独占インタビュー「ラノベの素」 とんび先生『才能の器で目指す迷宮最深部』

独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2020年2月10日に宝島社単行本より『「才能の器」で目指す迷宮最深部 スキル横伸ばしのはずが、万能チートだった!』が発売されたとんび先生です。第7回ネット小説大賞「金賞」を本作で受賞し、デビューされています。ある日突然異世界で目を覚ました主人公が、その謎を解き明かすために迷宮最深部を目指すダンジョンファンタジー。作品の内容やキャラクターについてはもちろん、テーマのひとつとして「テンプレ外し」を掲げる狙いなど様々にお聞きしました。

【あらすじ】

突然、異世界で目を覚ました斉藤遼は、迷宮に関わる知識とともに 『才能の器』 という能力を与えられる。 『才能の器』は、斥候スキルに鑑定、看破、さらに理力・神聖・魂魄の魔法三技法など、あらゆるスキルを取得できる多技能×成長チートだった! なぜ、自分は能力を得て、この世界に転移したのか。その手がかりを求めて、遼は迷宮を目指す──。

――それでは自己紹介からお願いします。

生まれも育ちも大阪のコテコテの関西人、とんびです。ペンネームの由来はことわざの「とんびがたかを生む」からでして、執筆を始めた当初からずっと使っているペンネームなのですが、当初「タカを生めるようになりたいとんびです」なんて自己紹介をしていました(笑)。長らく釣りにハマっていて、休日に突然出かけては川海問わず釣りをしています。定時に仕事が終われば夜に2時間だけ釣り、みたいなこともやっていました。最近は出張先で釣りができないかと計画を立てているところです。

――第7回ネット小説大賞で「金賞」を受賞してのデビューとなりますが、受賞の感想や応募の経緯を教えてください。

まさかの受賞、まさかの金賞、と言いたいところですが、正確には「まさかこの作品がこんなにバズるとは」という感じです。評価をいただけたことは大変嬉しいです。ただ、執筆当初から私と趣味の合う人だけが楽しめる作品だと思っていたので、嬉しさ以上に驚きを一番に感じます。応募の経緯については、とにかく何かしらの反応が欲しかったからでしたね(笑)。応募当時はブックマークの数も数百というこじんまりとした作品で、更新のたびについたり外れたりするブックマークに一喜一憂していました。読者さんからの反応も月に1回あれば御の字という感じでした。その折にネット小説大賞で実施されている感想サービスを目にして、感想を目当てにタグをつけたという次第です。

――本作はもともと趣味として執筆をスタートした作品だとうかがっていますが、小説自体は昔から読まれたりしていたのでしょうか。

小説については、私が小学生の頃に母親から「ちょっとは本を読みなさい」と渡された偕成社文庫の『宝島』(作:スチーブンソン)が初小説だったと思います。このたび書籍を出させていただいた出版社さんのお名前そのままで、奇妙な縁だなと少し驚きました(笑)。それ以降、そんなに沢山ではありませんが、折に触れて色々な作品を読んできたと思います。今でも大好きなのは京極夏彦先生の妖怪シリーズで、中学生の頃、深夜に『姑獲鳥の夏』を読んで怖くて眠れなかったなんてこともありました。

――小学生の頃から小説には触れてこられたのですね。その後、自身で小説を執筆しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

小説の執筆は学生の頃にゲームの二次創作から始めました。その当時から「とんび」というペンネームを使っていましたね。ただ、ずっと継続できていたわけではなく、部活や受験でしばらく創作から離れる時期もあり、その後社会人1年目に「小説家になろう」で筆を執り、オリジナルの処女作を投稿するという経緯で今に至ります。Web小説は『ソードアート・オンライン』を個人サイト時代から追っていましたし、『魔法科高校の劣等生』もWebで読んだ経験もあり、私の人生においてWeb小説そのものが身近なものでした。しかしながら、こうして自身で投稿して、ましてや書籍化なんて、学生の頃の自分に言っても信じてもらえないでしょうね(笑)。

――それではあらためて『「才能の器」で目指す迷宮最深部』がどんな物語なのか教えてください。

この作品は、突然異世界に飛ばされた青年が、与えられた知識とチートを使って自分が転移させられた理由を探す、というものです。テーマとしては「テンプレ外し」になるのでしょうか。「小説家になろう」の中ではごくごくありふれた設定・世界観だとは思うのですが、「テンプレ」と呼ばれるお約束を外していく。先程も触れましたが、私と趣味の合う人だけが楽しめる作品だと思っていたのも、このあたりが理由ですね。

※突如異世界へと飛ばされた青年はダンジョンの攻略を目指す

――なるほど。「テンプレ外し」とは具体的にはどういった点なのでしょうか。

「テンプレ外し」の対象のひとつになっているのは人気要素でもある「ハーレム設定」ですね。「小説家になろう」の作品では女の子との出会いありきのストーリーが多いことも気になっていて。であれば気にならない形で自分で書いてみようと考えました。とはいえ、私自身含めてみんな女の子は好きだと思うので、敢えて外して書いておきながら「あんまりウケないだろうな」とは思っていました。実際には意外とハーレムじゃない転生モノの作品を読みたい方はかなりいたようで、非常に驚かされました。

