独占インタビュー「ラノベの素」 槻影先生『嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2025年9月30日にGCノベルズより『嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~』第13巻が発売された槻影先生です。第5巻刊行時に実施したインタビュー以来、約5年ぶりの登場となります。2024年にはアニメ化を果たし、2025年10月からはアニメ第2クールの放送もスタートする本作。クライに振り回されるキャラクターをはじめ、クライ・アンドリヒの成長にも迫るお話など、キャラクターにフォーカスした内容を様々にお聞きしました。過去のインタビュー記事はこちら。
※フリーペーパー「ラノベNEWSオフラインVol.22」は本記事と連動しています。
【あらすじ】 高機動要塞都市コードを舞台にした大波乱のレベル9昇格試験から無事(?)帝都に帰還したクライ。ガーク支部長から謹慎を言い渡されてしまったので喜んでクランマスター室に引きこもる彼を待ち受けるのは……? TVアニメ第2クール放送開始なのに主人公が謹慎処分! 前代未聞の勘違いファンタジー、待望の13巻!! |
――ご無沙汰しております。ラノベニュースオンラインでのインタビューは約5年ぶりですね。あらためてこの5年間はどのように過ごされていましたか。
ご無沙汰しています。正直前回のインタビューでどんな話をしたのかあまり覚えていないんですけど、この5年は小説や漫画を定期的に刊行しながら、これまでで一番忙しい5年間でした。やっぱり一番の変化は、アニメ化に関する作業が増えたことですね。とはいえ、僕としてはただ執筆を続けていただけでもあるので、アニメをはじめたくさんの人に本作を楽しんでいただけたということは、とても喜ばしく考えています。
――アニメによって読者やファンもかなり増えたと思うのですが、そのあたりはいかがですか。
そうですね。作品への感想も数は増えたように思います。もともと感想を書いてくれるファンは多かったのですが、感想を投稿してくれる新しい名前の方が増えたなという印象を受けました(笑)。あとはファンアートを描いてくださる方も増えました。忙しくなった影響もあり、ひとつひとつの感想を読み返す時間がないんですよ。嬉しい悲鳴ではあるのですが、もどかしくもあります。
――また、前回のインタビューでも触れたYouTubeの活動はいかがでしょうか。
それがもう全然やってる暇がなくて(笑)。一応、アニメ第1クールが放送されていた期間は、感想や制作にまつわる小話を投稿していたんですけど、その後はご無沙汰ですね。たまに読者さんからも「もうYouTubeはやられないんですか?」という質問をいただくこともあります。やらないわけではなく、できないというのが現状です。僕としては小説を書くことが一番の恩返しにもなると思っているので、ひとまずそちら側に注力している感じではあるのですが……せっかく収益化もしたんですけどね。
――収益化はおめでたいですね!
1回だけ8000円が振り込まれて、それで終わりですけど(笑)。アニメ第2クールにあわせては、なんとか時間を作ってまたYouTubeに投稿しようとは思っています。
――ありがとうございます。それでは話題にも挙がったアニメの話にも触れていければと思います。アニメ第1クールが2024年に放送されましたが、当時の心境はいかがでしたか。
アニメの放送が去年の10月でしたが、制作自体はその数年前からずっと続いていました。放送まで間があったので、放送された時は感無量でした。制作工程にほぼすべて監修として入っていたんですけど、すごく新鮮な思いで拝見させていただいていました。読者さんの反応もたくさんいただけて嬉しかったですね。SNSなどでアニメ化にあたって不安に思う読者さんもいらっしゃいましたが、実際の放送後はたくさんの方に楽しんでいただけて、僕もホッとしました(笑)。
※2024年10月から12月にかけて放送されたアニメ第1クール
――個人的に面白いなと感じたのは、「嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)」の幼馴染メンバーが幼少期のエピソードで登場していましたよね。本編では第5巻までいかないと全員が揃わないので、巧みな演出だと感じました。
おっしゃる通り、アニメ化にあたって一番の問題がそこでした(笑)。幼馴染が全員揃うのは当分先なわけで、アニメ制作チームにカバーの仕方をよく考えていただけたなと感じた点になります。結局第1クールではリィズとシトリー以外、ほとんど出てこなかったわけですが、オープニングの映像に全員を登場させたりと、様々な工夫をしていただいて、本当にありがたかったです。
――アニメ第1クールを終えてみてはいかがでしたか。
