独占インタビュー「ラノベの素」 折口良乃先生『モンスター娘のお医者さん』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年3月25日にダッシュエックス文庫より『モンスター娘のお医者さん』第0巻が発売された折口良乃先生です。魔族と人間が垣根を超えて共存する街「リンド・ヴルム」を舞台に、診療所を営む少年・グレンの診察奮闘記を描く本作。TVアニメ化も決定している作品の内容やキャラクター、前日譚となる第0巻の物語はもちろん、モンスター娘に対するこだわりなど、様々にお話をお聞きしました。

 

 

モンスター娘のお医者さん0

 

 

【あらすじ】

アカデミー学生時代、若き日のグレンは、立派な医師になるべく研鑽を積む毎日を送っていた。先輩であるサーフェとスライム娘のライムによって設立された研究室は、患者の生徒が連日相談に舞い込むほど好調。グレンはアカデミーで有名になっていく。ケルベロス娘を超絶技巧ブラッシングで悶えさせたり、ドール娘の敏感な吊り糸をフェザータッチで刺激したり、カイコガ娘には子作りを迫られたり。真面目に診察しているだけなのに、卑猥な雰囲気になってしまう悪癖はこのころから健在で――。いかにしてグレンは診療所を開くに至ったか。グレンとサーフェのアカデミー時代を描いた”モン娘診察奮闘記”公式スピンオフ!!

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

神奈川出身の作家、折口良乃です。作家歴は10年ちょっとくらいで、大学時代に電撃文庫からの拾い上げでデビューしました。デビュー以降はほぼ作家一本で今に至る感じです。好きなものは動物や生き物。動物園や水族館をめぐるのも好きです。あとはお酒でしょうか(笑)。苦手なものは人混みと、生き物ではあるんですが幼虫が苦手です。カブトムシの幼虫は大丈夫なんですけど、蝶の幼虫などはちょっと……。

 

 

――折口先生の作風からも生き物は大好きなんだろうなと感じていました(笑)。何か飼われたりはされているんですか。

 

病気で全滅してしまって今はいないんですが、以前に熱帯魚を飼っていました。熱帯魚を飼育していた水槽が現在は空なので、何か飼えたらいいなとは思っています。動物全般が好きではあるんですけど、特に爬虫類やフクロウも大好きで、巡り合せがあればヒョウモントカゲモドキをお迎えしたいなと思ってます。ペット用の小さなヤモリなんですが、気に入った個体がいればすぐにでも飼いたいですね。

 

 

――また、お酒好きの折口先生は作家間の飲み会の幹事をよく務められているそうですね。

 

これは自分で幹事をした方が早いっていう事例があまりにも多すぎた結果でもあるんですけどね(笑)。私の周りだけかもしれないんですが、みんなあまり幹事をやりたくないみたいで。私もお酒が好きですし、呼ばれれば喜んで行くんですけど、呼ばれることが少ないので……それならいっそ自分でやろうってなりますよね。そうして声をかけると、あっという間に10人くらい集まっちゃう。ホント「こいつら!(笑)」って思いますよね。

 

 

――飲み会の席ではどんなお話をされることが多いんですか。

 

話の内容はケースバイケースですけど、自分が幹事を務める際は、10年くらい作家業をやっている中堅の作家さんから1~2年くらいの作家さんをごちゃまぜにして声をかけることが多いです。長く作家をやっている方は新人の方にいろんなアドバイスをしますね。「締め切りは破ってもいいんですか?」っていう質問に対して、「破る時はせめて事前に編集さんに相談しましょうね」とか(笑)。逆に中堅の作家陣は最近の流行を新人さんに聞いたりしています。業界に長くいる人ほどネット小説の傾向に疎かったりもする。いろんな経歴の作家さんがいらっしゃるので、本当にいろんな話をしますね。

 

 

――そういった交流の場所を作るという意味でも、業界において貴重な旗振り役ということですね(笑)。

 

そうなんですかね?(笑)。私も呼ばれる側に終始して飲み会に参加したいんですけど。どなたか主催して私も呼んでください!

