独占インタビュー「ラノベの素」 土橋真二郎先生『その異世界ハーレムは制約つき。』
独占インタビュー「ラノベの素」。今回は2022年12月21日にムゲンライトノベルスより『その異世界ハーレムは制約つき。~自慰行為を禁止された童貞勇者のスローライフ~』が発売された土橋真二郎先生です。2022年に作家デビュー15周年を迎えた土橋先生が、特殊なルールを課して描いた異世界ハーレムファンタジー。勇者の足跡を辿ることになる登場キャラクターたちはもちろん、物語の内容まで様々にお話をお聞きしました。
【あらすじ】 高校生のハヤトはある日突然に異世界へ転移し、その世界では『勇者の祝福』と呼ばれる勇者にしか持てない万能スキルをギフトとして授かる。しかし代償として力を使えば使うほど性的欲求が高まり、その上思うように自慰ができない体質になってしまう。その中で出会う妖精のチキに人形のように可愛らしいミゼットのフレイア、共に異世界に転移した同級生の幼馴染であるミヨにクラスの委員長であるミナミなど魅力的な女性陣と共にパーティーを組み戦闘やスローライフをしていく中、溜まった性的欲求を解消してもらおうとハヤトは奮闘するが…「そうだこれは祝福なんかじゃない。呪いだ」「……無理だ。このままだと俺はおかしくなる」 性欲と理性が渦巻く、禁断の異世界ハーレムスローライフファンタジー開幕!! |
――それでは自己紹介からお願いします。
土橋真二郎です。出身は東京都で、好きなものはスポーツ観戦、キャンプ、映画やアニメ、ベランダ菜園や中日ドラゴンズですね。苦手なものはコロナ以前にゲテモノ料理店でサソリを食べる機会がありまして、そこで食べて以来サソリが苦手になりました。今だから言えますが、正直お金を払ってまで食べるものではありませんでした(笑)。それと『あつまれ どうぶつの森』も続けていて、仲間も随時募集しています。しっかり整備しておきますので、ラノベニュースオンラインの読者さんもぜひ気軽に遊びにきてください!(笑)。
――映画やアニメもお好きということで、映画館にもかなり足を運ばれているとか。
そうですね。最近ですと『すずめの戸締り』を観に行きました。『トップガン マーヴェリック』も面白かったです。『すずめの戸締り』はテンポがよく、2時間近い長さをまったく感じませんでしたし、脚本の教科書になるような作品だと感じました。映画はもちろんですが、映画館も大好きで、90分や120分を集中できるというのも大きな魅力だと思います。アニメだと最近は『ぼっち・ざ・ろっく!』が面白いですよね。ぼっちちゃんが頑張っている姿を見ると、自分も頑張ろうって思えるので(笑)。
――映画をはじめ映像作品をたくさん見られていると思うのですが、ご自身の中で印象に残っている作品はありますか。
一番好きなのは『ロード・オブ・ザ・リング』です。戦闘シーンの多い物語でもあるんですが、最終決戦の前に仲間がみんなで野営をするシーンがあり、そこから戦地へと赴くんです。そういったシーンを見ていると、親近感のようなものが生まれ、ゴブリンやオークがやられてしまった時は思わず泣き叫んでしまいました(笑)。決戦までの道程がしっかりと描かれていたこと、あとは映画館ならではの雰囲気、ライブ感を得られる映画館にはみなさんにもぜひ足を運んでもらいたいです。
――映画館好きはライブ感を好まれているからでもあるんですね。また、キャンプもお好きだそうで、青木ヶ原樹海で迷子になったなど、いくつか逸話をお持ちですよね。
いやあ、馬鹿な時代は一人グレートレースとかやってましたからね(笑)。南アルプスを越えて日本海に出ようみたいな挑戦もしたりして。というのも当時、通販で方位も高度もすべてがわかるという、若干怪しさも入り混じるすごくいい時計を買ったんですよね。それを付けていろんな場所へ行くのが趣味みたいにもなっていて、南アルプス越えも一人で行けるなって判断しちゃったんですよ。そうしたら頼りにしていたその時計が1日目にして不調になり、迷ってしまったという。今思い返しても過去一大変なキャンプでしたね。あれをキャンプと言っていいのかはわからないですけど(笑)。後は離島巡りも好きで、船で片道25時間くらいかかる小笠原諸島や、鹿児島のトカラ列島にも行きました。ただこれらのお話も10年以上前で、現在は作家を続けていくうちに体力がどんどん削られてきているので、長期旅行も行けなくなってしまいましたね。
