独占インタビュー「ラノベの素」 子子子子 子子子先生『魔術破りのリベンジ・マギア』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は6月1日にHJ文庫より『魔術破りのリベンジ・マギア』が発売となる子子子子 子子子先生です。第10回HJ文庫大賞にて「大賞」を同作で受賞し、満を持してデビューされます。「大賞」受賞作の気になる内容はもちろん、物語に詰め込んだこだわりなど、お話をお聞きしました。

【あらすじ】

二十世紀初頭――めざましい科学技術の発展の裏で、人類は確固たる魔術文明を築き上げていた。世界のパワーバランスすら左右する“魔術師”を育成する機関「セイレム魔女学園」。そこで起きた怪事件解決のため、凄腕術士・土御門晴栄(つちみかど はるな)が米国の地に立つ! 「あらゆる状況を想定し戦術を千変万化させていく――これが、陰陽師の戦い方だ」北欧神話・死霊術・吸血鬼、様々な魔術体系を東洋魔術でブッ飛ばせ! ハイエンド魔術バトルファンタジー、ここに開幕!!

――第10回HJ文庫大賞「大賞」受賞おめでとうございます。本日はよろしくお願いします。

ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。

――それでは早速ですが、自己紹介をお願いします。

読みづらいと評判のペンネームですが、子を4つでねこじし、子を3つでこねこ、あわせて子子子子 子子子(ねこじし こねこ)と申します。出身は秘境群馬で、群馬生まれの群馬育ちの新人作家です。第10回HJ文庫大賞にて「大賞」を受賞させていただき、受賞作を改題して『魔術破りのリベンジ・マギア』にてデビューさせていただきます。小説を書き始めたのはだいたい3万年くらい――

――不老不死、現る……!

ああああ、噛みましたすいません! 今のはなかったことにしてください、3年前です、3万年前じゃないです!(笑)。そんなに長く生きてないです!

――失礼しました、では続きをお願いします(笑)。

小説を書き始めたのは3年程前で、受賞作は投稿生活2年目の最後、通算6作目でした。また小説ではないのですが、放送中のTVアニメ『王室教師ハイネ』の予告脚本なども担当させていただいております。好きなものはラーメンで、群馬から遠征する時は美味しいラーメン屋さんに足しげく通うようにしています。ただ、地図を見ても方向音痴を発揮してしまう人間なので、全国の美味しいラーメン屋さんが、みんな駅近にならないかなと常々思ってます。一本路地に入っちゃうと迷うので。他には資料収集も好きですし、ライトノベルやアニメ、漫画をはじめとしたサブカルチャー全般も好きですね。本作もかなりいろんな作品に影響を受けているので、自分と同じものを好きな人が本書を読んだら、どんな作品に影響を受けているのかわかるかもしれません(笑)。

――ありがとうございます。ちなみに苦手なものは何かありますか。

苦手なことと言いますか、リアルラックが不足していると思うんですよ。マジで足りてないんです。少し具体的に言うとレアリティが低いといいますか。知人はバンバン高いレアリティをひけらかしているのに、自分だけレアリティが低いといいますかなんというか。運の秘訣を聞きたいといいますか、さらに具体的に言うと――。

――○チャとか○連とか聞こえてきそうな感じで闇が深いので、次の話題に移りましょう。ちなみに小説を書こうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

小説を書こうと思った以前に務めていた会社が少々ブラックでして、当時はこのまま漠然と生き続けていくのかなと思っていた時期があったんですね。一方でSNSから見える光景がとても眩しくて。世の中には働きながらイラストを描いたり小説を書いたり、自分と同じ社会人なのに作品作りと両立させている人達を見ていて、素直に凄いなと思っていたんです。自分の置かれている状況と比較しても本当に羨ましくて、それならいっそやりたいことをやって楽しんでみようと思ったのがきっかけだったと思います。小説の執筆も、最初は限られた人達にしか書けないコンテンツで、すごく崇高なことだと思ってたんですけど、やらないまま憧れだけを抱いていても何も始まらないと思い、書き始めました。そうして1本書きあげた段階で、続けていけそうだということと、磨いていけそうだということを感じて、本格的に執筆するようになりました。