 

 

――それではあらためて第7巻までを振り返りながら『モンスター娘のお医者さん』はどんな物語なのか教えてください。

 

本作はタイトルそのままのお話ですね。モンスター娘のお医者さんであるグレンが、助手のサーフェンティットと一緒に「リンド・ヴルム」の街医者として様々な種族の診療を行う物語です。毎章、いろんな種族を診察して治療をするわけですが、なぜかZトン先生のイラストの効果もあってか、いかがわしい雰囲気になることが多いです(笑)。ほんの少し、いやらしく見えてしまうところもありますが、あくまで医療行為なので、グレンは頑張ってお仕事をこなしているんです。また、グレンを取り巻くモンスター娘たちとの恋愛模様も注目のポイントで、第7巻に至るまでそれなりに進展しているので、ラブコメ側での落としどころもぼちぼち探していかないとなと思うところです。

 

モン医者 口絵

※作中には様々なモンスター娘が登場する

 

 

――読者からの声として「あらゆる種族の平和的共存」を、本作を通して感じている方も多いようですね。

 

そうなんですよね。人間と魔族の共存をテーマとして読み取られる方も多くて、私自身も驚いているところです。私としては色濃くそういった「差別なき世界」を描いたつもりはなくて、人間のお医者さんが人外の娘を診察するにあたって、両者が仲良くしている舞台である必要性があり、それを自然に感じてもらえる世界観を表現したつもりだったんです。そうして舞台となった差別なく住みよい街「リンド・ヴルム」を通して、「差別はよくない」というメッセージを読み取られる読者の方が増え、非常に驚きました。テーマとしては副産物に近いものではあるんですが、裏を返せばそれだけ魅力的な舞台や世界をお届けすることができたということだと思っているので、作家が意図して読者に伝えたいんだってテーマを込めなくても、副次的に読み取ってもらえたら、それはそれで素晴らしいことだなって思います。

 

モン医者2 口絵

※様々な種族が登場するからこそ、副次的なテーマが誕生した

 

 

――後ほども詳しくお聞きするのですが、本作はアニメ放送も行われます。自身を取り巻く現状についてどのように感じているのか教えてください。

 

アニメ『SHIROBAKO』をいち視聴者として見ていた頃から、アニメには関わる方が非常にたくさんいるんだなっていうことは、知識としては知っていたつもりでした。そうしていざ自分がアニメに関わる立場になってみると、スタッフさんの数も含め、把握しきれない程にたくさんの方が関わっているということを実感することになりましたよね。口を出せる範囲では意見を言わせていただいていますが、お任せすべきところが本当にたくさんあって、自分の作品なんですけど、自分の手から離れていくイメージが強かったです。『モンスター娘のお医者さん』という作品が、いろんな人の手に渡って広がっていく現状にただただ驚いています。

 

 

――ありがとうございます。アニメについてはまた後ほどお聞かせください。あらためて本作の着想をお聞かせください。

 

『モンスター娘のお医者さん』の原型には、2012年に電撃文庫から刊行していた『シスターサキュバスは懺悔しない』が大きく影響しています。当時はそこまで「モン娘」に振り切っていたわけではかったのですが、読者の方から寄せられる人外への熱量が凄まじく、人外ジャンルへの期待も大きかったと記憶しています。なので、『モンスター娘のお医者さん』ではそこを突き詰めてやろうという思いがありました。物語構造としてもモン娘を掘り下げるお悩み相談をフォーマットとして考えていて、身体の構造にアプローチしていく方がいいだろうと考えた結果、医療であれば自分が書こうと思っている物語を描けるのではないかなと考えました。

 

 

――モンスター娘と医療の組み合わせは、架空の生物である「モンスター娘」へのディテールをかなり細かなものとして描写するきっかけとなり、リアリティを生み出しましたよね。

 