僕自身、アニメ化に携わるのが初めてだったので、すべての工程を新鮮に拝見させていただきました。制作チームの熱量はもちろん、声優のみなさんも音響のみなさんも楽しそうに収録されていました。関わったみなさんが、楽しみながら制作に携われた点が、作品の質が良くなった一番の要因だったんじゃないかなと思います。第2クールも楽しみです。
――また、アフレコ現場にもかなり足を運ばれていたとうかがいました。監督や声優さんとのエピソードがあれば教えてください。
正直いろいろありすぎて……(笑)。本作は監督と音響監督が兼任されていたので、監督からは新キャラが登場するたびにいろいろ聞かれました。声優さんから僕に直接質問がくるようなことはほとんどなかったと思うんですけど、監督からいろいろと指示が飛んでいたとは聞いています。現場も拝見させていただきましたが、より良い演技をしようとする気概が感じられて、やっぱりプロフェッショナルだなと感じました。あとはキャラクターが多い作品ということもあって、スタジオが声優さんで埋まったこともあったんです。「こんなに集まることはないですよ」と言われたのは印象に残ってます(笑)。
――ありがとうございます。そして2025年10月からはアニメ第2クールの放送もスタートします。期待していることや楽しみにしていることをお聞かせください。
第2クールに関しては、ストーリー的にもより勘違いが増えていくわけですが、せっかくのアニメなので、アニメならではの描写を楽しんでいただければと思います。特にコメディ描写は第1クール以上にパワーアップしているので、楽しみにしていただきたいです。
※アニメ第2クールも2025年10月より放送開始!
――アニメ第1クールの内容は原作小説の第3巻相当でしたよね。第2クールではいよいよ「嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)」の幼馴染メンバーが揃うんじゃないですか。
そうですね。満を持して全員が登場しますので、楽しみにしていてください(笑)。第1クールで描かれた幼少期のエピソードから、現代に至るまでどのような成長を遂げているのか、期待していただけたらと思います。声優のみなさんも張り切っていましたので!
――アンセムもいよいよあの巨大な姿で見られるわけですね。
アンセム役の杉田さんも、第1クールでは「うむ」とナレーションしかなかったですからね。第2クールで「うむ」以外を言うかというと……(笑)。
――原作でもアンセムは「うむ」で構成されていますからね(笑)。
そうなんですよね(笑)。ただ、杉田さんも「うむ」をいろいろ考えて、変えていらっしゃるそうなので、そこも楽しみにしていただけたらなと思います。収録中に「どんな感じの「うむ」にしようか」と話していたらしく、声優さんの凄さを感じました。アニメを見た時に感じ取れる部分だと思いますので、ぜひ注目していただきたいです。
――ありがとうございます。ではここからは原作のお話もいろいろとうかがっていきたいと思います。前回のインタビューではちょうど主要なキャラクターが揃ったタイミングで、新キャラクターだったルークやアンセム、ルシアについては軽めの解説でした。その後、6人目のメンバーでもあるエリザが登場していますので、あらためてご紹介をお願いします。
ではルークからいきましょうか。ルークはクライの親友のソードマンですね。熱血漢の剣術バカという感じで、クライを振り回す数少ない存在です。クライたちがハンターになるきっかけを作ったのもルークだったりするので、結構重要なキャラクターでもあります。裏表が一切ないキャラクターで、クライとただ一緒に冒険をしたいというキャラクターですね(笑)。
※常に何かを斬りたがっているルークはクライよりも勉強ができるという
アンセムは苦労人のようなキャラクターです。真っ先に目につく特徴は巨大な身体なんですけど、それ以上に優しくて、まとめ役というわけではありませんが、いるだけでみんなを安心させる存在かもしれません。気性も穏やかで、「嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)」では本当に頼りになる存在です。クライも結構頼りにしていますし、妹たちに甘いというところ以外は欠点という欠点はありません。
※アンセムの戦闘シーンは穏やかな気性とは対極にある豪快なスタイルで迫力は満点
ルシアは第13巻のメインキャラクターとして描かれるわけですが、妹キャラクターです(笑)。過去のエピソードに触れないと詳細な説明が難しいキャラクターでもあって、とにかくクライに振り回される義妹と覚えておいてください。いつか過去のエピソードもやりたいんですけどね……。
※クライのちょっとした言葉から魔法を作り出す天才でもあるルシア