――土橋先生は第13回電撃ゲーム小説大賞にて「金賞」を受賞し、今年で作家デビュー15周年を迎えました。あらためてこの15年を振り返っていただけますでしょうか。
全体的につらいことよりも楽しいことの方が多かったんじゃないでしょうか。私自身、作家になるまでの人生が青木ヶ原樹海に行ったり、一人グレートレースをやったり、結構ハチャメチャだったので、少し人生を修正しないといけないなと思ったのが始まりでした。人生の逆転までは望まずとも、レールからだいぶ外れた人生を送っていたので、一度レールに戻ろうみたいな感じでしたね(笑)。その時なぜか作家になろうと思い、3年間だけ挑戦しようと思ったんです。最初の1年はモチベーションも高く、結果もまぁまぁ出ていてよかったんですが、その1年で小賢しいテクニックを覚えてしまい、段々と新人賞には通らなくなっていきました。そうして最後の3年目に送った作品が電撃ゲーム小説大賞で賞をいただいた『扉の外』だったんですよね。原稿を送った直後に旅に出ていたんですが、受賞の連絡は鹿児島あたりで聞いたと記憶しています。嬉しさはもちろんあったんですけど、これから島へ向かうのに、みたいな複雑な気持ちもありましたね(笑)。
――3年という期間を区切っての挑戦は見事に実を結んだわけですね。受賞連絡は複雑なお気持ちだったとのことですが(笑)。
今回インタビューを受けるということで、昔のノートを見返してみたんですよ。1年目は送った作品名から、どこの賞へ送りどんな結果だったのか事細かに記録してありました。ただ、3年目あたりになると、きちんとした結果も書かず、ただのバツ印になっていたり、病んでいる感じもありましたね(笑)。旅先で最終的な結果を聞くことになりましたけど、周囲に報告できる相手もおらず、でも誰かに共有したい気持ちもあって、釣りをしている方に「何か釣れましたか?」って声をかけてみたりして。「アジが釣れたね」って返事に、心の中で「自分はもっと大きなものを釣りあげましたよ」って思ったりしていました(笑)。この時のことは未だに鮮明に覚えています。
――土橋先生は作家を目指す際、最初からライトノベル作家を目指されていたんですか。
いえ、そういうわけではなかったんですよ。当時は一般文芸からそれこそ少女小説まで、あらゆるジャンルに応募をしていました。ライトノベルをライトノベルと意識して読んでもおらず、僕の学生時代はジュブナイル小説と呼ばれていた印象の方が強いくらいです。ライトノベルは小説の応募を始めた際に読むようになり、ジャンルとしても認識するようになりました。賞をいただいた電撃ゲーム小説大賞も「ゲームってなんのことだろう?」って思いながら応募してましたからね(笑)。
――作家としてのご自身は読者からどのように見られているのか、そしてこの15年で気づいたことや変化を感じたことなどがあれば教えてください。
読者の方からどう見られているかについては、密室好きやデスゲーム作家だと思われているんですかね? デビュー作の『扉の外』は、密室なだけで人を殺してはいないのであれですけど。私自身、小説家としてのバックボーンがほとんどなかったので、とにかく限られた空間や範囲の中でキャラクターを動かそうと細工を凝らしていました。閉鎖空間を舞台にした物語は作りやすいですし、それゆえに密室好きだと思われているかもしれません。ただ、私自身もこの15年で成長したと思いますし、広い世界も書けるようになってきていると思います。いつまでも部屋の中を舞台にし続けるわけにはいきませんからね(笑)。あとはこの15年で、とにかくコンテンツの消費スピードが速くなってきているなと。そして本を読むという作業が重労働になってきているという印象は受けています。スマホで動画を見たり、時短を意識するこの時代だからこそ、もっと多くの方に本を読んでほしいなとは思っていますが。
――ありがとうございます。それでは新シリーズとなる『その異世界ハーレムは制約つき。』についてどんな物語なのか教えていただけますでしょうか。
