【特集】ダッシュエックス文庫7周年記念特別企画インタビュー 新木伸先生が語るライトノベルのジャンルとヒロインの変遷とは

ダッシュエックス文庫の創刊7周年を記念した特別企画として、作家生活30周年を目前に控える新木伸先生にスペシャルインタビューを実施しました。ダッシュエックス文庫の創刊期より刊行している『英雄教室』のアニメ化企画も発表され、ダッシュエックス文庫と共にこの7年を歩んできたと言っても過言ではないでしょう。この7年(に留まらない!)のライトノベルジャンルの変遷、そしてヒロインの立ち位置についてどんな変化を感じ取り、作家としてどう応えてきたのか。物語を読者へと届ける立場としての視点からライトノベルを俯瞰する、貴重なお話満載でお届けします。

 

 

英雄教室12

 

 

――それでは自己紹介からお願いします。

 

新木伸と申します。出身は東京の池袋近郊で、子供の頃はよく自転車で池袋まで遊びに行っていました。経歴としてはライトノベル黎明期の少し前に、ゲーム雑誌界隈でライターもどきをやっていました(笑)。小説を書いていたこともあり、書いてみないかと誘っていただいて雑誌連載から作家としてデビューすることになりました。単行本の刊行は1994年でしたが、雑誌での連載は1992年からなので、来年には作家生活30周年を迎えることになります。

 

 

――少し早いですが作家生活30周年おめでとうございます。新木先生はダッシュエックス文庫をはじめ、様々なレーベルでお仕事を続けてこられてますよね。

 

ありがとうございます。電撃文庫でデビューしてから、その後はファミ通文庫で4シリーズ程執筆し、ガガガ文庫や一迅社文庫、スニーカー文庫、MF文庫Jなどでもしばらく書いていました。そうしてダッシュエックス文庫からもお声を掛けていただいたりしつつ、現在に至ります。

 

 

――趣味やお好きなものなどもあればお聞かせください。

 

パソコンの自作であったり、車やバイクをいじったりとメカ系が好きです。もともと工業関係の学校に通っていたので理系なんですよ。ただ、ここ数年は機械いじりよりも、庭での家庭菜園に力を入れています。毎年いろんな野菜を育てているんですけど、個人的にはいつでも収穫できるししとうがオススメです。ただ、暑さなんかで少しストレスがかかったりすると途端に辛くなってしまうので注意が必要です(笑)。

 

 

――家庭菜園をやられている作家さんはたまにいらっしゃるんですが、車やバイクを趣味にされている作家さんはあまり聞かないですね。

 

そうなんですよね。作家さんで車とかに興味がある人って一気にいなくなっちゃった気がします。僕らの世代は車を持っていることがひとつのステータスというか、一人前の証として見られていた時期でもあったのかなと思います。今は時代にそぐわない考え方だと思うんですが、それでも未だに僕の中ではそういう錯覚がありますね(笑)。30代以下の作家さんはそういう欲求がなくなっているのかな。

 

 

――欲求に繋がるのかはわかりませんが、地方在住の方で東京に住みたいという作家さんは結構いらっしゃる印象です。もちろんコロナ禍の影響などで状況は大きく変わってしまいましたが。

 

かつてサンシャイン60の裏側を庭にしていた身からすると、家賃も高いし、都内なんて住むもんじゃないと思っちゃうんですけどね(笑)。でも、僕自身は都内、それも池袋のあたりで学生時代を過ごすことができたおかげで、エンタメコンテンツに触れ続けてこられたのは大きいのかなと思う時があります。自転車で遊びに行ける池袋圏内だけでも書店は10や20じゃきかなかったですし、当時はAmazonもありませんでした。特に中学時代は好みを形成していく時期で、なんでも手を出しがちだと思うんです。ただ、手を伸ばすと言っても、ものすごく探すわけではない。自分が手を伸ばした範囲にある、ということが重要だったと思っているので、そういう意味では子供の頃の影響が今の自分に繋がっている気がします。

 

 

――ありがとうございます。このたびダッシュエックス文庫が7周年を迎えたということで、新木先生は創刊期から名前を連ねられていたこともあり、この7年をダッシュエックス文庫と共に歩んできたと言っても過言ではないと思います。あらためてこの7年を振り返り、印象的な出来事があれば教えてください。

 

