独占インタビュー「ラノベの素」 サエトミユウ先生『城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2025年12月26日にGCノベルズより『城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~』第1巻が発売されたサエトミユウ先生です。2024年10月に刊行されたハガネ文庫版から大幅なブラッシュアップを経て、待望の再書籍化。さらに2ヶ月連続刊行となる本作について、再始動までの軌跡はもちろん、逞しく生きるキャラクター達の魅力や作品を彩るイラストについてなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

 

 

【あらすじ】

公爵令嬢のシルヴィアは【生活】という未知の魔術属性を「ハズレ」だと判断され、領地の端の城塞に厄介払いされてしまう。しかし、当の本人はそんな仕打ちなどどこ吹く風。何故なら、彼女の生活魔術は「生活にひっす」と感じたものを全て魔術として実現できる前代未聞の属性だったのだ!【支配】の魔術で従えた家畜たちと共に城塞に向かう道すがら、元近衛騎士のエドワード、元服飾職人のジーナと出会う。どうやら二人も誰かから酷い仕打ちを受けたことがあるようで……?一人きりでも生きていける生活魔術がみんなと生きる日々を豊かにしていく――!つよかわ幼女と溺愛従者たちの心温まるリノベーションファンタジー、全編ブラッシュアップ&新規イラスト多数収録で再始動!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

サエトミユウと申します。出身は長崎県で、執筆歴としては2020年に「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿を始めたので、現在5年目になります。最近の趣味はイラストを描くことで、苦手なことは論理的思考です。過去には右脳派だと言われたこともあり、感覚的にざっくり捉えるタイプなんだと思っています。

 

 

――小説だけでなくイラストも描かれているんですね。イラストを描き始めたきっかけは何だったのでしょうか。

 

きっかけは、ライトノベルでよく見かける地図を自分で描けたらいいなと思ったことでした。ただ、自力で練習しても全然描けるようにはならなかったので、オンラインイラスト講座やYouTubeのお絵描き講座に参加して基礎を学びました。一通り学んだ結果、キャラクターイラストやライトノベルの表紙のような一枚絵は描くことができるようになったのですが、本来の目的だった地図を描けるようにはなりませんでした(笑)。

 

 

――なるほど(笑)。しかしキャラクターや一枚絵の技術が身に付いたのであれば、いずれライトノベルのイラストを担当する機会も訪れるかもしれないですね。

 

お声がかかったら、やってみたいなと思っています。もっと実力が伴ってきたら挑戦したいですね(笑)。

 

 

――ちなみに、サエトミユウ先生はライトノベルや漫画、アニメなどのエンタメコンテンツにはどの程度触れてこられたのでしょうか。

 

小説を書き始めてからは時間が取れず、ほとんど触れられていませんが、書き始める前は様々な漫画を読んでいました。当時は主に少年漫画、特にジャンプ系を読んでいましたね。私が描くキャラクターの発想は、好きだったキャラクターから来ていることが多いんです。自分の好きなタイプのキャラクターを、読者も好きになってくれると嬉しいなと思いながら書いています。

 

 

――これまで読んできた中で好きな作品やキャラクターがいればぜひ。

 

王道ですが、『ドラゴンボール』の初期のストーリーが本当に好きなんですよ。悟空とブルマが出会ってドラゴンボールを探す旅に出る――私の創作の根幹はここにあるような気がします。あと、私のファンの方はご存じかもしれませんが『攻殻機動隊』の大ファンなんです。デビュー作でオマージュするくらい大好きで、作中に登場する思考戦車・フチコマのフィギュアも持っています。キャラクターは『NARUTO -ナルト-』のはたけカカシや『呪術廻戦』の五条悟がお気に入りで、陰のある教師ポジションを好きになりがちです。

 

 

――ありがとうございます。あらためて、サエトミユウ先生は2020年に『オールラウンダーズ!!』で作家デビューされていますよね。この5年の作家活動で印象に残っているエピソードはありますか。

 

やはり、最初に『城塞幼女シルヴィア』を出したハガネ文庫さんが、刊行1ヶ月後に無期休刊が決まったことですね(笑)。当時、ハガネ文庫の担当編集さんから電話がかかってきまして、「続刊の話かな?」と期待しながら電話に出たのですが、「すいません」から休刊の説明をされまして(笑)。「これ以上の衝撃は今後ないだろうな」と思うくらいに強烈な出来事でした。