本作はムゲンライトノベルスさんから出させていただく異世界ものになります。高校生の主人公が異世界へと飛ばされて、元の世界に戻るという目的のために異世界を旅する物語ですね。道中では仲間も増えていくハーレム要素もありますが、主人公にはとある制約が与えられており、その葛藤も見どころのひとつだと思っています。すべての人類が疲れていると私自身が仮定し、提供しようと思ったスローライフ作品です(笑)。
――スローライフというには、ある意味過酷な一面もありますが(笑)。本作の着想や執筆のきっかけはなんだったのでしょうか。
この作品はいわゆる異世界系のWEB小説を発端にしたものではなく、昔一緒にお仕事をさせていただいた編集者さんから、「異世界ものを書いてみませんか」とお声かけいただいたことが始まりです。そしてお引き受けさせていただき、ムゲンライトノベルスのレーベルカラーを意識しながら考えた作品です。私は読み専として「小説家になろう」では異世界ものの作品をたくさん読んでいました。なので、自分なりの異世界ものを書ければいいなと思い、いくつかプロットを提出させていただきました。まずは楽しくやるためにコメディっぽい部分を意識しつつ、異世界を旅するという点に対してはリアリティが欲しいなと考えました。妖精の存在や旅の様子をあまり省略しないようにしている点などは強く意識したところになると思います。
――それでは登場するキャラクターについても教えてください。
主人公のハヤトは、やる時はやるけど、やらない時はやらない普通の高校生です。勇者というカテゴリの祝福を授かっています。危険な場所でカップラーメンを食べるエクストリーム部という少しおバカな部活をやっていて、そこで培った胆力は異世界ではプラスに働いているかもしれません。慎重さと優柔不断さを持ち合わせた上での決断力は持っています。過去の勇者カテゴリの人がめちゃくちゃやっていたこともあり、異世界の人々には最初から評判がよくありません。
※勇者の祝福を得た主人公のハヤト
妖精のチキは、本作を執筆する上で登場させるかどうか最後まで悩んだキャラクターでした。著者からキャラクターへのギフト的な存在でもありますね(笑)。世界観を説明してくれるキャラクターの一人で、最初から主人公と仲が良いのはなぜなのか等、まだ表には出せない設定もあったりします。ひとまずは場を和ませてくれるキャラクターとして楽しんでいただければと思います。
ミゼット族のフレイアは最初から主人公についてきてくれる、異世界の象徴的なキャラクターです。フレイアとの距離が近づけば近づくほど、主人公が異世界に馴染んでいる証という指針のひとつでもあります。ミゼット族は様々な種族が存在する異世界の中でも特に弱い種族で、人間の庇護下に入り、奴隷とまではいかないまでも安価な労働力として扱われています。主人公に課せられた制約は街の人々も知っているがゆえにあてがわれた存在でもあります。ハヤトのお目付け役のような存在でもあり、母性溢れる存在でもあり、ハヤトの情も少しずつ移っていくことになります。
※異世界の象徴であるフレイアとチキ
ミヨはフレイアとは対極の立ち位置で、元の世界の象徴になります。意外にスポーツ万能で、主人公が放課後にエクストリーム部として活動している間、時間を潰す意味でも様々な部活動の助っ人をやったりしていました。作中でも武闘派思考の一人です。ハヤトとは幼馴染でもあり、過去にとあるトラウマで引きこもっていたミヨを救い上げてくれたハヤトに依存しています。クラスの中で唯一主人公を迎えに行ったりと、決断力と行動力はすごいです。
※ハヤトの幼馴染であるミヨ
ミュウは亜人で、ネコミミがあり勇者に憧れている女の子です。時代ごとに強い種族の子種を得ながら生き永らえてきた種族でもあります。個人的にはミュウが歌うシーンが好きなんですよね。作中ではほぼわからないように書いていますが、ミュウの歌う曲には原曲があるのでぜひ探してみてください(笑)。
※恋というものに憧れを持つミュウ
ミナミはハヤトのクラスメイトで委員長です。異世界に飛ばされて、一番現実的な行動を取っているキャラクターだと思います。元の世界では将来設計をしっかりと考えていましたが、異世界に飛ばされたことによってご破算になってしまいます。それでも異世界でどう立ち回るか、腹を括ることもできる肝の据わった女の子ですね。
※委員長で現実主義者とも言えるミナミ