そう読み取っていただけているのであればありがたいですね。モンスター娘という架空の存在の身体構造や、それに伴う文化に触れていくことで、モン娘はもちろん、リンド・ヴルムという街のディテールも地に足がついたと思います。また、ちょっとお色気な要素も加えられますし、コメディとしても物語の舵取りができるという点で、自分でも驚くくらいアイデアとギミックが噛み合ったという印象ですね。

 

モン医者 挿絵

モン医者 挿絵

※診察を通した細かなディテールの描写がモン娘のリアリティに繋がっている

 

 

――ディテールへの気遣いなども含め、お話を聞いていると折口先生はいつ頃からモンスター娘に興味を持ち始めたのか、という点も大変気になります。

 

なるほど(笑)。興味を持ち始めたタイミングをはっきりと覚えているわけではありませんが、『シスターサキュバスは懺悔しない』は中学時代の頃のアイデアがもとになっているんです。中学生時代からデュラハン娘をヒロインとして作りたいという思いも強く、振り返るとその頃から片鱗はありましたね(笑)。高校生の時には、電撃文庫の作品で小河正岳先生の『お留守バンシー』という作品を読んで、人間以外のヒロインでもいいんだっていう思いに駆られたんですよね。『お留守バンシー』のヒロインは妖精のバンシーで、デュラハンなどといったキャラクターも登場していました。その時はすでに人外娘に興味津々だったんですね、振り返ると。

 

 

――なるほど。そうして作家となり、モンスター娘の登場する作品を手掛け始めたと。

 

そうなんですけど、実はプロの作家になってからの方が、モン娘に対する世間と自分との解釈のギャップに悩まされることになりました。私自身、作家になってから「首の取れるヒロインってどうですか」っていうお話をずっと編集者に提案し続けてきたんですけど、まったくOKが出なくて「嘘でしょ!?」って思いました(笑)。こんなに魅力的なのにどうしてOKが出ないのかと。みんな萌えるでしょうよと。結果としてそのあたりの認識は、人外に対する解釈の違いもあって、あんまりうまくいかなかったんですよね。プロの作家になって私の中にあった常識がぐらつき始めたんですよ。人間じゃなきゃダメなのかって。ネコミミやイヌミミがついているだけのキャラクターは、私個人としてはモン娘とは呼べず、人外かもしれないけどモン娘ではないという認識でしたし、もっとインパクトかつ個性的なキャラクターで勝負したかったんですよね。

 

 

――かなり悩まれていた時期もあったんですね。しかしその流れがとある作品の登場で変化したと。

 

そうです。その流れを一蹴してくれたのが、オカヤド先生の漫画『モンスター娘のいる日常』でした。アニメ化もされて、モン娘のジャンルで「萌え」をやってもいいんだというお墨付きを陰ながらいただけたというか(笑)。私の中でぐらついていた常識があらためて大丈夫だったんだと教えてもらった気がしました。その辺は本当に感謝としか言い表せません。

 

 

――さて、そんなモン娘好きの折口先生にぜひお聞きしたいのが、モン娘ってどこからがモン娘でどこからが違うのか、素人ではなかなか分かりづらいと思うんです。先ほど、ネコミミは人外かもしれないけど、モン娘とは呼べないというお話もあったわけでして。

 

先に言っておきますが、これムチャクチャ難しい質問ですからね(笑)。これは複雑な線引きもあるし守備範囲によってもかなり異なるので、明確に提示することはできませんが、あくまで私個人の見解という前提で解説しようと思います。まず、顔は人間というか人型であることが重要です。顔が獣状態だと、それはモン娘というよりはケモナーという単語からも知られているであろうケモノの領域です。まず、モン娘とケモノは違うんですよ。これを一緒にすると、戦争に発展することも少なくありません。

 

 

――戦争に……なるほど……。

 

