【特集】『むすぶと本。』シリーズ2冊同時刊行記念 「人」と「本」の絆を巡る物語を綴る野村美月先生インタビュー

ファミ通文庫刊『“文学少女”シリーズ』などを手掛ける作家・野村美月先生の新作『むすぶと本。』シリーズが、2020年6月30日にファミ通文庫とKADOKAWA文芸単行本より2冊同時に刊行されました。野村美月先生が新作を世に贈り出すのは約4年ぶりとなり、“文学少女”シリーズと同じく”本”にまつわる作品となっています。本と“おしゃべり”できる少年が、本に心を寄せる人達や多くの“本”と出会って始まる物語として描かれる『むすぶと本。『外科室』の一途』と『むすぶと本。『さいごの本やさん』の長い長い終わり』。このたび2冊同時となる刊行を記念して、野村美月先生にお話をうかがいました。作品の内容はもちろん、“本”への想いなども語っていただきました。

 

 

むすぶと本。

 

 

【『むすぶと本。『外科室』の一途』あらすじ】

本は読み手を、深く愛している。本の声が聞こえる少年・榎木むすぶ。とある駅の貸本コーナーで出会った1冊の児童書は“ハナちゃんのところに帰らないと”と切羽詰まった声で訴えていた。恋人の夜長姫(=本)に激しく嫉妬され、学園の王子様・姫倉先輩の依頼を解決しながら、“ハナちゃん”を探し当てるのだけれど……。健気な本たちの想いを、むすぶは叶えることができるのか!? 表題作・泉鏡花の『外科室』ほか、“本の味方!”榎木むすぶがさまざまな人と本の問題を解決する学園ビブリオミステリー登場!

 

 

【『むすぶと本。『さいごの本やさん』の長い長い終わり』あらすじ】

店主の急死により、閉店フェアをすることになった幸本書店。そこに現れたのは、故人の遺言により幸本書店のすべての本を任されたという都会から来た高校生・榎木むすぶ。彼は本の声が聞こえるという。その力で、店を訪れる人々を思い出の本たちと再会させてゆく。いくつもの懐かしい出会いは、やがて亡くなった店主・幸本笑門の死の真相へも繋がってゆく――。“本の味方!”榎木むすぶが繋ぐ本と人のビブリオミステリー。

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

こんにちは、野村美月(のむらみづき)です。出身は合唱が盛んな福島県です。子供の頃から物語を読んだり書いたりすることが、とても好きで、中学生から作家を目指していました。趣味は食べること全般と、お散歩と、眠ることです。『赤城山卓球場に歌声は響く』で第3回えんため大賞小説部門「最優秀賞」を受賞しました。作品に『“文学少女”』や『ヒカルが地球にいたころ…』『ドレスな僕がやんごとなきかたがたの家庭教師様な件』などがあります。

 

 

――このたび約4年ぶりとなる新作、それも2冊同時の刊行となりました。あらためて今の率直なお気持ちをお聞かせください。

 

体に色々と不具合があって、もう書くことはないだろうと思っていたので、ひたすら感謝しております。

 

 

――新たな作品を手掛けるにあたって、大変だったことや楽しかったこと、またこれまでにはなかった発見などはありましたか。

 

書いていたときは、ただただ夢中でした。各話とも起承転結だけ決めて、あとは勢いで書き進めてゆきました。こうした書き方は学生のとき以来でしたので、まだこんな書き方ができるんだなと、感慨深いものがありました。

 

 

――刊行された新作『むすぶと本。』は、野村美月先生の代表作のひとつでもある“文学少女”シリーズと同じ“本”にまつわる物語となりました。本作執筆における経緯や着想について教えてください。

 

物語の着想は、“本が私たちに話しかけていたら?”というところからはじまって、それを聞くことのできる男の子が浮かびました。それから“本のお医者さん”のお話を思いついて、前者と後者をくっつけて、色々混じりあって今の形になりました。実は最初に書いたのが、“本のお医者さん”バージョンの3話目『逆さまから見た、誰も知らない本』になります。

 

 

――1話目から胸を打たれたのですが、始まりは3話目からだったのですね。あわせて本作は“文学少女”シリーズと同じ世界設定を舞台としていることも、ひとつ特徴ですよね。

 

そうですね。主人公が通う学校として聖条学園を舞台にしたのは、物語の流れを考えていたときに悠人先輩が自然に出てきたからですね。また“文学少女”は「物語」についてのお話で、『むすぶと本。』は「本そのもの」についてのお話になります。なので、文学作品以外にも色々な本が登場します。

 

むすぶと本。外科室口絵02

※”文学少女”シリーズを知る人には見覚えのある制服のデザインも

 

 

――新作にも舞台設定を継承するなど、野村美月先生にとっても“文学少女”シリーズは特別なシリーズのひとつであるかと思います。あらためて“文学少女”シリーズは、ご自身にとってどんな作品でしたか。

 

