ラノベの素SPECIAL 『作家・三田誠』

――業界の話が出たところでお聞きしますが、デビューしてからのライトノベル業界の移り変わりについて、聞かせていただけますか?

ええと、あくまで僕が認識してる範囲ということになりますが。

僕のデビューした1999年の頃だと、「ライトノベル」という言葉自体は存在していても、出版社が自ら「これはライトノベルです」といって売り出すことはなかったんです。僕の方にも「ライトノベルを書いている」という意識はありませんでした。

だから、ライトノベル業界と呼ぶようになっただけで、変わったんだなあと感じます。

実際、この先も変わるかもしれませんしね。

――「ライトノベル」という名称が変わるかもしれない?

可能性はあると思いますよ。「ヤングアダルト」だったり「ジュブナイル小説」だったり「ティーンズ文庫」だったりして、今は「ライトノベル」なんですから。

逆に言うといくらでも変化していける。

変化しやすいというのは環境に適応しやすい、ということですから、エンターテイメントとしてはいいことのように思います。だから、ライトノベルを定義する必要なんてないと思ってますよ。今定義しても、明日には違うかもしれないし、違っているかもしれないのがいいんじゃないかと。

――なるほど。では作品の話に移らせてください。先生の作品の中で『レンタルマギカ』が一番長く書かれて、いよいよ完結となるわけですが、21冊続けていて一番苦労した部分は?

長くやってると、なんかいいことしか覚えないんですよ。

あえて言えば、奈良に取材旅行に行ったときは、ずっと歩きか自転車だったんで体力的に大変だったなあと。しかもその場で、応募者に送付のサイン入りポストカードを千数百枚書かされましたしね(笑)。

でも、みんなで入った温泉とか楽しかったですよ。

――情報量・知識量がすごいですよね。

あれは魔術考証の三輪さん(オカルト研究考証家の三輪清宗さん)に感謝するしかないです。いつも、一冊描き始める前に、三時間くらいでこのテーマをまとめて講義してくれってお願いするんですよ。例えば「大英帝国におけるロンドンのレイラインの意味と日本との関係性」をテーマに、みたいな。

――ある編集さんが、三田先生のすごい所はとにかく裏付け、関連付けがうまいと言われてました。

どちらかというと関連付けの能力だと思います。

人間の歴史は長いので、たとえばこの時代のこの国にこういう文化があるので、こういう魔術にはこういうアイテムが現実に存在したんじゃないかと推論を立てるんです。推論を立てたところで、三輪さんに「あるはずだから教えてくれ」って言うと、「三田さんがおっしゃるものは5種類ほどございます。今回はどれを使いますか? 私はこの2種類がお勧めです」みたいになるんです。

――それはすごい! では、始まったばかりの二作品についてです。これらの作品で挑戦したいことはありますか?

最新作は常に挑戦のつもりです。

スニーカー文庫で始めた『クロス×レガリア』にしろ、星海社のサイトに載せている『レッドドラゴン』にしろ、常に新人のつもりでやってます。

業界として新しい人が来るのを歓迎したいと言ってる以上、新しい人に負けていたら、生き残れないわけですから。

――覚悟が大事なんですね。『レッドドラゴン』についてお聞きしたいのですが、TRPGを知らない読者に分かりやすく教えていただけますか。

一言にすれば、ルールのあるごっこ遊びですね。
これは口で説明するよりも、『レッドドラゴン』を読んでもらったほうが早いと思いますよ。無料なので是非読んでみてください。もっとも、すでに確立しているTRPGリプレイのジャンルとはだいぶ成り立ちやら切り口やら違ってしまったので、『レッドドラゴン』はロールプレイングフィクションと名乗らせてもらってるんですけどね。
奈須きのこや虚淵玄がひどいことになってますので、ぜひお楽しみに。成田良悟もそろそろやってくるはずです(笑)。

リンク:無料で読めるロールプレイングフィクション『レッドドラゴン』はこちらから!

 『レッドドラゴン』

すべては、最高のフィクションのために。
『レッドドラゴン』――それは五人が織りなす、六夜の奇跡。

最高のフィクションを生み出すことを目的として、TRPG(Table-Talk Role PlayingGame)のルールをベースに当代きっての作家たちが集い、真剣勝負のセッションを繰り広げるーーそれが、『レッドドラゴン』が目指すRPF(Role Playing Fiction)の世界です。
シナリオを担当し、Fiction Masterとして物語を設計するのはグループSNE出身の三田誠。そして、物語の剣造者たるプレイヤーとして名乗りを上げたのは、虚淵玄、奈須きのこ、紅玉いづき、しまどりる、成田良悟の五人。この五人が織りなす、六夜のセッションのためだけに一から設計された完全ワンオフのルールシステムは、三田誠ならびにTRPG界にこの人ありと謳われる三輪清宗、小太刀右京の手によるものです。そして、音楽を担当するのは『FINAL FANTASY XII』『タクティクス・オウガ』の崎元仁。
『レッドドラゴン』は、最高の布陣で最高のフィクションを創造します。

――サイトで読めるのはいいですね! 次に、新作『クロス×レガリア』について紹介を。

『レンタルマギカ』の魔法使いに対して、今回の題材は吸血鬼です。

白い帽子の吸血姫。

最終兵器とも呼ばれる吸血鬼ナタと、千円ボディガードを営む高校生・戌見馳郎の、ボーイミーツガールものです。

三月の二十日までぐらいなら、スニーカー文庫のサイトでも特集されてるかと思いますのでチェックしてみてください。

リンク:スニーカー文庫公式ウェブサイト「ザ・スニーカー」はこちらから!