なので、私は最初に「顔は人間で」って言うんです。もちろん、目尻にウロコがあるだとか、水かきみたいな耳が生えているだとかは許容範囲内です。あくまで顔のパーツのお話ですね。イメージとしてはバストアップまでが人間で、残りのパーツは基本的な骨格が人間から外れている方がよりモン娘っぽいです。ラミアやケンタウロス、マーメイドあたりはイメージしやすいんじゃないでしょうか。例外としてはひとつ目のサイクロプスや、決まった形を持たないスライムなどです。そのあたりも私の中ではモン娘という扱いです。何度も言いますけど、本当にこれは難しいお話で、絶対が存在しない世界という点だけは念頭に置いていただければと思います。

 

 

――人外というジャンルの中で棲み分けがあるわけですね。

 

そうですね。モン娘やケモノも人外ジャンルのひとつでしかありません。ただ面白いのは、特にモン娘とケモノに限ってのお話になりますが、この二つの要素を一緒くたにするパターンってほとんどないんですよ。もちろん例外こそありますけど、そこも面白い点なのかなって思います。

 

 

――非常にこだわりの深い世界だということがわかりました。そんな中で、本作を通して描く折口先生のモン娘へのこだわりについてもお聞かせください。

 

モン娘は架空の生き物ですけど、やっぱりリアリティを持たせたいので、元となっている動物の生態をかなり参考にします。ラミアを描く上では蛇の特徴を様々に調べますし、第7巻ではヴァンパイアも登場しましたよね。ヴァンパイアって血を吸う以外の見た目は結構人間じゃないですか。でも本作で登場させるのであれば、もっと実在の生物とかけあわせて、ブラッシュアップしたいと考えました。そこで蝙蝠の特性を持たせることになりました。果実好きであることや、実際のコウモリでも起こり得る翼の膜が破れる、などの特徴を持たせたことで、ファンタジー世界で登場するアンデッドのような存在にはなりませんでした。モン娘には「実際に存在してそう感」を演出していけたらいいなと思っていて、そう考えるとこの娘達は普段どんな生活をしているんだろうとか、どんな文化を持っているんだろうとか、すごく考える必要があるし、考えれば考えるほどリアリティが生まれるんです。実際にいそうだなって読者の方に思わせられたら、私の勝ちかなと思って書いています。そうして様々な種族の文化を掘り下げていくことで、舞台であるリンド・ヴルムの街の世界観自体も掘り下げられ、魅力的な街という印象に繋がっているんだと思います。

 

 

――もうひとつお聞きしたいのが、モデルとしている動物や種族と、実際のキャラクターの性格にはどの程度の因果関係を持たせようと考えているのでしょうか。

 

性格は種族の持っている性質から傾向はあります。ただ、キャラクターはひとりひとり性格が違いますし、嫉妬しないラミア種族がいてもいいだろうと思います。私は嫉妬する方が好きなのでサーフェは嫉妬するんですけど(笑)。性格の土台に種族の存在はありますが、テンプレになりすぎても面白くないし、外れすぎても面白くない。非常にさじ加減は難しいなと思います。種族と個人の個性を切り離しすぎないようにとも考えているので、どこからどこまでが種族の特性なのかも言い切れません。それでも種族として、ラミアであればラミアの身体からは逃れられないわけで、そこはキャラクターの個性を考える際にベースにはなっていますね。でも自分の生まれとしての種族を嫌っているキャラクターはほとんどいません。もちろん、いてもいいとは思いますが。たとえばアラーニャは自分の母親を好いてはいないですけど、アラクネとして生まれたことを嫌っているわけではありません。メメも自分のことは嫌いですけど、サイクロプスであることを嫌っているわけではない。人間として生まれて、成長して性格が形成されていく上でも、人間であることそのものからは逃れられないわけですから、同じようにみんな種族の特性と個々の性格は繋がっているようで切り離せないし、みんな同じじゃないけど、傾向は似ているよねっていう演出ができたら一番いいと思います。何事もバランスですね(笑)。

 

モン医者 挿絵

※キャラクターの性格の在り様も本作においては見どころのひとつ

 

 

――それでは本作に登場する主要なキャラクターについて教えてください。

 