個人的に一番大きな出来事と感じている変化は、ライトノベル読者の中心層ががらりと変わったことでしょうか。あくまで僕個人が感じたこととして聞いていただきたいのですが、ちょうどダッシュエックス文庫創刊の2014年末の直前か直後に、大きなパラダイムシフトがあったと思うんです。それまで物語にはエキセントリックなヒロインがいて、そのヒロインとの出会いによって主人公の人生が変えられてしまう作品が多くあって、売れていました。それがぱたりと売れなくなってしまった時期があったんです。ダッシュエックス文庫はそのタイミングで創刊されていたので、大変だったんじゃないかなと思いますね。

 

英雄教室

※ダッシュエックス文庫では2015年1月に『英雄教室』を刊行へ

 

 

――確かにそのタイミングの前後で、市場はより大きな変革の波に向かっていくことになりましたよね。

 

そうですね。恋愛系のいわゆる肌色ラノベとも呼ばれていた作品にあまり目が向けられなくなってしまって、じゃあ次はいったい何が売れるのかという暗中模索の時間が続いていたわけですけど、しばらくしてひとつの光明が差すことになりました。みなさんもご存知だと思いますが、「小説家になろう」をはじめとする、WEB発の作品です。僕自身もそのタイミングで『英雄教室』を刊行することになるわけなんですけど、刊行当時はWEB小説の存在こそ知れど、知識はまったくありませんでした。一方で『英雄教室』の作品の方向性として、今の世の中にはもっと明るく楽しく景気の良い物語が必要だろうと思っていました。そういった部分はWEB発小説が目指していた方向性と偶然重なったんですね。直接的な関係はなかったんですけど、WEB発作品と勘違いされることもままあります(笑)。

 

 

――なるほど。やはり30年近く作家業に携わられていると、この7年で起こったような変化の波というのは、過去にも同様に感じてこられたのでしょうか。

 

それはもちろんです(笑)。この7年でも大きな変化はあったと思いますけど、7年という期間は僕のキャリアからすると4分の1にも満たなくて、同じレベルのパラダイムシフトは最低でも2回程体験しています。大げさに聞こえるかもしれませんけど、地層が変わるというか、恐竜が死んで哺乳類が誕生するくらいに大きな変化なんですよね。ライトノベルという名称は1980年代後半あたりから『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ』によって少しずつ広がっていったと思うんですが、それ以前はジュブナイルって呼ばれていたと思います。僕の経歴の最初の10年程は冒険小説の時代で、すごい主人公がすごい世界ですごい冒険をするんです。すごい仲間と出会い、すごい敵と戦い、すごく大きな苦難を経て、すごい偉業を達成する。すべてにおいて「すごい」の付く超人小説が多かったように思います。舞台はすごい異世界やすごいSF世界が多かったですよね。

 

 

――90年代を主としたライトノベルを振り返ってみると、確かに冒険の物語は多かったですよね。そうして00年代前半には異なる波がやって来た、と。

 

2003年あたり、それこそ『涼宮ハルヒ』からはじまった時代なのかな。今でこそお馴染みの、世の中で広く知られたライトノベルと呼ばれていたものの時代がやってくるわけです(笑)。そこにはエキセントリックなヒロインが多く登場しましたし、現代を舞台にした物語が一気に増えました。肌色ラノベ、なんて呼ばれていたこともありましたが、ラブコメを中心としたジャンルが、市場とともに全盛を迎える時代です。なので、僕の中では最初の冒険小説の時代、ヒロインを中心とした物語の時代、そして現在のWEB発小説の時代と、3つの時代を実際に見てきているので、一定周期で大絶滅と主役交代は起こるんだなって思っています(笑)。最初は7年の振り返りという話でしたけど、WEB発の作品が市場に登場してからもう10年近く経過しているわけですから、次の大絶滅はいつ来るのかな、そろそろ来るのかなって思ったりもしています(笑)。

 

 

――実際、作家として市場における変調の兆しを感じることはあるんでしょうか。

 

さすがに予兆をとらえるとかは人智を超えていると思うんですけど、実際に動き始めたならその異変を感じ取ることはできるのかなと。予兆や予感のようなものは本当になくて、急にその年に発症してしまう。それこそ今まで花粉症じゃなかった人が急に花粉症になって自覚する……みたいな感じなんだと思います。だからこそ、現状がずっと続くと思ってはいけないんだと思います。現状がずっと続くと思い込んでいる方は、実際に変化が起こっても数年認識できないままか、或いは認識できないまま時間だけが過ぎ去っていくのだと思います。変化がいずれやってくると確信している側は、初動で後れを取ることはないんじゃないかなと。作家業やライトノベルだけの話ではありませんが、適応しない種を待つのは滅びだと思うので(笑)。

 

 

――あらゆることに通ずる現実的で厳しいお話でもありますよね。

 

