【特集】画集『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ぽんかん⑧ARTWORKS。』発売記念インタビュー 渡航先生×ぽんかん⑧先生

2021年4月20日に発売された画集『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ぽんかん⑧ARTWORKS。』、そして短編集となる『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』第14.5巻の発売を記念して、物語を手掛けてこられた渡航先生と、同じくイラストを手掛けてこられたぽんかん⑧先生のお二人にお話を伺いました。なお、本インタビューの一部は画集『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ぽんかん⑧ARTWORKS。』にも収録されたものとなっており、画集と本記事をあわせて読むことで、インタビューの全編を読むことができます。

※フリーペーパー「ラノベNEWSオフライン2021年4月号」には渡航先生のインタビューも掲載されています。

 

 

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ぽんかん⑧ARTWORKS。

 

 

・渡航(インタビュー内は「渡航」)

ガガガ文庫にて『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』を刊行。3度にわたるアニメ化を経ており、シリーズ累計は1,000万部を突破している。

 

・ぽんかん⑧(インタビュー内は「ぽん」)

ガガガ文庫にて『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』のイラストを担当。10年にわたって渡先生と『俺ガイル』にてタッグを組んでいる。

 

 

■対談全概要

・『俺ガイル』シリーズの開始からの10年を振り返る(WEB未公開内容を画集に収録・一部共通)

・ぽんかん⑧先生「自身のイラストはより現実世界を意識するように」(WEB未公開内容を画集に収録)

・ぽんかん⑧先生が渡航先生に聞いてみたかったこと(WEB公開)

・渡航先生「一色いろはのキャラクターデザインこそ神の御業」(画集収録)

・八幡も雪乃も結衣も、あるべき成長をしただけである(WEB公開)

・10年間を共に駆け抜けてきたシリーズファンのみなさんに向けてメッセージ(WEB公開)

 

 

――画集と短編集の発売おめでとうございます。あらためて本日はよろしくお願いします。

 

渡航ぽん:よろしくお願いします。

 

 

――それではぽんかん⑧先生、まずは自己紹介をお願いします。(渡航先生の自己紹介は過去記事にて

 

ぽん:はじめまして、ぽんかん⑧と申します。出身は京都府で、大学在学時の就職活動のタイミングだったと思うんですが、なんとなく社会に溶け込める気がせず、絵を描き始めて今に至ります。好きなことは食べることで、苦手なものは整理整頓。食べ物だとホタルイカの目玉とか苦手ですね(笑)。

 

 

――大学在学時に絵を描き始めたとのことですが、イラストレーターとしての活動はゼロベースからのスタートだったのでしょうか。

 

ぽん:そうですね。そういえば昔、絵が得意だったなというのを思い出しまして。キャラクターでは難しいと思いますけど、背景であれば見ながら描けるなと思いました。

渡航:見ながら描けるとかそんなわけない。神の発言ですよ(笑)。

ぽん:いやいや、そんなことないですって(笑)。そうして絵を描き始めてから2年くらい背景を描いていたんですけど、キャラクターも描き始めるようになり、Pixivにイラストを投稿し始めた頃ですかね。編集さんにお声を掛けていただきました。

 

 

■『俺ガイル』シリーズの開始からの10年を振り返る

 

――2011年3月に刊行を開始し、2019年11月に原作小説の本編が完結しました。完結当時の想いをお聞かせください。

 

渡航:僕はもう「これでようやく解放される!」としか思ってなかったです(笑)。これで自由になれるぞ、みたいな。結局自由にはなれてないですけど。

ぽん:自分としては『俺ガイル』の彼らは実際のこの世界に存在しているかのように思っているんですよ。何が正しくて何が間違っていたのかは誰にもわからないと思うんです。だからこそ間違って抗って、それでも彼らなりの本物を必死に探して見つけていく。最後まで彼らなりの葛藤が息づいていて、完結しても彼らはどこかで日常を生きていくんだろうなって今でも感じています。終わった、完結したという実感はまったくありませんでしたね。現実の人生においても、今この瞬間は過程であって、完結がどのタイミングなのかは誰にもわからないじゃないですか。彼らも過程を経ただけで、自分たちと同じように続いていく。そんな気持ちになる作品だったと感じました。彼らのその後の物語が書かれるのかは渡先生次第ですけど(笑)。