グレンは「リンド・ヴルム」で診療所を開業している17歳の少年です。人間という単一の種族を診る医者になることも大変なのに、何十種類といる種族の病気を診ることを生業としており、そういった知識や技術を習得している天才少年ですね。ただ、年齢と経験から壁にぶつかって悩んだりすることも多いキャラクターで、与えられた試練を考え抜いて乗り越えていくキャラクターでもあります。それと作者の立場として、モン娘たちとグレンが仲良くしているのは大変腹立たしいので、常々とんでもない目にあわせてやろうという思いは持っています(笑)。

 

グレン・リトバイト

※人間であり医師でもあるグレン(キャラクターデザインより)

 

サーフェはラミアという種族のヒロインであり、薬師でもあります。医師のグレンと上下関係ができてしまわないよう、調薬担当として対等な関係であってほしいと考えています。才能だけを見たらグレンには及ばないのですが、グレンにはなくてはならないヒロインですよね。年上であり、グレンを見守る優しいお姉さんであり、お酌をしてくれるヒロイン……のつもりが、グレンがあまりお酒を飲まないので、お酌すると見せかけて自分ばかりが飲んでいる大酒飲み、かつ嫉妬深いキャラクターになってしまいました(笑)。

 

サーフェンティット

※ラミア種族のサーフェ(キャラクターデザインより)

 

ティサリアはケンタウロスという種族のヒロインです。本作考案時のメインヒロインでもありました(笑)。闘技場の医療を舞台にした物語で、サーフェがライバル的な存在で登場する、といった物語でしたが、様々な勘案の結果、ヒロインの一人という形に落ち着きました。また、髪型でも紆余曲折あったキャラクターで、当初はお嬢様風の縦ロールをイメージしていたんですが、「テンプレすぎかも?」と、Zトン先生からの助言もあり、髪はまとめた髪型になりました。Zトン先生が言うならしょうがない(笑)。

 

ティサリア・スキュテイアー

※ケンタウロス種族のティサリア(キャラクターデザインより)

 

アラーニャはアラクネという種族のヒロインです。当初サーフェがメインヒロインで、ティサリアをライバルという位置づけにする予定だったのですが、ティサリアが元メインヒロインというポジションもあって、思った以上にこの2人が張り合わなかったんですよね。なので、いかにも恋路に横やりをいれそうなキャラクターを考えようと思って誕生したのがアラーニャでした。そうして物語が進むにあたって彼女も掘り下げられ、結果としてグレンの婚約者の3人目になっているんですよね。

 

アラーニャ

※アラクネ種族のアラーニャ(キャラクターデザインより)

 

 

――当初アラーニャは婚約者候補ではなかったと?

 

いや、うーん、正直に言うとですね、アラーニャは私がアラクネを登場させたくて生まれたキャラクターでもあるんですよ(笑)。はんなり京都弁で腹黒、みたいな癖のあるキャラクターが好きで、可愛いアラクネ娘を出したいなと。なので、登場時はそこまで未来のことを考えてはいなかったんですが、第5巻の表紙を見ていただければわかるように、本当に美人なんですよ。掘り下げずにはいられませんでした。

 

 

――ここまでイラストを担当されているZトン先生のお話もたくさん出てきました。あらためてイラストに対する想いや、お気に入りのイラストなどを教えてください。

 

まず、Zトン先生のお仕事には感謝しかありません。非常に高いデザイン力はもちろんですし、第1巻の時からお仕事がとにかく早いんです。Zトン先生には本文の執筆前にプロットをお渡ししているんですけど、キャラデザが本文を書き終える前にあがってくることも少なくありません。通常は初稿があがってからというパターンが多いと思うんですけど、デザインが先にあがってきた場合に本文へと逆輸入して執筆する場合もあります。デザインが先か、本文が先かはケースバイケースですが、修正が間に合う段階でデザインをあげていただくことが圧倒的に多いので、私も無理なく逆輸入できるんですよ(笑)。Zトン先生のデザインは参考になる点が本当に多くて、本作はずっとこんな感じで作ってきています。本当いつもありがとうございます!