僕は冒険小説の時代にデビューしていて、ある意味ジュブナイルという畑で書いてこられていた方たちを駆逐して生きてきたという側面もあると思っています。それこそ00年代前半のラブコメ全盛の時代へと切り替わる時、僕も淘汰の試練を受けています。ただ、当時の担当編集が『バクマン』の港浦吾郎みたいな方でマイペースなタイプだったんですけど、超人小説をずっと書いてきた僕に「ラブコメを書きましょうよ」って言うんですよ(笑)。シリアスが信条の亜城木夢叶にギャグ漫画を描かせるかのような……。そう言われてしまったら、僕もさすがに無理ですとはプライドが許さなくて、やってみますと。そうして頑張ってラブコメ作品を何本か書いて、ラブコメを書くという技術を身に着けるに至ったわけです。そのノウハウは『GJ部』の誕生にも繋がっていることを考えると、当時の担当編集に「ラブコメを書きましょう」と言われていなかったら、絶対に書くことはなかったと思いますし、僕自身淘汰されていたのかもしれません。地殻変動が起こった時は、最大限の努力で適応していく、これしかないのかなと思っています。

 

 

――大変興味深いお話です。そうしてWEB発小説の時代を迎え、新木先生はかなり早い段階で小説投稿サイトも活用し、複数の作品を世に出されていきましたよね。私としては現役の作家が投稿サイトを率先して活用するようになったことも大きな変化のひとつだったと思いますし、あらためて時代への適応だとも感じました。

 

小説投稿サイトに触れる前の当時の僕は、お恥ずかしながらWEB小説について少し馬鹿にしていたところもあったんです。いわゆるアマチュアの人たちの集まりみたいな感じで、どんな作品があるのかも見ていませんでした。でもその後すぐに考えをあらためて、投稿サイトを使って小説を書いている方々と友達になり、いろいろと教わるようになりました。そして自分でもWEB小説を投稿するようになったのが、2015年の半ばくらいだったと思います。その後はおっしゃる通り、ダッシュエックス文庫からは『異世界Cマート繫盛記』や『自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム』を出版させていただいたりしましたね。そういう意味でもダッシュエックス文庫の創刊直後から、レーベルに対して何某かの刺激や影響を少しは与えていたんじゃないですかね(笑)。

 

異世界Cマート繁盛記自重しない元勇者の強くて楽しいニューゲーム

※新木先生ご自身も小説投稿サイトからの書籍刊行を数多く経験している

 

 

――新木先生は小説投稿サイトの活用と、書き下ろしの作品の双方を手掛けられていますが、より具体的な違いとしてはどんなことを感じていますか。

 

これはいち個人の意見になりますが、WEB小説の在り方ってすごくありがたいんです。書き下ろしの作品を書く上で、僕は企画書を書きます。そして編集さんに提出して、吟味されて、やりましょうなのかブラッシュアップしましょうなのか、ボツになるのか判断されるわけですよね(笑)。いずれにしても企画書は必要なんですが、企画書を書いている間は企画屋であって小説家ではないんですよ。なにせ小説を一文字も書いているわけではないので。

 

 

――確かに小説を書くという行為と企画書を書くという行為は、似て非なるものではありますね。

 

そうなんです。でもWEB小説は企画書を一旦横に置いて、本文から始めることができるじゃないですか。僕は作家として生き残るために5~6通くらい書けば1本は通せるくらいには企画書を書く達人になったとは思います。でも何通も企画書を書き上げる労力は本当に大きくて、たとえば企画書を6本書く労力と小説冒頭の10万文字を書く労力は、個人的にほとんど一緒だと思っています。僕の場合はまだ10万文字の方が楽なくらいで(笑)。WEB投稿の場合は冒頭3万文字程度までを執筆して、評価を得られなければそこで筆を置くこともできる。これなら3回挑戦することができるわけです。企画書の屍の山と、冒頭の書き出し数万文字の屍の山。小説家として得られるものはどちらが大きいんだろうと考えると、僕としてはWEB小説の在り方に大きな魅力を感じるんですよね。

 

 

――WEBの投稿作品からデビューされる作家さんが非常に増えた背景には、そういった理由もあったのかもしれませんね。一方で新人賞への投稿数も激減することなく、あらためて脚光を浴びる作品も登場しており、結果として作家デビューのスキームが増える形になったと思います。

 