――子子子子先生が小説を執筆し始めた頃は、ちょうどWEB小説も大きな盛り上がりを見せ始めていた時期だったと思います。そちらへの興味はいかがでしたか。

知ってはいましたが、私自身ライトノベルというプラットフォームでたくさんの作品を読んできていたので、WEB小説のノウハウを一から勉強するよりは、慣れ親しんでいるところで戦った方が可能性は高いのではないかという思いが強かったです。なので、投稿生活の間は、万遍なく締切の近い新人賞に応募をしていました。

――新人賞への応募にも関わりのある子子子子先生のペンネームですが、読みづらいと評判というお話もありました。由来はなにかあるのでしょうか。

由来といいますか、決めたきっかけはいくつかありますね。ひとつは新人賞の選考結果発表の一覧から見つけやすいペンネームがいいなと思ったことですね。もうひとつは、人生で1度だけ表紙買いならぬ作家の名前買いをした作品があるんです。この影響がかなり大きいことは間違いないです。

――ちなみにどなたの作品だったんですか。

ご存知の方も多いと思いますが、日日日(あきら)先生の作品でした。日が3つ並んでいて、「なんだろう」と思わず本を手に取りました。そこで作者の名前の読み方を初めて知ったんです。そうしてページを少し捲ってみて、よし買おうと。珍しいペンネームがきっかけで、作品を手に取ってもらえる機会が増えたら、面白いだろうなと感じたんです。たとえ名前が読めなくても記憶には残るのかなと。他には幽霊苗字と言われている子子子子(ねこじし)と子子子(こねこ)を組み合わせただとか、当時飼っていた猫が7匹いただとか、そんな理由も少しばかり混じっていますね。自分としてはとてもしっくりきているんですけど、他の作家さんからは名前が読めないとたくさんのツッコミをいただいています(笑)。

――読みは難しいですが、記憶には残るペンネームだと思います。そんな子子子子先生は見事「大賞」を受賞したわけですが、受賞連絡が来た時の感想を教えてください。

HJ文庫さんでは、受賞候補にあがった時点で「受賞の意志はありますか?」というご連絡をいただけるんですが、連絡をいただいた時は「受賞できたらいいなぁ」という程度の感想でした。落ちる可能性もあったわけで、過度な期待はしないでおこうと。そうしてしばらくして、あらためてご連絡をいただいた時に「大賞の受賞です」と言われて、「はい?」みたいな(笑)。「本当にいいんですか?」みたいなやり取りをしていたように思います(笑)。直後は現実味があまりなかったですが、とても嬉しかったことは覚えています。

――それでは栄えある「大賞」を受賞した本作、『魔術破りのリベンジ・マギア』について、どんな物語なのか教えてください。

本作はあらすじにも書かれているのですが、二十世紀初頭をモデルにした物語です。産業革命によって、科学技術の発展が目覚ましい一方で、英国の魔術結社「ゴールデンドーン」をはじめとした、オカルトも隆盛を極めた時代ですね。科学とオカルトが同居する魅力的な時代を背景としています。物語は一人の陰陽師が、西洋にある魔女を育成する学校へと赴き、連続失踪事件の犯人を捜すために暗躍する物語です。いかに極東の魔術師である陰陽師が、西洋における魔術師や魔女を相手取って、戦いを繰り広げるのかに注目してもらいたいですね。

※発売にあたり公開されているPVにも注目だ

――私も本作を読ませていただいたのですが、非常に王道なストーリーだなと感じました。『レンタルマギカ』や『とある魔術の禁書目録』、『東京レイヴンズ』などの作品も頭の片隅を過ぎったのは印象的でした。

今挙げていただいた作品はいずれも大好きです。その中でも特に私は陰陽師が好きで、陰陽師を中心に描いている『東京レイヴンズ』の印象は強く残っていますし、そこから陰陽師が本格的に西洋魔術と戦う姿を思い描いたりもしました。ある意味、この作品の構図の根っこになっているとも言えるかもしれません。