 

 

――むしろ多くの作家さんが経験したことのない出来事だと思うので、ある意味で貴重な経験だったかもしれませんね(笑)。そもそも『城塞幼女シルヴィア』が書籍化に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 

『城塞幼女シルヴィア』は、デビュー後にWEBでの批判的なコメントで心が折れかけていた私が、カクヨムサポーターズパスポートでファンの言葉に励まされ心機一転、コンテストでの受賞を目指して書き上げた作品の一つでした。その後、アルファポリスさんの「第16回ファンタジー小説大賞」で奨励賞をいただくことができたのですが、刊行に至ることはできなかったんです。そんなタイミングで、ハガネ文庫さんから書籍化の打診の連絡をいただきました。実はハガネ文庫さん以外からもお声はかかっていたのですが、当時の担当編集さんがとにかく熱い方で、その熱のある打診に心を動かされ、出版することを決めました。

 

 

――そうしてハガネ文庫から刊行したものの休刊になってしまい、あらためてGCノベルズからお声がかかったと。

 

そうですね。ハガネ文庫さんの休刊が決まった際、当時の担当編集さんが会社と交渉してくださったので、早めに出版権を引き上げることができたんです。そして、ここからどうしようかなと思っていた時に、GCノベルズさんから書籍化の打診をいただきました。最初は「詐欺なんじゃないか……」と疑って、住所や電話番号を検索してしまうくらい驚きでしたね(笑)。本物だと確信した後は、あまりの嬉しさで舞い上がっていました。

 

 

――ありがとうございます。それではあらためて、再出発に至るまでに紆余曲折あった『城塞幼女シルヴィア~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~』について、どんな物語か教えていただけますでしょうか。

 

本作は、傷ついた人々がそれぞれの傷を抱えながらも前を向き、ひとつの場所に集まって互いに支え合っていく物語です。主人公のシルヴィアは七歳の公爵令嬢ですが、両親に放置されて育ち、生き延びるため「魔物を倒せば魔力が得られる」スキルと「生活魔術」を授かります。親からはそのスキルと魔術を「役立たず」と見なされ、廃墟となった城塞へ追いやられることになるのですが、シルヴィアはそれを「タダで城塞がもらえた!」と喜ぶんです(笑)。そして、城塞に向かう旅の途中で、仲間に裏切られ人間不信に陥っていた青年エドワードと、劣悪な環境から逃げ出し追手に怯えていた少女ジーナに出会い、二人を部下として迎え入れ、本格的な物語が幕を開ける、といった始まりになっています。

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

※シルヴィアは城塞を目指す旅の途中でエドワードとジーナに出会う

 

 

――本作は再書籍化にあたって大幅なブラッシュアップを行ったと伺いました。改稿ではどんなことが大変でしたか。

 

すべてが大変でした。ハガネ文庫版はWEB版にシルヴィア視点を足した形で改稿作業を行いましたが、GCノベルズ版では全体の地の文をシルヴィア視点のものに改稿しています。当初の設定では、シルヴィアは「無表情・無感情・心が動かない石のような子」だったので、WEB版ではエドワードやジーナの視点を中心に執筆していたんです。一方で読者の皆さんが「シルヴィア視点が見たい」と言ってくださっていたこともあり、今回のGCノベルズ版で実現させることになりました。無感情なキャラクターの視点で感情を描かなきゃいけないのが本当に苦しくて、あまりの大変さに泣きながら執筆していました(笑)。

 

 

――本文全体の視点を大きく変えるとなると、読者から見える物語の景色もすごく変化しますよね。

 

そうですね。なので、ハガネ文庫版と比べると読み味がだいぶ違うと思います。WEB版やハガネ文庫版を読んだことのある人がGCノベルズ版を読んだ時に「ここ違うじゃん」とならないか不安ですが、「これが完全版です!」と自分に言い聞かせながら完成させたので、ぜひ多くの人に読んでいただきたいです。

 

 

――続いて本作の着想についても教えてください。

 

