちらのイラストも、発売時に読者さんから大反響をいただきました。
※第3巻で描かれた口絵イラストに著者も読者も大興奮!?
――お気に入りのイラストはポスターにはされなかったんですね(笑)。
表紙イラストの自腹ポスターだけで壁が埋め尽くされているのと、このいちゃいちゃイラストが部屋の壁に貼ってあったら、毎日寿命が削れて大変なことになってしまうので(笑)。
――(笑)。イラストについて別視点からお聞きしようと思うのですが、イラスト化によって印象の変化したキャラクターはいましたか。
アルノルトの従者のオリヴァーです。もうすごいイケメンだったんだなって(笑)。八美☆わん先生が、すべてのキャラクターイラストを、想像通りなのに想像以上のクオリティで描いてくださっています。その中でもオリヴァーは、イラスト化によって大きく印象の変わった一人です。書くのがさらに楽しくなりました。どのキャラクターも脳内で妄想していたビジュアルイメージから、八美☆わん先生のビジュアルによってより鮮明になり、上書きされています。本当に素晴らしいです!
※アルノルトの従者としてリーシェとも関わることの多いオリヴァー
――広い層に作品を知ってもらうきっかけのひとつとなったコミカライズについても、漫画版ならではの魅力を教えてください。
やはり文字では表現しづらいテンポのいいコマや、シーンをしっかりと描いていただいているところが大きな魅力のひとつだと思います。特に木乃ひのき先生がキャラクターの心情をすごく綿密に想像して、キャラクターに寄り添いながら表情をおこしてくださっています。とにかくそれぞれのキャラクターの表情が生き生きとしていますし、コミカルなシーンとシリアスなシーンのメリハリもしっかりとしていただいているので、小説では長いエピソードを漫画ではテンポよく読みやすくしていただいています。また、八美☆わん先生もそうなのですが、リーシェのドレスも作中で日を跨げば違うドレスになっているんです。キャラクターの様々な着替え姿を堪能できるのも大きなポイントなのかなって思います。小説には書かれていない、表情や行動に現れているアルノルトの感情の部分も、すべてを絵で描いている漫画版ならではの見どころだと思いますので、ぜひ注目していただきたいです。
※木乃ひのき先生が手掛けるコミカライズは「コミックガルド」にて連載中
――今後の目標や野望について教えてください。
とにかく読んでくださる方が、もっと楽しんでいただけるように私自身が精進しなくちゃいけないなと思っています。その結果、読んでくださる方がもっと増えてくれたらと、夢が広がります(笑)。そして本当になによりも、最終回まで楽しいと思って読んでもらえるかどうか、常に心配や不安を抱えているところではあるので、作品の将来を見据えた上で最後まで楽しんでいただけるよう、執筆を頑張っていきたいです!
――最後にファンのみなさん、そして本作に興味を持ったみなさんへメッセージをお願いします。
まずは「次にくるライトノベル大賞2021」にて投票をいただいた皆様。本作はWEB投稿に始まり、それこそ本当に読者ゼロの状態からスタートした物語です。書籍化さえ奇跡的だったのに、そのおかげで多くの方に手に取っていただき、楽しんでいただいて応援までしていただけたからこその1位だったと思います。あまりにも光栄すぎますが、その応援の気持ちにお応えできるように今後も作品を書いていきたいなと思っています。あらためて作品を支えてくださった皆様、投票してくださった方やこの作品を見つけて手に取ってくださった方々にありがとうございます! とお伝えしたいです。そして「次にくるライトノベル大賞2021」にて1位になったことをきかっけに本作を知ってくださった皆様。この作品はとにかく私の好きなもの、書きたいものを詰め込んだ物語ではありますが、読者の方にどうすれば楽しんでもらえるだろうかと、たくさん考えて書いている作品でもあります。今回を機会に手に取っていただき、実際に読んで少しでも楽しんでいただけたら非常に嬉しいので、どうぞよろしくお願いします!
――本日はありがとうございました。
<了>
「次にくるライトノベル大賞2021」で総合1位を『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』で獲得した雨川透子先生にお話をうかがいました。アニメなどの大きなメディアミックスを果たしていない女性向け作品が、ここまでキャッチアップされたことにも、業界に新たな風が吹く予感をさせてくれます。男性が読んでも面白い女性向け作品が数多く登場する、そのきっかけに本作が一層の一役を買ってくれることに期待をせずにはいられません。『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』は必読です!
<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>
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