渡航:やばい。もっとちゃんとしたこと言えばよかった(笑)。

ぽん:――(笑)。なので、続編が出るとお聞きした時は、「やったー!」という気持ちでいっぱいでしたよね。彼らの人生がまだ見られるんだって。

渡航:『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている-新-』をBlu-rayの特典で書いてるんですけど、あらためて思ったのが、この物語はまだ続くぞっていうことだったんですよね。書き始めたら、彼らはまだ全然動くし、彼らの日常を再び覗き見ることになるぞと(笑)。

 

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。14

※原作小説の本編は2019年11月に完結した

 

 

――「-新-」は八幡たちの進級後の物語ですが、主要キャラクターはそのまま残っていますからね。

 

渡航:そうですね(笑)。彼らの物語を高2からスタートしたのは、高校生のリアリティラインとして、高3になったら受験があったり、面倒くさいことをやってる暇はないだろうという思いもあったんです。一番わかりやすく彼らが「純」な状態の、心や身体の動きを描き出せるのが高2なんだろうなと。ただ、いざ続きを書いてみると、彼らが受験や人生の岐路を目の前にした時、何を思うんだろうなって僕自身も気になり始めてきちゃってる。だから書こうと思えば書けちゃうし、書けるかどうかはみなさんの応援次第なんです。という圧をかけておきますね(笑)。

ぽん:もう「-新-」で書き始めてますけどね(笑)。

渡航:そうなんですよね。ぽんかん⑧さんの協力をいただきながら書いちゃっている以上は、どこかで続きをやらないとなって。

ぽん:「-新-」の制作自体も自分は急に聞きましたから(笑)。

渡航:これはちゃんと伝えていない編集が全部悪いに違いない(笑)。

ぽん:――(笑)。

 

 

――2013年には初のアニメ化となる第1期アニメが放送されました。アニメ化決定時はどんなお気持ちでしたか。

 

渡航:正直な話をすると、アニメの決定に向けて話が詰まってきた頃が本当に忙しく、記憶がほとんどないんですよ。それこそ全然寝ていなくて、駅のホームから落ちかけたという記憶しかない(笑)。人間歩きながら寝るって本当にあるんだなって。とにかく忙殺されていた記憶ばかりですね。

ぽん:めちゃくちゃ嬉しかったのは覚えているんですけど、自分もあまり覚えてないんですよね。なんでだろう(笑)。

渡航:もちろん僕もアニメが決まったことは嬉しかったです。嬉しかったけど、アニメはアニメで大変だっていうことがわかりきっていたので、また地獄が始まるんだと気合を入れ直していたと思います。特に『俺ガイル』がアニメ向きじゃないことはよくわかっていたので、どう作品らしさを描けばいいのか、当時の編集長や担当編集にもキレ散らかすっていう(笑)。ずっとどこかに対してキレ散らかしていた気がします(笑)。

ぽん:――(笑)。自分は作品がアニメ化するということは、アニメから原作に入ってこられるファンがいるということを強く意識しました。アニメから入られた方に「原作のイラストはなんか違う」と思われたらよくないと思ったので、アニメと原作とで絵柄をある程度すり合わせなきゃいけないなって。個人的にはそれが大変でしたね。

 

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 第1期キービジュアル

※2013年にTVアニメ第1期が放送

 

 

――その後2015年にはアニメ第2期、2020年にはアニメ第3期が放送されました。

 

渡航:2015年のアニメ第2期では、僕がもういろいろキレ散らか……ではなく、口を出す作家であるということが知れ渡っていたので、周囲の方がすごく優しかったです(笑)。本当にたくさんお話を聞いていただいたなって思います。そういう意味ではアニメ側との信頼関係を築いた状態からスタートできたので、困ったことはほとんどなかったですね。ただ、アニメ第2期は原作の完結手前までやったじゃないですか。僕の内心は、これ原作は完結するのかなって気が気じゃなかったんですよ。物語のラストは決めてこそいましたけど、これで終われるのかってずっと思いながらアニメに関わっていました。第2期は今までの蓄積と先の不安との板挟みだったので精神的に大変でしたね。アニメ第3期は原作が完結していたので、非常に気持ちが楽でした(笑)。