 

モン医者 口絵

 

お気に入りのイラストですが、アラーニャはデザインから良かったですし、先も少し触れましたが第5巻の表紙ですよね。この表紙に関しては、読者の方から読む前と読んだ後とで表紙の印象が変化するという感想をいただいたんです。読む前だとアラーニャが自分で化粧をしている一枚なんですけど、読み終わってからだとこの化粧をしているシーンの意味がよくわかる、というもので。私自身はそこまで意図して指定はしていなかったですし、Zトン先生もどこまで狙っていたのかはわからないままで、機会があれば直接聞いてみたいですね(笑)。それとアルルーナの挿絵も気に入っていて、治療という行為ではあるんですけど、不健全さも垣間見え、という最高のイラストなので注目していただきたいです(笑)。あれは治療ですので!

 

モン医者5 カバー

※アラーニャのデザインは折口先生も絶賛!5巻表紙の狙いも気になるところ

 

 

――そして本作は2018年より鉄巻とーます先生の作画によるコミカライズもスタートしており、反響を呼んでいますよね。

 

本当にありがたい限りです。ストーリー構成としては原作をなぞって描いていただいているんですが、かなり細かいところまで拾っていただいているという印象があります。原作では地の文として書かれているシーンも漫画で再現していただいていますし、物語上ではあまり絡まないちょっとしたモブキャラもオリジナルにデザインして登場させてくださっています。原作をベースとしつつオリジナルデザインも入ったすごいコミカライズだと思っているので、細かいところまでしっかりと読んでいただきたいです。私も毎回楽しみに拝見させていただいているので、鉄巻先生にもZトン先生にも足を向けて眠れないです。ありがとうございます。

 

モンスター娘のお医者さん 漫画

⇒ 漫画版はこちら

 

 

――漫画のお話ときたら次はアニメのお話ということで、アニメに関してもう少しお聞かせいただければと思います。いよいよ2020年夏より待望のTVアニメ放送がスタートしますね。

 

私も本当に楽しみです。アニメに関してはいろんな方が頑張って作ってくださっているので、期待していただいていいと思います。モン娘の動きとか、他の作品ではなかなか登場しないようなキャラクターが動いたり喋ったりすることになります。私もまだ完成したものを見ているわけではありませんが、読者のみなさんと一緒に放映を楽しみにしています。

 

モンスター娘のお医者さん キービジュアル

※アニメは2020年7月より放送開始!

 

 

――アニメ製作に関しては、折口先生はどのような関わり方をされているのでしょうか。

 

私は脚本会議に出席させていただいたり、アフレコにお邪魔したりが主ですね。みなさん、アニメを作るプロの方々なので、私から言うことはほとんどありません。唯一私の大事な仕事なのかなと思っているのが、モン娘への理解をみなさんに深めていただくために「こだわり」をお伝えさせていただいている点でしょうか。モン娘は決して広いジャンルではないですし、関係者全員がモン娘好きというわけでもありません。だからこそ、そういった方々に向けて、私やモン娘好きのメーカープロデューサーさんから、細かな点をお伝えさせていただいている感じです。

 

 

 

――製作関係者に「こだわり」を伝えた具体的なエピソードがあればぜひ。

 

「こだわり」という点では、マーメイド種族のルララというキャラクターがいるのですが、彼女には半透明の「瞬膜」があるんです。それを閉じることで眼球を保護しつつ、水中での視界を確保するんですが、アニメでもしっかりと描写をしていただきたいとお伝えしました。とはいえ話は「瞬膜って何?」というところから始まります(笑)。そのあたりを説明させていただきながら、モン娘好きにとってサービスシーンであることを伝えさせていただきました。ウンウンと頷いていたのがメーカープロデューサーさんたった一人でしたが、そういった理解を広めることも原作者として力を入れております。見どころですのでぜひ!

