【レビュー】『テイマー養成学校』伝説のおとぎ話の後継者に選ばれた少年と使い魔の成長譚

500年前の魔王と勇者の想いを、少年と従魔が受け継ぐテイムファンタジー。

 

テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件』は、遥か昔のおとぎ話と化した魔王と勇者の伝説を、一人の少年と使い魔が受け継いで始まる壮大なファンタジーなのだろう。世界には様々な魔王と勇者の逸話が残っている。しかし500年後の世界において、魔王は「悪」の象徴として語り継がれ、真実は闇に葬られたままだ。戦いを経て魔王と勇者が想いを寄せ合うようになったこと、二人が魔物と人間の共存を願っていたこと、その願いが「悪魔」と呼ばれる存在に断たれたこと。世界で語られることのなくなった物語として描かれる魔王と勇者のお話は、もはやもうひとつの本編と言っても差し支えない。なぜなら魔王と勇者の二人の存在は、この物語の主人公であるアルスにとっても大きな意味を持つことになるからだ。

 

 

テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件

 

 

主人公のアルスは世界でトップクラスのテイマー養成学校に合格できるだけの能力を持ちながら、生涯の相棒となるパートナーの卵を選ぶ日に寝坊をしてしまう。普段は優秀でも肝心なところでポカをしてしまうタイプ、そんな側面も垣間見える。なのに、ただ残念なだけの男の子という印象を抱かせないのは、彼の持つひたむきさと“超”がつくほどのお人好しな性格ゆえだろう。人助けに躊躇しない姿勢は彼の本質であると思うし、人助けの結果、自分がどんなに割を食うことになっても、後悔するよりはマシだと笑って言い切れる心持ちは見習いたい。しかし簡単に見習える類のものではない、という感想が多くの読者の印象でもあるだろう。だからこそ不運に見舞われるアルスが、相応に報われて欲しいと読み手としては願わずにはいられなくなる。

 

しかし無常かな。最後に到着したアルスの前には“優秀な従魔”の代名詞である色つき卵はひとつもなく、余分に準備された白い卵だけ。それでもここに至るまでの自分の行動を後悔することなく、ひとつの卵を彼は選ぶ。チャンスとは目に見える形でやってくるとは限らない。そんな言葉と共に、彼は壮大な物語へと一歩を踏み出すことになるのだ。

 

アルスとトカゲの従魔・クラウドの学園生活は決して順風満帆ではない。クラウドは致命的とも言える欠陥を抱え、その生命さえも脅かす状況を突き付けられてしまうことになる。クラウドが生まれてくるまでの期待、注いだ魔力と愛情。出会った喜び。生涯の相棒の絶体絶命のピンチに奔走するアルスの姿は、テイマーと使い魔を題材とした物語だからこその大きな見せ場でもある。そしてこのピンチから、アルスとクラウドは魔王と勇者のおとぎ話を継ぐことになるのだが、そのあたりはぜひ本編で読んでもらいたい。

 

作品の見どころは、アルスとクラウドの成長する姿と、従魔とテイマーの信頼関係、愛情表現にあると言っていい。真っ直ぐで折れない心を持つアルスが、学園で少しずつ自らの地位を確立させていき、そんなアルスを手助けしてくれる幼なじみや、魔王と勇者の伝説にも大きく関係する“勇者”の能力を継ぐとされる同級生の第三王女、この2人のヒロインにも注目してほしいところだ。もう一人ヒロインがいる? Aランクのあの冒険者をヒロインとするかどうかは、読者の判断に委ねたいところである。

 

本作の世界は非常に複雑で歪んでいる点も多い。だからこそ、アルスの愚直で真っ直ぐな、曲がらない姿勢や考え方が眩しく映るのだろう。この物語は、テイマーと従魔の物語だけにとどまらず、人の世界で差別の中に生きる亜人と人間の関係や、人とは決別した魔物たちとの関係性にも大きな影響を及ぼしていくことになるはずだ。魔王と勇者が夢見た世界を目指す、小さいながらも大きな一歩を踏み出す一人と一匹の物語をぜひ読んでみてほしい。

 

 

©かなりつ・片桐/宝島社

kiji

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『テイマー養成学校』特設サイト

宝島社(このライトノベルがすごい!文庫)公式サイト

 

テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件

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