そしてエリザは《嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)》の幼馴染ではない6人目のメンバーです。かなりマイペースなキャラクター、かつ強烈な特徴がないので逆に説明が難しい(笑)。クライとは昼寝好きだったり、共通点はあるんですが、種族的にエリザは危機感知能力が高いんです。その結果、クライとはあまり一緒にいないキャラクターでもあります。クライの周囲はトラブルも多いので、自然とかかわりが薄くなるという(笑)。
※《嘆きの亡霊(ストレンジ・グリーフ)》6人目のエリザ
――エリザは第8巻で正式に登場しましたが、それまでも「さっきまでいたけどもういない」みたいな描写で、ちょくちょく登場はしていました(笑)。
ちょいちょい出てましたね。読者さんからも当初「エリザは存在だけで出てこないと思っていた」という声もあって、思わず笑っちゃいました(笑)。毎回新キャラクターも登場しますし、キャラクター自体が多いので、登場のタイミングが難しかったです。
――キャラクターが多いというお話ですが、裏を返すとクライの言動に振り回されるキャラクターが増えているというお話でもあるのかなと思います。これまでを振り返って、クライに最も振り回されているキャラクターは誰になるのでしょうか。
クライの言動によって被害を受けているという意味だと、満遍なくみんなが被害を受けているのですが、ここ最近だと第零騎士団団長のフランツさんでしょうか。最近の事件すべての尻拭いを担当していますし、最新刊でも被害を受けすぎて爆発しているので、そのあたりも楽しみにしてもらいたいところです。
※クライの尻拭いをさせられ続けブチギレキャラクターと化しているフランツ
――クライとフランツの掛け合いは、フランツの血管が切れてもおかしくないくらいのテンション感で、読んでいても非常に面白いです(笑)。
ありがとうございます。フランツもフランツで、クライと会話を始める前からどんな話が飛びだすのか身構えていますからね(笑)。クライも最初はフランツのことを恐れていたわけですけど、彼の悪いところが出てきてしまうわけです。それは何かというと「慣れ」です。そして慣れた人相手には、クライはすごく気安い感じで話しかけにいくので、それがさらに怒りを買う悪循環が始まるわけですね。
――ユグドラのセレン皇女にも、フランツのことを自身の左手首的な存在だと紹介してました(笑)。
あれもまた、怒りを買うひとつだったと思います。慣れてくると恐れ知らずというか、本当に危機感がなくなってしまうんです。しばらく話し相手になった人は、クライからしてみると友達と思っちゃってる節がある。本当に悪いところだと思います(笑)。
――では逆に、クライの言動によって恩恵を受けているかもしれないキャラクターはいますか。
幼馴染たちはもちろん、クライに巻き込まれた結果、能力が向上しているキャラクターも結構いるんですけど……人生が一番変化したという意味では、闇鍋パーティのグレッグかもしれません。セレンのぬいぐるみを作ってばら撒き、怒られた人なんですけど、オークション編をきっかけにハンターから商人にジョブチェンジしたので(笑)。ほかにプラスの意味で考えると、ティノもかなり成長はしていると思います。初期の頃と比べると、ティノの戦闘力はだいぶ高くなっていると思います。本作を執筆する上で、クライによる影響がどんな結果として各々に出ているのかは、特に注意して書くようにしている点でもあります。クライから受ける影響は基本表裏一体なので、メリットとデメリットを切り離して考えるのはちょっと難しいですね(笑)。
※ティノを含めてクライによる影響を多くのキャラクターが受けている
――クライに振り回されているという意味では、宝物殿「迷い宿」の幻影(ファントム)の妹狐も翻弄されている印象が強いです。
妹狐もだいぶ被害を受けているキャラクターですね。クライは騙しているつもりはないんですけど、いろんな出来事に巻き込まれるし、戦わされるしで(笑)。妹狐はクライから受けた影響の変化が特にわかりやすいキャラクターだと思います。最初はクライの前に敵として登場したわけですけど、いつの間にかクライに対して怯えるようになっていきます。妹狐は第13巻でもちょっとだけ出てくるのですが、第10巻の最後でクライからスマホを取り上げたはずなのに、電話がかかってきて怯えるんですよ。クライは第12巻で再びスマホをゲットしていて、メモっていた妹狐の電話番号にかけるわけです。妹狐からしたら、電話を奪ったはずのクライから電話かかってくるわけですから、そりゃ怯えるだろうっていう。なんとも可哀想ですね(笑)。
※幻影(ファントム)でありながらクライに振り回されている妹狐
――クライからしたら妹狐も友達枠なんでしょうね(笑)。
そうですね。妹狐とかかわってからクライは何も被害を受けていないですし、友達です。逆に妹狐はほとんど良い目にあっていないわけで。油揚げをもらったくらいじゃないですか(笑)。