――ありがとうございます。また作中にはTRPGの用語も登場していますが、ご自身はTRPGで遊ばれたりもされているのでしょうか。

これはお恥ずかしい話なのですが、実際には一度もTRPGをやったことがありません。ただ、ニコニコ動画で公開されているリプレイ動画……を元にした二次創作動画などもあって、非常にハマった時期がありました。なので、TRPGの雰囲気だけはよく知っているという感じですね。TRPGの1点の補正を大事にする世界観というか、多数のスキルや魔法を駆使して、補助を盛って強敵に打ち勝つ感じが大好きなんです。実際にプレイされている人からしたらニワカもいいところなのですが(笑)。

――それでは続いて、本作に登場するキャラクターについて教えてください。

まず主人公のリョウですが、彼はとにかく「普通のにーちゃん」を想定して書いてます。お約束のニートではなく、強烈なキャラ付けがされた社畜やエリートでもありません。ゲームなどに造詣のあるライトなオタクでもあり、リアルも充実している青年サラリーマンです。作中では「慎重」や「考察したがり」、「意外と抜けている」といった個性を持っているのですが、当初の設定段階ではなかったものだったりします。

※異世界転移の謎を求める本作の主人公・リョウ

ズーグは竜人の戦闘奴隷で、リョウの最初の仲間です。女子供ではなく、初期に買える安さで強さに伸びしろがあり、主人公に奴隷としてではなく精神的に救われる、そういった要素を考慮した結果、彼が生まれました。個々の設定はありふれているかと思いますが、「全部」となるとほとんど「これしかない!」というキャラクター造形だと自分では思っています。

※リョウに戦闘奴隷として買われることになるズーグ

受付嬢のマルティナは「困ったさんだけど何故か嫌われない」というイメージのキャラクターです。毒舌で万人に好かれるキャラでは無いけど、仕事はきちんとするし悪人ではないので「まったくこの人は」と言われながら付き合っていくような感じです。なんでこんな微妙なポジションのキャラを目指したのか……正直理由は思い出せません(笑)。

※数少ない女性キャラクターであり、強い個性を持つマルティナとアルメリア

アルメリアは武具店の看板娘です。武器屋の主人はおっさんの案も考えていたのですが、序盤における女性キャラの少なさから女性となりました。博識で賢いんだけど迷推理を開陳する変な癖がある、という遊び心に溢れたキャラクターになっています。私自身もお気に入りのキャラクターで、ストーリーにも大きく関わるようになりました。

――主人公のリョウは万能の力とも言える「才能の器」を持っていますが、かなり慎重な性格のキャラクターでもありますよね。リョウはとんび先生にとってどんなキャラクターですか。

自身の分身、とまでは行かないですが、かなり親近感の湧くキャラクターではあります。この質問は非常に難しいですね(笑)。

――リョウの初めての仲間であり相棒となる奴隷のズーグはWEB読者からも人気のあるキャラクターだとうかがっています。

そうですね。主人公との関係性や世界観の描写、主人公を客観視する立場をはじめ、本当にいろんな要素を詰め込んだキャラなんです。我ながらよくぞこんなに詰め込んだな、と思いますね。意識的に造形した訳ではないので、余計にそう思います。

――お気に入りのシーンやイラストについて教えてください。

お気に入りのシーンはズーグが仲間になった直後、なぜ探索にやる気をみせているのかを語るシーンが好きです。イラストは全部好きなんですが、一番は書籍序盤のアルメリアが残念推理を披露しているシーンでしょうか。あのページ開くと毎回笑ってしまいます……(笑)。

※アルメリアの迷推理にリョウは振り回される……?

――著者として本作はどんな方が読むと一層面白く感じてもらえると思いますか。

「小説家になろう」の流行りの設定や人気の設定を活かした作品をたくさん読んでこられた方が読むと、より楽しめるんじゃないかなと思います。テーマでも語りましたが、本作は「テンプレ外し」です。読み進めていくことで、「お、なんかいつもと違うな」と思ってもらえるのではないでしょうか。

――これからの目標や野望があれば教えてください。

一風変わったテンプレ、という作品を色んなテーマで書きたいなと思っています。「小説家になろう」のテンプレ設定は非常にたくさんあるので、設定をいじくり倒して創作を楽しむにあたり、これ以上のものはないと思っていますので。

――それでは最後に本作の読者、ならびに興味を持たれている方に向けて一言お願いします。

早くも次のお話になりますが、第2巻はWebでも注目を集めた重要キャラの登場や主人公の成長エピソードが含まれることになると思います。もし興味を持っていただけたら、第1巻を手に取っていただいて、続刊を後押ししていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

――本日はありがとうございました。

<了>

突如異世界へと飛ばされた主人公が、転移の謎を解き明かそうとダンジョンの攻略を目指す物語を綴るとんび先生にお話をうかがいました。万能の力を持ちながらも慎重な姿勢を崩さない主人公、そんな主人公に魅せられていく竜人奴隷など、注目すべきキャラクターも多い本作。「テンプレ外し」をテーマに意外な展開が散りばめられていく『「才能の器」で目指す迷宮最深部 スキル横伸ばしのはずが、万能チートだった!』は必読です!

©とんび/宝島社 イラスト:りりんら

[関連サイト]

『「才能の器」で目指す迷宮最深部』特設サイト

宝島社(このライトノベルがすごい!文庫)公式サイト

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