ライトノベルニュース総決算2020 年間刊行点数と新作刊行点数がそれぞれ微減、鬼滅ブームはノベルも席巻した一年

日常が非日常になる、ライトノベルでもよく見かけるフレーズが、2020年は思わぬ形で現実となってしまった。2020年上半期は様々なイベントが中止や延期となり、緊急事態宣言によって書店は休業状態へとシフト。出版社も取次も書店も作家もそれぞれが大きな影響を受けた。まさに非日常がそこにはあった。そんな新型コロナウイルスに翻弄された一年ではあったが、緊急事態宣言の中でも作品の無料公開をはじめ、できることをやる、エンタメの力で暗い雰囲気を吹き飛ばそうという出版社の動きも目立ち、あらためてエンタメコンテンツの強さや魅力を再認識させられた方も多かったに違いない。そんな2020年もライトノベルの市場や業界を賑わすニュースや出来事は非常に多かった。ラノベニュースオンラインでは、2020年のライトノベルニュース総決算と題して、2020年の出来事や注目のニュースをまとめてお届けする。

 

 

■年間と新作の刊行点数が微減した一年 ラブコメジャンルは強烈な脚光を浴びる

総決算2020

 

まず2020年を振り返ると、ライトノベルの刊行点数は約2,000点(ラノベニュースオンラインアワードの主だった対象作品より抽出)となった。対象作品には下半期の半ばから女性向け作品も含んでいることから、男性向け作品だけを抽出すると100点近く刊行点数は減少したことになりそうだ。新作の刊行点数も同様で、男性向けは昨年から50点前後減少しており、新型コロナウイルスの影響はもちろん、LINE文庫エッジやアークライトノベルスといった刊行を取りやめたり休止となるレーベルの出現も影響する形となっている。一方で下半期にあたる第3四半期や第4四半期における新作の刊行点数は昨年同時期とほぼ同水準まで復調した。2021年1月7日には新レーベル「SQEXノベル」の創刊も予定されており、2021年も市場競争は激しさを維持したままとなりそうである。次にジャンルへと視線を寄せてみると、2020年もラブコメ、青春ラブコメのジャンルが大きな脚光を浴びた。『幼なじみが絶対負けないラブコメ』のアニメ化発表、『弱キャラ友崎くん』の2021年1月アニメ放送、「このライトノベルがすごい!2021」で文庫部門第1位に輝いた『千歳くんはラムネ瓶のなか』。長らく謳われてきた異世界ブームの勢いも未だ強いままだが、並列してラブコメムーブメントが一層強く巻き起こる可能性は十分考えられるだろう。そしてその傍らでは『探偵はもう、死んでいる。』や『スパイ教室』といった、新たな火付け役となる作品も登場しており、それらの作品も2021年におけるライトノベルの一層の盛り上がりに寄与していくことは間違いない。

 

 

 

■女性向けライトノベル作品のメディアミックスが顕在化

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…

 

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』のTVアニメ放送は、あらためて女性向け作品を大きな意味で見つめ直す絶好の機会になったことは間違いない。もっとも、新文芸をはじめとして、女性に向けた作品供給は積極的に行われていたという背景はあり、業界の中でも年々着実に熱を帯びていたジャンルだったことは言い添えておきたい。2016年前後はコミカライズさえも難しいとされていた女性向けライトノベルは、男性読者も巻き込みながら、いよいよ花開こうとしている。2020年もコミカライズやドラマCD・オーディオドラマ化も積極的に行われ、『聖女の魔力は万能です』のアニメ化も発表された。オーバーラップノベルスfやベリーズファンタジーなどの新レーベルも加わり、女性が活躍する物語は2021年も更なる飛躍が待っているだろう。

 

 

 

■ラノベ原作のコミカライズは増加に次ぐ増加 コミックプラットフォームの乱立に迷子化も

comicアーク

 

毎年末、作品数を挙げながらラノベを原作としたコミカライズの拡大状況に筆者は触れてきた。2020年も増加したことはまず間違いない、これは断言できる。しかしながら、そろそろ触れておかなければならないのは、連載や販売を行うコミックプラットフォームについてである。日々様々な情報を収集している筆者も、新連載や新発売の情報を追いかけ切れていない現状がある。もっと頑張れよ、という激励の言葉は頂きつつも、ここまでくると一般の読者視点では「どの作品」が「どこで」漫画化されているのか、迷子になっていてもおかしくはない。もちろん、好きな作品の情報を知ることができればそれで構わないという方もおられるだろうが、コミカライズには間口を広げて作品をより広い層に認知してもらうという大きな役目もある。特に2020年は電子書籍ストアが独自のコミックレーベルを起ち上げたり、単話での販売を電子書籍ストアで直接行うコミックレーベルも増加した。ラノベ原作のコミカライズは男性向け、女性向け共に伸長を続けているからこそ、読者への見せ方や周知の在り方を、コミックプラットフォームサイドはもちろん、原作を有する各レーベルにおいても課題のひとつにしてほしい。週刊少年マガジンで大きな話題を呼んでいる『シャングリラ・フロンティア』をはじめ、WEB小説やラノベを原作としたコミカライズは依然好調だ。そんな今だからこそ、コミカライズを行うだけではなく、興味を持ってくれる読者へどう認知させ、作品の知名度を広げていくのか、丁寧にやってもらいたいと切に願っている。