“文学少女”は私が書いて、読者のみなさんが育ててくださった作品のように感じています。たくさんの嬉しいお声をいただいて、それが嬉しくて、どんどん世界が広がってゆきました。とても幸せな作品です。

 

 

――“文学少女”シリーズからちょっとしたバトンを受け取っている新作『むすぶと本。『外科室』の一途』、『むすぶと本。『さいごの本やさん』の長い長い終わり』は、本の声が聞こえる少年・榎木むすぶを中心とした連作短編です。それぞれの書籍に収録されているエピソードについて教えていただけますでしょうか。

 

『外科室』のほうは、学園ものらしい楽しい雰囲気を取り入れるようにしました。底抜けに明るいお話や、しんみりするお話が、まぜこぜになっています。“本”であるヒロインの夜長姫との甘々なシーンにも力を入れています。『さいごの本やさん』は、ひとつの大きな主題に沿って、丁寧に物語を重ねてゆきました。失われてゆくものに対する愛おしさを込めたお話になっています。

 

 

――では本作に登場するキャラクターについても教えてください。

 

それでは3キャラクターほど紹介させてください。作品の主人公である榎木むすぶは、物心ついたときから、何故だか本の言葉がわかり、本とおしゃべりができる男の子です。本と人、どちらの味方かと訊かれたら、明るく笑って「もちろん、ぼくは本の味方さ!」と答えるような子です。

 

榎木むすぶ

※本とおしゃべりができる少年・榎木むすぶ

 

夜長姫は、幼さゆえの純粋さや怖さを持った子です。気位が高くて、嫉妬深くて、「呪う!」が口癖で、自分の気持ちを表現するのが下手だったりしますが、こっそりぐるぐる悩んでいる様子が、たまらなく可愛い、そんな子です。

 

夜長姫

※本作のヒロインで本・夜長姫

 

姫倉悠人は、むすぶの先輩です。“文学少女”シリーズで流人と麻貴のあいだに生まれた赤ん坊として、ちょこっと登場しています。遠子さんにとっては甥にあたる子ですね。イラストを描いていただくとき、上品な流人で、とお願いしました。見た目はお父さんにそっくりですが、中身は正反対で、面倒見が良く人望あつい優等生です。それでいて、ちょっとやんちゃをしてみたり、人が悪かったりする部分もあるのは、やっぱり流人にも麻貴にも似ているのかもしれません。

 

姫倉悠人

※むすぶの先輩・姫倉悠人

 

 

――本作のヒロインとしてもご紹介いただいた夜長姫は正真正銘“本”であるわけですが、人と本のラブコメには強烈かつ鮮烈な“萌え”を感じさせられました(笑)。また、夜長姫以外の“本そのもの”に対しても、強い感情移入をさせられるなど、貴重で新鮮な体験でした。

 

もともと異類婚姻譚が好きで、私自身は、相手が人でも動物でも無機物でも、お互いが好きなら永遠の恋も普通に成り立つと思っています。なので、「人」と「物」との隔たりから何かを生み出そうといった大きな目的や狙いがあったわけではなく、ごくあたりまえにこうなったように思います。

 

むすぶと本。外科室挿絵01

※「呪う!」が口癖の夜長姫のご機嫌伺いにも余念がないむすぶとのやり取りも必見

 

 

――本にはひとつひとつ、いわゆる人格や個性に相当するものがありますよね。同じ本は兄弟や姉妹のようにさえ感じました。本の性格付けはどのようにされたのでしょうか。

 

どの本も、読み手のことが好きで好きでたまらなくて、読み手を愛しているという前提でいるので、読み手が望むような性格を備えていったように思います。『外科室』のエピソードに登場する外子さんは、その典型ですね。読み手に恋をして変わっていったのではないでしょうか。

 

むすぶと本。外科室挿絵03

※本作には読者を愛する様々な”本”が登場する(外子さんと夜長姫)

 

 

――また、悠人先輩は学園の王子様と呼ばれ、情報にも通じていたりと、母であり、“文学少女”シリーズの姫倉麻貴をあらためて彷彿とさせますよね。今後も『むすぶと本。』シリーズにおいて、“文学少女”シリーズとの「繋がり」や「接点」のようなものが描かれていくことはあるのでしょうか。

 

本と話せるむすぶの性質と、本を食べる遠子の性質の共存は難しいので、どうでしょう?(笑)。

 

むすぶと本。外科室挿絵02

※姫倉悠人の存在が、”文学少女”と”むすぶと本。”を繋げている

 

 

――今回、専門店特典のSSでそのあたりに少し触れられているともお聞きしています。

 

そうですね。ゲーマーズさんの特典SSはパラレルな世界を描いていて、心葉くんにそのあたりを突っ込まれて、遠子がべそをかいています。メロンブックスさんの特典SSはIFのストーリーで、むすぶと遠子の邂逅に触れています。もし二人が出会ったら、こんな感じかなと考えて書いてみました。アニメイトさんの特典では幼少時代の悠人先輩と遠子のエピソードを書かせていただきました。物語の中での「繋がり」や「接点」というよりは、こんなふうに、ちょこちょこ遊んでみるのは有りかと思います。