 

モン医者PV04

※アニメPVでも瞬膜はしっかりと再現されている

 

 

――アニメも非常に楽しみですね。そして発売となった『モンスター娘のお医者さん』第0巻ですが、グレンやサーフェのアカデミー時代の物語なんですよね。見どころや注目してもらいたいキャラクターを教えてください。

 

第0巻は本編の前日譚ということで、これまであまり書いてこなかったアカデミー時代の物語になります。昔の話が主になるのですが、本編でもちょっと登場していたライムというキャラクターが登場します。なぜ前日譚を語る上でライムが登場するのか、あらすじを読んで驚いた方もいるんじゃないでしょうか。ライムはどう物語にかかわるのか、そして前日譚でもケルベロス娘やカイコガ娘などいろんなキャラクターが登場、診察されるので、注目していただければと思います。物語終盤は本作らしからぬ、少しビター目なテイストだったりしますので、そういう部分も楽しみにしていただければと思いますし、学生時代のグレンやサーフェ、そしてライムをはじめとしたキャラクターはソロピップB先生にキャラクター原案を担当していただいています。挿絵を担当されているZトン先生とのお二人のコラボも楽しんでいただければと思います。

 

モン医者0 口絵

※グレンやサーフェが学生だった頃の物語にも注目

 

 

――あわせて本編側の先のお話も少しお聞きできればと思うのですが、第7巻の終盤ではグレンの里帰りに関するお話やちょっとした不穏な空気も描写されていたと思います。今後発売を予定している第8巻の内容はどんな物語となりそうでしょうか。

 

とりあえず第8巻では里帰りのエピソードを予定しています。しっかりとグレンの故郷の話を書いていけたらなと思いますね。あとはアルルーナも登場させられたらいいなと(笑)。

 

 

――今後の目標や野望があれば教えてください。

 

目標は「全ラノベのヒロインの半数がモン娘になる世界」ですね(笑)。アニメがまず、その足掛かりになってくれたらいいなと。これをきっかけにモン娘ヒロインが増えてくれれば、いち消費者としても楽しめるので、そういう方向でぜひ。ラブコメブームのあとはモン娘ブームですかね。昨今のアニメなどを見ていても、モン娘のブームが若干きている感じもありますからね。人気が出たらいいなと思います。

 

 

――それでは最後にファンのみなさんへ一言お願いします。

 

モン娘ジャンルの隆盛が私の野望でもありますので、新しく作品に入っていただいた方はモン娘の可愛さに溺れていただければと思います。そしてモン娘の可愛さは知っているよという方は、本作を読んで周りに広めて、どんどん世界をモン娘化していくのにご助力いただけたらなと思います。アニメ、コミック、原作とあますところなく楽しんでいただいて、女の子が人外娘じゃないと満足できない状態になっていただいて、一緒に深みにはまっていきましょう!(笑)。

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

人間と魔族が共存する街「リンド・ヴルム」で様々な種族の診察を行う街医者奮闘記を綴る折口良乃先生にお話をうかがいました。登場する多種多様なモンスター娘の魅力はもちろん、グレンの診療所へと患者が駆け込んで始まるドラマも魅力の本作。待望のTVアニメ放送も楽しみな『モンスター娘のお医者さん』は必読です!

 

 

©折口良乃/集英社 イラスト:Zトン

©折口良乃・Zトン/集英社・リンドヴルム医師会

kiji

[関連サイト]

TVアニメ『モンスター娘のお医者さん』公式サイト

TVアニメ『モンスター娘のお医者さん』公式Twitter

『モンスター娘のお医者さん』原作特設サイト

ダッシュエックス文庫公式サイト

 

※このページにはアフィリエイトリンクが使用されています
NO IMAGE
モンスター娘のお医者さん 0 (ダッシュエックス文庫)
NO IMAGE
モンスター娘のお医者さん 7 (ダッシュエックス文庫)

ランキング

ラノベユーザーレビュー

お知らせ