ぽん:渡先生はアニメを作られる時にがっつり関わられていく立場だったと思うんですが、自分はできあがったものに対してアジャストしていく立場だったので、第2期や第3期に関してはアニメスタッフのみなさんを信頼して投げようっていう感じでしたね。そういう意味でも、自分は肩の力をいい意味で抜くことができていたとは思います。

 

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続 キービジュアルやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完 キービジュアル2

※2015年に第2期、2020年には第3期のアニメ放送が行われました

 

 

――そしてシリーズ累計も1,000万部の大台を突破しました。

 

渡航:本当にありがたい限りです。自分の中では5万部や10万部の壁を一番気にしていて、当時は自分で計算するくらいに数字を見ていましたけど、それも懐かしいです。途中から数字を気にすることもほとんどなくなりました。ただ、13巻の後に900万部を超えて、これは1,000万部までいかないと終われないなって意識したくらいですかね。気づいたら普通に達成していたので、具体的に何かをしたわけではないんですけど(笑)。

ぽん:自分もそこまで数字は気にしていなくて、本当にとんでもないことになっている、くらいの感想しかありませんでしたね(笑)。

渡航:具体的に「このタイミング」というのは覚えてないんですけど、もう売れてるなって感じであまり気にならなくなりましたよね(笑)。

ぽん:本当におっしゃる通りです(笑)。

 

 

■ぽんかん⑧先生「自身のイラストはより現実世界を意識するように」

 

――『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』はイラストレーターとしてのぽんかん⑧先生にどのような影響を与えましたか。

 

ぽん:やっぱり絵がめちゃくちゃ変わりましたよね(笑)。

渡航:――(笑)。

ぽん:大きな影響という意味では、自分の絵の方向性を変えてくれた作品だと思っています。イラストを描き始めた頃はファンタジー系やそれ以外の様々なジャンルのイラストもそれなりに描いていたんですけど、原作6巻以降は特にキャラクターが実際に存在しているよう描くことへウェイトをシフトしていました。そうすると、自然とイラストに割くべき必要なリソースが、現実世界のものへ変化していくわけで、『俺ガイル』をはじめとした現実世界に近い作品の世界観から遠くなる、ファンタジー系のお仕事はお断りさせていただくようになったんですよね。

渡航:そうだったんですね。

ぽん:はい。そこからは現実世界に集中してイラストを落とし込んでいきたかったので、ファンタジー系の非現実的な想像上の世界観に、自分のイラストのリソースを回す余裕がなくなったんです。自分の現在のイラストも現実世界に近いものが多くて、実際にありそうで、でもなさそうな、そういったポイントをついているイラストが多いのかなと考えていて、その原点を紐解くとやっぱり『俺ガイル』だったんだろうなって思います。

渡航:ファンタジー系のお仕事への未練はありませんでしたか。

ぽん:特にはないですね。今やっていることを活かせるような作品作りを今後もやっていきたいと思っていますので。

渡航:いやあ、ありがたいですね。僕はぽんかん⑧さんのイラストを身近で見てきたひとりとして、常に進化し続けているなと思っていました。作品のカラーやモノクロはもちろんですけど、物語の進行具合とぽんかん⑧さんのイラストのリアリティラインが、一緒に上がっていけたのかなと。お互いにリアリティラインを追求し続けた結果、相乗効果のようなものが生み出されていたと思います。僕もぽんかん⑧さんのイラストでビジュアルイメージが固まっていくと同時に、描写を文字に起こすにあたり、何かワンアイテムを用意して現実っぽさを強くした方がこの作品らしくなるんじゃないかとか、いろんなことを考えるようになりました。それこそ僕自身が絵を描くわけじゃないですけど、シーンを描く上でロケハンにも行きました。そういった意識の変化は、ぽんかん⑧さんのイラストがあったからこそだと思うんですよ。ロケハンの写真をぽんかん⑧さんに共有したりすることはついぞありませんでしたが(笑)。