きっかけは、『アンティークハント』という3Dリノベーションゲームを遊んでいる時に、廃墟の屋敷が魔法のように綺麗になっていく様子を見て、「これ面白いな」と感じたことでした。そこから「廃墟の城塞を幼女が再生していく話」へと発展していき、生活魔術も「綺麗にすることが生活だから」というシンプルな発想から生まれました。一方でシルヴィアが使う契約や支配といった要素は、物語を進めていく中で「このままだと、後で母親にひっくり返されるリスクがあるかもしれない……」と気づいて、必然的に出てきたものになります。また、本作は周囲のキャラクターたちの心や反応も書きたいという思いから、群像劇のようなスタイルで書くという挑戦もしています。メインキャラクターたちの背景や心情がわかるストーリーを描いた上で、ひとつの場所に集まったシルヴィアたちの物語をスタートさせていきました。

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

※シルヴィアの「生活魔術」によって廃墟の城塞が綺麗になっていく

 

 

――ありがとうございます。では、そんな群像劇を彩るメインキャラクターについても紹介をお願いします。

 

主人公のシルヴィアはドライな独舌家で、身内とそれ以外の区別がはっきりしている子です。公爵家で放置され続けた結果、ドライな部分が自然とシルヴィアの中で築かれていきました。一方、身内に対して見せる優しさや責任感は、公爵家でシルヴィアがお世話をしていた家畜たちと過ごした時間のなかで生まれたものですね。家畜たちと触れ合う機会がなかったら、もっとヤバい子になっていたと思います。

 

シルヴィア

※「生活魔術」を駆使する城塞の主・シルヴィア

 

シルヴィアの護衛騎士となるエドワードは、信じていた仲間に裏切られたことで、人間不信になっていたキャラクターです。シルヴィアと出会った当初は、頃合いをみて別れるつもりだったのですが、根の部分がお人好しなので彼女に懐かれた結果突き放せなくなってしまいました(笑)。ちなみに、このエドワードが最初にお話ししたはたけカカシや五条悟のような教師ポジションの設定から生まれたキャラクターですね。

 

エドワード

※元近衛騎士でシルヴィアの護衛騎士となるエドワード

 

侍女のジーナは本作における美少女枠です。ラノベにはやっぱり美少女キャラクターが必要じゃないですか(笑)。なので、薄幸美少女を意識したキャラクターを入れようと考えたんですね。ただ、私は不幸な時に王子様が助けてくれるのを待つタイプが好きではないので、自分で考えて動くことができ、現状を打破しようとする心意気のある子として描きました。

 

ジーナ

※元服飾職人でシルヴィアの侍女となるジーナ

 

神官のカロージェロは、作者に業を背負わされたキャラクターです(笑)。物語に嫌われ役が必要だと思い、過去作で人気が出た美形のヒール役と同じようなタイプで考えました。エドワードとは喧嘩仲間として描きたかったのですが、ヒールすぎて読者から予想以上に嫌われてしまったのは計算外でしたね(笑)。実際は、不幸な生い立ちで心挫けながらも町の住民を大切に思い、人の罪が見えるがゆえに自分を犠牲にしても誰かを救う、という考えを持つ優しい青年です。

 

カロージェロ

※城塞都市の副神官長であるカロージェロ

 

 

――本作は2026年1月に第2巻の刊行も予定されていますよね。せっかくなので、第2巻に登場する注目のキャラクターもご紹介をいただければ。

 

第2巻からの新キャラクターとなると、印象的なのはブリージダとべッファですかね。ブリージダは隣国の侯爵令嬢で、シルヴィアの家庭教師となるキャラクターです。元々は悪役令嬢キャラとしてシルヴィアをいじめさせ退場させるつもりだったんですが、きっとエドワードに排除されてしまうだろうなと考え、可愛いものが大好きなキャラクターに変化させました。WEB版では既に「お笑い枠」になっているイケイケなキャラクターなんですよ(笑)。べッファはシルヴィアたちの元にやってきた間諜で、準レギュラーになる予定はなかったのに、勝手にシルヴィアの狂信者枠として存在感を増したキャラクターになります。ふたりが登場する第2巻も楽しみにしていただけたらなと思います。

 

ブリージダ

 

ベッファ

※ブリージダとべッファは第2巻からの登場する注目のキャラクター

 

 

――ありがとうございます。サエトミユウ先生は本作を含め、幼女の主×青年従者の組み合わせの作品を執筆されることが多いですよね。この組み合わせの面白い点やこだわりのポイントがあればお聞かせください。

 