――様々な魔術体系が登場するのも印象的で、参考文献も多岐にわたっていますよね。執筆の上で楽しかったことや苦労したことはありましたか。

苦労した、というよりは難しいと感じた点なのですが、どこまで現実をフィクションに落とし込むのか、という点ですね。資料もたくさん手に取った上で、資料に書いてあることをそのまま書いてもそれはただのうんちくでしかないわけじゃないですか。そこをどうエンタメ化するのか、とても大変でした。ただ、難しく大変でもあったんですが、逆に楽しい点であったとも思っています。作中に登場する術のひとつをとってみても、アレンジをしたり実際のものと変更している点は多いですし、術の詠唱が個人的に大好きで、格好良い詠唱を見つけたら、どうにか盛り込めないものかと常に試行錯誤をしていたりもしましたので(笑)。やっぱり重要なのは、自分がいかに楽しく書けるかという点だったと思います。

――また、本作はタイトルも投稿時から大きく改題されていますよね。改題にあたってはタイトルにこだわりがあったようですがこの点はいかがですか。

そうですね。タイトルは新人賞投稿時の『陰険女装陰陽師と奴隷少女の事件簿』から大きく変更しました。むしろ投稿時はだいぶ切羽詰っていまして、今思うとなんでこんなタイトルにしてしまったのかと頭を捻るばかりです(笑)。改題後の『魔術破りのリベンジ・マギア』は、キーワードを分解したり、使えるワードを選出したり、いろいろ考えた結果です。個人的には良いタイトルになったなと思ってます。ある意味、作品の改稿以上に大変だったかもしれません(笑)。

――さて、そんな本作のお気に入りのキャラクターや見どころのシーンを教えてください。

まずシーンですが、やはりラスバトルの周辺は個人的に気に入っています。物語を通してキャラクターが積み上げてきたもの、そして成長が最も顕著に表れるシーンとして仕上がったかなと。自分でも書いていて感慨深いものがありましたし、派手な術をたくさん使うので、そういった描写も楽しかったですね。お気に入りのキャラクターはやはり、本作の主人公でもある土御門晴栄だと思います。我が強くて利己的なんですけど、人間味もしっかり加わっていて。特に主人公でありながら、ヒロインのような見せ方も意識して執筆していました。お前それヒロインのシーンだろう、みたいな展開も多々盛り込まれています(笑)。あとは好きに動かせるキャラクターという点では、学園長のマリー、式神の狐狼丸、幼なじみの鴨女が書いていて楽しかったですね。

――主人公の晴栄は学園に潜入するにあたって女装をするわけですが、最初から最後まで女装を貫き通したキャラクターは珍しいなと感じました(笑)。

晴栄は根が真面目なんだと思います。学園にいる以上は、おそらく家にいようとスカートを履き続けるんじゃないかと、自分でも思っているので。学園に赴く前には鴨女に女子力(?)を叩き込まれて、そうするべきである、という強い思い込みというか、努力があるんだと思います。それがスカートを履き続けるという結果に繋がっているのかなと(笑)。一部にバレたとしてもバラすんじゃなく、どう隠ぺいするかに力を入れて任務を遂行するタイプでしたね。

※本作の主人公である土御門晴栄。女装姿にも注目が集まる!?

――主人公を描く時に、子子子子先生も女装をして描くなどの面白いエピソードはないんでしょうか。

してないですよ、何言ってるんですか!(笑)。

――そうですか、すみません(笑)。さて、晴栄をはじめ、ご自身のキャラクターがイラスト化されました。初めて目にした時はいかがでしたか。

語彙が不足しているだけかもしれませんが、本当にもう「凄いな」っていう感想しかないんですよ(笑)。新人賞への投稿生活においては、キャラクターを文章上で描写するわけですが、実際にイラストになると感動もひとしおです。おぼろげだったイメージが、一気に鮮明になった感じで。たぶん、あの感覚は一生忘れないんじゃないでしょうか。イラスト化されて、こういうことだったのか、と。伊吹のつ先生には、指定以外の細かなところまで素晴らしくデザインしていただいて、感謝の言葉しかありません。

――ありがとうございます。さて、よいお話の後で恐縮なのですが、作中では「呪い(まじない)」という呪いの術も登場します。子子子子先生も呪ってやりたいほどの恨みがましい出来事などは最近ありましたか。

なんて物騒な質問を(笑)。呪いについては作中でも言及していますが、「人を呪わば穴二つ」という言葉を知っている以上、何かあっても誰かを呪いたくなったりはしないんですけども……。たまに、ごくたまにですが、レアリティの高い人達が目に入ってしまうと、その戒めを忘れてしまいそうになります(笑)。

――本当にガ○ャへの課金がお好きなんですね(笑)。

今年のお正月は護摩札を買って本作のヒットも祈願してきました。これも神社への課金みたいな?