ぽん:ロケハンに行かれているというお話は聞いていましたけど、写真をもらったことは確かにありませんでしたね(笑)。自分も好き勝手に描いているのでそこはお気になさらず(笑)。

 

 

――シリーズを通して印象的なイラストを教えていただけますか。

 

渡航:僕はまず、第1巻の集合絵。あのイラストは当時の自分に勝利を確信させてくれました(笑)。

ぽん:自分は6巻の表紙ですね。当時の自分が持っていたものをすべて出し切れたのかなって思います。あとはアニメ第1期のBlu-ray&DVD第1巻の雪乃も思い出深いです。アニメの絵柄にアジャストして描くことを強く意識していた中で、手応えがありましたし、等身大パネルになったのもびっくりしました。あとは平塚先生の離任式の集合絵ですね。あのイラストを描いた時は、さすがに『俺ガイル』は本当に完結するんだなって思いました。

渡航:ほかは……8巻の表紙もすごく気に入ってるし、モノクロだと5巻ラストの見開きも印象深いですね。ここは見開きで描いてほしいとお伝えしていたもので、実際に出来上がったイラストを見て「すげえ」と思いました。まるで映画の予告カットみたいで、これは続き見ちゃうだろうって。あとは10.5巻表紙のいろは。学校にいた陽キャ感がすごいし、表紙に仕上げちゃうのもすごい。

ぽん:いろはってすごい描きやすいキャラクターなんですよ。表情が豊かというか、文章でのキャラ付けがとにかくわかりやすかったというのもあります。ポージングとかも悩まずに描けることが多いです。技術的なお話で言うと、いろはの髪と結衣ちゃんの髪は同じ色相なので、光の加減で似たような髪色になっちゃうことが悩みという感じでしょうか。

 

俺ガイル 口絵01

※渡航先生が勝利を確信したという第1巻の口絵

 

俺ガイル 挿絵01

※強く印象に残っているという第5巻ラストの見開きイラスト

 

 

■ぽんかん⑧先生が渡航先生に聞いてみたかったこと

 

――ぽんかん⑧先生はこの機会に渡航先生に聞いてみたいことがあるのだとか。

 

ぽん:はい。とりあえず2つ聞いてみたいことがあります。ひとつは自分の印象なんですが、『俺ガイル』の1巻時点では八幡というちょっとひねくれた王道ではないキャラクターを主人公に置きながらも、彼らの描写やテンポ感はすごくキャッチ―な印象があったんです。ただ2巻以降、物語のテイストや雰囲気が少し変化した印象があったんですけど、そのあたりは何かしらの方向転換があったりしたのかなと気になっていました。

渡航:なるほど。僕としては実は1巻の方がイレギュラーだったという認識なんですよね。

ぽん:え、どういうことですか。

渡航:『俺ガイル』ってもともと暗めのお話で、最初に書いた原稿の印象もすごく暗かったんです。さすがにこのままはマズイので、ちょっとポップなコメディにしましょうかって、モリモリに盛っていた節があって(笑)。そして2巻も頑張って1巻と同じことをやろうと思ったら、2巻のラストがめちゃめちゃビターになってしまった。2巻以降の印象の変化は、お話の雰囲気が盛る前の元に戻っただけとも言えるんです(笑)。自分が結構初対面の時に頑張っちゃうタイプの人間なので、1巻もそれと一緒で頑張りすぎちゃいました(笑)。

ぽん:そうだったんですね。意外なお話で面白かったです。もひとつお聞きしたかったこととして、『俺ガイル』という作品を通じて、読者に願うことって何かあったのかなって。

渡航:読者に対しては、『俺ガイル』を「読んでくれ」、できれば「買ってくれ」と願ってました(笑)。後は褒めてくれですね! そもそも作品として、『俺ガイル』は読者に寄り添うタイプのものではないので、自分はこう思ったけど、どう思うかは君次第だよね、っていう作品なんですよ。こう読んでほしい、こう見てほしいといった読者へのお願いも基本的にはありません。いっそ、「〇〇さんのこの時の気持ちを考えよ」みたいな、現代文のテストだと思って読んでほしいです。あと道徳の授業ですかね(笑)。

ぽん:なるほど、ありがとうございます!

