ライトノベルニュース総決算2019 年間コミカライズ新連載は300作品目前、ラブコメ作品への注目度が高まった一年
2019年も様々なライトノベルニュースが飛び交う中、年の瀬にはブレイブ文庫刊『チート薬師のスローライフ』のアニメ化企画進行中というビッグなニュースが飛び込んでくるなど、今年も話題に尽きない一年だった。来年4月にレーベル創刊2周年を迎えるブレイブ文庫からのアニメ化は、業界全体を見てもホットかつ驚きのニュースだったに違いない。さて、2019年もライトノベルの市場、業界、界隈を賑わす様々なニュース、そして出来事があった。ラノベニュースオンラインでは、2019年のライトノベルニュース総決算と題して、2019年の出来事や注目のニュースをまとめてお届けする。
■年間刊行点数は昨年より150点増 新作の刊行点数は700点となり増加を牽引
まず2019年を振り返ると、ライトノベルの刊行点数は約2,050点(ラノベニュースオンラインアワードの主だった対象作品より抽出)となった。昨年は約1,900点だったことから、150点近く増加したことになる。増加の要因は後述の新レーベル創刊に伴う新作の増加に起因しており、新作の刊行点数は昨年の約600点から約700点へと増えた。刊行点数増加の背景は2017年に近く、新レーベルの「最後発」はまだまだ見えない状況が続いており、市場競争は激化の一途を辿っている。また、2019年はラブコメジャンルを筆頭に話題は尽きなかった。『友達の妹が俺にだけウザい』の発売前施策からの連続重版。編集者の間では「追い重版」といった言葉も用いられ、その盛り上がりを牽引した。一方で「このライトノベルがすごい!2020」ではラブコメ勢を抑えて『七つの魔剣が支配する』が文庫部門で【総合】【新作】ダブル1位を獲得。単行本部門でも『Unnamed Memory』が1位を獲得し、電撃ファンタジーの強さを示した格好となった。2020年はラブコメにとってもファンタジーにとっても明るい一年になってもらいたいところだ。盛り上がりの一方で『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』や『織田信奈の野望 全国版』の完結、新約編の幕を引いた『新約 とある魔術の禁書目録』(創約編が2020年スタート)など、超人気シリーズも大きな節目を迎えた一年でもあった。昨年との刊行点数を比較してもシリーズ化している作品の堅調さは垣間見えることができるし、新作の一層のシリーズ化も予想される。2020年のライトノベル業界を盛り上げてくれる作品の成長に引き続き期待したい。
■『魔法科高校の劣等生』&『俺ガイル』がシリーズ累計1,000万部を突破
昨年は『ダンまち』と『転スラ』がシリーズ累計1,000万部を突破し、具体的な数字でライトノベルの魅力をあらためて感じさせてくれた。そして今年も去年の2作品に続く作品が登場したことは大変嬉しいニュースと言える。『魔法科高校の劣等生』は原作小説のみで累計1,000万部を突破(関連作品を含むと1,500万部)。2020年には待望となるTVシリーズ第2期の始動も発表されており、ファンはますます目が離せない展開が続いていく。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は全世界累計1,000万部となり、シリーズの完結と共に、アニメ第3期が2020年4月に放送される。どちらの作品も多くのファンを有するビッグコンテンツであることは言うまでもなく、ライトノベルの面白さを証明してくれる2作品と言って差し支えない。来年は『オーバーロード』の新刊も予定されており、次なる1,000万部突破作品の登場が待たれる。
■「最後発」はどこにあるのか。2019年も新レーベルが続々誕生
レーベルの創刊ラッシュはとどまることを知らず、2019年も新たなレーベルがいくつも誕生した。「電撃の新文芸」から始まり、「ドラゴンノベルス」「マグネットマクロリンク」「アークライトノベルス」「LINE文庫エッジ」など作品の刊行元は増え続け、2019年の刊行点数増加の大きな要因となった。刊行点数は依然増え続けており、書店の棚を巡る動きをはじめ、読者からの認知をいかにして勝ち取るかは目下の大きな課題と言って差し支えない。その明暗は早くも表れており、2019年4月に創刊したばかりの「マグネットマクロリンク」は、半年後の11月に刊行休止を発表した。昨年も記した通り、新規参入には洗練した参入戦略が必須となっており、今後の参入を目指している方々には業界が活性化するような戦略を引っ提げて登場していただきたい限りである。なお、今後の新レーベルについては「第5回カクヨムWeb小説コンテスト」で選考に加わっているKADOKAWAの新レーベル編集部などがあり、参入の「最後発」は未だに見えてはいない。
■ラノベ原作のコミカライズは急伸を続け、年間新連載本数は270作品超
2019年もコミカライズの勢いは一切衰えることはなかった。2017年からの3年間で、600本近いコミカライズの新連載は、コミック業界としての大小はあるにせよ、ラノベ側からはまさに「怒涛」という言葉に尽きる。昨年の200作品を遥かに超えた270作品以上の新連載が動き出し、あらゆる漫画媒体でラノベ原作のコミカライズを見ないことの方が少ないくらいである。270作品超の新連載を数えたコミカライズの内訳は、WEB発ライトノベルを原作とした作品が8割強となり、今年のコミカライズはWEB発作品が圧倒的な牽引力をみせた。特に書籍として完結している作品を漫画として復刻する事例も増えており、小説完結後のメディアミックスも今後増える可能性がある。また、新たな施策の一環として見えてきたのは、各新人賞や公募などにおける受賞作のコミカライズである。受賞と漫画化がセットとなっている例も珍しくなくなりつつあり、新人賞受賞作の新たな販促手段としての期待感も強い。全体として女性向け作品のコミカライズも堅調に伸びており、作家陣にとっては来年もメディアミックスのチャンスに溢れる年となりそうだ。