 

 

――本作は榎木むすぶが本とおしゃべりするシーンも多く、もし本とおしゃべりをしながら、そして物語を一緒に読むことができたとしたら、いったいどんな気持ちなんだろうと考えさせられました。野村美月先生はもし本の声が聞こえるとしたら、どんな作品を、本とおしゃべりしながら読んでみたいと思われますか。

 

格好いい男の子がたくさん出てくる乙女ゲームのノベライズを、主人公の女の子の声でお話する本と一緒に、こっちの子がいいとか、こっちの彼のほうが素敵だとか、おしゃべりしながら読みたいです。

 

 

――あらためて同時発売される『むすぶと本。『外科室』の一途』と『むすぶと本。『さいごの本やさん』の長い長い終わり』は、どちらを先に読むとよいでしょうか。個人的には『外科室』から『さいごの本やさん』の流れが、わかりやすいのかなと感じました。

 

一応、どちらを先に読んでいただいても良いように書いておりますので、お好みでどうぞ。『さいごの本やさん』は、登場人物の年齢層がラノベから少し外れていたので、一般文芸で出していただきました。私にとって、とても大切なお話です。『外科室』で笑って、『最後の本やさん』で泣いて、どちらも愛しんでいただけると嬉しいです。

 

 

――イラストについては竹岡美穂先生と再タッグとなりました。見どころや感想などもお聞かせください。

 

竹岡さんの魅力は透明な色彩だったり、繊細な表情だったり、色々ありますが、私が一番信頼を置いているのは竹岡さんの読解力です。ここには、まさにこの絵しかない、という絵を描いてくださる方です。その力が存分に発揮されているのが、『さいごの本やさん』の表紙です。三代にわたる書店員さんたちを描いてくださったのですが、見た瞬間、三人の物語が頭の中を駆け抜けていって、泣いてしまいました。帯で隠れてしまいましたが、足元もそれぞれの性格が見事に表現されていて素晴らしいので、ぜひ本編を読み終わったあとに帯をはずして、見直してみてください。

 

むすぶと本。さいごの本やさんカバー

※野村美月先生が大きな感慨を寄せている『さいごの本やさん』のカバーイラスト

 

 

――作家としてあらためて、これからの目標ややってみたいことなどを教えてください。

 

とにかく書き続けていけたらいいなぁと思います。それを読んでくださる方たちがいたら、なお幸せです。

 

 

――そして作品と直接関係のあるお話ではないのですが、このご時世に、そして4年ぶりの新作として、本との対話や絆、本と本屋さんが人を繋ぐ物語を描き、出版されることに、私個人としても何かしら運命的なものを強く感じてしまいました。あらためて、本と本屋さん、本を読む人達のこれからについて、一言いただけますでしょうか。

 

『さいごの本やさん』のあとがきでも少し触れていますが、とても語りきれるものではないので、作品にいっぱい込めました。そちらを読んでいただいて、感じとっていただけたら、またそれぞれに考えていただけたら、幸いです。

 

 

――それでは最後にファンのみなさんへ向けてメッセージをお願いします。

 

久々に読んでいただける本が、私にとって大切なこの物語で嬉しく思います。昨年、習作を執筆中、本にまつわるお話をいくつも書きました。『本とむすぶ。』は、本と人の絆の物語です。そして、来月22日に講談社タイガさんから発売される『記憶書店うたかた堂の淡々』にも、ちょっと不思議な本が登場します。また秋に、講談社青い鳥文庫さんから発売予定のお話は、絵本を題材にした可愛い作品に仕上がりました。どれも私の、大好きなもの、愛おしいもの、書きたいものを詰め込みました。ぜひお手にとっていただけたら嬉しいです。どの本も、素敵な子たちですよ!

 

 

【小説朗読】野村美月著『むすぶと本。『外科室』の一途』声・野村香菜子

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

4年ぶりとなる2冊の新作で、笑いあり、涙あり、人と“本”が織り成す優しい物語を綴った野村美月先生にお話をうかがいました。そして本作のもうひとつの見どころとして、榎木むすぶと夜長姫のなんともいじらしいラブコメも見逃せません。“本”に触れるすべての人に読んでもらいたい『むすぶと本。『外科室』の一途』と『むすぶと本。『さいごの本やさん』の長い長い終わり』。この物語を読み終えた時、貴方の身近にある本がとても大切な1冊になっていることは間違いありません。

 

 

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むすぶと本。2冊同時刊行特集

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©野村美月/KADOKAWA ファミ通文庫刊 イラスト:竹岡美穂

kiji

[関連サイト]

『むすぶと本。』野村美月新作2冊同時刊行特集ページ

ファミ通文庫公式サイト

 

むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)
むすぶと本。 『さいごの本やさん』の長い長い終わり

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