 

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2

※第2巻からの物語のテイストは本来の路線に戻っただけだったという真相も

 

 

■八幡も雪乃も結衣も、あるべき成長をしただけである

 

――物語の始まりと終わりで印象が変化したキャラクターはいますか。

 

ぽん:自分はあまり変化したという感じは受けませんでした。『俺ガイル』のキャラクターはしっかりと生きていて、それぞれいろんな自分が出てくるシーンや変化はあったと思います。ただ、いずれもそのキャラクターらしい延長線上の成長だったと思うんです。だから敢えてこのキャラクターは変わったよねというイメージがないんですよ。

渡航:僕は書いている側なので言いづらいところもあるんですけど、自分としてはそれぞれのキャラクターがもともと持っているパーソナルな部分が、物語の進行にあわせて滲んできたという印象です。それは八幡もそうだし、雪乃も結衣も一緒。そうなる要素が最初からあって、そこには社会的なペルソナもあった。視野が広がるにつれて、今まで見えていなかったものが見えてきたよっていうお話なんです。なので執筆をしていると、「そういえばこいつってこういうやつだったよな」って思うことは多々ありました。

 

 

――物語が長く続くと、いわゆるキャラクターが勝手に動くという現象が起こる可能性もあったと思うんですが、本作ではいかがでしたか。

 

渡航:残念ながらキャラクターは勝手には動いてくれないです(笑)。いつも勝手に動いて、勝手に原稿が出来上がってくれないかとは思ってますけど。『俺ガイル』に関しては特に無縁でしたね。物語の都合上、「こうした方が楽に書けるし盛り上がる」っていうシチュエーションはいくつもあるんですけど、結局行きつくのは「この子たちはそんなことしないでしょう」っていうありきたりな結論なんですよ。

ぽん:やっぱりそうですよね。そのキャラクターらしくないことはやらないですし、ちゃんとそのキャラクターが真剣に悩んで答えを出していく姿が『俺ガイル』らしさだと思うので。

 

 

――あらためて今だから言えるお気に入りのキャラクターを教えてください。

 

ぽん:自分は結衣ちゃんですかね。ちょっと困ったところもあるんですけど、そんな結衣ちゃんだからこそ救われたことが、奉仕部でたくさんあったんじゃないかなって思います。原作の後半ではそれこそ「八幡に結衣ちゃんはもったいないのでは?」と、父親のような気持ちが沸き上がっていました(笑)。

渡航:僕はこういう時、必ず小町と答えるようにしているので(笑)。小町はヒロインじゃない可愛らしさが本当に好きで、登場時はやや幼いイメージもあったと思うんですけど、巻を追うごとにちゃんと成長もしているんですよ。8巻や14巻、アンソロをぜひ読んでほしい。僕も父親の視点……いや、親戚ぐらいの視点で見ています。僕はこれからも『俺ガイル』のみんなを親戚目線でずっと見ていくことになるんだろうなって思っています。彼らの2年後はどうなっているんだろう、それを見てみたい。もっとも、見るためには自分で書かなきゃいけないんですけど(笑)。

ぽん:雪乃については渡先生にとってどんなキャラクターでしたか。

渡航:雪乃はキャラクター性が固まっているがゆえに、表現の許されるレンジが狭いキャラクターでしたね。それが14巻までやってきて、表現のレンジが広がった。ここまで積み重ねてきたものがあるから、今の雪乃ならこんな表情をするよねっていう姿が想像できるようになりました。