WEBにはデビューはしたけれど次の出版の確約に至れない方や、新人賞に応募しても選考で落ちてしまう方、そもそも出版するつもりのなかった方たちが書く場所だったという認識です。今はまた少し見方も変わっていると思いますけど、その逆も然りだと思っています。WEBに投稿しても見てもらえない、評価をしてもらえない方もたくさんいますし、WEB小説が目指す方向性とは違う作品を書きたいっていう方もいるわけですからね。特にWEB小説はタイトルとあらすじで読者を引っ張ってこなくてはいけません。そういった部分で損をしている作品も少なくないと思いますし、少なからず相性もあるでしょう。なのでどちらも盛り上がっている状況が一番いいのかもしれません。WEB小説も新人賞も、書き手の絶対数が減少すれば頂点も低くなってしまうわけなので、難しい話ではあるんですけど、デビューの間口が広いに越したことはないのかなと思います。

 

 

――あらためて新木先生から見たダッシュエックス文庫の印象を教えてください。

 

難しい質問ですね(笑)。作家って外側から見ると、レーベルの中にがっつり組み込まれているように見えるのかもしれませんが、基本は個人事業主が担当の編集さんとやり取りをしているだけなので、案外自分の書いているレーベルのことってよくわからないんですよ(笑)。そのうえでなんですけど、僕としては割と早いタイミングで時代に適応したのかなとは感じています。漫画も同じ編集部の中でやっている動きはかなり珍しいと思いますし、コミックを抱え込んだ動きは早かったと思います。

 

クロニクル・レギオン 軍団襲来モノノケグラデーション放課後アポカリプス

※ダッシュエックス文庫は2014年11月に創刊

 

 

――ダッシュエックス文庫に対して何か要望はありますか?(笑)。

 

たぶん後の方でも触れると思いますけど、アニメ化企画が動き出したこともあって、今のところはほとんどないんですよね(笑)。……いや、でも不満から生まれる新しいものが次への原動力になることは多いので、不満を持たないとダメですよね。現状に満足したら挑戦者じゃなくなってしまうので。ちょっと要望を探しておきます(笑)。

 

 

――ありがとうございます(笑)。また長く作家人生を歩まれている中で、作家という立ち位置にも変化を感じる部分はありましたか。

 

今は新人がデビューして、プロとして一本でやっていくのはかなりきついのかなって思います。昔は2~3人に1人は中堅以上の作家として生き残ってこられたと思うんですけど、今は10~20人に1人いるかいないか、ひょっとしたらそれでもいないんだろうなって。昔ほど専業の作家さんも少なくなってきていますし、特にWEBで書いてこられた方は仕事を持たれている方も多いので、自然と兼業作家も増えましたよね。そういう意味でもこれは時代の流れによる変化なのかもしれません。それとこれは僕個人が観測した範囲ですけど、兼業から専業にスイッチしても生産量は増えないどころか、むしろ減る可能性すらある。無計画に専業にはならない方がいいです。会社に行かなくて済むぶんは楽になると思いますが、そのぶん遊べるようになるというか、むしろ遊んでしまうというか(笑)。

 

 

――なるほど(笑)。ここまでジャンルの変遷や作家の変容についてお聞きしてきましたが、作品を彩るヒロインという存在についてもお聞きしたいです。物語におけるヒロインの在り方も、少なからず変化を繰り返していると思うのですが、新木先生が感じる変化にはどういったものがありましたか。

 

先に触れたライトノベルの変遷と共に、ヒロインの役割も当然変化したと思います。90年代から00年代前半のラノベは、女性キャラというのはストーリーの中の登場人物の1人であって、今でいうヒロインっていう概念を持って描かれているキャラクターはそこまで多くなかったと思うんですよね。オーフェンもリナ=インバースも個性あるスーパーヒーローの一人という印象で、ストーリーを背負えるスーパーヒーローの中に女性がいた際、そのキャラクターをヒロインと呼ぶくらいの印象だったと記憶しています。物語自体も恋愛そのものをどうでもいいとまでは言わないですけど、そこに関係なくストーリーが進んでいくというスタイルだったと思いますし、恋愛対象とするためのヒロインはほとんどいなかったんじゃないかなと。00年代前半からは、エキセントリックなヒロインが登場して、そんなヒロインとの出会いによって、主人公の人生や価値観が大きく変えられる物語に変わっていきました。いわば物語の中心には必ずと言っていいほどヒロインがいて、その存在によって物語のすべてが回っていると言っても過言ではなかった、そんな時代だったと思います。

 

はてな☆イリュージョン文句の付けようがないラブコメ

※時代によってヒロインの有する役割や立ち位置も少しずつ変化を繰り返してきている

 

 

――確かに00年代前半以降では、ヒロインの名前から作品を知るレベルで有名になったキャラクターもたくさん登場しました。そこから、WEB発小説の時代に向けてはどのように変わっていったのでしょうか。