――ありがとうございます。様々なキャラクターが登場する中で、特にこのキャラクターが書きやすいなどはありますか。
ここしばらくだと、フランツさんがだいぶ書きやすかったです(笑)。苦労人のキャラクターは基本書きやすいんですよね。特にフランツさんが怒る部分は、作品的に面白い部分というか、クライの起こした行動の結果発表的な側面があるので、余計に書きやすいですし、書いている側としても力が入るところですね。
――ほかにはクラヒ・アンドリッヒ達も、第11巻と第12巻の高機動要塞都市コードのエピソードで再登場しました。登場の頻度と書きやすさは比例していたりするのでしょうか。
前提として、クラヒ達は登場するだけで面白いですからね(笑)。ひさしぶりの登場という意味では、読者さんにも楽しんでいただけたんじゃないかなと思っています。おっしゃる通り、書きやすさと登場の頻度は比例しやすくはありますが、同じキャラクターばかりにならないようには気を付けています。一番書きやすいキャラクターはシトリーですけど、便利すぎるので出し過ぎないように注意してます(笑)。キャラクターの登場バランスはかなり調整しているほうだと思います。
※クライたちのパチモン的な存在《嘆きの悪霊(ストレンジ・フリーク)》の面々
――では続いて、主人公のクライ・アンドリヒについておうかがいしていこうと思います。率直にお聞きしますが、第5巻時点から第12巻時点まで、クライは成長していますか。
クライが成長しているかどうかでいうと……してはいないですね(笑)。こんなにも成長しない主人公は、逆に珍しいんじゃないかとさえ思ってます。一方で、経験という意味ではいろんな出来事を乗り越えてきました。その経験をもとに、悪気なくロクでもない問題を引き起こすのが現在のクライでしょうか。彼は経験を積めば積むほど、危機感を失っているかもしれません。危険な目に遭いつつも、なんだかんだ乗り越えている経験だけはあるので、調子に乗っている部分もあるかもしれませんね(笑)。
※クライ・アンドリヒはまったく成長していなかった!
――経験がクライの危機感を殺していると?(笑)
第1巻と比べても、危機感はどんどんなくなっていっている気がします。何も成長していないし、どんどん悪くなっていると言っても過言ではないです。
――なるほど……。では少し方向性を変えて、クライは意志のある宝具や呪物と楽しそうにコミュニケーションを図ろうとしている点も、大きな特徴なのかなと感じます。友達枠が広いですよね。
まず、普通の人は宝具や呪物とコミュニケーションを取りません。つまり何が言いたいかというと、これはクライの危機感のなさを如実に示しているわけです。
※宝具や呪物とコミュニケーションを取ろうとすること自体、クライには危機感がない
――ここでもクライの危機感のなさに繋がるんですね(笑)。
例え話になりますが、クライは『ドラえもん』でいうのび太くんなんです。それもドラえもんがいないのび太くんです(笑)。クライは宝具コレクターとして様々な宝具を持っていますが、あまり使っていないですよね。本人も宝具を役立てようとしているわけではないし、おもちゃ替わりです。宝具を活用して、ハンターとして大成しようとしていない。まあ、本作は基本的にロクなことをしないということが作品のテーマなので、仕方ないと言えば仕方ないんですけど(笑)。
――ここまでクライの残念さが際立っていますが、明るい話題をひとつお聞かせください。クライは意外とモテてるんじゃないか説。これありますよね。
そうですね(笑)。クライはロクなことをしないんですけど、別に悪いことを考えているわけではありません。他人に対してあたりが強いわけでもないし、悪意を持って接することもない。そういった本人の性格に加えて、結果は出しちゃうわけです。周囲の見る目も自然と良い方向に向かっちゃうのは、仕方ないことだと思いますね。クライ自身は恋愛感情を持っているわけではありませんが、周囲から見れば評価できる点はあると思います。
※意外とモテるクライ・アンドリヒ(本人にその気は一切ない)
――確かに周囲はクライの内心を知らず、結果しか見てないわけですもんね(笑)。
まあ、ロクなことをしないだけで、誰かのために何もしないという人間でもないですからね。結果がいつも悪くなりはしますが、性格的にもそこまで悪い性格ではないと思いますよ、たぶん。
――続いて、槻影先生が感じている読者人気の高いキャラクターについて教えてください。
アニメのキャラ人気でいうと、ティノに一番人気が集まっていたのかなとは感じました。小説を書いていると様々な感想をいただきますが、キャラクター人気は満遍なくという印象です。その時点の最新刊のキャラクターに人気が集まる傾向が強くて、直近だとおひいさまを好きな人がたくさんいました。人気投票企画もだいぶ昔にやりましたが、もし今やったらクライが1位なんじゃないですかね(笑)。なまじキャラ数も多いので、分散する感じはします。第1回で1位になったサンドラビットも殿堂入りだと思うので。