ぽん:やっぱりそうですよね。めちゃくちゃわかります。雪乃の表現のレンジが広がったイメージは確実にあって、今の雪乃だったらどんな表情をするんだろうとか、髪型も少し変えてもいいんじゃないかとか、髪型を変えた時のヘアメイクもどうしようだとか、いろいろ想像を膨らませることができるようになりました。服装ひとつ取ってみても、レンジが広がっているという印象を受けますね。

 

俺ガイル 結衣

 

俺ガイル 雪乃

 

 

――『俺ガイル』はまだまだ続いていきますが、次に見据えている野望も教えてください。

 

ぽん:それこそ今、世界では大変な出来事が起こっていて、人々の暮らしが大きく変わっていると思うんです。創作においてもそういった大きな変化に対して順応していくことが大事だと思っていて、こういった困難な状況だからこそ、これまでの日常では生まれなかった考え方、出会い、発想、様々なものが生まれてくるんじゃないかなと思っています。そういった今までになかったはずの要素が絡まりあって、新しいものが生み出せたらと思います。試行錯誤をしながら少しずつ新しいものに向かって進んでいって、それを皆様にお見せすることが野望でしょうか。もちろん、イラストレーター・ぽんかん⑧を育ててくれた『俺ガイル』という作品も大切にしつつ、またワクワクできるものをお届けできたらなと思います。

渡航:今はとりあえず、目の前の仕事をひとつひとつ、一本一本大事にやっていくことですかね。そしてゆくゆくは、『俺ガイル』をずっと待ってくださっている方々に何かをお届けできたらと考えています。ひとまずその前にやらなきゃならないことがたくさんあるので、いつになるかはわからないんですけど、それこそ『俺ガイル』と一生付き合っていただければなと思っています。一年後の八幡たち、二年後の八幡たち、十年後の八幡たち。久しぶりに会う親戚感覚で、読者のみなさんと成長したキャラクター達を引き合わすことができればなと思っています。とりあえずはもう10年。みなさんに何かしらお付き合いをいただけたらというのが野望です。

 

 

――それでは最後に、10年間を共に駆け抜けてきたシリーズファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。

 

ぽん:ただただ「ありがとうございます」とお伝えしたいです。渡先生に付いていくことに必死だった自分ごと応援してくださったみなさまのおかげで、今の自分があると思っています。表にもなかなか出てこず、性別もわからないと言われる霞のような自分なんですけど、ファンだとおっしゃってくださるみなさまに救われています。生きていくために掴んだイラストレーターという道を大切に思えるようになったのも、楽しみに待ってくださっているみなさまの力だと思いますし、本当にありがとうございます。君がいるから俺ガイル!

渡航:ちょっと!ぽんかん⑧さんに取られちゃったよ!(笑)。

ぽん:最後のその先まで、どうぞよろしくお願いします(笑)。

渡航:画集をご覧いただいているみなさんは理解されていると思うんですけど、この10年、僕がぽんかん⑧さんを神として崇め続けた理由がここに詰まっています。これを聖書として未来永劫、大切に持っておいていただけたらと思います。あらためて画集が出るくらい自分たちは長い期間を走り続けてきたんだと実感が湧いています。神であるぽんかん⑧さんのファン第一号として僕はこの場にいるわけですけど、これを読んでいるみなさんも同志だと思っています。これから先も信仰を絶やさずに崇めていこうと思います。神がいるから俺ガイル!

 

 

<了>

 

 

画集『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 ぽんかん⑧ARTWORKS。』が発売された渡航先生とぽんかん⑧先生のお二人にお話をうかがいました。本記事には掲載されていない『俺ガイル』秘話も画集には多数収録されておりますので、本記事とあわせて読んでみてください。短編集となる『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』第14.5巻もガガガ文庫より同時発売!

 

 

<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

 

©渡航ぽんかん⑧/小学館「ガガガ文庫刊」

©渡航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。

©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。続

©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。完

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[関連サイト]

TVアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』公式ホームページ

TVアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』公式Twitter

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』原作特設サイト

ガガガ文庫公式サイト

 

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『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 ぽんかん8 ART WORKS
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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 14.5 (14.5) (ガガガ文庫 わ)

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