 

これはいろんな解釈があると思いますが、僕はヒロインの存在自体はぶっちゃけどうでもよくなっているのかなと思うんです。必要なのは有能な仲間であり、無能なヒロインではない。男性よりかは女性のほうがちょっぴりは嬉しいので選択されている、くらいなのかなと。なので00年代前半から続いていたヒロインという扱いとはまた違った形になっているように感じます。そして90年代の主人公のような、超人的なヒーローも求められていない気がします。今はチートと呼ばれるくらいに強い主人公は多くは存在しますけど、それは本人自身が強いわけじゃない。チートを持っているから強いのであって、昔の超人が超人としての力を失ってもなお超人というメンタリティは持ち合わせていないと思うんです。本当に普通の人が主人公なんですよね。

 

 

――ヒロインの影は薄まりつつあるという印象なんですね。となると、物語で描かれ、読者に求められているファクターはどのようなものだと考えていますか。

 

これは『英雄教室』にも言えることですが、求められているのは景気の良い展開なんだと思っています。能力もそこへと至る手段のひとつであって、勝利とはなんなのか。強いってどういうことなのか。勝利や成功という体験に対して、いかにダイレクトに突っ込むのかがWEB発小説の醍醐味であり、特徴でもあると思っています。我々の中にある承認欲求や、感謝をされたい、一目置かれたいという気持ちに繋がっているんじゃないでしょうか。もっと根源的な渇望で言えば、誰かから必要とされたい、頼りにされたいということなのかな。主人公が冒険者ギルドで認められて、領主に認められて、王族に認められてと、承認の向き先も変遷していくわけで、そのあたりに何か本質があるんじゃないかなって思いますね。

 

 

――景気の良い物語が増えたことによって、物語そのものにおける変化はあったのでしょうか。

 

一番大きな変化は、物語のエンディング自体も目的ではなくなってしまったことだと思います。昔の物語は、ある意味で終わらないと意味がなかったんです。世界を救うという大きな試練に打ち勝つ。そこまで見せないとカタルシスが生まれないし、それこそ物語が苦難だけで終わってしまう。絶対に着地させなきゃいけなかったんです。でも今は目的が変わっているので、無理に着地させる必要がなくなりました。承認欲求を満たし続け、幸せな姿を描き続けることさえできれば、という条件はつきますけどね(笑)。

 

 

――時代の変化や流行りなどは置いておいて、新木先生の好みのヒロインについても教えてください。

 

僕の好みというか、ヒロインを書く上でずっと意識していることがあるんですけど、なるべく生身の人間として見えるように書こうとしています。もちろん架空のキャラクターではあるんですけど、物語の中のキャラクターとして認識されてしまうのが嫌で、我々と同じように生きているんだと感じてほしいという思いが強いです。生活感のようなものを感じ取ってもらえるよう意識しているので、異なる次元やパラレルワールドに実在していると感じていただけると、作者冥利に尽きます。これは時代が変わってもずっと意識し続けていることですね。

 

 

――非常に貴重なお話ありがとうございます。そして『英雄教室』のアニメ化企画も発表されました。最後に感想や期待についてお聞かせください。

 

『GJ部』で1度アニメ化を経験していたことや、先達のアニメ化作家からも様々なアドバイスをいただき、『英雄教室』第1巻はアニメーションにおける第1話の展開などを意図的に意識して作った部分もあります。もちろんアニメにならない可能性も十分あったわけなので、実際にアニメ化企画が動き出したことは大変嬉しいです。生きて動いて怒ってデレてるアーネストをお楽しみに! 僕もそんな姿を見られることを楽しみにしています! 続報もぜひお待ちください!

 

 

――本日はありがとうございました。

 

 

<了>

 

 

ダッシュエックス文庫創刊7周年を記念した特別企画として、新木伸先生にお話をうかがいました。ダッシュエックス文庫と歩んだ7年でも大きな変遷のあったライトノベル。今後も様々な化学変化を起こし続けていくことは間違いなく、それが業界全体の盛り上がりに繋がっていくことを期待していきたいですね。そして電子書籍総合ストア「BOOK☆WALKER」ではダッシュエックス文庫7周年を記念した「ヒロイン総選挙」も開催されています。BOOK☆WALKER限定の特典も用意されているので、この機会にぜひ投票に参加してみてください。アニメ化企画が進行する『英雄教室』の続報も楽しみに待ちましょう!

 

 

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<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>

 

©SHIN ARAKI 2021/集英社 イラスト:森沢晴行

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英雄教室 12 (ダッシュエックス文庫)
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