そして2020年のライトノベルを原作としたアニメ化作品は、WEB発作品の勢いが引き続き凄まじいことになりそうである。『Re:ゼロから始める異世界生活』第2クールや、2020年続編始動としている『転生したらスライムだった件』はもちろん、『本好きの下剋上』第2部、『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』、『インフィニット・デンドログラム』、『八男って、それはないでしょう!』、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』、『無職転生~異世界行ったら本気だす~』などそうそうたる顔ぶれが控えている。放送時期が発表されていないものでも『盾の勇者の成り上がり』第2期&第3期、『ありふれた職業で世界最強』第2期、『蜘蛛ですが、なにか?』、『チート薬師のスローライフ』などが2020年内に放送される可能性は十分考えられる。また、『魔術士オーフェンはぐれ旅』、『魔法科高校の劣等生』第2期、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』など楽しみな作品も多く、豊作の一年となりそうだ。劇場版では『ゴブリンスレイヤー GOBLIN’S CROWN』、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なども公開予定となっており、2020年もライトノベルを原作としたアニメ化の波は間違いなく続いていく。
■ラブコメ作品&青春ラブコメ作品への注目度が高まった2019年
『友達の妹が俺にだけウザい』、『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』、『継母の連れ子が元カノだった』、『三角の距離は限りないゼロ』などがシリーズ累計10万部を突破したほか、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』、『千歳くんはラムネ瓶のなか』など話題に事欠かない作品が多かった2019年。ラブコメ作品や青春ラブコメ作品への注目度は間違いなくこの1年で高まったと言っていい。『弱キャラ友崎くん』のアニメ化企画始動も大いなる後押しとなるだろう。
■「LINEノベル」や「ノベルアップ+」始動 収益還元など作家支援の動きも広がる
ストレートエッジの三木一馬氏が統括編集長を務める小説プラットフォーム「LINEノベル」、HJ文庫やHJノベルスを有するホビージャパンの小説投稿WEBサービス「ノベルアップ+」など、今年も新たな小説投稿サイトがいくつも動き出した。狙いの多くは「小説家になろう」や「カクヨム」をはじめ、WEB投稿サイトから誕生するIPの獲得競争がひとつあるわけだが、2019年は投稿サイトの意義や意味が少しずつ変化の兆しを見せ始めた。その際たるものが投げ銭機能や広告収益の分配をはじめとした、作家支援の動きである。「アルファポリス」では収益還元プログラム「投稿インセンティブ」の配分方式が大きく変更され、作家にとってより有用な形となった。さらに「カクヨム」でも作家支援プログラムの第一弾として広告収益をユーザー還元するロイヤリティプログラムが始動し、出版を経ない新たな収益モデルの確立に動き出している。また「ノベルアップ+」では有料ポイント「ノベラポイント」を介した投げ銭機能を展開し、作家への還元に乗り出した。こうした作家を支援する動きは今後ますます活発になることが予想され、まだまだ手探りの状態である各支援機能が、本当の意味で作家の生存戦略に繋がっていく日もそう遠くないのかもしれない。
■大森藤ノ先生、羊太郎先生がTwitterを始動
これまでSNS上では一切姿を見せてこなかった人気作家のTwitter始動は、昨今の時勢を顧みても印象的だった。SNSの発展と活用は、それだけ出版事業においても重要度合いが増していることの裏返しであり、いち作家としてもファンの視覚化と囲い込みは最重要課題となっているのだろう(あくまでいち見解であり、実際のアカウント開設の意図とは異なる可能性があります)。特に驚きだったのは『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』より大森藤ノ先生(@fujinoomori)、『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』より羊太郎先生(@Taro_hituji)のお二人。まだフォローされていない方はこの機会にフォローしてみましょう。
上記のトピックスは、全体の総括や印象に強く残った出来事やニュースを主に紹介した。ほかにも気になるニュースやトピックスは非常に多かった。2019年、ラノベニュースオンラインはライトノベルのニュース記事を2,600本以上配信している。この1年、ほかにもどんな出来事や発表があったのか、気になる読者はぜひラノベニュースオンラインで2019年のニュースを振り返ってもらいたい。
ラノベニュースオンライン編集部