主人公が幼女なのは、単なる私の趣味です(笑)。それはそれとして、実はこれまでの作品の主人公は、シルヴィアを含めて、昔飼っていた猫がモデルになっています。だからこそ、猫が飼い主を振り回すように「幼くて自由なふるまいをするキャラクター」として描くことが多いんです。青年従者が一緒にいるのは、幼女なら大人を振り回しても許されるだろうと思っているからですね。本作でも、エドワードにわがままを言うシルヴィアの姿は、やっぱり可愛くて微笑ましい一幕になっているんじゃないでしょうか。

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

※本作のエドワードも幼きシルヴィアのわがままに振り回されていく

 

 

――次に、本作のイラストについてもお聞きかせください。本作はハガネ文庫版から引き続き、ハレのちハレタ先生が担当しています。お気に入りのイラストについて教えてください。

 

ハレのちハレタ先生のイラストはどれも素敵なんですが、一番のお気に入りはシルヴィアの虚ろな目が印象的な口絵でしょうか。このイラストは元々ハガネ文庫版のカバーイラストだったものですが、背景の細かい描き込み具合がものすごく好きなんですよね。当時、「表紙買いしました!」という報告もいただいて、本当に感動した覚えがある一枚です。ハガネ文庫版のイラストは、すべてGCノベルズ版にも収録されているのであらためてチェックしていただけたらなと。描き下ろしイラストの中では、シルヴィアとジーナが寝ているイラストがお気に入りですね。「幼女にはネグリジェとドロワースが至高」という性癖をぶちまけ、描いていただいた一枚になります(笑)。

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

※サエトミユウ先生がお気に入りだと語るイラスト

 

 

――イラストも見どころだと思いますが、他にも注目してほしい点があれば教えてください。

 

物語自体に触れるべきなのでしょうが、やっぱり私はハレのちハレタ先生のイラストを一番に推したいです(笑)。場面場面で挿絵が追加されているので、どんなイラストが追加されているのか、注目してほしいですね。あとは、ハガネ文庫版を読んでいる人も楽しめるように、シルヴィア視点を頑張って書いたので、「シルヴィアはこんなこと考えていたんだ」という彼女の心情の変化に注目して読んでいただきたいです。

 

城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~

エドワードを信頼するシルヴィアの口癖は「エドワードはてんさいです」

 

 

――今後の野望や目標があれば教えてください。

 

本当に頑張って書いたので、売れてほしいなと強く思っています。実際、売れなかったらどうしようとドキドキしていますね。GCノベルズの担当編集さんはSNSでものすごく宣伝してくださっていて、本当に感謝しています。

 

 

――宣伝の一環として、Xでも応援企画が行われていますよね。「#おかえりシルヴィア」を使った様々なコメントが呟かれていて、あらためて本作は読者から愛されているなと感じました。

 

ありがとうございます。本作はハガネ文庫版の頃から、ラノベインフルエンサーや読書家の方々に紹介していただいていまして、本当にありがたい限りです。今回の応援企画でも、「#おかえりシルヴィア」で呟いてくださる方々の投稿には一つ一つ目を通していますし、土下座する勢いで感謝しています(笑)。

 

おかえりシルヴィア

※「#おかえりシルヴィア」で投稿されたファンからのコメント

 

 

――最後に、本作を応援しているファンの方や新たに興味を持った方へ一言お願いします。

 

いつも応援ありがとうございます。旧作では様々な事情でご心配をおかけしましたが、GCノベルズさんに拾っていただき、無事再出発できました。WEB版では、「主人公はエドワードじゃない?」と言われるような内容になっていたんですけど、GCノベルズ版はタイトル通りシルヴィアがメインとなっております。改稿も頑張りましたし、素晴らしいイラストもたくさん収録されているので、ぜひお手に取って読んでいただければと願っております。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

つよかわ幼女と溺愛従者たちの心温まるリノベーションファンタジーを綴るサエトミユウ先生にお話をうかがいしました。大幅にブラッシュアップされたストーリーと描き下ろしイラストで、これまでのファンの方も、初めて本作を手に取った方も楽しめること間違いなしの本作。再始動した『城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~』は必読です!

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集部・三上/鈴木>

 

©サエトミユウ/マイクロマガジン社 イラスト:ハレのちハレタ

kiji

[関連サイト]

『城塞幼女シルヴィア』公式SNS

GCノベルズ公式サイト

 

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