※アニメを契機にティノの人気が高まっている模様
――ありがとうございます。また、宝具や呪物まわりについてもお聞きしたいのですが、作中に登場しているものからそうでないものまで、この世界において強力な宝具にはどのようなものがあるのでしょうか。
強力な宝具……っていうと、作中でも軽く触れている宝具のカタログのような宝具ですかね。そのあたりのエピソードもいつかやりたいなと思っています。ほかにも作中で名前が少しだけ登場している宝具にまつわるエピソードなど、いつかやりたいと思っているお話は結構あるんですよ。高機動要塞都市コードも、過去のエピソードで触れていたお話でもありましたからね。とはいえ、宝具ありきでストーリーを考えているわけではないので、そのあたりの難しさはあります。くだらない宝具を取り扱ったSSは、主に電子書店の特典で扱ったりもしているので、興味がある方はチェックしてもらえると嬉しいです。
――槻影先生のお気に入りの宝具、或いは執筆しやすい宝具はありますか。
クライが一番使っているのは結界指(セーフ・リング)ですよね。ただ使い過ぎちゃうとマンネリ化してしまうので、なるべく多くの宝具を使いたいなと思ってます。
――宝具については、特定のキャラクターと組み合わせることで無類の面白さを発揮する側面もあると思います。ユグドラのセレンとシャツ型宝具「完璧な休暇(パーフェクト・バケーション)」の組み合わせは非常に印象的でした。書いてみたい組み合わせはありますか。
ありがとうございます。組み合わせについては短編ネタですけど、アンセムと空飛ぶ絨毯のカーくんでしょうか。空飛ぶ絨毯が重いアンセムをどうやって乗せて空を飛ぶのかみたいな(笑)。こういったエピソード集もいつか本格的にやりたいです。あとは匂わせつつまだできていないお話としては、みみっくんの中を探索する物語かなと。エリザが眠っていたところで、いつか探索しようみたいな話が出て終わっているので、これもいつか触れたいですね。
※宝具と組み合わさることでキャラクターが崩壊するのも笑える見どころのひとつ
――ありがとうございます。あらためて著者として、今後注目してほしいキャラクターがいれば教えてください。
僕が書きたい話としては、ルークやアンセムのお話を書けていないので、そこらへんはやっていきたいです。リィズやシトリー、第13巻ではルシアもやっているので、残りの幼馴染のエピソードを書きたいです。あとはこれまで登場したキャラクターのその後、といった感じでどんどん登場もさせていきたい。セレンもおひいさまのお話も書きたいです。ただ、主人公はあくまでクライなので、書けるタイミングがやってくるかどうか(笑)。勘違いを主軸に物語を書こうとすると、どうしても尺が足りなかったりするので、バランスを取りながら考えていきたいです。僕の中では使い捨てのキャラクターは一人もいないので、みんなが忘れた頃に登場したりもすると思います。
――発売された最新13巻の見どころについて教えてください。
ここ最近は大きな事件を扱ったり、前後編の物語が多かったと思います。第13巻はどちらかというとキャラクターに焦点を当てた物語になっています。ルシアをメインにしたくだらねえ話を書いたので、楽しんでいただけたらと思います。
※レベル8ハンターのサヤが《嘆きの亡霊》の面々と顔を合わせる最新刊
――ちなみに第13巻では、クライがハンターレベル9になるかどうかの結果って出るのでしょうか。
あまりメインのお話にはなっていませんが、出ているのでご期待ください(笑)。
――最後にファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。
アニメ第2クールは第1クールに負けず劣らず、笑える作品になっていると思いますので、引き続き楽しみにしていただけたらと思います。原作、漫画、アニメともに、くだらねえ笑える話を作っていくので、応援してください。
――本日はありがとうございました。
<了>
まったく成長していない(むしろ悪くなっている)クライの勘違いファンタジーを描き続ける槻影先生にお話をおうかがいしました。今後もクライの被害者が増え続ける未来しか見えないものの、読んでみたいと思うエピソードも非常に多い本作。クライと関わる既存のキャラクターから新キャラクターまで、アニメとあわせてますます見逃せない『嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~』は必読です!
<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>
©槻影・チーコ/マイクロマガジン社/「嘆きの亡霊」製作委員会
[関連サイト]