――神様に謝った方がいい罰の当たりそうな発言が飛び出しちゃいましたよ!(笑)。

正五九参りでついこの間も参拝に行ってきましたので、私の願いは多分届きます! 届いて!(笑)。

――しかしながら、レアリティの高いご利益を得るには、相応の課金が必要なのでは……。

叶ったら追加課金します! 信仰が報われますように!

――こんな罰当たりな会話になってしまうとは思いもよらず。このあたりでやめておきましょう(笑)。

そうですね(笑)。

――それではあらためて、『魔術破りのリベンジ・マギア』の見どころや注目してほしい点を教えてください。

本作は魔術のバトルを推している作品なので、ぜひ注目してもらいたいです。他の魔術を忌避する傾向の強い西洋魔術に対して、晴栄は積み上げてきた努力と古今東西の魔術に精通する豊富な知識を武器に戦います。相手の術式を見誤ることなく看破して立ち回る、緊張感のある戦いの中で、それでも晴栄ならやってくれるんじゃないか、そんな期待をもって読んでもらえる作品だと思います。なので、魔術やバトルといった要素を中心に描かれる作品が面白いと感じる方々にはハマってもらえるんじゃないかなと。あとは格好良い詠唱が大好きな人にもオススメです。ここは妥協せず、凄くこだわりました。極論になりますけど、詠唱シーンだけでも読んでください的な(笑)。特設サイト公開されている前日譚もぜひチェックしてみてください。

※作品の見どころとなるド派手な魔術バトルは必見!

――今後の野望や目標などがあれば教えてください。

目標はシリーズ化です。5巻、10巻と続けていけたらと思います。続編については現在執筆をしていまして、早ければ秋に差し掛かるかどうかといった季節に皆さまへお届けすることができるかもしれません。世界観も広がり続けて、各国の魔術体系もさらに見えてくるようになりますので、ぜひご期待をいただけたらと思います。あとは重版してくれたらなと(笑)。野望としてはホビージャパンさんが凄くメディアミックスに力を入れて動かれているので、自分もそれに加われたらと思っています。

――最後に、本作を読んだ方、これから読もうと思っている方へ一言お願いします。

今作が、新人としてのデビュー作ではありますが、ひとつ自信を持って言えるのは、自分の「好き」をこれでもかというほど詰め込んだ作品だということです。自分が楽しいと思ったものを読者さんにも楽しいと思ってもらいたい。魔術という言葉にぐっとくる方々にも読んでいただいて、楽しさを共有できたらいいなと思います。まだまだ駆け出しの新人ですが、「大賞」というもっとも栄誉ある賞をいただいた作品です。できることを尽くして最善の状態で送り届けることができたと思っているので、よろしくお願いします。いろんな人の手に渡ってくれることを願っています。

――本日はありがとうございました。

<了>

第10回HJ文庫大賞「大賞」を受賞された子子子子 子子子先生にお話をうかがいました。魔術、詠唱、戦闘と、極東魔術と西洋魔術の激突を描いた注目の受賞作『魔術破りのリベンジ・マギア』は必読です!

『魔術破りのリベンジ・マギア』発売記念プレゼント企画!

子子子子 子子子先生の直筆サイン入りのサイン本を抽選で3名の方にプレゼントいたします。

応募方法はとても簡単。応募対象期間となる2017年5月30日(火)~6月2日(金)の期間中にTwitterで本インタビュー記事をツイート、またはリツイートするだけ。抽選で3名様に「ラノベニュースオンラインのツイッターアカウント(@lnnews)」よりDMにてご連絡させていただきます。応募を希望される方は、ラノベニュースオンラインのツイッターアカウントのフォローをお願いします

※当選発表は当選連絡のDMにて代えさせて頂きます。

※当選者の方へはプレゼント郵送先の住所や氏名等の情報をお伺いいたします。

※プレゼントの発送はHJ文庫編集部様より実施するため、頂戴した情報はHJ文庫編集部様へ共有させていただきます。

©子子子子 子子子/ホビージャパン イラスト:伊吹のつ

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『魔術破りのリベンジ・マギア』特設サイト

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