まあ、僕の書いてるものはカテゴリ的にはボーイミーツガールになることが多いんですが、今回はそれを突き詰めてみたかったんです。

たとえば、『レンタルマギカ』は少年が少女に出会って、自分のやりたいことに出会う話。『イスカリオテ』は少女に出会って、自分の使命に目覚めさせられる話です。

今回の『クロス×レガリア』だと、「男の子が好きな女の子を守る」という一番ど真ん中をやってみたかった。

後、僕は最強厨なので、最終兵器たる吸血姫とか言ってみたかった(笑)。

――三田先生最強厨だったんですか(笑)。

ライトノベルで僕を知ってる人とTRPGで僕を知ってる人では見る目が違っていて。

ライトノベルで知ってる人は「あ、レンタルマギカの人」とか「バトルをよく書く人」なんですけど、TRPGの人は「あ、三田誠。あの最強厨」とか、「俺TUEEE! 大好きな人ですよね」とか認識されてます(笑)。

だからスニーカー文庫から出てる竜ノ湖太郎さんの『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』シリーズなんかも楽しく読ませてもらってます。あれだけパワーインフレすると楽しいですよね。あ、しまった。好きな小説は話さないはずだったのに。

――(笑)。なるほど。他のライトノベルはよく読まれるんですか?

結構読む方だと思いますよ。

仕事柄売れ筋の作品とかは読みますし、他の作品もタイトルとあらすじをチェックして気になったものも読みますが……結局のところは趣味ですね。自分が好きだから読んでるというのが一番の理由です。

――ここまで、いくつも作品の話を聞きましたが、読者に伝えたいテーマなどはあるんですか?

あまり気にしたことはないですね。

ただ、さきほどボーイミーツガールものが多いという話を書きましたが、それはボーイミーツガールが、ある種の肯定する話だからだと思います。

以前、あるシリーズの完結巻後書きに書いたのですが、僕は「夢は叶わない方が多い」「努力は実らない方が多い」というのを否定しません。それも現実だと思ってます。

ただ、その上で「それでもあなたのいるこの現実は素晴らしい」と、そう思ってます。

どんな現実も認めた上で、それでも自分の人生に自分がいるならそれだけで素晴らしい――伝えたいということではないのですが、そんな話を描けていれば嬉しいです。

――ありがとうございます。では作家になりたい、小説を書いてみたいと思っている若い人にアドバイスなどあれば是非お願いします。

ああー、こう、僕も若輩なのでいろいろ面映ゆいのですが(笑)。

そうですね、まずは完結まで仕上げるのがいいと思います。短くてもいいのでまずは完結したものを一作書いてみる。完結させたものは必ず経験値になります。逆に完結させないと10分の1くらいの経験値にしかならないと思います。

――短い作品でもいいのですか?

ええ、まずは完結させましょう。

話はすべてそれからです。「最後まで書けない!」ってなってもそこは気合で書きましょう(笑)。

――では最後に、読者に向けて一言お願いします。

はい。『レンタルマギカ』もいよいよ本編の最終巻となりますが、どうぞよろしくお願いします。

僕の作品を読んだことがない方は、一巻が出たばかりの新作『クロス×レガリア』から入っていただけると嬉しいです。無料で読める『レッドドラゴン』もありますので是非読んでみてください。

――本日は長い時間ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

『クロス×レガリア』

中華街の片隅で2人は出会った。少年の名は戌見馳郎、トラブル解決を1回千円で請け負う学生ボディガード。少女の名はナタ、自称仙人。ナタを護ると決めた 馳郎の、平和な日常はわずか一週間あまりで終わりを告げる。人の氣を喰らう吸血鬼、〈鬼仙〉と呼ばれる者たちの襲撃。彼らの目的は、鬼仙を無力化できる最 強最悪の兵器──ナタを狩ることだった! 「レンタルマギカ」の三田誠が描く圧倒的スケールの新シリーズ、ここに開幕!

『レンタルマギカ』

ついに大魔術決闘が始まり、布留部市各地の戦闘は激化の一途を辿っていく。苦戦を強いられた穂波、アディリシアが、それぞれの決意を胸に切り札を切ろうと するなか、市内を巡る霊脈に異変が発生、戦闘中の魔術師たちの脳裏に、ある光景が映し出される。それは12年前―かつて、いつきが妖精眼と交わった記憶で あり、それこそが、すべての“始まり”だったのだ!いつきを取り巻いてきた様々な因縁の謎が、いま明らかに。

お忙しい中、長時間に渡ってお話を聞かせてくださった三田先生ありがとうございました! スニーカー文庫より発売中の新作『クロス×レガリア』は現在売り切れ続出中! 『レンタルマギカ』も次巻いよいよフィナーレ! 星海社ウェブサイト「最前線」で無料公開中のロールプレイングフィクション『レッドドラゴン』も是非読もう!

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