――本作には異世界で悪評を振りまいた歴代の勇者がいますよね。主人公もそれが原因で苦労することになるわけですが、それぞれどんな人物だったのでしょうか。
ネタバレもあるので、簡単に触れさせていただきますね。まず初代勇者は大きな秘密を持っています。残念ながら秘密の詳細は言えないのですいません。二代目のナンバー2は結構真面目で、初代勇者の意思を継ぎ、能力を人間にもわかりやすいようカテゴライズしてみたり、エルフと一緒になったりしました。ナンバー3から雲行きが怪しくなり、日本のHENTAIな文化を持ち込み、変な歴史を刻み始めます。ナンバー4は制約に抗った末祀られていますし、ナンバー5はかなりやんちゃな勇者でした。そしてナンバー6はナンバー5の悪評に苦労させられることになります。ただ、最初の勇者は異世界を旅することで元の世界へ戻ったと言われており、主人公たちもその道を辿ることで帰れるんじゃないか、そんな旅になっています。主人公の先代のナンバー6も初代勇者の足跡を追っているので、いつか交わったら面白いなと私自身も思っています。
――本作のイラストはpupps先生が担当されています。お気に入りのイラストがあれば教えてください。
まず、puppsさんにはお忙しい中お引き受けいただいたことにお礼を言いたいです。執筆時にはキャラクターのビジュアルを具体的にイメージしていたわけではなく、puppsさんの描いたイラストを拝見したことで、キャラクターとしてもしっかりハマったと思っています。お気に入りはすべてのイラストではあるんですけど、最初のハヤトとフレイアの出会いを描いた挿絵でしょうか。どのキャラクターも可愛く、ミナミもかなりお気に入りです。
※土橋先生が選ぶお気に入りのイラストやキャラクター
――著者の視点から本作の見どころや注目してもらいたい点はどんなところでしょうか。
本作では主人公たちと共に旅の感覚を共有してもらいたいです。できるだけ省略をしないよう心掛けて執筆しました。異世界ものですが、リアリティや臨場感も織り交ぜているので、ライブ感を楽しんでいただきたいです。魔物を討伐して、お金をもらって、お酒を飲んで、みたいな異世界物語が好きな方に、そしてスローライフ好きな方にも楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。
――今後の目標や野望について教えてください。
読者の方の心に残る物語を書いていきたい、これはずっと変わりません。その上で結果を出すことですね。野球に例えてしまって恐縮ですが、同じホームランの1点でも、飛距離を少しでも伸ばしたいんです。たとえひとつのシーンでも、心に残ったと言ってもらえることは、作家冥利に尽きると思うんです。そういった物語をジャンルにこだわらず書いていきたいです。
――それでは最後にファンのみなさんに向けて一言お願いします。
まず、いつも自分の本を読んでくださっている方には、ありがとうございますと。本作は異世界もの、そこに自分ならではのエッセンスを残しているので、今作もぜひ手に取っていただけると嬉しいです。また、これからも作品を世に出していけるよう頑張っていきますので、引き続き応援いただけると嬉しいです。そして本作で土橋真二郎を知られた方は、気軽に読んでいただけたらなと思います。今作は自分の作品の中でも特にソフトな内容になっているかと思いますので、読者の方の代わりに旅をする主人公たちをぜひ追いかけていただけたらと思います。
――本日はありがとうございました。
<了>
作家デビュー15周年を迎え、独自のエッセンスを加えて異世界物語を綴った土橋真二郎先生にお話をうかがいました。もはや呪いとも言える主人公に課せられた制約との葛藤、そして過去の勇者の足跡を辿り歩んでいく主人公たちの物語をぜひ追いかけてもらいたいです。笑って旅する異世界ハーレム物語を描く『その異世界ハーレムは制約つき。~自慰行為を禁止された童貞勇者のスローライフ~』は必読です!
<BOOK☆WALKERではムゲンライトノベルスフェアも開催中>
<取材・文:ラノベニュースオンライン編集長・鈴木>
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