 

 

 

■『鬼滅の刃』ブームはノベルも席巻 小説読者の潜在層へとアプローチ


        小説版『鬼滅の刃』シリーズが2冊で累計100万部を突破 小説でしか読めないエピソードなどで人気を獲得       0

 

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が日本の歴代興行収入の新記録を樹立したのがつい先日。もはや語ることはほとんどない『鬼滅の刃』の一大ムーブメントは、ライトノベルジャンルにも大きな影響を及ぼした。毎年オリコンが発表している年間“本”ランキングにおいて、ジャンル別ランキング「ライトノベル」の上位5作品に『鬼滅の刃』ノベライズの4作品が名を連ねた(残り1作品には『オーバーロード』がランクイン)。ジャンル別ランキング「ライトノベル作品別」でも『鬼滅の刃』ノベライズが1位を飾り、推定販売部数は275万部を数えた。この数字がまたとんでもない。2019年のジャンル別ランキング「ライトノベル作品別」で1位となった『転生したらスライムだった件』が推定88万部、その前年の1位である『オーバーロード』が推定80万部だったことを考えると、数字の凄まじさもうかがえる。「第2回 小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」でもシリーズ1作目『鬼滅の刃 しあわせの花』が第10位に選出され、人気シリーズゆえという側面がありつつも、小説読者の潜在層の掘り起しに一役買うという大きな役目を果たした。面白い作品であれば隙間時間を意識しない小説コンテンツでも手に取ってもらえる、その姿をありありと見せつけた、小説界隈にとっての新たな希望とも言えるだろう。

 

 

 

■「LINEノベル」がサービス終了、明暗分かれる小説プラットフォーム


        小説プラットフォーム「LINEノベル」発表 統括編集長に三木一馬氏を迎え新レーベル「LINE文庫」「LINE文庫エッジ」も創刊       0


        読んで、応援して、みんなで作品を育てる小説投稿サイト「ノベルアップ+」オープンに先駆けた事前登録サイトが公開       2

 

まさか1年で終わってしまうとは……。筆者を含め同じ感想を抱いた読者も少なくなかったに違いない。同プラットフォームで開催された第1回令和小説大賞の「大賞」受賞作は12月に書籍刊行が行われたものの、どうしても不完全燃焼感は否めない。サービス発表当初、LINEの名前を冠した新サービスとして、そして多くの人気作家が公式作家として名前を連ね、その期待感は非常に大きなものだった。様々な要因があったのだろうが、結果として約1年で幕を下ろすことになり、あらためて小説プラットフォームの運営・運用の難しさを突き付けられた形となった。同じく2019年にサービスを開始した「ノベルアップ+」は、利用者との距離感を身近にしながら、様々な施策を展開し続けている。作品投稿数も堅調に伸ばし続けており、「LINEノベル」とは明暗を分けた。また9月には「ノベリズム」がサービスを開始。契約作家や先読み課金の方式は、一部「LINEノベル」にも通ずるサービスモデルとなっており、日本の小説プラットフォームの主流と異なる挑戦として、2021年も注目されるに違いない。

 

 

 

■『涼宮ハルヒの直観』が発売 シリーズとしては9年半ぶりの最新刊

涼宮ハルヒの直観

 

2020年11月25日に『涼宮ハルヒ』シリーズの最新刊となる『涼宮ハルヒの直観』が発売された。既に読み終えた読者も多いとは思うが、あらためて『涼宮ハルヒ』シリーズの人気を実感する一大イベントだったと言っていい。SOS団100人の応援コメントや既刊の無料公開、「涼宮ハルヒの総選挙」など様々な催しが展開された。11月のライトノベル売上ランキングは紙の書籍も電子書籍も共に席巻する人気ぶりとなり、2020年に大きな爪痕を残した。

 

 

 

■フリーペーパー「ラノベNEWSオフライン」の発刊

ラノベNEWSオフライン2020年10月号

 

ラノベニュースオンラインが端を発した、フリーペーパーによるラノベ業界への新たな試みがスタートした。10月に無事創刊号を発刊し、12月には第2号の設置も行われた。「ラノベNEWSオフライン」は、単なるカタログ冊子ではなく、きちんと読んで面白いフリーペーパーを目指して創刊。ラノベ業界の盛り上げに寄与することはもちろん、作品と読者、そして読者と書店を繋げるツールとしても意義を見出せるよう、2021年も隔月で発刊を続けていく。なお、広告枠は随時募集しているので、興味がある企業様はぜひご連絡を。

 

 

 

上記のトピックスは、全体の総括や印象に強く残った出来事やニュースを主に紹介している。ほかにも「ところざわサクラタウン」の開業や、『ストライク・ザ・ブラッド』や『デート・ア・ライブ』をはじめとした大長編シリーズの完結など、気になるニュースやトピックスは非常に多かった。2020年、ラノベニュースオンラインはライトノベルのニュース記事を2,600本以上配信している。この1年、ほかにもどんな出来事や発表があったのか、気になる読者はぜひラノベニュースオンラインで2020年のニュースを振り返ってもらいたい。

 

ラノベニュースオンライン編集部

 

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